第54回入賞作品 中学校の部
文部科学大臣賞

ツマグロヒョウモンの研究
〜成虫のふしぎ〜

文部科学大臣賞

静岡県浜松市立積志中学校1年
小池 未知
  • 静岡県浜松市立積志中学校1年
    小池 未知
  • 第54回入賞作品
    中学校の部
    文部科学大臣賞

    文部科学大臣賞

研究の動機

 小学3年生のときにモンシロチョウを教室で育てたことから、チョウに興味を持った。自分でもツマグロヒョウモンを育て、観察したこれまでの研究を生かし、今年はツマグロヒョウモンの生態について調べる。

これまでの研究の成果

◇2009年「ツマグロヒョウモンの研究~サナギでわかるオスとメス」

(1)ビオラの葉に卵を産んでいるツマグロヒョウモン(メス)を見つけたことから、卵→幼虫→前蛹(ぜんよう)→サナギ→成虫に変化する様子を観察した。
(2)サナギになっている期間は9日間。サナギの背にある5対10本のトゲは金色、銀色の2色ある。トゲが金色だと、羽化後にメスになる。銀色はオスだ。

◇2010年「ツマグロヒョウモンの研究~時間を止めて眠るサナギのなぞ」

(1)ツマグロヒョウモンの前蛹、サナギを冷蔵庫(野菜室、温度12)に入れ、気温や光が羽化にどのように影響するかを調べた。
(2)サナギ(1日目)を冷蔵庫に30日間入れてから外に出すと、6日後に羽化した。チョウになる日を遅らせることができる。
(3)サナギになる日は違っても、冷蔵庫から出す日を同じにすると、同じ日に羽化する。
(4)前蛹を冷蔵庫に入れて6日後に出したものはサナギ(8~9日間)になり、羽化した。もっと長く入れていたものは死んでしまった。
(5)同じ日に前蛹になった2匹を冷蔵庫に16日間入れて置いたら、ともに死んでしまった。前蛹の姿でも時間は止まるが、寒さの中では長く生きられないことが分かった。
(6)段ボールをかぶせて光を当てなかった前蛹は、1日遅れたが羽化した。冷蔵庫に入れなかった(光を当てた)サナギは、同じサナギ期間を経てチョウになった。

◇2011年「ツマグロヒョウモンの研究~止めた時間をもどす挑戦」

(1)前蛹は弱く、冷蔵庫(野菜室)の中で長く生きられないため、サナギを冷蔵庫に入れておき、同じ日に出して常温に戻して、一斉に羽化させようと試みた。
(2)サナギ(1日目)11匹を、冷蔵庫に17~37日間入れておき、同じ日(8月18日)に取り出した。その後6~8日を経てすべて羽化したが、羽がしわになるなど、6匹が脱皮不全だった。
(3)羽化の日は合わせられたが、半数のチョウが脱皮不全となった。サナギ1日目のものは弱く、実験結果も不完全だった。

◇2012年「ツマグロヒョウモンの研究~時間を戻してお見合い大作戦」

(1)サナギ7日目の“固いサナギ”11匹を冷蔵庫に2~13日間入れて置き、同じ日(6月28日)に常温に戻した。その後11匹すべてが7月2、3日に羽化した。脱皮不全はなかった。
 これらよりも早く、5月に冷蔵庫に入れた9日目のサナギ1匹は、入れたタイミングが遅かったためか、入れている期間が長かったのか、野菜室の中で黒くなり死んでしまった。
(2)7月2日に羽化したオスとメスのペアを、飼育ケース(縦19cm×横29cm×高さ17cm)に入れた。求愛行動や交尾は見られなかった。オス4匹、メス4匹を部屋に放したら、3組が交尾した。交尾後のメス3匹はいずれもスミレの葉に卵を産んだ。スミレは3種類(タチツボスミレ、エイザンスミレ、ビオラ)を用意したが、スミレの種類は問わなかった。

今年の研究「ツマグロヒョウモンの研究~成虫のふしぎ~」

目的:飼育方法を改良し、同じ日に羽化したチョウを使って、ツマグロヒョウモンの求愛行動や交尾、産卵、卵などを観察する。

〈1〉飼育方法の改良

 昨年までは、終齢幼虫になったら小さな飼育ケースに1、2匹ずつ入れて、サナギになってからケースごと冷蔵庫(野菜室)に入れていた。そのため、狭い野菜室がすぐに飼育ケースで一杯になってしまった。

《方法》

ツマグロヒョウモンの終齢幼虫は、飼育ケース内の好きな場所でサナギになる。竹串でサナギになってくれれば、それを集めて野菜室に収納できると考え、エサのスミレと一緒に、竹串をヨーグルトカップに立てた。飼育ケースの天井のフタにも多くのサナギが付くので、フタを外して不織布を張った。不織布に付いたサナギは半日経過して固くなってから、そっと手ではがし、接着剤で竹串に付けた。

《結果》

1本の竹串に1匹のサナギを付け、個体を識別するシールを貼った。これらを14本ずつ飼育ケースに入れて、野菜室に収納した。昨年は9個の飼育ケースを野菜室に入れていたが、今回は飼育ケース3個となり、かなりコンパクトになった。そのケースにも、違った日齢のサナギを複数入れることができるようになった。

