第57回入賞作品 小学校の部
文部科学大臣賞

音を出す虫たちのひみつ

文部科学大臣賞

長野県高森町立高森北小学校3年
松下 郁果
  • 長野県高森町立高森北小学校3年
    松下 郁果
  • 第57回入賞作品
    小学校の部
    文部科学大臣賞

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研究をはじめたわけ

 昨年はキリギリスを卵から成虫まで育て、キリギリスの「賢い生き方」を見つけた。一番興味をもったのは、オスが羽をこすり合わせて出す音だった。メスはオスが出す音を聞きながら、オスに近づいていく。その後キリギリスのほかにも、音を出すたくさんの虫たちが家のまわりにいることに気づいた。音を出す虫たちのひみつを調べたい。

〈1〉音を出す虫たちの様子

 採集した12種類の虫(キリギリスの仲間:キリギリス・ヤブキリ・コバネヒメギス・ウマオイ・オナガササキリ・クサキリ・セスジツユムシ、コオロギの仲間:カンタン・エンマコオロギ・ミツカドコオロギ・ツヅレサセコオロギ・ハラオカメコオロギ)の体、音を出す様子を観察する。なおカンタンは、コオロギとは別の仲間としても分類される。

〈方法〉

 キリギリスとコオロギの仲間(カンタンを含む)のオスは、羽にある「やすり器」ともう片方の羽にある「こすり器(まさつ器)」をこすり合わせて音を出す。その時、左右どちらの羽が上側にあるかを調べる。それぞれの写真と前足などにある「耳」の写真を撮る。出す音の大きさや、1秒間に羽を動かす回数などを調べる。1秒間の回数は、1秒間に480コマ撮影できるビデオカメラで撮影し、羽が1回動いて元に戻るまでのコマ数で480コマを割り算して求める。

〈結果〉

・キリギリスの仲間(オス)は、左の羽を上にして、右の羽とこすり合わせて音を出す。左の羽の裏側に「やすり器」、右の羽の表側に「こすり器」がある。
・コオロギの仲間(オス)は、右の羽を上にして、左の羽とこすり合わせて音を出す。左右どちらの羽にも裏に「やすり器」、表に「こすり器」がある。

〈2〉オスが出す音にメスは
どうやって近づくか

 音を出す虫は、種類によって出す音も音の大きさも出し方も違う。虫たちはどうやってメスを呼んでいるのか。

(1)種類によって違うメスの近づき方

〈方法〉

 虫かごに入れたオス(キリギリス・ヤブキリ・コバネヒメギス、エンマコオロギ)から約8m離れた場所にそれぞれのメスを置いて、オスに近づく様子を大きな紙に記録する。

〈結果〉

 オスへの近づき方は、虫の種類によってまったく違う。

キリギリス:メスは、オスから遠い場所では立ち止まってオスの音を聞き、近づくとオスの音の方向に向きを変えながら進む。右や左に行き過ぎてしまうので、ジグザグな歩き方になっている。歩き方が速いので、スタートしてから3分ぐらいでオスの所に着いた。

ヤブキリ:オスの出す音が長いので、メスはそれを聞きながらどんどん近づいた。オスの音が聞こえなくなると立ち止まり、オスが音を出すまで待って、聞こえだすとまた進んだ。かかった時間は2分ぐらい。

コバネヒメギス:オスはずっと音を出し続けているが、かなり小さい音だ。他の音がすると、私も聞き取れないくらいだ。メスは何回も立ち止まって音を聞きながら慎重に進むので、10分以上も時間がかかった。でも歩く道筋は真っすぐだった。

エンマコオロギ:メスは何十回やってもオスの所にたどり着かなかった。立ち止まってオスの音を聞いたようだが、まったく違う方向に進んで行った。

(2)オスを野外に出してメスを呼ぶ

〈方法〉

 オス(キリギリス、エンマコオロギ)を虫かごに入れて野外に置き、オスが出す音を聞いて自然にいるメスが近よって来るか調べる。

〈結果〉

 キリギリスのオスに、3匹以上のメスが近づいた。エンマコオロギのオスには、何時間たっても、メスは近づいて来なかった。

〈3〉エンマコオロギのメスは
どうしてオスに近づかないのか

(1)コオロギが出す音について

 今回の12種類の虫のうち、キリギリスの仲間は、音の長さや区切り方は少し違うこともあるが、いつも同じ音を出している。しかし、コオロギは時々違う音を出している。コオロギはどんな場合に音を変えているのか調べる。

〈方法〉

 同じ虫かごにコオロギ(エンマコオロギ・ツヅレサセコオロギ)のそれぞれのオスとメス、オスとオスを一緒に入れて、出す音を比べる。ミツカドコオロギとハラオカメコオロギは、メスを採集できなかったので実験できなかった。

〈結果と考察〉

オスとメス:エンマコオロギのオスは「コロコロリー」という音を出し、ツヅレサセコオロギは「リーリーリー」というきれいな響く音を出した。これはオスがメスを呼んでいる音だ。〈2〉の観察でも、エンマコオロギのオスはこの音を出してメスを呼んでいた。
オスとオス:エンマコオロギは「キッキッキッ」、ツヅレサセコオロギは「リリッリリッリリッ」と、強く音を出した。これはオス同士がケンカをしているのだと思う。

