第51回入賞作品 中学校の部
2等賞

メントス・ガイザー発生の原因を探る partII

2等賞

新潟県妙高市立新井中学校メントス・ガイザーグループ 3年
金沢 愛輝・古川 創
  • 新潟県妙高市立新井中学校メントス・ガイザーグループ 3年
    金沢 愛輝・古川 創
  • 第51回入賞作品
    中学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の動機

 インターネットでも話題になった「メントス・ガイザー」現象=ペットボトルに入ったコーラの中に「メントス」(ソフトキャンディをハードキャンディで包み糖衣がけしたお菓子)を投入すると、急激に気化した炭酸ガス(二酸化炭素)の泡が一気に数mの高さまで間欠泉(ガイザー、geyser)のように吹き上がる現象=について、その発生や仕組みについて昨年研究した。今年も引き続き取り組んだ。

昨年の研究で分かったこと
メントス・ガイザーは炭酸飲料中の二酸化炭素量にかかわらず、ダイエットコーラなどの特定の炭酸飲料でよく発生する。
炭酸飲料に投入する物体は、表面が多孔質であれば反応が起きる。物体が溶けて反応を起こすのではない。溶けない軽石でも反応が起きる。
溶液の温度とメントス・ガイザーとの関係はない。
コーラ200ml+αの量に対してメントス1個で最大限の泡を発生させることができる。コーラの量が増えれば、その分のメントスが必要になる。
炭酸飲料中の甘味料アスパルテームは、同じ糖度の砂糖の2倍の泡を発生させ、噴出を高く維持するような細かく割れにくい泡を発生させるのに役立つ。
今年の研究

 ダイエットコーラのアスパルテーム以外の成分、特にカフェインとメントス・ガイザーの関係を明らかにする。メントス以外の物質として岩塩による発生や、物質表面のざらつきの程度との関係を検討し、メントス・ガイザーの発生の仕組みを追究する。

カフェインの含有が泡の発生に関係するか

《実験1》

カフェイン・ゼロのコーラ(「コカコーラ・ゼロ・フリー」)で泡の発生を調べる。

〈方法〉

比較のため、カフェイン入りの「コカコーラ・ゼロ」、砂糖の入った「コカコーラ」も用意。500mlメスシリンダーにコーラ100mlを入れ、メントスを1個投入した時の泡の発生量(体積)を測定した。

《実験2》

カフェイン量が2倍のコーラで泡の発生を調べる。

〈方法〉

100mlあたりのカフェイン量が約10mlの「ペプシコーラ」と、約20mlの「ペプシ・ストロングショット」での泡の発生量を測定した。

〈結果〉

「ストロングショット」の方が少なかった。

〈考察〉

実験1、2から、カフェインの有無、含有量は、メントス・ガイザーの泡の発生に関係しない。

メントスの代わりに岩塩を入れると泡が発生するか

《実験3》

250mlのコーラと完全に反応する岩塩量を調べる。

〈方法〉

コーラ250mlに対して、ピンク岩塩を0.2gから1.0gまで、0.2gずつ増量して投与した時の泡の発生量を測定した。

〈結果〉

0.6g以降は泡の発生量はほぼ横ばいとなったので、250mlのコーラは0.6gの岩塩と完全に反応して泡を発生する。しかし岩塩による泡は、メントスによる泡に比べて透明感があり、泡粒が粗く、早く消えやすいようだ。

《実験4》

メントスと岩塩での泡の発生量、泡の消えるまでの時間を比較する。

〈方法〉

100mlのコーラで、発生する泡の体積、物体を投与してから泡が消える(コーラの液面が見える)までの時間を記録した。岩塩は1.0g、メントスは1個と2個の場合を測定した。2個にしたのは岩塩も250mlコーラの場合の約2倍の量を使うためだ。

〈結果と考察〉

メントスの方が泡の発生量は多く、泡の消えるまでの時間も長い。岩塩の威力は弱いようだ。しかし同じメントスでも、泡の消えるまでの時間は1個の時より2個の時の方が早い。

「塩析」という現象がガイザー発生に関係するか

《実験5》

コーラに食塩を入れると二酸化炭素が気化する現象は「塩析」による--との説もある。岩塩・ガイザーも、「塩析」という化学変化によるものか確認する。

〈方法〉

粉末状の食塩に代わり飽和食塩水をコーラに入れて観察した。

〈結果〉

入れた瞬間は細かな泡がメスシリンダーの底からわずかにわき上がるだけで、測定できるほどの泡は発生しない。岩塩・ガイザーは化学変化ではなく、物理的な現象だ。

メントス表面の様子と現象の関係

《実験6》

ざらつきの程度と泡の発生に関係はあるのか。

〈方法〉

耐水性ヤスリ(120~2000番の12段階)を、同じ面積がコーラに接触するよう消しゴムに巻いて投入した。〈結果〉泡の発生量はそれぞれによく、メントスでの場合と変わらない。ヤスリの目が細かくなるほど泡も細かくなるが、発生量との関係は断定できない。

《実験7》

感覚的だった泡の「細かさ」「粗さ」を、同じ面積での泡の数としてとらえ比較する。〈方法〉500mlメスシリンダーに方眼OHPシートを巻き、方眼に入った泡を数える。

〈結果〉

ヤスリの目が細かいほど、細かい泡が発生した。しかし、メントスや岩塩の時の泡より粗く、メントスの泡はさらに岩塩よりも細かい。

《実験8》

ガイザー終了後のメントスは糖衣がなくなっている。糖衣をはぎとった場合の泡の発生を調べる。

〈方法〉

糖衣を水で洗い流し、デシケーターで乾燥させたものを投入する。

〈結果と考察〉

糖衣なしの場合は泡の発生量は少なく、発生時間も短かった。ガイザーはメントスの糖衣が取れながら泡が発生しているのだ。会社に聞くと、糖衣の原材料は粉砂糖だという。

△糖衣をはいだメントスで発生した泡
△糖衣をつけたままの泡

 

