第57回入賞作品 中学校の部
1等賞

植物色素アントシアニンの蛍光の研究

1等賞

千葉県千葉市立稲毛高等学校附属中学校2年
大田黒 澪
  • 千葉県千葉市立稲毛高等学校附属中学校2年
    大田黒 澪
  • 第57回入賞作品
    中学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

 光の分光の学習で水槽の中を観察したら、緑色の水草の先が、ほんの少し赤く輝いているのを発見した。植物色素の中には、紫外線が当たると特有の蛍光色を示すものがある。さまざまな植物色素の蛍光色の違いを調べ、紫キャベツ液に含まれる植物色素アントシアニンの蛍光の性質と応用について追究したい。

《実験1》紫キャベツ液の15段階のpHごとの色の変化、紫外線を当てた時の蛍光を調べる。

〈方法〉

 紫キャベツに含まれるアントシアニンを水、エタノールでそれぞれ抽出した液(紫キャベツ液)に、pH0~14の15段階の水溶液を滴下して、色の変化を観察する。また紫外線(ブラックライト)を当てて蛍光を調べる。

〈結果〉

 水で抽出した紫キャベツ液の方が、色の変化が大きかった。色は赤、赤紫、紫、緑、黄の5段階に変わった。中性(pH7)のところの紫は、色が薄くて分かりづらい。紫外線に蛍光を示したのはエタノール抽出の紫キャベツ液だけ。pH7前後が明るい水色の蛍光を示した。

《実験2》代表的な植物色素の蛍光を観察する。

〈方法〉

 エタノールで「オオカナダモ」の葉から葉緑体の色素(クロロフィル)、紫キャベツから赤紫色の色素(アントシアニン)、ニンジンから橙色の色素(カロチン)、紅茶から黄褐色の色素(タンニン)、トマトから黄色の色素(リコピン)を抽出する。それぞれに紫外線を当てる。

〈結果〉

 紫外線を当てると、クロロフィルは赤色、アントシアニンは水色、カロチンは黄緑色、タンニンは赤色、リコピンは黄緑色の蛍光を示した。

《実験3》アントシアニンの蛍光の仕組みを明らかにする。

〈方法〉

 アントシアニンは構造式から、5つのグループ=①シアニジン系②デルフィニジン系③ペラルゴニジン系④マルビジン系⑤ペオニジン系=に分かれる。このうちシアニジン系の植物(紫キャベツ、ツツジ、タバコ、アジサイ)、デルフィニジン系の植物(ナス、黒大豆、赤シソ)、マルビジン系の植物(クワの実、マローブルー、アセロラ)に含まれる色素をエタノールで抽出し、紫外線を当てて蛍光を観察する。

〈結果〉

 シアニジン系の色素が明るい水色の蛍光を示した。

〈考察〉

蛍光を示すのは、シアニジンの構造式の第5位炭素にエタノールのエチル基(CH2-CH3)が付くことが条件ではないか。

《実験4》アントシアニンを用いて、電流を流すと色が変わるデバイスを作る。

〈方法①〉

 紫キャベツから抽出したアントシアニン水溶液に、濃度10%の食塩水を加えたもの、濃度1mol/lの硫酸ナトリウム水溶液を加えたものを用意する。それぞれのビーカーにステンレス電極を入れて3Vの電圧をかけ、色の変化を観察する。pH値も測定する。

〈結果〉

 食塩水では、+極から塩素が発生し、最初の青色(pH7.5)から黄緑色(pH11.0)に変わった。硫酸ナトリウムでは、-極から水素が発生し、最初の紫色(pH6)から薄い青緑色(pH8.5)に変化した。電解質としては硫酸ナトリウムの方がよい。

〈方法②〉

 スライドガラスのケース(2.5㎝立方体)の中に紫キャベツから抽出のアントシアニン水溶液と硫酸ナトリウム水溶液(濃度1mol/l)を入れて、銅板の電極を付ける。3Vの電圧をかけて、色の変化を観察する。

〈結果〉

 30秒後から-極側の水溶液が緑がかり、2分後には全体の水溶液が青緑色になった。電流で色が変わるデバイスを作ることができた。

〈方法③〉

 スライドガラスのケースを3個並べ、それぞれに②と同じ水溶液を入れて、両端のケースに銅板電極を付ける。真ん中のケースは元の水溶液の色(紫色)を見るためのもので、両端のケースの電解液をつなぐブリッジとして、ろ紙を真ん中のケースをまたいでひたす。3Vの電圧をかけて、色の変化を観察する。

〈結果と考察〉

8分後に+極は赤紫色だが、-極は青緑色になった。電極を入れ替えると、24分後に両極ともほぼ同じ青紫色となり、48分後には+極は青紫色、-極は青緑色になった。色はほぼ元に戻ったが、元と微妙に違うのは、+極と-極では電気分解で必要な電子量が違うためだ。

《実験5》青色蛍光ランプを製作する。

〈方法〉

 透明な親水性のフィルムを、アントシアニン水溶液に浸す。これを蒸発しないように、2枚の透明ブックカバーではさんだものをブラックライトの蛍光管の表面に巻く。蛍光管のスイッチを入れて、光の色や照度、紫外線量の変化を調べる。

