第48回入賞作品 中学校の部
継続研究奨励賞

めざせ!最強の空気砲パートⅤ
-二つ穴空気砲コントロール計画-

継続研究奨励賞

茨城県つくば市立並木中学校 1年
服部 篤彦
  • 茨城県つくば市立並木中学校 1年
    服部 篤彦
  • 第48回入賞作品
    中学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究のきっかけと目的

 小学2年生の時から空気砲について調べてきた。インターネットで、「香りを届けるテレビ」という大学の研究を知った。空気砲から発射された「渦輪」(空気砲ドーナツ)は周りの空気と混じらないという特性を利用して、ねらった場所へ香りを飛ばすというものだ。しかし、人間の鼻先で二つの渦輪を衝突させて香りを漂わせようとするが、タイミングや方向のコントロールが難しく、思い通りいっていないという。僕の昨年度の研究では〈二つ穴の空気砲から発射した2個の渦輪は次第に向かい合わせになり、やがて正面衝突して崩れる〉という新発見があった。これを自由にコントロールできれば、「香りを届けるテレビ」の実現にも役立つかもしれない。今回の研究の目的は、二つの渦輪をねらった距離で正面衝突させられる条件を探すことだ。その第一段階として、穴の大きさ、穴と穴の距離、発射時に加える力と二つの渦輪の動きとの関係を調べる。

実験

 穴の大きさ、穴と穴の距離(間隔)、発射時に加える力の三つの項目を変化させて二つ穴空気砲を発射し、渦輪の動きを観察しつつ、二つの渦輪が衝突するまでの距離を測る。

〈方法〉

空気砲は30cm×30㎝×30㎝の立方体型段ボール箱。この前面に二つ穴の直径、間隔を変えた9種類のパネルを貼る。上からおもりを落として、フォグマシンで箱の中に充填しておいた煙を二つ穴から発射させる。穴の直径は3㎝、5㎝、7㎝の3種類。穴と穴の間隔は6㎝、10㎝、14㎝の3種類。なお穴の間隔14㎝・穴の直径7㎝の実験は、箱のサイズの関係でできなかった。また、穴の間隔14㎝では穴の直径3㎝、5㎝ともに渦輪が平行に飛ぶだけで衝突しなかったので、間隔12㎝・穴の直径5㎝で追加実験を行った。おもりは巾着袋にペットボトルを入れ、水の量を調整して100g、200g、300g、400g、500gを準備。これを高さ10㎝から空気砲に落とす。測定は各条件につき5回ずつ行い、最高値と最低値を除外した残り三つの値の平均を渦輪の衝突距離とした。

結果の整理と考察

(1)おもりの重さと衝突距離

穴の直径を固定して比較:穴の直径がいくつでも、穴の間隔が6㎝のときに、おもりが重くなるほど衝突距離は短くなった。それとは逆に、直径3㎝と5㎝の穴では間隔10㎝のときに、おもりが重くなるほど衝突距離が長くなった。穴の直径5㎝・間隔12㎝のときと直径7㎝・間隔10㎝のときに、おもり400gでの衝突距離が一番長かった。
穴の間隔を固定して比較:間隔6㎝のときは、穴の直径にかかわらず、おもりが重くなるほど衝突距離は短くなった。間隔10㎝では、穴の直径3㎝と5㎝のときに、おもり200gでの衝突距離が一番短く、それ以上おもりが重くなると衝突距離も長くなった。穴の間隔10㎝・直径7㎝の場合、おもり400gのときの衝突距離が一番長かった。

(2)穴の直径と衝突距離

穴の間隔を固定して比較:二つの渦輪が衝突した穴の間隔6㎝、10㎝のときのデータをまとめた。間隔6㎝・おもり100gの場合、穴の直径3㎝と5㎝とでは衝突距離は同じだったが、直径7㎝にすると長くなった。おもり400g、500gの場合は穴の直径5㎝のときに衝突距離が一番短くなった。おもり200g、300gのときの衝突距離は、穴の直径に影響を受けなかった。穴の間隔10㎝の場合、どんなおもりの重さでも、穴の直径5㎝のときの衝突距離が一番短かった。
おもりの重さを固定して比較:おもりの重さに関係なく、穴の間隔10㎝・直径5㎝のときに衝突距離が一番短かった。おもり200gのとき以外は、穴の間隔6㎝・直径5㎝の場合に衝突距離が一番短かった。おもり200g・穴の間隔6㎝のときは、穴の直径が大きくなるほど衝突距離は長くなった。

(3)穴と穴の距離と衝突距離

おもりの重さを固定して比較:おもりの重さ、穴の直径に関係なく、穴の間隔が大きいほど衝突距離は長くなった。
穴の直径を固定して比較:穴の直径、おもりの重さに関係なく、穴の間隔が大きいほど衝突距離は長くなった。

