第57回入賞作品 中学校の部
文部科学大臣賞

朝顔の観察 パート7 日当たり5

文部科学大臣賞

静岡県静岡市立東豊田中学校1年
齋藤 麻梨子
  • 静岡県静岡市立東豊田中学校1年
    齋藤 麻梨子
  • 第57回入賞作品
    中学校の部
    文部科学大臣賞

    文部科学大臣賞

はじめに

 小学1年生から朝顔(アサガオ)の観察をしている。今回は「日当たりが違うと、どうして見た目に違いが出るのか」をテーマに選んでから5年目。光学顕微鏡では分からなかった花弁(花びら)の表面の違いが、電子顕微鏡による観察で分かった。日当たりの良い場所で育った葉が「なぜ黄緑色になるのか」も分かった。また街灯などの「光害」についての実験で、白色光よりも緑色の光を当てた方のつぼみが花を咲かせた。緑色の光を夜間照明にすれば植物にやさしいのではないかと考え、さらに研究を深める。

日当たりの違う場所での生長観察

〈方法〉

 アサガオを5月の連休明けから、家や周囲の日当たりの違う3つの場所=屋外(日当たり良し)・東南ベランダ・西北ベランダ=で育てる。気象庁の気象データベース、静岡市環境局の光化学スモッグデータを使い、生育と天候との関係、葉の傷みに影響する光化学OX(オキシダント)との関係を調べる。

場所 日当たり 備考
日当たり良し(屋外) 一日中 鉢植え・土の上
東南ベランダ 午前8時~12時ごろ 鉢植え
西北ベランダ 午後1時~日没 鉢植え

〈結果と考察〉

 気温や湿度は平年並みで、梅雨の時期に雨が少なく日がよく当たったため、どの場所のアサガオも生育が良く、花もたくさん咲いた。「日当たり良し」の葉は7月末から黄緑色に変わった。葉の数は少なく小さめだが、硬くてごわごわしている。「東南ベランダ」「西北ベランダ」も緑色の大きな葉でいっぱいだ。
 電子顕微鏡で見ると、葉の表面に生えている毛は、日当たり良し>東南ベランダ>西北ベランダ、の順に多かった。日当たり良しの毛は太く、東南ベランダの毛は細い。西北ベランダは毛が少なく、まばらだ。
 光化学OXは5月から梅雨にかけて高めで、7月に入って低めだった。アサガオが大きく伸びる6月から7月にかけての時期に高くなかったのは良かった。「西北ベランダ」は一番生長が遅く、一番早く葉が部分的に枯れはじめた。光化学OXの影響を受けていたと思う。
 いずれも同じ種類のアサガオだが、日当たりによって見た目に違いが出た。「東南ベランダ」と「西北ベランダ」は似ているが少し違う。また、8月に入り晴れて暑い日が続くと「東南ベランダ」も「西北ベランダ」も、葉が黄緑色っぽくなった。やはり日がたくさん当たると、葉が黄緑色になるようだ。

夜の光害を防ぐための方法を探す

 夜の街灯の光や運動場の照明が、蛍光灯からLED(発光ダイオード)照明に代わって明るくなり、アサガオの開花にも影響(光害)しているのではないか。アサガオは夜の長さが9時間よりも短くなると花芽をつくるので、夜の暗さは必要だ。

〈昨年の実験〉

アサガオにLED照明(66.6W、白色光、緑色光)を夜通し当てて、翌朝に花が咲くかを調べた。花弁が白色の「白い花」のつぼみは、LED光(白色光でも緑色光でも)が当たっていると開花しなかった。青紫やピンク色の「色の花」のつぼみは、LED光が当たっていてもほとんどが8、9分まで咲き、緑色光で完全に開花したつぼみ(花)もあった。66.6WのLED光では強すぎるのかもしれない。

◇今年の実験

〈方法〉

 昨年と同じLED照明(66.6W)、光量調節のできるLED照明(7.2Wと36Wを使用)の白色光と、緑色の下敷きを透過させた緑色光をつぼみに当てて開花を調べる。また、つぼみが光を感じるのは根元にある「がく」の葉緑体なので、がくを銀紙、紙でおおった場合の開花も調べた。

〈結果〉

◇光の強さと開花

光の強さ 66.6W 7.2W 36W
光の色 白色光 緑色光 白色光 緑色光 白色光 緑色光
白い花 咲かない 7~8分
咲きまで
完全に
咲くことも
ある
ほとんど
咲く
時間が
かかっても
咲く
ほとんど
咲く
色の花 8~9分
咲き
8~10分
咲きまで
ほとんど
朝咲く
ほとんど
朝咲く
ほとんど
朝咲く
ほとんど
朝咲く
評価 光が強すぎる この明るさは開花に問題ない この明るさは開花に問題ない

◇開花率(%)=開花した数/つぼみの数

光の強さ 7.2W 36W
光の色 白色光 緑色光 白色光 緑色光
白い花 4/8
(50%)
13/16
(81%)
3/9
(33%)
6/6
(100%)
色の花 9/9
(100%)
14/16
(88%)
6/9
(67%)
11/11
(100%)