〈結果〉

 元のブラックライトの照度は0.75ルクス、紫外線量は198μW/㎠。製作した蛍光ランプは照度58.5ルクスと明るく、紫外線量は0.1μW/㎠と100%近くを吸収した。明るい水色の蛍光に輝くランプ(青色蛍光ランプ)ができた。

《実験6》オオカナダモ電池を応用して、青色蛍光ランプの光合成への有効性を調べる。

〈方法〉

 同じ中学校の友人、稲川翔子さんが研究した「オオカナダモ電池」(※銅とアルミを電極にしたダニエル型電池の容器内に水草のオオカナダモを一緒に入れると、光合成と呼吸の働きによって2倍の電圧が得られるという“生き物電池”)に、①自然光②白色蛍光灯③紫外線ランプ(ブラックライト)④実験5の青色蛍光ランプ⑤白色蛍光灯+青色蛍光ランプの光を当て、5分おきに4時間の電圧変化を測定する。対象として、電池にオオカナダモを入れず水だけにして、白色蛍光灯を当てたものと比べる。

〈結果と考察〉

 ⑤の白色蛍光灯と青色蛍光ランプの併用が、最も電圧の上がり方が大きかった。これにより、オオカナダモによる光合成の強さが自然光とほぼ同じで、有効性があることが確認された。オオカナダモは紫外線の強い南米原産の水草であるから、特に青色の光に強く反応するためではないか。紫外線ランプでは、光合成が抑制されることが分かった。

《実験7》白色蛍光灯と青色蛍光ランプの併用が、一般の植物の生長に有効かを調べる。

〈方法①〉

 万能ネギ、ハツカダイコン、コマツナ、ルッコラの種から発芽させた苗に①白色蛍光灯②白色蛍光灯+青色蛍光ランプの光を24時間、1週間当て続けて、生長の差を観察する。

〈結果〉

 万能ネギでは、白色蛍光灯の照射で茎の長さは54㎜、対する青色蛍光ランプとの併用照射では76㎜と、1.4倍の伸長だった。しかしハツカダイコン、コマツナ、ルッコラでは、茎の長さ・太さ、葉の広さは白色蛍光灯の方が大きく、青色蛍光ランプとの併用はいずれの生長も抑制した。

〈方法②〉

 ハツカダイコン、コマツナ、ルッコラの苗に①白色蛍光灯②白色蛍光灯+赤色蛍光ランプ(赤色蛍光塗料)の光を24時間、1週間当て続けて、生長の差を観察する。

〈結果〉

 ハツカダイコンでは、白色蛍光灯の照射で茎の長さは95㎜、これに対して赤色蛍光ランプとの併用照射は120㎜と長く、生長を促進した。逆にコマツナ、ルッコラでは、白色蛍光灯よりも赤色蛍光ランプとの併用照射の方が生長を抑制した。

〈考察〉

 植物によって、発芽時期には青色と赤色の蛍光ランプの使い分けが必要になる。

感想

 日常食べている野菜や果物、穀物に含まれる植物色素が同じように蛍光を示すことは驚きだった。試行錯誤して、植物色素の蛍光が、第5位炭素にエチル基が付加して起こることを考え出したのは有意義だった。今後も植物色素の蛍光について、仕組みと応用を探究したい。

指導について

指導について千葉市立稲毛高等学校附属中学校 田辺 久生

 今回の研究は、まず始めに大発見があった。それは、エタノールで抽出した紫キャベツのアントシアニンが、ブラックライトに当てると、美しい水色の蛍光を示すことを発見したことである。それがすべての研究の原動力になった。植物色素が紫外線に対して蛍光を示すものが多いのは、植物が紫外線に対する防御をするため、長い時間をかけて作り上げてきたのであろうと考える。本研究は、アントシアニンを主題にしたので、その他の植物色素の蛍光を調べ、蛍光色の違いはどこから来るのか本質的な事を明らかにできれば、大きな成果となりうる。また、植物色素由来の青色蛍光ランプと赤色蛍光ランプを製作しいろいろな植物の生長にどのような効果があるのか、さらに丹念な実験をして、明らかにすれば、園芸農業やキノコ栽培等に、大きな成果が出せるのではないかと期待できる。

審査評

審査評[審査員] 田中 史人

 小学校6年生の時に紫キャベツ液を使って行った水溶液の性質を調べる実験と、中学校1年生の時に観察した水槽の中の水草の先端部分の緑色が、ほんの少し赤く輝いていることに疑問に持ったことが本研究を行うきっかけとなっています。身近で起こっている現象に疑問を持ち、その解明に向けて取り組んだ姿勢に対して評価します。そして研究では、植物の花や葉、根などに含まれているいろいろな色素の中で、アントシアニンの蛍光を主題にして7種類の実験を進めています。植物に含まれる色素をエタノールで抽出し、紫外線をあて蛍光の違いの観察や、蛍光ランプの色の種類を変えることで光合成への影響や植物の生長に対しての影響などを調べています。オオカナダモ電池の実験では電極にセンサーをつなげて計測し、白色蛍光灯と青色蛍光ランプの併用が光合成において有効性があることも結果として導き出しています。対照実験も適切に行われており実験方法にも工夫が見受けられます。今後の研究のさらなる発展が期待されます。

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