(4)衝突距離についての考察

 おもりの重さ(=発射時に与えられる力の大きさ)が変わると、渦輪にどんな影響があるのか。発射された渦輪は内部で回転しながら前進していくので、発射時に与えられた力は、渦輪の回転エネルギーと前進エネルギーに分かれる。回転エネルギーが大きければ、渦輪の回転力が強くなる。前進エネルギーが大きければ、渦輪の推進力が強くなる。
  渦輪の回転・推進エネルギーが二つの渦輪の「干渉作用」にどんな影響を与えるのか。「干渉作用」とは相手の渦輪をはじいたり、自分の渦に巻き込んだり、相手の回転にブレーキをかけたりする「ローラー効果」のこと。この干渉力は、渦輪の回転力が強いほど大きくなるはずだ。一方、渦輪の推進力が強いと、干渉力を振り切って前進できる。推進力が弱まってきた時にまだ回転力が残っていたら、二つの渦輪の間に干渉(ローラー効果)が起こる。つまり二つの渦輪の衝突距離は、回転力と推進力のバランスで決まる。これらのバランスは穴の大きさ、穴の間隔とも関係する。
 例えば穴の間隔6㎝の場合、二つの渦輪の位置が近いために、干渉が簡単に起きてしまう(回転力の影響が出やすい)。そのため、与えられる力が大きいほど二つの渦輪は早く衝突し、衝突距離は短くなる。穴の間隔が10㎝の場合は、6㎝の場合より干渉が起こりにくいので推進力の影響が出やすい。そのため、与えられる力が大きいほど、二つの渦輪の衝突距離は長くなる。さらに穴の間隔が10㎝のときは、加える力とは関係なく、穴の直径が3㎝よりも5㎝の方が干渉が起こりやすい(衝突距離が短い)。ところが穴の直径が7㎝になると逆に、干渉は起こりにくく(衝突距離が長く)なる。穴の直径が大きいほど、大きな渦輪を作るために、与えられた力はより多く回転力に使われる。つまり同じ力で発射するなら、穴の直径が大きいほど渦輪の推進力は弱い(スピードは遅い)。
  穴の直径3㎝・間隔14㎝のときと、穴の直径5㎝・間隔14㎝のときは二つの渦輪は衝突しなかった(平行に飛んで消滅)。このことから、二つの渦輪の間隔が広いほど、干渉が起こりにくい。また広すぎると、回転力が干渉の起こる範囲を超えてしまう。

(5)干渉作用の強さと渦輪の様子

二つの渦輪の動きは、昨年度の研究も踏まえて、次の5種類に分類できる。A:衝突しない(二つの渦輪が並んで飛んで行く)B:衝突してはじくC:合体するD:衝突して壊れる(空中で)E:渦輪ができない(発射と同時に衝突して壊れている)――二つの渦輪の干渉作用が弱いほどAタイプに近づき、強いほどEタイプに近づく。この研究の目的は、思い通りの距離でDの状態にすることだ。同じ大きさの力を与えても、穴の大きさによって渦輪の前進速度が変わる。これをうまく使えば、発射してからねらった位置に届く時間もコントロールできるかも知れない。

まとめ

これまでの考察をまとめ、次の仮説を立てた。

◇衝突距離をコントロールする条件

〈衝突距離を短くするには〉

・穴と穴の距離を小さくする。
・穴と穴の距離が小さいときは大きな力で撃ち出す。

〈衝突距離をのばすには〉

・穴と穴の距離を広げる。ただし、広げすぎると衝突しなくなる。
・穴と穴の距離が大きいときは大きな力で撃ち出す。

◇渦輪をつくるためのエネルギーについて

・発射時に与えられたエネルギーのうち、渦輪の回転に使われなかったエネルギーが前進エネルギーになる。
・大きなサイズの渦輪を作るためには、多くのエネルギーが必要になる。
・大きなサイズの渦輪には大きなエネルギーが蓄えられているので、前進速度はゆっくりでも壊れにくい。

指導について

指導についてつくば市立並木中学校 根本 陽子

 空気砲に関する4年間の継続研究で、空気砲から発射された渦輪の特性が明らかになっていた。「香りを目的地に飛ばす」ために空気砲を活用しようと、5年目にあたる今年度のテーマが設定された。確かな規則性を見出すには、条件制御を確実に行い、できるだけ多くのデータを得ることである。実験装置の工夫や、実験を行う場所の選定等、家族の支援も大きかった。準備が整い、時間をかけて実験し、データ収集をしっかり行うことができた。次の分析段階では、安易に結論につなげることをせず、1つ1つの条件を考慮しながら慎重に結論を得るようにした。2つの渦輪の衝突距離をコントロールするための条件として、穴の大きさ・2つの穴の間隔・押し出す力の大きさが考え出された。今後、さらにコントロール可能な空気砲を目指したいと継続研究への意欲も示している。

審査評

審査評[審査員] 金子 明石

 服部君は小学2年生のとき見たビデオで空気砲にとりつかれたみたいですね。6年生まで毎夏休みを利用して調べている。今年度の研究目標はユニークで面白いと思う。インターネットで名城大情報工学科の香りを届けるテレビの研究を知った服部君は、昨年度行った二つ穴空気砲の2個の渦輪が次第に向かい合わせになり正面衝突して壊れる現象を思い出し、衝突距離をコントロールできれば香りをある距離届けることができるのではと考え、この研究に取り組んだという。
 穴の大きさと穴と穴の距離については各3種類、箱に加える力を5種類設定、これらを組み合わせて5回ずつ測定し、最小と最大の数値を除いた3回分の平均を求め、組み合わせで得られる条件と衝突距離を調べている。グラフをつくり、考察していて、方法、分析とも科学的ですばらしい。今回の実験では一定の法則を見つけられなかったというが、ある条件で範囲を限定すれば規則性があるようなので目標に一歩近づいたと思う。めげずに頑張ってください。

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