第45回入賞作品 中学校の部
文部科学大臣奨励賞

不思議いっぱい沖縄のクワガタムシ2004

文部科学大臣奨励賞

沖縄県南風原町立南風原中学校3年
後藤 由紀子
  • 沖縄県南風原町立南風原中学校3年
    後藤 由紀子
  • 第45回入賞作品
    中学校の部
    文部科学大臣奨励賞

    文部科学大臣奨励賞

研究の動機
 私は保育園の頃からクワガタムシが大好きでした。幼稚園の頃にクワガタムシがいっぱいいる西表島に転校したので調べることにしました。
小学校では、1年生の時に4種類のクワガタムシを競走させたり、2年生では大きさや力比べ、3年生では好きな木について沖縄本島の山原、
南大東島、北大東島、西表島で調べ、4年生では好きな食べ物調べ、
5年生では大分と沖縄のクワガタムシの比較、6年生では6年間の研究の
まとめなどをしました。中1の時にはまだ出会っていない種類を探したり
中2では木の高さによって種類が変わるのかを調べました。
中3の今年は、大きさの違いは何からくるのかを調べたり、絶滅の心配にあるヨナグニマルバネクワガタに是非出会いたいと思います。


まだ出会ったことのないクワガタムシに出会う
 これまでに私は、八重山、大東島、沖縄本島等で17種類、
大分で4種類のクワガタムシに出会ってきました。でも残念なことに、
与那国島にヨナグニマルバネクワガタを、西表島にヤエヤマコクワガタを探しに行ったのですが、出会えませんでした。そこで今年も、まだ
出会ったことのないクワガタムシを探しに行きたいと思います。


ヤエヤマコクワガタはどこにいるのか

 2001年夏、これまで3匹しか採れたことのないとても珍しいヤエヤマコクワガタを、東京で、それも生きているのに出会うことができました。とてもうれしかったです。でも、やっぱり
西表島の森の中でぜひ会いたいと思い、02年は仲間川の大富林道で、03年はマリュウドの滝の展望台、カンビレーの滝で探しましたが出会うことができませんでした。
そこで、04年は大富林道と祖納岳で探してみることにしました。探し方は、ライトトラップ
(水銀灯、ブラックライト)を仕掛けます。
 ヤエヤマコクワガタは西表島だけで見られます。
とても珍しいクワガタムシで、今まで3匹しか採集されていません(82年7月16日堀繁久氏、94年8月 23日小森嗣彦氏、00年5月31日土屋利行氏)。3匹とも電気に飛んできました。
土屋さんが大富林道で採集したメスが卵を産み、それが成虫になっています。
私もぜひ西表島の山の中で出会ってみたいです。


観察日記
 1日目(8月13日)…標高200mを超える祖納岳の展望台でライトトラップをすることにしました。白いシーツに水銀灯やブラックライトをあて、ヤエヤマコクワガタが来るのを待ちました。
台風の影響で風が強かったせいか、あまり虫が集まりませんでした。
もちろん、ヤエヤマコクワガタは来ませんでした。

  2日目(同14日)… 大富林道の水源地でライトトラップを
することにしました。ここは3匹目のヤエヤマコクワガタが採れた場所で、02年にも挑戦した場所です。昨日と違って風がなく、
たくさんの虫が集まってきました。何度かクワガタムシを見た時は「おっ!」と思いましたが、全部サキシマヒラタクワガタでした。途中ヨナグニサンが飛んできました。さすがに、
いつ見ても大きな蛾だなと思いました。
  残念ながら今年もヤエヤマコクワガタに
出会うことはできませんでした。


これまでのリュウキュウコクワガタの調査から、(1)標高200以上の高さに多くいる
(2)木の高い所が好き(3)6月下旬に出現数が多くなる  という生態が
少しわかってきました。ヤエヤマコクワガタがその仲間なら似たような生態ではないかと
思うので、この生態をポイントに、またいつか西表の山奥で挑戦してみたいと思います。

ヨナグニマルバネクワガタは絶滅したのか

 与那国島は、石垣からさらに127kmの洋上にある人口1800人あまりの島です。台湾までは
約125km、晴れた日には台湾がかすかに見えることもあるという日本最西端の島です。地形は
起伏に富み、周囲は切り立った断崖が続き、雄大で男性的な景観の島です。そこには世界最大のヨナグニサン、おとなしく小型でタテガミがフサフサした与那国馬などの天然記念物に
指定された生き物がいます。


 そんな島に絶滅しそうなヨナグニマルバネクワガタとヨナグニネブトクワガタがいます。
01年10月に探しに来た時は、ヨナグニネブトクワガタに出会うことができましたが、
残念ながらヨナグニマルバネクワガタには出会えませんでした。そこで、03年10月24026日に再びヨナグニマルバネクワガタを探しに与那国島を訪れ、満田原林道、インビ岳で探すことに
しました。探し方は、シイの木を懐中電灯で一本一本見ていくことにします。