〈2〉幼虫・サナギの飼育

《方法》

昨年と同様に、7日目のサナギを冷蔵庫に入れて“時間を止めた“。今年は冷蔵庫の野菜室(温度12)のほかに冷蔵室(同4)にも入れた。冷蔵庫に入れず、そのままサナギを常温(30~38)に置いたものと合わせて3種類の条件で、成長を調べた。
 最初に7日目となったサナギから次々に冷蔵庫に入れ、最後のサナギが7日目になった日に、それまで冷蔵庫に入れていたサナギを全て玄関の常温下に出して“時間を戻した“。
 そのため冷蔵庫に入れていた期間は、サナギによって1日から7日まで長短がある。サナギでいた「サナギ期間」については、冷蔵庫に入れる前の6日間と、冷蔵庫から出した日から羽化当日までの日数を足した合計日数とした。

《結果》

計27匹(オス15匹、メス12匹)のサナギが得られた。自然に竹串に付いたのは18匹。9匹は接着剤でくっつけた。サナギ期間は8~9日間あり、1匹のメスを除く26匹が正常に羽化した。その1匹は、冷蔵庫に入れずに常温のままで育てたサナギで、サナギの当初からピクピク動くなどして様子がおかしく、脱皮不全になって死んでしまった。
 今回はより多くのサナギを冷蔵庫で“寝かす”ことができ、羽化した数も昨年の11匹に比べて多かった。サナギを入れた野菜室と冷蔵室とでは温度が8差あるが、その後の羽化に違いは出なかった。

〈3〉お見合い大作戦

【実験1】

昨年は、飼育ケースに1ペアだけ入れてのお見合いは失敗した。今年は、羽化したオス15匹、メス11匹を別々のケージで飼育し、全てのチョウを1日に数時間だけ同じネットケージに入れて観察した。

《結果》

8月1日:オス数匹が羽をパタパタさせ、あるオスがメスに近づいたが、5分で求愛をやめた。交尾は成立しなかった。飼育ケージが狭いのではと思い、大きなネットケージを自分で作った。2日:メスを見つけたオスが、おしりを近づけて求愛した。うまくいかないと、違うメスを探して次々と求愛した。羽を広げ、おしりを上げて待つメスがいたが、うまくオスに出会えなかった。交尾できたのは1組のみ。スミレを置いてみたが、卵を産む気配はなかった。
3日:オスが激しく求愛するが、メスにその気がない。交尾できたのは1組のみ。夜にオス1匹が死んでしまった。

【実験2】

オス、メスの出会いの場所を、広い網戸の部屋にした。

《結果》

4日:朝オス4匹が死んでいた。残りのオス10匹、メス11匹を放した。間もなくオス数匹が羽をパタパタし始め、求愛を開始した。交尾したのは5組だった。
5日:オスはおしりを近づけ求愛するが、メスが拒否。交尾はなかった。
6日:オスは積極的に求愛するが、メスが逃げて拒否している。交尾できたのは1組のみ。
7日:お見合いを開始しても、メスは拒否ばかり。交尾は1組だけ。
8日:交尾はなかった。夜にオス1匹が死んでしまった。
9日:交尾がなく、オス2匹が死んだ。
10日:オスは求愛するが、拒否される。交尾はなかった。オス2匹が死んだ。
11日:オスに元気がなくなり、交尾もなかった。オス4匹が死んだ。
12日:朝、最後のオスが死んだ。メスは11匹すべて生きているが、オスが全滅し、交尾の実験も終了した。

《まとめ》

ツマグロヒョウモンの習性から、明るい方向にある網戸に集まった。
羽化したてのチョウの場合、オスはおしりをつけて求愛するが、メスにその気がなく、羽を広げて拒否のポーズを取るのもいた。メスは成熟するのに数日かかるのかもしれない。
交尾に要した時間は37分~190分とまちまちだった。交尾が終わるとオスはすぐ飛び立ち、メスはその場でしばらくじっとしていた。
交尾は9組確認できた。メスの交尾は1回のみだったが、オスは複数回(4回、2回)交尾したのもいた。未交尾のメスは2匹だった。

〈4〉卵の様子と顕微鏡観察

 交尾を終えたメスは卵を産む。ツマグロヒョウモンは「食草不足で共倒れすることを防ぐために、同じ場所に卵をたくさん産まない」と聞いたが、今回の実験ではたくさんの卵を産み、おびただしい数の幼虫が生まれてしまった。
 8月9日朝に、室内に置いたスミレの葉にたくさんの卵が付いていた。翌日調べたら葉の表裏や鉢のへりにもビッシリなので、数えたら1,233個もあった。葉には2齢幼虫が4匹、1齢幼虫も2匹生まれていた。11日に約200個の卵が付いた葉を冷凍保存し、1,000個ほどはそのままプリンカップに入れて観察することにした。12日朝に見たら、非常に多くの幼虫が生まれていて驚いた。中にはカップから脱走して、スミレ鉢の葉にたどり着いている幼虫もいた。数百匹の幼虫を育てるのは不可能なので、カップごと家の前の公園に置いた。夕方にはカップの幼虫は減り、さらに翌日にはカップのほとんどの卵がふ化し、幼虫はどこかへ行ってしまっていた。

