第57回入賞作品 中学校の部
3等賞

植物と過酸化水素水から発生する気体の発生量に関する研究
~植物ロケットの実験からの発想~

3等賞

新潟県上越市立直江津中学校3年
小林 優輝・寺崎 伊央利
  • 新潟県上越市立直江津中学校3年
    小林 優輝・寺崎 伊央利
  • 第57回入賞作品
    中学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の動機

 化学実験の本で「野菜ロケット」を知った。野菜をすりつぶしたものとオキシドールをフィルムケースに入れ、フタをして床に置いておくと、ケース内に気体が発生して中の圧力が上がり、フタがはずれてケースが勢いよく飛び上がるというものだ。自分でも実験したら、植物の種類によってよく飛ぶロケットと、ほとんど飛ばないロケットがある。オキシドールとの反応で気体が多く発生するものは高く飛ぶ。植物の種類や反応させる処理方法などによってどのような違いがあるのか、疑問を解決するために研究した。

課題1:植物の種類や処理方法によって、気体の発生量はどう違うか。

〈方法〉

 植物は春先に手に入りやすいイチゴ、ウド、野草のギシギシ、キュウリ、ゴールデンキウイ、パプリカの6種類。包丁での裁断(2㎝きざみ)のほか、フードプロセッサーのチョッパー(みじん切り)機能(20秒間)やすりつぶし機能を使い、一つの植物からさまざまな処理方法で試料を作製する。試験管の中で、試料10gに対して1.5%オキシドールを10ml注ぐ。4本の試験管で発生させた気体は、それぞれ水上置換法により、水をはったプラスチック衣装ケースの角に逆さに立てた4本のメスシリンダー内に集めて、量を測定する。

〈結果と考察〉

 植物の種類によって気体の発生量は違ったが、イチゴでは全く気体が発生しなかった。細かく刻んだ時が多くの気体を発生させた。試料の細胞にオキシドールが接する面積が増えるためだ。すりつぶした場合は粘り気が出たりしてオキシドールとよく混ざらず、気体発生量は少ない。パプリカもゴールデンキウイも、オキシドールを入れて振り混ぜても、なかなか混ざらなかった。

課題2:気体の発生量と発生時間との関係はどうか。

〈方法〉

 試料にオキシドールを注いでから、どのくらいの時間で気体発生が終わるのか、ホウレンソウ、モヤシ、レタスを試料として調べる。

〈結果と考察〉

 すべてが開始後120~180秒(2~3分)で気体発生が終わった。その後は発生しない。

課題3:使用する植物の部位によって、気体の発生量はどう違うか。

〈方法〉

 手に入る約30種類の野菜や果物などの植物を試料に、それぞれの葉や花序、果肉・種子についての気体発生量を調べる。試料10gに対し1.5%オキシドール10ml、得られる試料が少ない場合は試料5gに対し1.5%オキシドール5mlとして、2倍に換算する。

〈結果と考察〉

 特に果肉・種子での発生が少なかった。レモン、イチゴ、トマトからは気体が発生しなかった。しかし未熟な緑色のミニトマトでは気体が発生した。同じカボチャの試料でも、果皮の部分と果肉内部では気体発生量は異なった。
花序の部分(カリフラワー・ブロッコリー・ミョウガは花芽、アスパラガス・豆苗は葉の芽先、モヤシ・カイワレ・ブロッコリースプラウトは種子からの芽生え)は、気体発生量が多かった。アスパラガス、ミョウガは特に多かった。また、緑色の部位が必ずしも多いわけではない。例えば、白いカリフラワーでは気体が多く発生した。

〈追実験①〉植物の部位による気体発生量の違いを、キュウリ(果肉・果皮・種子の周辺)、カボチャ(中・外)、アスパラガス(花序・茎)、オレンジ(果肉・果皮)で調べる。

〈結果〉

 キュウリは果肉、カボチャは果肉の外側、アスパラガスは花序、オレンジは果皮の気体発生量が多かった。

〈追実験②〉完熟した赤トマトと未熟な緑トマトで、気体の発生量を比較する。

〈結果〉

 赤トマトでの発生はゼロ、緑トマトで平均6mlの発生量があった。

〈考察〉

 気体の発生量は、生長が盛んな部位ほど多いようだ。

課題4:植物とオキシドールによる気体発生は、カタラーゼ酵素による触媒反応によるものか。

 実験後に「食べてしまおう」とカリフラワーをゆでた。ついでにこれを試料に気体発生量を調べたら、生での発生量が多かったのに、ゆでると全く発生しなかった。

《実験1》ゆでた試料からの気体発生

〈方法〉

 レタス、カリフラワー、ホウレンソウをゆでたものを試料に、気体発生量を調べる。

〈結果〉

 いずれも気体発生はなかった。

〈考察〉

 オキシドール(過酸化水素水)は、生物の細胞の中にある「カタラーゼ」という「酵素」によって水と酸素に分解される。酵素は、自分は変化せずに特定の化学反応を速める「触媒」の働きをするたんぱく質だという。これまでの実験結果は、このカタラーゼ酵素によるものか。オキシドールから発生した気体が酸素であることは、線香の火が明るく輝くことで確かめた。

