第54回入賞作品 小学校の部
文部科学大臣賞

砂が作る「泡」の研究

文部科学大臣賞

愛知県刈谷市立平成小学校6年
伊東実優・高田萌々香・山田優萌菜
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    伊東実優・高田萌々香・山田優萌菜
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はじめに

 小学5年の理科「流れる水のはたらき」の授業で、砂場にホースで水を流し、砂を削りながら川のように蛇行していく様子を観察した。砂の上を流れる水は少しずつ泡立ち、下流に行くほど、泡がクリームのようにたまっていた。どうして“クリーミーな泡”ができるのか。研究することにした。

予備実験

 インターネットで検索すると、次のようなことが書かれていた。
 「砂場のアルカリ性の成分が溶け出した『アク(灰汁)』でしょう。石けんもアクと油脂からできているくらいで、アクは泡立ちます。砂場には消毒剤も撒いてあるでしょう…」
 その内容が正しいとは限らない。薬の入っていない、川や山などの自然の砂は泡立たないのか。私たちは、実験で確かめることにした。

実験

 川砂を、学区内の逢妻川(あいづまがわ)の河原から取ってきてバケツに入れ、水を入れて、泡立つか調べた。泡立った。

実験

 山砂をホームセンターで買ってきて、調べた。泡立った。
 使った川砂、山砂に薬は入っていないが、アルカリ性の成分が入っているのかもしれない。

実験

 砂と水を混ぜ、その液体がアルカリ性かどうか、「万能試験紙」(pH試験紙)で調べた。標準変色表と色を比べた結果、液体は「中性」で、アルカリ性ではなかった。
 これからの研究で“真実”を明らかにしたい。その方向を定めるために、砂が泡立つ様子を詳しく観察することにした。

実験

 砂場の砂や花壇の土の上に水を流し、泡立つかどうか観察した。砂の場合は、土と比べて▽細かな泡がたくさん立つこと▽その泡がなかなか消えないことを発見した。
 次のように、「研究の目的」と「追究の2本柱」を決めた。

〈研究の目的〉

砂はなぜ細かな泡がたくさん立ち、消えにくいのか。科学的に明らかにする。

〈追究の2本柱〉

(1)細かな泡ができるわけ
(2)泡が消えにくいわけ

追究1:砂はなぜ、細かな泡がたくさん出るのか

 理科室の水槽に注目した。ろ過器の水が流入している水面下では、泡が立っている。水の勢いが、細かな泡が出る原因ではないか。

【実験1】

水を勢いよく注入して観察する。

《方法》

ビーカーに砂と水を入れ、注射器で水を勢いよく注入した。その時の水の様子をVTRで録画し、分析した。

《結果》

水中に泡はできたが大きく、すぐに消えた。水面に残ることはない。水が砂粒にぶつかった時に、泡ができるのではないか。

【実験2】

水が砂粒とぶつかっている様子を観察する。

《方法》

水流による土砂の堆積(たいせき)の様子を観察する「堆積実験装置」を使った。水槽に砂を入れ、勢いよく水を流した。

《結果》

水が砂粒にぶつかり、大きな泡が生じたが、細かな泡はほとんど出なかった。水の勢いは、細かな泡の発生原因ではない。砂粒の間の空気が泡になるのではないか。

【実験3】

砂に静かに水を入れて、細かな泡が立つか調べる。

《方法》

ろうと(漏斗)を使い、水を入れた。

《結果》

あまり多くはないが、細かな泡ができた。砂の中に“泡の素(もと)”があったのだ。土でも泡立ってよいはずだ。

【実験4】

土と砂に水を入れて、泡の発生量や水のしみ込み量などを調べる。

《方法》

砂場の砂、花壇の土の大きさを5mm目の「ふるい(篩)」を使ってそろえる。
泡の発生量:水面をデジカメで撮影し、プリントアウトする。プリントに5㎜方眼シートを重ね、泡の部分のマス目を数えて、水面全体に対する泡の割合を求めた。

《結果》

砂の場合、10回平均の泡の発生量は約40%。土では約10%だった。
水のしみ込み量:メスシリンダー(200ml)に砂100ml、土100mlをそれぞれ入れて、水100mlを静かに注いだ。

《結果》

砂の場合、10回平均の水がしみ込んだ量は26ml、土では14mlだった。
 これらのことから、土よりも、砂粒の間に多くの空間があり、それによって泡がたくさん発生することが分かった。しかし、できた泡は大きく、“クリーミーな泡”とは言えない。
 たまたま近くの幼稚園の砂場で、子どもたちが水を使って遊んでいた。手元に“クリーミーな泡”が出ているので聞いてみると、「水と砂を手で混ぜるんだよ」と教えてくれた。

