第49回入賞作品 中学校の部
3等賞

植物の葉はどうして水をはじくのか?

3等賞

富山県砺波市立出町中学校1年
鍋澤 歩
植物撥水ハス顕微鏡
  • 富山県砺波市立出町中学校1年
    鍋澤 歩
  • 第49回入賞作品
    中学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の動機

 植物は自分で枝葉を動かすことができない。でも葉は表面で水をはじき、風で簡単に水滴を落とす。そこにどんな秘密が隠れているのか、興味をもった。

実験

〈1〉身の回りの水をはじく動植物を探し、それらの表面を観察する。

《結果》

ハスの葉:湿っぽく、スキーのワックスが塗られているような手触りがある。鏡のように全く平らではなさそう。双眼顕微鏡による観察では、1㎜の数十分の1ぐらいの凹凸がある。触るとフサフサしているので、短い毛のようなものが生えているかもしれない。
サトイモの葉:ハスの葉とは、全体の模様は違うが、だいたい同じように感じた。ハスの葉ほど細かくないが、1㎜の十分の1ぐらいの凹凸がある。
イネの葉:成長方向に、筋が平行にたくさん並んでいる(平行脈)。触ると刃物に触れたように、少し引っかかる感じがする。
アブラゼミの羽:ワックスが塗られたような手触りがある。

〈2〉身の回りの材料を使って、水と油のぬれ方の違いを観察する。

《方法》

材料はプラスチック(アクリル、ポリスチレン、ポリプロピレン、テフロン)、金属(銅、ステンレス)、セラミックス(アルミナ〈平ら〉、アルミナ〈少し粗め〉)、ガラスの9種類。それぞれを水道水、サラダ油の中に付けて引き上げ、表面に残るか、残らないかを観察した。

《結果》

残らなかった(はじく性質をもつ)のは、水の場合はプラスチックと金属、サラダ油の場合はテフロンとガラスだった。

《考察》

葉が水をはじく理由として、葉の表面の材料が関係しているのかもしれない。

〈3〉身の回りの材料を使って、水と油の滑り出す角度の違いを観察する。

《方法》

液体をはじく性質を数値化するため、滑り落ちる角度を測る実験道具を作った。実験2の材料を実験道具のボードの上に置き、水・油を1滴落とした。ボードをゆっくり傾け、水・油が滑り落ちる角度(3回実施した平均値)を記録した。

《結果と考察》

水の滑り出す角度は、水が残る表面の材料で大きかった。ただしアクリルだけは例外で、ガラスと同じような特性を示した。水・油が残らない材料は、水・油と接している面積が小さく、滑りやすいのではないか?

〈4〉表面の粗さの違いで、水の滑り出す角度の違いを観察する。

《方法》

材料はプラスチック(ポリプロピレン、テフロン)、ステンレス、アルミナ(平ら)、ガラス。それぞれを研磨紙(#40、#400、#1000)で研磨し、水滴の滑り出す角度を測った。研磨に垂直な方向での滑り出し角度も測った。

《結果と考察》

アルミナは硬くて研磨できず、実験できなかった。他のものは研磨することで滑り出す角度は大きく(水をはじく性質は弱く)なった。研磨に垂直な方向での滑り出し角度はいずれも、研磨方向の時より大きくなった。予想に反する結果だ。単なる傷ではダメで、ハスの葉の表面と同じ凹凸をつければ、水をはじく性質が強くなるのではないか?

〈5〉ハス、サトイモの葉の形状を再現して、水のはじきを観察する。

《方法》

寒天を使い、葉の表面の形・模様の型を取った。

《結果と考察》

水をたらすと馴染んでしまい、うまくいかなかった。

〈6〉シリコーン樹脂を使い、実験5を行った。

《結果と考察》

サトイモの葉はシリコーン樹脂とくっつき、表面を写し取れなかった。ハスの葉では表面の凹凸までうまく写し取れた。平らなシリコーン樹脂での水滴の滑り出す角度は50°、葉の表面を写し取ったシリコーン樹脂では、逆さにしても水滴は落ちなかった。ハスの葉の形・模様だけを作っても、水をはじく表面はできないことが分かった。では、身の回りの水をはじく材料の形状を写し取ったらどうなるだろう?

〈7〉身の回りにある水をはじくものの形状を再現して、水のはじきを観察する。

《方法》

雨傘とCD(記録面の方)の表面形状をシリコーン樹脂で写し取った。

《結果と考察》

CDに撥水スプレーをかけても、かけなくてもシリコーン樹脂をはがすことはできなかった。雨傘ではうまくいったので、水滴の滑り出す角度を測ったが、逆さにしても落ちなかった。

〈8〉細かい凹凸の表面に撥水スプレーを噴霧すれば、凹凸のすき間に水が入らずに、はじいてしまうハス葉のような表面ができるのではないか。

《方法》

#8000(砥粒1.0μm)と#15000(同0.3μm)の2種類の研磨紙にテフロンスプレーを噴霧し、滑り出す角度を調べた。

《結果と考察》

噴霧前後で変化はなかった。スプレーが凹凸を埋めてしまったものと考えられる。

〈9〉ハスの葉を細かく見るために、電子顕微鏡による観察を考えた。

《方法》

富山県工業技術センターからハスの葉の電子顕微鏡写真をいただき、観察した。

《結果と考察》

葉の表面に突起があった。大きさは5~15μm、それぞれ20~30μmの間隔で並んでいる。実験8では作れなかったが、研磨粒の大きさと水のはじき方に関係があるのではないか。ハスの葉の表面のワックスを取り除き、水をはじくか確認が必要だ。

