第58回入賞作品 中学校の部
1等賞

底のある「底なし沼」の研究

1等賞

愛知県刈谷市立依佐美中学校 「底なし沼」班 1年・3年
黒川 紘一朗・清水 惇矢・松尾 颯斗・杉浦 陸・田中 稜真・渡辺 皇海
  • 愛知県刈谷市立依佐美中学校 「底なし沼」班 1年・3年
    黒川 紘一朗・清水 惇矢・松尾 颯斗・杉浦 陸・田中 稜真・渡辺 皇海
  • 第58回入賞作品
    中学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

 2017年7月、河口湖が渇水のために「底なし沼化」し、大人がはまって抜け出せなくなったというニュースを見た。 地質学的には「底」があるのに、昔から「底なし沼」が存在していることに興味をもった。

研究の方向と定義

 研究の方向を決めるため、「底なし沼」についての疑問
(1)そもそも「底なし沼」とは何か?
(2)どうやってできるのか?
(3)なぜ「底なし沼」から抜け出せないのか?
(4)脱出法はあるのか?
を挙げた。さらに疑問(1)から、「底なし沼」を定義した。
定義1:濁って底が見えない
定義2:どろっとして、流れがない。
定義3:密度が沼よりも小さい物体は沈まないが、その物体が動くと沈んでいく。――この3つがそろったものを「底なし沼」とする。

《予備実験》疑問(2)の「底なし沼」のでき方について、2つの仮説を立てて「底なし沼」をつくり、定義に合うか調べる。

〈仮説1〉

 窪地などに降った雨水が表面の土と混ざり合うことで、どろどろのぬかるみになり「底なし沼」ができる。

〈仮説2〉

 湖などに土が運搬され、それが堆積して「底なし沼」ができる。

検証①

 メスシリンダー(500ml)に土300mlを入れ、500mlの目盛りまで水を注ぐ。土はマウンド、グラウンド、田んぼ、山の4種類。2日間静置後の土の状態で、定義1~3と比べる。

検証②

 検証①のメスシリンダーの口をふさぎ、何度も上下をひっくり返して、土と水をよく混ぜる。2日間静置し、堆積した土の状態を定義1~3と比べる。

◇「底なし沼」の定義に合致する場合

・定義1→メスシリンダーを横から見て、水と土面(沼面)とに明確な境がある。真上から見て、底下に置いた文字Aが見えない。
・定義2→メスシリンダーを左右に激しく揺らすと、土面(沼面)が波立つ。 傾けても、土面は傾かない。
・定義3→振動していない「振動歯ブラシ」を土面(沼面)に立てても沈んでいかないが、振動していると沈み込む。

〈結果〉

 ◇定義1の確認:検証①②ともに、水を注ぐと土と の間に明確な境はできたが、土は沼化しなかった。

◇定義2の確認:上部の余分な水を抜いて行った。「地震液状化 現象実験装置」(以下、装置)による横揺れに対しても波立たなかった。

◇定義3の確認:「振動歯ブラシ」の沈みは、 検証2の田んぼの土が最も大きかった。歯ブラシを静置した沈みは6.0cm、振動後の沈みは10.0cm、振動によって4.0cm沈み込んだ。歯ブラシを静置した時の沈みは、堆積した第1層の厚さ(5.7cm)にほぼ一致した。田んぼの土の第1層の土の粒はかなり小さいと考えられる。

《モデル実験》土の粒の大きさの違いによって、振動後の様子はどう変わるか。

〈方法〉

 ビーカーに手芸用ペレット、BB弾、発泡スチロー ルの3種類の粒を入れて、装置で1分間振動させる。粒と粒の間隔、振動中の動きを観察する。

〈結果〉

 1 種類の粒だけを入れた場合、振動後は粒が整列し、余計な隙間がなくなった。3種類の粒を混ぜ入れて振動させると、大きな粒同士の隙間に小さな粒が入り込んだ。色の異なるBB弾を層状に入れた場合、振動中も層は崩れなかった。3種類を粒の大きい順に下から層状に重ねて振動させても、層は崩れなかった。

〈考察〉

 振動が加わると、土の粒はより安定する位置へと移動する。粒の大きさが均一の場合、粒は整列して安定し、 隙間がなくなり、動かなくなる。その結果として、振動後の短時間に土は硬くなり、物体もなかなか沈み込まない。 予備実験では沈んだ振動歯ブラシを抜くのに、田んぼの土による沼では最大1.12Nの力、グラウンドの土では15~39Nの力が必要だった。田んぼの土の沼を「ゆるい『底なし沼』」、グラウンドの土の沼を「きつい『底なし沼』」とする。

追究1:なぜ「底なし沼」から抜け出せないのか~疑問(3)の解明

《検証1》「底なし沼」に沈み込むのはなぜか。水がある時、ない時の土の粒の動きを、モデル実験で調べる。

〈方法〉

直径6mmのオレンジ色、黒色のBB弾、砕いた緑色のBB弾を混ぜたものをビーカーに入れる。リモコンで振動するよう改造した「ピグモン」のソフビ人形を載せて、沈み込みや粒の動きを調べる。ビーカーに水を粒が浸るまで入れた場合、装置で振動させた場合とで比較する。

〈結果〉

 ピグモンを振動させた1分後には、水なしではくるぶし程度まで沈み、水ありではひざ上まで沈んだ。1個の黒色BB弾に注目すると、水なしでは1分後の位置はほぼ変わっていないが、水ありでは1分間沈み続けていた。ピグモンの足付近のBB弾は、水なしでは最初にずれてピグモンが沈んだが、その後はBB弾の動きはなかった。水ありでは、常にBB弾が動いていた。装置による振動では、水なしのBB弾はうねりながら全体が激しく動いた。水ありは水面(沼面)が波立ち、表層の粒が上下に動いた程度だ。砕いたBB弾は、水なしでは全体がうねる中で混ざり合い、下に落ちていった。水ありでは波の動きに合わせて動いたり、他の粒の振動に合わせて動いたりして、なかなか沈むことはなかった。