観察記録
 1日目…与那国島に着いてすぐ満田原林道側のシイ林に入りました。最初から見つかるわけがないと思いました。木の上に登ってみたり、下に落ちている木を斧で削ってみたりしました。よくゴキブリと間違えて喜んでいました。10月なのに汗だくで探しましたが、やっぱり見つかりませんでした。
  2日目午前… 新城さんの所に行きました。ヨナグニマルバネクワガタの標本をたくさん見せてもらいました。ヤエヤママルバネクワガタより大アゴが短く、歯の縦の厚みがなく、体全体が太い感じがしました。今とても少なくなっているようには見えないぐらいたくさんの標本がありました。以前はたくさんいたということがわかりました。しかし新城さんの話によると、ここ2年ぐらい見つかったという話を聞いていないそうです。こんなにたくさんいたのに人の手が加えられてこんなに簡単にいなくなるなんてとても考えられません。でも私も生きているのに会いたいのでがんばって探したいなと思いました。
  2日目午後… まず、満田原林道沿いの山に行きました。そこは前にも来てヨナグニネブトクワガタの幼虫を見つけたところでちょっと期待を持っていました。でも頑張ったかいがなく、期待していた木にはいませんでした。父がちょっと奥の方へ行ってみると木に大きな穴が開いていて中を見てみると、シイのフレークがたくさん詰まっていました。これはいそうだなと思いました。そこで木に登ってビニール袋にその中のフレークを少しずつ取り出していきました。でも残念ながら、まだ下にはたくさんのフレークが残っている途中で手が届かなくなりました。この下にいるかもしれないと思ったけど、木の底の方を壊さなければならなくなるからあきらめて、フレークを少しずつ確認しながら戻しました。フレークを戻しながら、こういう場所を守っていかなければヨナグニマルバネクワガタは生きていけないなと思いました。
  2日目夜…新城好美さんも一緒に探しに行ってくれました。新城さんはヨナグニマルバネクワガタのいる場所をよく知っている人で、もしかすると会えるかもしれないと期待しました。まずインビ岳のシイ林に入りました。大きな木を懐中電灯で一本一本見ていきました。大きな木はほとんど中身がなかったり、あってもフレークが乾ききっていて、いる様子がなくとっても残念な感じがしました。新城さんが言うには、ここのシイ林には以前たくさんヨナグニマルバネクワガタがいたが、今では乱獲と森の乾燥化が進んだため、絶滅しそうになっているという。残念ながら2時間ぐらい探したけど、1匹も見つかりませんでした。次に満田原林道のシイ林に行きました。ここでもフレークが乾ききっていて、見つけることができませんでした。
ヨナグニマルバネクワガタは絶滅しているのではと思いました。父の話では、昆虫を採集するぐらいでは、基本的に昆虫は絶滅しないそうです。 では、なぜヨナグニマルバネクワガタが絶滅の危機にさらされているかと言うと、(1)採集するだけではなく、棲み家ごと根こそぎ奪っていくから(2)公園、道路、牧場などの開発のため森の風通しが良くなり、森林内の乾燥化が進んだため、幼虫の育つ環境が少なくなった  この2点が考えられます。どちらともヨナグニマルバネクワガタの棲息環境を破壊、あるいは圧迫し、棲みにくい環境にしているからだと思われます。


ついに出会ったヨナグニマルバネクワガタに!

04年10月23、24日に4度目のヨナグニマルバネクワガタ探しに行くことにしました。
 後日、ヨナグニマルバネクワガタの雄と雌が見つかったそうです。でも、このままでは、いつの日か私たちの目の前に二度と現れなくなってしまうかもしれません。世界最大の蛾、
ヨナグニサンも一時期絶滅しかけたそうです。その時は養殖施設などを作り、今はたくさん見られるそうです。ヨナグニマルバネクワガタも同じように保護を考えていかなくてはいけない
時期にきているのではないでしょうか。


荒らされた棲み家

 与那国島についてすぐイタジイ林に入りました。それは、荒らされた木のビデオ撮影をするためです。新城さんの話によると、この木は以前ヨナグニマルバネクワガタがたくさん発生していたそうです。そして、新城さんがたくさんの幼虫を放して増やそうとしていた時に人に見つかり、幼虫だけではなく木の洞の中のフレークごと持って行かれたそうです。このようなことをすると幼虫の棲む場所がなくなります。そうやってヨナグニマルバネクワガタがだんだん少なくなって絶滅寸前まで追い込まれてきたのです。

ヨナグニマルバネクワガタは絶滅していなかった!