〈10〉表面の凹凸の形状と水のはじき方の関係を、研磨紙と撥水スプレーを用いて調べる。

《方法》

#40(砥粒の大きさ400μm)、#400(40μm)、#1000(15μm)、#8000(1.0μm)、#15000(0.3μm)の研磨紙(約3㎝角で5枚ずつ)を用意し、それぞれに20㎝離れた所から撥水スプレーを1秒、5秒、10秒、20秒噴霧した。各研磨紙に水滴を落とし、滑り出す角度を計測した。

《結果と考察》

#1000の研磨紙に撥水スプレーを5秒(滑り出す角度5°)、10秒(同10°)噴霧したものが、ハスの葉(同5-10°)と同じように水をはじいた。#1000の研磨紙の砥粒の大きさ(15μm)がハスの葉の突起の大きさと似ている。しかし噴霧20秒では滑り出す角度が30°と、噴霧時間が増えるにつれて、やや水をはじく性質が弱まるのは、表面の凹凸が平坦になってしまうからかもしれない。

〈11〉ハス葉の表面のワックス状のものを取り除き、水のはじき方を調べる。

《方法》

ハスの葉(約3㎝角で5枚ずつ)をエタノール=光合成実験で葉の脱色に使ったのをヒント=に1分、5分、10分、30分、60分浸した。その後、それぞれの葉に水滴を落とし、滑り出す角度を計測する。

《結果と考察》

エタノールに5分以上浸けると、水をはじく性質がなくなっていく。脱色後のハスの葉に触ると、ワックス状のものがなくなっていた。表面の凹凸もなくなったのではないか。形状が変わっていないなら、撥水スプレーを噴霧すれば再び水をはじくはずだ。脱色後のエタノールにワックス状のものが溶けているならば、それを研磨紙に塗れば、研磨紙は水をはじくのではないか?

〈12〉水をはじかなくなったハスの葉に、撥水スプレーを噴霧するとどうなるか。

《方法》

実験11で一番水をはじかなくなったハスの葉に、撥水スプレーを20㎝の所から10秒間噴霧し、水滴の滑り出す角度を測った。

《結果と考察》

元のハスの葉のように水をはじいた。エタノールに浸しても、表面の凹凸形状に変化はない。葉が水をはじくためには、表面の形状だけでなく、ワックス状のものが表面に付いていることが重要だ。

〈13〉ハスの葉の表面から取り除いたワックス状のものを、研磨紙に塗ったときの水のはじき方を調べる。

《方法》

ハスの葉を一晩中浸して脱色した後のエタノールを、#1000の研磨紙に3滴たらして自然乾燥させた。また比較のために、何もしていないエタノールを3滴たらして自然乾燥させた#1000の研磨紙も用意した。スポイトで水滴を落とし、はじき方を観察した。

《結果と考察》

研磨紙に水は広がり、はじかなかった。濃度が薄いのではないか。

〈14〉実験13のエタノールを石油ベンジンに代えた。

ワックスは油に近いので、石油ベンジンの方がより溶けやすい。さらに、蒸発しやすく重ね塗りができるので、ワックス成分を多くつけやすいと考えたからだ。

《結果と考察》

ハスの葉を浸した石油ベンジンを1、3、5、10cc滴下したが、#1000の研磨紙は水をはじかなかった。

〈15〉実験14に引き続いて石油ベンジンの滴下量を増やした。

《結果と考察》

ハスの葉を浸した石油ベンジンの滴下量が、積算20cc以上になると水をはじいた。比較のためのエタノールは滴下量を増やしても、研磨紙は最後まで水をはじかなかった。
まとめ

ハスの葉は、表面の凹凸とそのサイズ、凹凸にコートされているワックス状のもの、これら全てが揃ってはじめて水をはじくのだ。

指導について

指導について砺波市立出町中学校 坪本吉史

 普段の授業での鍋澤さんは、ノートをまとめるのが得意な生徒です。板書したことを写すのではなく、わずかな時間に自分の頭で再構成して書き上げるところが、際立って優れています。
 本研究は、最初「水のはじき方」というテーマでスタートしていました。その後、「植物はどうして水をはじくのか?」とより限定的なテーマに変えて夏休み明けに提出してきました。この時点では、まだ、植物の葉がどうして水をはじくのか、十分検証したとは言えませんでした。そこで、仮説をいろいろな角度から検証するよう、実験を追加することを助言しました。
 鍋澤さんが素晴らしかったのは、助言を与えてからの研究に対する集中力でした。10の助言に対して、彼女の場合は15にも20にもして返してきました。授業ノートと同じく、自分の頭で再構成しているのでしょう。そして1日中研究しているのではないかと思うような粘り強さ。彼女と一緒に研究できて、幸せな時間を過ごすことができました。

審査評

審査評[審査員] 小澤紀美子

身の回りにある植物の葉が水をはじく現象に興味を持ち、何種類かの植物の葉を比較して「ハスの葉」が一番水をはじくことを見いだして、仮説を立て実験し、その結果をフィードバックさせて仮説を修正し、さらに実験を重ねて結果を導いています。葉の表面に水をはじく材料があること。葉の表面に凹凸や毛などの形状によること、と2つの仮説を発展させ、葉の表面の凹凸については工業技術センターで電子顕微鏡による観察と写真の入手により見いだし、さらに、表面の凹凸の形状と水のはじき方の関係を研磨紙と撥水スプレーを用いて実験しています。そしてハスの葉と同じサイズの凹凸を持つ#1000の研磨紙のみがハスの葉と同じように水をはじく性質を示したことを確認して、「ハスの葉が水をはじくには、表面の凹凸とそのサイズ、凹凸にコートされているワックス状のものがすべて揃わないとはじかない」と結果を導き出しています。他の植物の葉についても研究を広め、さらに「水も油もはじく表面」「水も油もなじむ表面」作成に挑戦してください。

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