〈考察〉

 水のある方が粒の動きが自由だ。「底なし沼」でも、人が動くことで、人を支えている土が動き、沈み込むのではないか。極めて小さな土の粒は振動で巻き上がるが、水の抵抗で下に落ちないために、振動源付近の粒の移動が遅く、崩れやすくなるのかもしれない。水のある方の粒の動きが自由になる理由としては、粒の間に水が入り、 粒同士の摩擦が小さくなること、振動が水によって広範囲に伝わることが考えられる。

《検証2》なぜ「底なし沼」から抜け出せないのか。

〈方法〉

 モデル実験で、振動ピグモンをひざ辺りまで沈めた後に抜いてみる。

〈結果〉

 水なしでは、引き抜いたピグモンの足に何も付いていなかった。水ありでは、濡れた粒が足にくっついてき た。粒が足に絡みつく様子を観察すると、ピグモンの振動で足付近の水や粒も振動を始め、細かな粒は下に沈んだり、足の甲に舞い上がったりした。細かな粒が舞い上がると、ピグモンがバランスを崩して、足はどんどん沈み込んだ。足の下の粒も甲に舞い上がった。

〈考察〉

 水の流れが舞い上がって足に当たると、足の甲に巻き込むような流れができ、それに沿って粒が甲に積もる。その巻き込む流れを「カルマン渦」という。水の入ったメスシリ ンダーに振動歯ブラシを入れ、インクを垂らして広がり方を調べると、インクは振動源に接する部分から渦を巻き、振動源に絡みつくように広がった。「底なし沼」の場合も同様に、人の足が沈みながら、渦によって足に土が積もる。もがく動作が激しいほど、水の流れも大きくなって、大粒の土が巻き上がる。「ゆるい『底なし沼』」では、もがくことで極めて小さな粒が自由に動き、足場が大きく崩れることにより、さらに沈む。「きつい『底なし沼』」では、体の凹凸に積もった土のために身動きが取れず、他力によって引っ張られても、土の水が抜けてさらに固まり、抜けなくなってしまうと考えられる。

追究2:「底なし沼」からの脱出法はあるのか~疑問(4)の解明

 漫画『北斗の拳』に、南斗水鳥拳の奥義「飛翔白麗」を使い、 沼面を強くたたいて流砂を抜け出る場面があった。それをヒントに、おもちゃ「ピョンピョンカエル」(ポンプで空気を送ると足が伸びて跳ねる)を使って脱出方法を考える。

〈方法〉

 ビーカーに田んぼの土(粒2mm以下)で「ゆるい『底なし沼』」、グラウンドの土で 「きつい『底なし沼』」を作り、漫画の人物のように、ストローで足を長くしたピョンピョンカエルの足を沼に沈めて、飛び跳ねる様子を観察する。

〈結果〉

 「ゆるい『底なし沼』」では、5回目で足が抜け出せたが、手は沼に沈んでいた。「きつい『底なし沼』」では、1回目から体全体が抜け出せた。

〈考察〉

 抜け出せたのは「ダイラタンシー」(片栗粉を水と混ぜたものは液状だが、急に圧力を加えると固体状にな る現象)を利用したからだ。「底なし沼」の液状の粒に急に力が加わって沼が固体化し、抜け出せたのではないか。

まとめ

「底なし沼」には、土の粒の大きさや水の存在が関係している。沼の中で動くことで、沈み込むとともに抜け出すことが難しくなるのが「底なし沼」と呼ばれる由来だ。ダイラタンシー現象の利用で、抜け出すことが可能かもしれない。

指導について

指導について刈谷市立依佐美中学校 平松 拓真

 本研究は、底なし沼に大人がはまって抜け出せなくなったというニュースを見た生徒が、底は絶対にあるのに、昔から「底なし沼」が存在していることに、とても興味を持ったことから始まりました。土の種類や粒の大きさなどさまざまな要因を自分たちで考え、試行錯誤を繰り返しながら、底なし沼になるであろう条件を見つけることができました。その要因を用いて、モデルでの実験をすることで、ようやく本研究の目的である、なぜもがくと沈んで抜け出せないのか、脱出方法はあるのかを追究することができました。実験の下準備や実験中の沼の管理など緻密な作業が多い中、結論にたどり着くことができました。研究とは、分からない事を何度も実験・検証をし続けることが重要になります。今後も研究者としての一歩を踏み出した彼らが、更なる成長をしてくれることを願っています。

審査評

審査評[審査員] 髙橋 直

 少雨による水不足で河口湖の水位が低下して泥沼化し、「まるで底なし沼」になったというニュースに触発された研究である。 渇水のせいで湖底が露出し、そこに立ち入った人物がはまって 抜け出せなくなり、消防に助けを求める騒ぎになったということだが、なぜ沈み込むのか、なぜ抜け出せないのかを、自分たちで「ミニ底なし沼」を再現して丹念に追究している。水と混ぜる土の種類や、作り方によって「ゆるい底なし沼」と「きつい底なし沼」という異なる状態になることを見いだし、また、プラスチックの粒で沼モデルを作り検討するなど、さまざまな工夫をし、結果を手際よくまとめているのに感心させられる。漫画に描かれていた、流砂から脱出する方法の実現性を、空気圧でカエルがジャンプする玩具を利用して検証した実験が面白い。全体として、楽しみながら実験している印象で、これからも興味のおもむくままいろいろ研究していってほしいと思わせる論文である。

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