《実験9》

糖衣の質量と泡の発生量に関係はあるのか。

〈方法〉

メントス1個分の糖衣は0.2gだ。0.2g以上の、糖衣6個分までの粉砂糖を入れ、泡の発生量、発生時間を測定する。

〈結果と考察〉

泡の発生量、時間とも増えたが、メントス1個分の発生量よりも少ない。メントスの糖衣には、少ない質量で大量の泡を発生させるようなつくりがあるのではないか。

《実験10》

粉砂糖は他の砂糖よりも泡の発生に有効か。

〈方法〉

コーヒーシュガー、ザラメ、グラニュー糖、白砂糖と泡の発生量、発生時間を比較した。

〈結果〉

粉砂糖の結果は必ずしも他の砂糖に比べてよくない。粉砂糖そのものが泡の発生に関係しているのではない。

《実験11》

糖衣の構造。メントスは「ソフトキャンディとシュガーコーティングの水分がハードキャンディに徐々に移行し、砂糖が再結晶化していきます」という。

〈方法〉

断面を顕微鏡で観察する。

〈結果〉

糖衣は粉砂糖が再結晶して20層もの層状構造をしていた。ハードキャンディ部分も再結晶していた。
〈仮設〉コーラに触れると、ざらついた表面で泡が発生する。粉砂糖のもろい層状構造は表面から順にはがれ落ち、新しい粉砂糖の面が下から現れ、さらに泡を発生させる。泡の発生はすべての糖衣がはがれ落ちるか、コーラの二酸化炭素がすべて気化するまで続く。

《実験12》

メントス糖衣の表面積を増やすと反応時間はどうなるか。実験4で、メントス2個の場合に泡の発生量は多かったが、反応時間は短くなった。反応する面積が倍になったため、泡の発生時間が半分になったと考えられる。これは【反応時間=コーラ中の気体量/メントスの個数】の関係になるのではないか。

〈方法〉

コーラ250mlにメントス1~4個を入れる。

〈結果〉

きれいな反比例のグラフにはならなかったが、メントスをたくさん入れれば泡が早く消えることは証明できた。

「コカコーラ」よりも、ダイエットコーラとして砂糖の代わりに甘味料アスパルテームが含まれる「ゼロ」「ゼロ・フリー」の方がたくさん泡が発生した。「ゼロ」と「ゼロ・フリー」では泡の発生量に大きな差はなかった。

まとめ

 メントス・ガイザーの発生について分かったことは、▽泡の発生原因として、炭酸飲料成分のカフェインは関係がない。▽岩塩でも同じ現象は起きるが、岩塩表面のざらつきによる物理的な現象が原因で、化学変化である塩析とは無関係だ。▽投入する物体の表面のざらつきの度合いが泡の大きさに関係する。粗い表面からは大きな泡が発生し、崩れやすい。▽コーラとの反応に関係するのは、メントスの糖衣の表面積である。▽糖衣は層状構造で、コーラとの反応で層が順にはがれ落ち、新しい層面が出現することで、さらに泡が発生し続ける。▽メントスの個数と泡の発生時間には反比例の関係がある。

指導について

指導について妙高市立新井中学校長瀬美香子

 この研究は昨年度佳作をいただいた研究の継続研究です。メントス・ガイザー発生の条件となる様々な要因はまだまだあり、解明し切れていないと感じていた二人は、今年度も迷うことなく強い意欲を持って「partII」に取り組むことを決めました。
  今年度は未だ残っている課題を整理し、「できるだけ正確なデータによる現象の解明」を目指しました。コーラの液を入れるにしても、メントスを落とすにしても、条件統一とコツが必要なため、思った以上に研究は困難を極めました。しかし、毎日のように大きな声で意見を交わし、研究の行き詰まりや実験の失敗を粘り強く克服していきました。
  今回このような素晴らしい賞をいただき、子ども達は大変喜んでいます。また後に続く後輩達に大きな勇気を与えてくれました。これからも生徒と共に身のまわりの事象の中で見いだした疑問を積極的に解明していきたいと思います。

審査評

審査評[審査員] 大林延夫

 ダイエットコーラにキャンディー(メントス)を放り込むと泡が吹き上がる、それだけの事だが、ネットの世界では有名な話題らしい。理由についても諸説があるようだが、その謎解きに挑戦した。成分の異なるコーラを比較する。キャンディーの代替物を探索する。吹き上がる泡を定量化するために、その体積を指標としたが、同じ泡でも大きさや消え方に違いがある。実験を進めると新たな謎が出現し、その謎解きに挑戦する。読み進むと実験の楽しさが伝わってきて、結果を見るのが待ち遠しい。研究の醍醐味を実感させてくれる優れた内容である。
  2年をかけて取り組んだ結果はしかし、推理小説の結果のように、なるほど、とすべてを納得させてはくれていない。少し既存の諸説の検証にとらわれ過ぎたのではないだろうか。およその結論は見えてきたが、何故ダイエットコーラなのか、何故メントスなのか、最後にその答えを実証する組立実験が欲しかった。

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