(2)エンマコオロギのオスとメスの様子

〈方法〉

 オス2匹とメス1匹を、一緒に大きな入れ物に入れて、出す音や動きなどを観察する。

〈結果と考察〉

 オスがメスに近づいて「コロコロリー」と誘うが、メスは気に入らないのか逃げ回った。最初のケンカで負けた方のオスは、メスを誘うこともしないでじっとして、メスが近づいても知らんぷりだ。コオロギの場合、メスはどんどんオスに近づくことはしないで、オスがメスに近づいていくことの方が多いのかもしれない。オスはとても積極的だった。

(3)オナガササキリのオスとメスの様子

〈方法〉

 エンマコオロギの時と同じようにオス2匹、メス1匹で様子を観察する。

〈結果と考察〉

 コオロギとは違い、オス同士はあまり近づかないので、ケンカみたいにはならなかった。オスの出す音を聞いてメスがすぐ近くに来ても、オスはぜんぜん動かなかった。オナガササキリはコオロギと違って、積極的ではない。

〈4〉音を出すひみつ

 死んだウマオイを持ち上げた時、たまたま羽がこすれて音が出た。ウマオイが音を出す時は、あまり羽を立てずにそのままこすっているので、持ち上げた時に、羽の「やすり器」と「こすり器」がうまくこすれて音が出たのだと思う。それを確かめる。

〈方法〉

 死んだウマオイの胸の部分を押したり、戻したりして音を出してみる。

〈結果と考察〉

 羽がこすれて「プチップチッ」という、ツメを引っかくような音がした。音は小さいが、1つ1つはっきりしている。「やすり器」のツメを「こすり器」が引っかいていることが分かった。これを速く動かすと、いつものような音になるのだ。

〈5〉音が大きく響くのはなぜか

 「やすり器」と「こすり器」をこすり合わせただけで、どうして大きな音が出るのか。図鑑では、羽には「発音鏡(はつおんきょう)」という薄いまくのところがあり、ここで音を大きく響かせているとあった。

(1)キリギリスやクサキリの発音鏡に穴をあける

〈方法〉

 かわいそうだけど針で発音鏡に穴をあけて、音の出方を調べる。

〈結果〉

 キリギリスの「ギーッチョン」は最初の「ギー」が続くだけで、後の「チョン」の盛り上がりと響きがないまま、すぐに音が終わってしまう。思ったよりも音そのものは大きいが、響かない。
 クサキリの「ジィー」は「ィ」が抜けて高く響く音がなく、小さく「ジー」が続くだけ。いつもの機械みたいな音がない。

(2)ウマオイの左羽に穴をあける

 発音鏡は、コオロギは左右の羽にあり、キリギリスの仲間は右の羽にあるが、ウマオイだけは左の羽にも透明できれいに光る発音鏡みたいな部分がある。

〈方法〉

 ウマオイの右羽の発音鏡はそのままにして、左の「発音鏡みたいな部分」に針で穴をあけて、音の出方を調べる。

〈結果〉

 いつもの高く響く音は出せなかった。細かくこするような音しか出なかった。

(3)エンマコオロギの羽に穴をあける

〈方法〉

 片方の羽に針で穴を1つ、3つあけ、さらに切り込みを入れたもの、羽を切ったもので音がどう変わるか調べる。

〈結果〉

 音の出方は、1つ穴ではあまり変わらない。3つ穴では少しかすれた。切り込みでは「シュル シュル シュル」という音。羽を切ると「シャラ シャラ シャラ」という音が出て、響かなくなった。

〈6〉音を響かせる羽の工夫

 羽の模型を作って音を響かせてみる。

(1)ウマオイの羽の開き方

〈方法〉

 2つの輪にトレーシングペーパーをはったものを羽に見たてて、こすり合わせる。

〈結果と考察〉

 下に伏せたままこするよりも、浮かせながらこすり合わせた方が、左右のペーパーのまくに音が当たって、やまびこみたいに音が響く。ウマオイのような音は自然の中では周りに響きすぎて、いろいろな方向から聞こえてくるように感じるため、なかなか見つけることができない。それは、この羽の開き方にも関係があるのだ。

(2)エンマコオロギの羽の開き方

〈方法〉

 エンマコオロギの羽のように、トレーシングペーパーを立ててこすり合わせる。

〈結果と考察〉

 伏せたままよりも、立てながらこする方が、音が大きく聞こえた。コバネヒメギスにも発音鏡があるが、羽が小さいから小さい音しか出ないのだ。

〈7〉コオロギだけ左右同じ羽のひみつ

 カンタンとコオロギは左右の羽のつくりが同じで、それぞれに「やすり器」と「こすり器」をもっている。しかし音を出す時は右の羽が上になり、右羽の裏側にある「やすり器」を左羽の端っこにある「こすり器」でこすっている。