 ヨナグニマルバネクワガタを探すのも今年が最後だと思っているので、絶対に会いたいという思いで与那国島に来ました。3年前(私が与那国島に観察に行けなかった年)に結構発生したという話を聞きました。マルバネクワガタは3年で成虫になるので、今年はその3年前に産んだ卵から孵った幼虫が成虫になって出てくるのではないかと思い、絶滅してなければ今年必ず出会えると思いました。
  今年は、あまり人に知られていないポイントに入って、いそうな1本のイタジイの木に絞り、時間をおいて定期的に見に行くことにしました。日が暮れた頃よく出てくると聞いたので、午後7時010時までの間探す計画を立てました。
そのポイントには、まだ明るい午後6時頃入りました。暗くなるまでの1時間がとても早く感じられました。7時になったので1回目の観察に行きました。木の下の方を中心に木の隅々まで探しました。でも、残念ながらいませんでした。ちょっと早すぎるのかなと思い次に期待しました。何回も行っていないので、やはり会えないのではないかと思い、とても心配な気持ちになり始めていました。15分おきに行っていたので、間をあけた方がいいのではないかということで、 30分ぐらい間をあけてみることにしました。その間、別の木も見て回ることにしました。でもいませんでした。しばらくして、あのイタジイの木に行ってみました。下の方から隅々まで探して見つからずがっくりきている時、ちょっと振り返ると木の下の方に茶色に光るものがありました。まさかと思いよく見てみると、それはまぎれもなくヨナグニマルバネクワガタでした。それも大型でいわゆる大歯型でした。その時はうれしすぎてあまり言葉も出てきませんでした。あとからやっとこの4年間の苦労が報われたと思うと同時に、絶滅していなくて本当によかったと思いました。



 この4年間ヨナグニマルバネクワガタの調査をしてみて感じたことは、棲息環境は厳しくなり、数も本当に少なくなっているということです。私たち人間がこのような生き物たちを窮地に追い込んでしまったのではないでしょうか。でも、今ならまだ間に合うかもしれません。私たちが行動をおこせば、絶滅しそうな小さな命のために……。
感想

 これまで私は、幼稚園から中3まで10年間、家族の力を借りてクワガタムシのことを調べてきました。この10年間は、とても短いものでした。クワガタムシのことを調べて本当にいろんなことを学びました。
  10年間の中で一番印象に残っていることはクワガタムシの1日の生活調べです。夕方から朝まで起きてクワガタムシを観察することは、もう二度とない体験だと思いました。
  大変だったことは、ヤエヤマコクワガタを探しに、西表島の山奥にあるマリュウドの滝に重たい荷物を運び、キャンプを張りながら観察したことです。残念ながら見つけることはできませんでしたが……。
 苦労したことは、ヨナグニマルバネクワガタを探しに5年、6年、中2の3回、与那国島に行ったけど見つからなかったことです。もう絶滅してしまったのではないかと心配しましたが、2004年10月に再び与那国島に行き、やっと憧れのヨナグニマルバネクワガタに出会うことができました。絶滅していないことがわかってほっとしました。
 今年の研究は、最後かもしれないと思い、疑問に思ったことをいろいろ調べてみました。その中でも特に難しかったのが、クワガタムシの大きさの原因を調べる実験でした。栄養を含んだマット作りの失敗や、幼虫が思ったほど生まれなかったり、途中で死んでしまったりして、あまりよい実験結果を出すことができなかったことです。生命を扱う難しさを感じました。機会があればもう一度挑戦してみたいと思っています。

指導について

指導について後藤岳二

 今回の作品は、小学校1年生からはじめた沖縄に生息するクワガタムシの研究のここ1年間の記録になっている。
  今回は、(1)この1年の定点観察、(2)室内での飼育実験、(3)未遭遇のクワガタムシの観察記録となっている。
 定点観察は、環境との関わりを調べた。今年は、多発した台風のため観察に影響がでたが考察できるデータは収集することができた。飼育実験は採卵の数の少なさや、飼育マットの失敗、幼虫の死亡など厳しい条件下の実験であったが、残った個体から課題を残しながらも考察することができた。未遭遇のクワガタムシは、絶滅が危惧されているクワガタムシであったが、やっと出会うことができた。絶滅こそ免れているが厳しい状況は変わっていない。
  これまで、観察実験してきていろいろな不思議の答えが見えてきている。これからは、人に伝える活動も進めながら、また、不思議の答えを見つけていくことを期待する。

審査評

審査評[審査員] 高家博成

 昨年に引き続きクワガタムシの観察記録の大作が送られてきて、大変うれしく思いました。小さいときからの観察日記を拝見し、私は驚嘆しています。
  5年間にもわたり、毎月のように調査した記録はしっかりした生態のデータとなります。昆虫の活動にとって大切な気温や地温の記録も、もれはありません。
  木の高さによる生息種の違いの研究は、ちょっと困難が伴ったようです。トラップの工夫がいるかも知れません。
  餌の栄養分の違いによる大きさの変化の研究は、むずかしそうですね。しかし、これは少なくなっている沖縄のクワガタムシの保護の基礎となる研究でしょうから、将来もぜひ研究を続けてください。

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