〈考察〉

 7.2Wの白色光では「白い花」の開花率は50%、「色の花」は全てのつぼみが開花した。緑色光では「色の花」「白い花」のほとんどが咲いた。この7.2Wの明るさは、外の街灯の照明と同程度の(真下ではない)明るさだ。この明るさで「白い花」は半分しか咲かないので、やはり街灯はアサガオに悪影響を与えていると思う。さらに36Wの明るい光でも、緑色光は「白い花」「色の花」の全てを咲かせるので、緑色光にすれば問題がないと分かった。
 36Wの実験で、部屋の温度が高くならないようにエアコンをつけていたら、夜の12時近くに花が全開し、そのまま次の朝まで咲いていたものがあった。暑くならない環境を整えてやれば、つぼみは遅くなっても開花することを偶然発見した。
 がくに光を当てないようにして開花させるには、紙よりも銀紙に少し効果があった。
 「日当たり良し」の場所も、夜はかなり明るい。照度計で調べると、電気スタンドの1割ほどの明るさだった。しかし、アサガオはちゃんと花芽をつけるので、街灯から5mほど離れていれば問題ないかもしれない。「西北ベランダ」の方が少し明るいようだった。

葉のSEM写真

 日当たりの違いによって、アサガオの葉の気孔の数に変化があるか調べる。

〈方法〉

 日当たり良し・東南ベランダ・西北ベランダのアサガオの葉を切り取り、その表裏をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影し、同じ300倍の倍率で気孔数を数える。葉を水につけおき、5日後の変化も調べる。SEMは静岡県工業技術研究所でお借りした。

〈結果と考察〉

 日当たりが同じ場所でもいろいろな葉があり、いつも同じ結果にはならない。日当たり良しの葉は厚くて小ぶり、東南ベランダと西北ベランダの葉は、薄くて大きい。

〈分かったこと〉

(1) 気孔は、葉がしおれると徐々につぶれてなくなる。
(2) 葉の若さ古さで、気孔の数が変わる。若い葉には気孔が多い。
(3) 日当たり良しの葉は、表の気孔(平均11.1個)の2倍の気孔(平均24.4個)が裏にある。
(4) 東南ベランダの葉は、表の気孔(平均7.1個)の3倍の気孔(平均22.1個)が裏にある。
(5) 西北ベランダの葉は、表の気孔(平均7.9個)の4倍の気孔(平均33.8個)が裏にある。
(6) 表の気孔の数:
 日当たり良し>西北ベランダ>東南ベランダ
 日当たりが強いと、たくさん蒸散して葉の温度を下げる必要があるのかもしれない。
(7) 裏の気孔の数:
 西北ベランダ>日当たり良し>東南ベランダ
 午後は大気が暑くなって乾燥してくるので、蒸散が午前よりも必要なのかもしれない。
(8) 日当たりが良いと葉の老化が早く、裏の気孔の数は減っていく。
(9) 葉の「ふ」の部分(空気が入って白くなっている部分)にも気孔はある。

葉の気孔と生長の関係

 SEM写真で、アサガオの葉の表面に、密集するジグソーパズルのピースのようなものが見られた。それらのピースの大きさは葉によって違う。そこで、ピースの大きさと気孔の数の平均値、最大値を、日当たり良し・東南ベランダ・西北ベランダの葉(裏側)で調べた。

〈結果と考察〉

ピースの大きさ 気孔の平均個数 気孔の最大個数  
40 28~60 多い


少ない
27 21.7~39
21 18.3~34

 ピースの大きさを小・中・大に分けると、ピースが大きいほど気孔の数は少なくなり、小さいほど多くなる傾向がみられた。
 葉は同じ形のまま大きくなる。葉のジグソーパズルのピースも等倍で大きくなっていく。そのため、最初はどの葉も同じ数だけの気孔が密集しているが、葉が大きくなると、気孔と気孔の間隔は開いていく。その結果、ピースが大きくなり、単位面積あたりの気孔の数は減っていくものと考えられる。葉の気孔の観察では葉の大きさをそろえるのではなく、葉の古さ(あるいは日齢)をそろえる必要がある。

光学顕微鏡での観察

 アサガオの花を光学顕微鏡で観察する。

〈方法〉

 日当たり良し・東南ベランダ・西北ベランダの青花、赤花、白花について調べる。

〈結果と考察〉

 花弁の「色の粒」(表面の細胞内の液胞に色素がたまり、粒状にふくれたもの)は、「日当たり良し」では大きくぎっしり並び、布のベルベットに似て厚みを感じる。東南ベランダのものは重ならず、一つずつ形が見える。綿サテンに似た風合い。西北ベランダの色の粒はふくらみが低く、化学繊維のようで光っている。めしべの柱頭は、日当たり良しではこんもりし、東南ベランダと西北ベランダでは薄く平べったい感じだった。