【実験3】

11日に冷凍し、12日に解凍した卵を顕微鏡で観察した。卵のからがしわになって乾燥し、中に黒く丸いかたまりが見えた。中身が黄色い卵もあった。乾いた卵に水をたらし、ふやかして観察した。

《結果》

卵は水を含んで、ふくらんだ。黒いかたまりのある卵を針でつつくと、からが割れて空気が出てきた。中に幼虫が入っていた。黒いかたまりは、途中まで育った幼虫だったのだ。黄色い卵の中身はドロドロの液体だった。
 解凍した他の卵も、黄色から淡いオレンジ色、黒色へと変わってきたが、ふ化はしなかった。

考察

サナギ期間と温度:昨年(2012年)と今年の研究を比べて気がついた。サナギ期間が今年は8~9日間なのに、昨年は11~12日間と長い。過去にさかのぼっても09年は9日間、10年と11年は8~9日間だった。
 サナギの飼育は例年7~8月に行っていたが、昨年だけは6月に行った。季節によって生育に必要な日数が変わるのか、当地方の過去の天気と気温を調べた。今年7月は雨がまったく降らず、平均気温は31.8。昨年6月は雨の日があり、平均気温は26と約6の差だ。
 サナギとして過ごしていた日の最高気温を調べ、それらを合算することで、個体ごとのサナギ期間の“累積温度”を出した。冷蔵庫の期間は入れていない。その結果、昨年6月(11匹)の累積温度の平均は299.73、今年7月(27匹)のは287.63と、サナギ期間の日数は違っても、累積温度はほぼ同じ値になった。
オス、メスの寿命:今年羽化したオス15匹、メス12匹(1匹は脱皮不全で早死)について調べた。オスは8月3日から死ぬのが出て、一番の長生きは13日間。メスは15日から死に出し、最長は9月12日まで43日間も生きた。オスはメスよりも早く死に、中でも、交尾しなかったオスの方が早く死んだ。元々がメスの寿命が長く、オスの寿命は約2週間なのか?弱いオスだから求愛に敗れ、早く死んでしまったのか?冷蔵庫に入れずにサナギから羽化させたオス・メス計5匹は、死ぬのが早かった。サナギ期間に寒さを経験させた個体の方が強いのだろうか?

感想

 実験では驚くことばかり。メスが産む卵の多さ。メスの交尾は1回なのに、複数回のオスもいた。同じように飼育していても、オスの方が早く全滅したのは予想外だった。チョウの生態が少しずつ分かるようになり、わくわくした。

指導について

指導について浜松学院大学短期大学部 細田 昭博

 小池未知くんは磐田市桶ケ谷沼の観察会に小さいころから参加してくれた。昆虫だけでなくいろいろな生き物が好きで、自宅ではたくさんの虫たちを飼育しているようであった。今回のツマグロヒョウモンの研究は、花壇のパンジーで見つけた幼虫をサナギから羽化させたことがきっかけと思われる。育てた多くのサナギを同じ日に羽化させることができれば、成虫の求愛や交尾の様子、卵を産む姿などを同時に観察することができる。そこで冷蔵庫を活用して羽化する時間をずらす実験をすすめた。母親も自然には興味関心が高く、昆虫の採集・観察を親子で熱心に行っていた。今回の虫を冷蔵庫に入れて実験することも、母親の協力なくしてはできないことである。できるだけ多くのサナギを実験に使用するためにはサナギを竹串に貼りつけたり、野菜室を使ったりと工夫している。今後も未知くんがいろいろな事象に興味関心を持ち続けていくことを見守っていきたい。

審査評

審査評[審査員] 小澤 紀美子

 文部科学大臣賞おめでとうございます。小学校3年生から始めた研究で2年目からサナギに注目して、飼育方法に改良を加えて同じ日に羽化させたツマグロヒョウモンの幼虫を使って成虫の生態を調べた研究です。
 水死しないように飼育ケースに水と綿を入れる、飼育ケースの上ふたにくっつかないように竹串にサナギをボンドで付けて入れ飼育ケースをコンパクト化、サナギの期間が丸6日経過し、育ち方をそろえるため7日目の朝、野菜室に飼育ケースを入れ、すべての個体がサナギ7日目の日数のサナギを用いてサナギの成長の時間を止める、冷蔵庫の野菜室(12)、冷蔵室(4)、冷蔵庫に入れず常温(30~38)でほぼ同じタイミングで羽化させた成虫の生態を観察する、などの工夫がすばらしいです。こうして成育させたチョウを用いて「お見合い大作戦」によりメスとオスの交尾行動を観察し、メスが一度しか交尾しないこと、その理由を文献や専門家に確かめていること、さらにサナギ期間の日数が異なっても累積温度がほぼ同じであると発見していくなど着眼点、論理の進め方、考察もとてもすばらしい作品です。

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