(1)エンマコオロギの羽の重なりを左右入れ替えても音が出るのか

〈方法〉

 エンマコオロギの羽の重なりを左右入れ替える。

〈結果と考察〉

 何度入れ替えても、2分ぐらいたつと元に戻る。左右の羽が逆の重なり方のときは一度も音を出さなかった。羽のつくりとしては音が出るはずだが、羽の動かし方の関係で、左右が逆では都合が悪いのかもしれない。

(2)エンマコオロギにも右きき、左ききがあるのか

〈方法〉

 エンマコオロギのオスをたくさん採集し、羽の重なりを調べる。

〈結果〉

 30匹中すべて右の羽が上だった。

〈8〉あの小さいものが本当に耳なのか

 キリギリスの耳は前足と胸にある。これを聞こえなくしたメスは、オスが音を出しても近づいていかないのか、確かめる。

〈方法〉

 かわいそうだが、メスの前足の耳のまくを針で破く。胸の耳は奥がどうなっているのか分からないので、接着剤ボンドを流して穴をふさぐ。

〈結果〉

 メスは、いくらオスが音を出しても、ぜんぜん近づかなかった。

〈9〉音を出す時刻の違いは何か

 ヤブキリやウマオイのように夜しか音を出さない虫、コバネヒメギスやオナガササキリのように一日中音を出している虫もいる。何を感じて音を出したり、やめたりしているのか。

(1)ヤブキリはなぜ夜しか音を出さないのか

〈方法1〉

 夜に暗くなると音を出すのかもしれないと考え、夕方からずっとライトをつける。

〈結果と考察〉

 オスは夜になると元気に音を出した。明るさではなく気温が関係するのか。

〈方法2〉

 オスは晴れている日なら、夜の気温が25℃の時でも音を出した。雨が降って、気温が低い(25℃)昼間にオスの様子を観察する。

〈結果と考察〉

 気温が同じでも、オスは昼間は音を出さなかった。明るさや気温は関係ないとすると、ヤブキリは時刻が分かっていて、夜に音を出し始めるのだ。

(2)エンマコオロギはいつ音を出すのか

〈方法1〉

 昼間に、エンマコオロギに箱をかぶせて暗くした。

〈結果と考察〉

 音は出さなかった。違う日の昼間に家の中に入れたら、オスが音を出し始めた。

〈方法2〉

 明るさが同じで気温が違う場所、家の2階(30℃)と1階(25℃)で比べる。

〈結果と考察〉

 1階のオスは音を出したが、2階のオスは出さない。エンマコオロギのオスは気温が高い時は音を出さず、25℃ぐらいになると音を出すことが分かった。その後の自然の観察でも、気温が25℃ぐらいの日は昼間でもエンマコオロギのオスが出す音が聞こえた。

感想

 散歩に出かけて、虫の音を聞きながら虫を探すのはとても楽しかった。いろいろな方向から音が響いて見つけにくかった虫も、コツが分かって早く見つけられるようになった。虫かごの虫たちの動きをじっと見ているだけでも、面白いことがたくさんあった。1匹1匹が「今こんなことをしゃべっている」「今こう思っている」などと想像するのも楽しかった。虫たちとは今までよりも、もっともっと友だちになった感じがした。

指導について

指導について松下 尚史

 姉の影響で、保育園の頃からいろいろな昆虫を捕まえて育てていた郁果。2年生の春、土の中から出てきたキリギリスの幼虫を育てながら、キリギリスの不思議な生態に興味をもちました。今年は、音を出すいろいろな種類の昆虫を育て、音を出す秘密を調べてみたいと研究を始めました。私にとっても「へ~」と思うことの連続で、一緒に感動しながら研究を進めていきました。特に、種類ごとに違うオスが出す音やメスの近づき方など、初めて知ることばかりでした。毎晩、家族みんなで虫の音を聞きに散歩に出かけました。最初は虫の居場所をなかなか見つけられませんでしたが、音の発信源がすぐに見つけられるようになっていく郁果でした。虫たちと距離がぐっと近づいたような気がしました。今回、このような賞と機会をいただき本当にうれしく思います。元々虫好きでしたが、もっと昆虫に興味をもち、調べていきたいという思いを強くもったようです。

審査評

審査評[審査員] 友国 雅章

 小学校2年生だった松下さんは、前の年にメスのキリギリスが産んだ卵を成虫になるまで大切に育ててさまざまな観察をしました。その経験を基に3年生になった今年はキリギリスのほかにもいろいろな鳴く虫を飼育して、それらの音の出し方や音に反応するメスの行動など、さらに詳しい観察と実験をしたのがこの研究です。松下さんはまずキリギリスのなかま7種とコオロギのなかま5種を飼育して、音を出すしくみや音色の違い、鳴く時間帯などを細かく正確に観察しました。また鳴いているオスのキリギリス、ヤブキリ、コバネヒメギス、エンマコオロギにそれぞれのメスがどのような反応をするかも調べ、エンマコオロギだけはオスに近づかなかったという大変興味深い行動を観察しています。キリギリスと違い、エンマコオロギはオスがやさしく鳴きながらメスに近づく習性があります。またオス同士が出会うと相手をおどすような鳴き方をします。松下さんはこのような鳴き方の違いも見逃さずに観察し、素晴らしい記録を残しました。

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