花弁のSEM写真

 日当たりの違いによって、花弁の表面に違いがあるか調べる。

〈方法〉

 日当たり良し・東南ベランダ・西北ベランダのアサガオの花弁(白色、青紫色、ピンク色)について4つの方法でサンプル(①生花②乾燥③スンプ法④木工用ボンド吸収)を作り、それぞれの花弁のふちに近い部分(上部)、放射状のすじ(曜)が分かれ出す部分(中部)、曜のふもと付近(下部)を、平面と斜めからSEMで撮影する。

〈結果〉

サンプルごとの考察

①生花サンプル:日当たり良しでは、色の粒の膜が厚く、ぎっしりと頭が並んで見える。東南ベランダでは、色の粒が重ならずに形が見えている。西北ベランダでは、色の粒の膜が薄く、高さが低い。

②生花の乾燥サンプル:意外ときれいに写真が撮れた。しかし、生花を金蒸着したサンプルよりも弱々しい感じ。

③スンプ法による型どりサンプル:花弁の中部では曜の上に色の粒があり、列を作って花弁のふちの方向に倒れていた。日当たり良しでは、ふっくらと大きな色の粒が折り重なるように並び、東南ベランダと西北ベランダでは色の粒が細く、あまり重ならずに、列がはっきり見えた。

④木工用ボンド吸収サンプル:エタノールで脱水した花弁に、濃度20%、30%のボンド水溶液を吸収させたが、いずれも濃すぎたようで、サンプルがきれいにできなかった。撮影もあきらめた。

◇花弁の中部

③のスンプ法サンプルで、横倒しになった色の粒の列を観察した。アサガオは合弁花で、一つになった花弁はトランペットの先のような形をしている。花弁が中心からふちに向かって反り返っているのに、スンプ法では平らな板で押さえて型をとったので、色の粒が横倒しになったのだ。そこで改めて、生花の中部を観察した。その結果、日当たり良しでは、色の粒が大きく重なり合っているので列は分かりづらかったが、東南ベランダと西北ベランダでは、色の粒の列があることがしっかり分かった。

まとめ

 研究で分かったこと。

(1) 葉の手触りの違いは、葉の日齢と毛の数による。葉は日齢が進むとかたくなる。
(2) 夜の光害を防ぐには、街灯を緑色にするとよい。36Wの緑色の光は、つぼみの開花に影響しない。
(3) つぼみは光を当て続けても、環境を28℃未満に保てば時間をかけて開花する。開花できないのは、高温や乾きでしなびてしまうからだ。
(4) 葉の単位面積当たりの気孔の数は、葉の生長によって減る。葉の気孔の数は最初は同じで、育つ環境に合わせて減っていく。
(5) 日当たりが強いほど、葉の老化は早く、葉は大きくならない。
(6) 花弁の「色の粒」の並びは同じだが、粒の大きさが環境により異なるため、花弁の質感に違いが出る。
(7) 花弁の中部の「色の粒」は、上部よりも小さめだ。花弁のふちに向かって、列をなして並んでいる。

終わりに

 植物にとって光はとても重要で、益にも害にもなることが分かった。来年は、アサガオの花弁と葉の見た目の違いに、日当たりがどのように役立っているかを調べたい。

指導について

指導について齋藤 三津子

 小学1年から「朝顔と光の関係」について「開花と光」「日当たりと生育」「花芽形成と光」を柱に継続し調べています。電子顕微鏡の利用は今回で3年目です。限られた時間内にできるだけ多く観察するため、試料の準備から手際よく進めていました。また、夜間の「光の害」について心配し防ぐ方法も考えました。開花の様子をデジカメで記録し、花ごとにいつ何分咲きになったか調べてまとめています。花も葉も多くのデータからなにか特徴がないか考え、計算して決まりを探しました。この研究では、子供向けの体験講座等で出会った多くの「その道の達人」のお話が随所にいきています。彼女は、日々の生活の中で感じたこと、体験したことを研究に反映しています。季節や虫の声、空の様子の変化、公害などにも気づくようになりました。研究の経験が学びを深めています。多くの方にお世話になり、7年間の研究が大きく実りましたことを心よりお礼申し上げます。

審査評

審査評[審査員] 田中 史人

 朝顔の観察は、小学校1年生から継続して行ってきた観察であり、今年で7年目のものです。その中で3年生から行ってきた日当たりと生長の違いを調べる観察については5年目を迎えています。疑問の解明に向け継続して観察を行った取り組みとその姿勢に対して評価します。日の当たり方が違う場所を活用して観察をすることで、朝顔に対して光の強さや温度が変わることで花の咲き方にどのような違いが生じるかなどについて、とても多くの観察データを使って考察しています。電子顕微鏡の写真を使い、日の当たり方と葉の気孔の数の関係や若い葉と古い葉の気孔の数の違いなどを調べ、その結果をもとにしても考察しています。また、葉の表面に見えるパズルのピースのようなもの(観察者本人の表現による)を今後も引き続き電子顕微鏡で観察し、葉の気孔の数や大きさ、環境の違いによる生長などについて疑問の解決に向けさらに研究を発展させて取り組んでくれることを期待します。

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