【実験5】

水と砂を混ぜた時の「クリーミー度」を調べる。
クリーミー度:“クリーミーな泡”とは、細かな粒がたくさんそろった泡のこと。ここでは直径0.5mm以下の泡を「細かな泡」とする。0.5mmのシャープペンの芯をスケール替わりに顕微鏡(40倍)の視野に入れて泡を観察し、芯以下の細かな泡が全体に占める割合(%)を「クリーミー度」とする。

《方法》

バケツの中に、底からの高さ5cmまで砂を入れ、さらに高さ10cmになるまで水を静かに入れる。次に、水と砂を手で10秒間かき混ぜ、発生する泡を顕微鏡で観察しながら「クリーミー度」を計測した。

《結果》

水と砂を混ぜる前のクリーミー度(10回平均)は約50%、手で混ぜた後は約90%だった。でも、なぜ手で混ぜると泡は細かくなるのか。砂粒が泡を砕いて、細かな泡にしているのでは?

【実験6】

砂が泡を細かくするのか調べる。

《方法》

水100mlに洗濯糊(のり)を少し(0.5ml)入れ、電動泡立て器で10秒間かき混ぜる。砂がある場合とない場合とで、泡のクリーミー度を比較する。

《結果》

砂なしの場合のクリーミー度(10回平均)は約30%、砂ありの場合は約90%だった。明らかに砂と一緒にかき混ぜた方が、泡は細かく、クリーミーになっていた。でも、同じような粒は、土にも含まれているはずだ。

【実験7】

土と砂を構成している粒の大きさの割合を調べる。

《方法》

水分を除去するために、加熱、乾燥させた土と砂を、「ふるい」を使って3種類の粒の大きさ=粒大(1.7mm以上)、粒中(0.35~1.7mm)、粒小(0.35mm以下)=に分ける。それぞれの重さを計量し、構成の割合を比べる。

《結果》

砂は「粒中」が90%近くを占め、“粒ぞろい”であることが分かった。これなら、大きさのそろった、細かい“クリーミーな泡”ができるはずだ。でも、土にも「粒中」が60%ほど含まれているが、砂ほど細かな泡はできない。これはなぜか?
 飲もうとした“コーヒーの泡”に注目した。とてもクリーミーな泡”だ。

【実験8】

豆を挽(ひ)いたコーヒーの粒に水をかけ、顕微鏡で観察する。

《結果》

粒の表面に細かな泡がびっしり付いていた。砂も同様か?

【実験9】

砂に水をかけ、顕微鏡で観察する。

《方法》

ペトリ皿に砂を入れ、水をかけて観察した。

《結果》

粒の間に大きな気泡があった。砂粒の表面にも細かな気泡を見つけた。どの砂粒の表面にもあるわけではないが、砂の細かな泡の原因の一つかもしれない。

〈発見〉砂粒の表面に「細かな気泡」を発見!

〈追究1のまとめ〉

 砂粒の間には26%のすき間があり、それを空気が埋めている。そこに水が入ると、空気は「大きな泡」となって出てくる。「大きな泡」は砂粒の動きによって、大きさのそろった「細かな泡」になる。砂粒の表面に付く細かな気泡も、「細かな泡」の原因だ。

追究2:砂の泡はなぜ、消えにくいのか

 大きな泡は早めに消え、最後は、細かな泡が残る。砂の細かい泡は元々、消えにくい性質をもっているのか?

【実験1】

砂の泡が消えていく様子を、顕微鏡で観察する。

《方法》

顕微鏡にVTRカメラを取り付けて撮影する。泡の大きさを3種類=直径1.0mm以上、0.5~1.0mm、0.5mm以下=に分けて、泡の消えるまでの時間を測定する。

《結果》

直径が1.0mm以上の「大きな泡」が消える時間(10回平均)は約30秒と短く、0.5~1.0mmの「中くらいの泡」は約230秒、0.5mm以下の「細かい泡」は約320秒と極端に消えにくかった。

【実験2】

砂の「細かい泡」がつぶれるまで、詳しく観察する。

《結果》

「細かい泡」がつぶれた後に、「膜」のようなものが残った。土では確認できなかった。

【実験3】

「膜」を水に溶かして、顕微鏡で観察する。

《結果》

倍率100倍で、細かな砂粒を確認した。この砂粒が「膜」を作り、泡を消えにくくしているのか?