《実験2》オキシドールが気体(酸素)を発生させる変化は、カタラーゼ酵素による反応であることを確かめる。

〈実験2-1〉オキシドールを繰り返し交換する。

〈方法〉

 モヤシを試料(5g)に1.5%オキシドール5mlを注ぎ、5分間ごとに6回、オキシドールを新しいものに交換して反応をみる。オキシドールから酸素を取り出す「触媒」によく使われる二酸化マンガン(0.5g)についても同様に行い比較する。

〈結果と考察〉

 モヤシ、二酸化マンガンはともに6回とも気体が発生した。しかし両方とも4回目から発生量は減った。モヤシは交換を繰り返すたびに弱って、新鮮さが失われていく。二酸化マンガンは交換のたびに粉末が一緒に流れて、減っていくためではないか。

〈実験2-2〉オキシドールの量を増やす。

〈方法〉

 レタス、ホウレンソウの試料(5g)に対し、1.5%オキシドールを5mlから5mlずつ、30mlまで変化させる。

〈結果と考察〉

 オキシドールの量が増すごとに、気体発生量も増えた。一方の反応物質の量の変化で発生量が増えるのは、物質同士の結びつきによる変化ではなく、やはり酵素の働きによるものだ。

〈実験2-3〉酵素はたんぱく質なので加熱で変質する。加熱で気体発生量が変化するか調べる。

〈方法〉

 モヤシ、レタス、ホウレンソウの試料(10g)に1.5%オキシドール10mlを注ぎ、熱湯で加熱後に5秒ごと、20秒までの気体発生量を調べる。

〈結果〉

 加熱時間が長いほど、気体発生量は少なくなった。

〈実験2-4〉気体発生が酵素による触媒反応であれば、活性に適したpHや温度があるはずだ。

〈方法①〉

 1.5%オキシドールを少量の塩酸、石灰水でpH1、3、5、7、9、11に調整し、それぞれ5mlをレタス、ホウレンソウ、モヤシの試料(5g)に注いで気体発生量を調べる。

〈結果と考察〉

 どの試料もpH7前後(中性)で気体を多く発生させたので、やはり酵素による触媒反応だ。

〈方法②〉

 モヤシの試料(5g)を試験管に入れて常温の水(25℃)、冷水(5℃)に15分間浸す。それらの気体発生量を調べる。

〈結果と考察〉

 常温水では平均45.25ml、冷水では平均13.25mlの気体が発生した。同じ袋から取り出しみじん切りにした試料でも、温度が違うだけでこんなにも差が生じた。冷水の試験管を常温水に浸すと、気体が発生した。

《実験で分かったこと》

 気体の発生はカタラーゼ酵素によるものだ。植物以外にもキノコ類や豚バラ肉でも試したら、やはり気体が発生した。ヒトの場合、細胞の老化に関わってカタラーゼ酵素は徐々に失われるという。植物の部位によって気体発生量が異なるのも、この現象に関係し、花序の部位には分裂の盛んな若い細胞が多く、果肉の部位には糖やでんぷん類がたまった古い細胞が多いためではないか。

課題5:野菜の種類や部位によって気体発生量が異なる原因を考える。

 部位の細胞数の違いがカタラーゼ酵素の量の違い、気体発生量の違いとなるのではないか。

〈方法〉

 カボチャ(果皮と果肉)、アスパラガス(花序と茎)、ブロッコリー(花序と茎)を顕微鏡で観察し、0.1×0.1㎜マス目の中の細胞数を数える。

〈結果と考察〉

 どの野菜も花序や果皮の細胞数が、明らかに茎や果肉よりも多かった。細胞数が多いとカタラーゼ酵素の量も多くなり、オキシドールからの気体の発生量も増える。

反省と感想

 初めは「野菜ロケット」がよく飛ぶ条件を調べようとしていた。テーマを見直したことで、やりがいのある研究ができた。しかし思った以上に実験が大変で、失敗があったりやり直しをしたりするなど、実験回数は200回を超えた。最後まで二人で協力して結論を出せてよかった。

指導について

指導について上越市立直江津中学校 長瀬 美香子

 二人が選んだのは当初は「よく飛ぶ野菜ロケット」だった。しかし、使用する野菜の違いによって発生する気体量が違うことに関心が移り、研究としてまとめることができた。几帳面に試料の下処理をする小林君と実験結果を丁寧に記録する寺崎君は、大量のデータを積み上げながら疑問に迫っていった。大きなスイカから試料を取り、余った分を部活の仲間に振る舞い、皆で楽しく食べたこともこの夏の楽しい思い出になった。

審査評

審査評[審査員] 友国 雅章

 野菜ロケットの実験中に、使用する植物の違いによってロケットの飛び方にかなりの違いがあることに気づいた事からこの研究が始まった。科学の世界では、このようなふとした気づきがとても大切で、それがしばしば大きい発見につながる。この研究では、十分な予備実験とそれに基づく綿密な実験計画が立てられており、その結果信頼性の高いデータが得られた。このことをまず評価したい。実験に用いた野菜の処理方法や使用部位、加熱処理と無処理などさまざまな工夫もみられる。これらの実験結果としっかりした考察により、気体が発生するのは植物中にある酵素の働きであることを突き止めた。最後にアドバイスを一つ。用語の誤りや誤字が結構目につく。科学論文では意味さえ通じれば良いというものではなく、このようなミスは論文全体の信頼性に直結する。このことで本研究の評価が少し低くなったかもしれないのは大変残念である。

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