【実験4】

細かい砂粒を混ぜた水で、泡の消え方を調べる。

《方法》

【追究1・実験7】の「粒小」(0.35mm以下)1gを水10mlに混ぜて注射器に入れ、割れる限界までふくらませる。その時の「泡」の直径と割れるまでの時間を測る。

《結果》

何も混ぜない水と、ほとんど差はなかった。顕微鏡で見ると、混ぜた砂の「粒小」は、「泡(膜)の粒」よりも大きく、光っていた。「泡の粒」は砂粒ではなく、もっと小さな、水中に浮かぶ粒ではないか。

【実験5】

砂と水を混ぜ、沈殿する様子を観察する。

《方法》

コーヒーのビンの中に砂と水を入れ、混ぜ合わせてから、静かに置いた。

《結果》

ほとんどの砂はすぐに沈殿したが、上ずみ液はにごっていた。目に見えない「細かな粒」が、水中に漂っているのかも。翌日ビンを見たら、沈殿した砂の上に「粘土」のようなものが、さらに沈殿していた。粘土が「膜」を作っているのかも。粘土に泡を強くする効果があるのか。

【実験6】

「粘土」を混ぜた水で、泡の消え方を調べる。

《方法》

市販の「彫塑(ちょうそ)粘土」1gを水10mlに混ぜて注射器に入れ、割れる限界までふくらませる。その時の泡の直径と割れるまでの時間を測る。

《結果》

泡の直径(10回平均)は約7mm、割れるまでの時間は約35秒。いずれも何も混ぜない水(直径約3mm、約7秒)よりも大きな泡となり、長時間消えなかった。粘土が泡を強くしているならば、粘土をなくせば、泡は消えやすくなるはず。

【実験7】

水洗いした砂では泡が立つか調べる。

《結果》

砂を水洗いして、にごった水を捨てた。残った砂を水と混ぜて「電動泡立て器」で10秒間泡立てたが、泡はすぐに消えた。

【実験8】

水洗いした砂と水を混ぜ、沈殿する様子を観察する。

《結果》

コーヒーのビンに入れて静かに置いた。粘土の層がなくなっていた。やはり「泡の膜」を作っていたのは粘土だ。

【実験9】

「洗った砂」に粘土を溶かした水を加えて、泡立つか調べる。

《結果》

しっかりと泡立ち、消えにくくなることが分かった。

〈追究2のまとめ〉

 砂の泡が消えにくいのは、砂が作る泡が細かいため。できた泡の膜に「粘土」が付いて、泡を強くしているためだ。

残された疑問

(1)「泡の膜」を作っていた粘土の粒は、顕微鏡で見ると、複雑に絡み合って集合していた。なぜ絡み合うのか?
(2)砂全体からすれば、粘土の粒はほんのわずかだ。なぜ「泡の膜」に集まるのか? まるで、「泡の膜」が粘土の粒を引き寄せているかのようだ。

おわりに

 「砂の泡」について、インターネットの情報は正しくなかった。ネットで調べて分かったつもりになっても、実際は違う。実験して、初めて分かったことが多かった。やはり自分の手で調べ、自分の目で見て「真実」を明らかにすることが大切だ。
 幼いころに戻って砂遊びのような実験をする中で、思いもよらない発見が数多くあった。特に、「泡の膜」に粘土が集まることは驚きだった。このことを使えば、水の中から、わずかな物質を取り出すことができるかもしれない。何だかわくわくした。

指導について

指導について刈谷市立平成小学校 鈴木 竹久

 私は「当たり前の現象」の中に隠されている科学に注目するように、子どもたちにつねに語り続けています。そんな中、理科の授業で「砂が作る『泡』」という、だれもが目にできる「当たり前の現象」に彼女たちは注目しました。
 彼女たちは、はじめインターネットで理由を調べました。しかし、予備実験で、ことごとく理由は否定されてしまいました。そこから、約2カ月間の私と彼女たちの長い追究が始まりました。
 実験用の砂が置いてあった理科室前の中庭は、まるで土木作業場のようでした。また、暗くなるまで実験したこともありました。5、6年生全員の子にアンケートをしてもらったり、「おやじの会」の方からアドバイスをいただくなど、彼女たちはさまざまな人たちに支えられながら研究を進めることができました。ふり返ってみると、彼女たちは研究の成果よりも「まわりの人たちへの感謝の気持ち」を一番学んだのではないでしょうか。
 今回、彼女たちの努力を認めていただき大変感謝しております。今後も、一人でも多くの子どもたちに自然を追究する楽しさを感じさせたいと思います。ありがとうございました。

審査評

審査評[審査員] 永田 学

 研究は「わくわく、ドキドキ」するものです。研究の動機から、まとめまでのレポート表現に、まず引きこまれました。疑問が疑問を呼び、新たな追究に向かう。研究のすばらしさとともに、ドラマがありました。
 「見てみて、クリームみたいだよ・・・」学習の中で感じた疑問をもとに研究が始まります。まとめにもありましたが、自分で追究することの大切さが、常に伝わってきます。ですが、そこには文献やインターネットの情報も解決の手がかりになっています。砂と砂の粒の間の空気が、砂の粒の動きによって「クリーミー」な泡に変わっていくことを突き止めますが、納得がいきません。展開はどちらに向かうかわくわくしてきます。ついに、「粘土」が登場します。泡そのものだけを見るのではなく、粘土により強度が増すことにたどり着きます。そして、泡の膜に「粘土」が集まる働きが、次の研究のテーマになってくるようです。今後が楽しみになります。

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