第58回入賞作品 小学校の部
2等賞

健康な土の力

2等賞

沖縄県北中城村立北中城小学校6年
後藤 朴然
  • 沖縄県北中城村立北中城小学校6年
    後藤 朴然
  • 第58回入賞作品
    小学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の動機

 国の重要指定文化財「津嘉山酒造」(名護市)の修復工事を見学した。屋根の赤瓦を何十年も下から支える「葺(ふ)き土」に、稲わらを細かく切った「わらスサ」が入っていた。素の土に自然素材のスサを混ぜると、土の力はどう変わるのか、探ってみたいと思った。

研究の目的

 沖縄県の代表的な土壌「島尻マージ」「ジャーガル」「国頭マージ」に植物繊維などを混ぜて、圧縮強度やひずみ度、漏水などの各種実験を行い、「健康な土」の力を数値で表す。

〈1〉ひび割れ実験

 乾燥による土の弱点「ひび割れ」(収縮)がどれだけ発生するのか調べる。

〈方法〉

 3種類の土(島尻マージ・ジャーガル・国頭マージ)各3kgに水を含ませて練りあげたもの、さらにそれぞれに「わらスサ」30gを加えて練ったものを、木枠で作ったマス目(2マスずつ)に塗り込む。10日間陰干ししてから各マスの縦(Y軸)・横(X軸)の長さを測定し、素の土とスサ入り土の収縮率を比較する。

〈結果〉

 島尻マージでは、X軸での平均収縮率は素の土が12.19%、対するスサ入りは11.28%と、スサ入り土の方が小さかった。Y軸でも素の土は11.785%、スサ入り10.11%と、スサ入り土の方が小さかった。同様にジャーガル、国頭マージでも、国頭マージのX軸での素の土(平均収縮率0.785%)だけはスサ入り(2.385%)よりも小さかったが、それ以外のX軸、Y軸ではいずれもスサ入りの方が平均収縮率は小さかった。

〈考察〉

 全部のスサ入り土が、素の土よりも収縮率が小さくなると考えていたので、予想外だった。しかし、素の土に大きなひび割れが発生し、スサ入りは「ヘアークラック」と呼ばれる髪の毛ほどの細いひび割れしか入らなかったので、ひびが入りにくいのはスサ入りだ。

〈2〉圧縮強度実験

 土がどれだけ硬いか(圧縮力に耐えられるか)調べる。

〈方法〉

 島尻マージ・ジャーガル・国頭マージの3種類の素の土各3kgを各2個。3種類の土3kgにわらスサ各30gを混ぜたもの各2個、3種類の土3kgに砂150gを混ぜたもの各2個をサンプルとする。それぞれを地質調査会社から借りた容器に入れて固め、円柱状に成型する。サンプルを一軸圧縮試験機にセットし、上下方向に徐々に圧縮荷重をかける。測定値は面積1cm²当たりの荷重なので、1m²当たりに換算して比べる。

〈結果〉

 圧縮に耐える力(圧縮応力)は、素の土では島尻マージが44t/m²で最大、国頭マージが22t/m²で最小だった。スサ入り土では最大が島尻マージの61t/m²、最小はジャーガルの40t/m²だった。スサ入りの強度は、素の土の1.3~2.2倍増した。

〈3〉圧縮ひずみ度実験

 圧縮力に対して土はどれだけひずむか(粘り強いか) 調べる。

〈方法〉

〈2〉の圧縮強度実験で得られた「圧縮応力-ひずみ曲線」のデータと、3種類のスサ入り土に新たにいろいろな自然素材(ゲットウ・カラムシ・トラノオなどの植物繊維3g、松ヤニ20g、菜種油50g、卵白3個分)を混ぜた土(「いろいろ土」)で行った圧縮実験のデータから、各サンプルのひずみ度(粘り強さ)を比較する。ひずみ度は、圧縮後のサンプルの元の高さに対する「圧縮ひずみ」、圧縮応力がサンプルの最高値(破壊されたとき)から5%下がるまでの「ひずみ時間」、さらに「いろいろ土」ではサンプルの元の円柱幅に対するふくらみ度(座屈度)から評価する。

〈結果〉

 圧縮ひずみは、素の土と砂入り土がほぼ変わらず、スサ入りの土は「素」の約3倍あった。さらに「いろいろ土」は、圧縮応力は「素」の1/10だが、圧縮ひずみは「素」の約4倍も大きかった。ふくらみ度はすべての土が5~10%の範囲で、種類によっての傾向はなかった。ひずみ時間は、3種類の素の土の平均27.5秒に対し、「いろいろ土」は平均90秒と約3倍ねばり強かった。

〈4〉漏水実験

 土はどれだけ水を通しやすいのかを調べる。

〈方法〉

 〈1〉のひび割れ実験で使った木枠のマス目に、土で四角い容器(縦横約12cm、肉厚約1.5cm、深さ約2cm)を作り、150ccの水を注ぐ。その水がなくなるまでの時間を計り比較する。用いる容器は3種類の素の土にわらスサと植物繊維、さらに卵白や菜種油、松ヤニを混ぜて作った12種類。

〈結果〉

 島尻マージとわらスサ・植物繊維を混ぜた土が一番早く、わずか3分でなくなった。次がジャーガル+わらスサ・植物繊維の11分。一番長く8日間近くも水が抜けなかったのが、島尻マージ+わらスサ・植物繊維+卵白・菜種油・松ヤニの土で189時間13分。次が同じ自然素材を混ぜたジャーガルの152時間46分だった。全体的に水漏れがしにくいのは国頭マージとの組み合わせ(6時間4分~115時間15分)だった。

〈5〉含水比実験

 土は含まれる水分の量によって、工学的な性質が異なってくる。そのため、土に含まれる水分の土粒子に対する質量比(含水比)を調べる。

〈方法〉

 これまでの実験で使った12種類の土を乾燥機に入れて乾燥させる。(サンプルの元の重さ-乾燥後の土の重さ)÷乾燥後の土の重さ×100(%)によって、それぞれの含水比を求める。

〈結果〉

 含水比の大きい順に島尻マージ(いろいろ)42.55%、ジャーガル(いろいろ)37.52%、島尻マージ(わらスサ)30.72%......。一番小さかったのは国頭マージ(砂)の9.88%、次が国頭マージ(素)の11.39%だった。これまでの実験結果と合わせると、含水比が一定だと 圧縮ひずみも一定であることが分かった。

〈6〉pH試験

 土の性質を知るために酸性・アルカリ性を調べる。

〈方法〉

 土の試料をシャーレに入れ、水で溶かした液にリトマス試験紙をつける。

〈結果〉

 島尻マージは青色リトマス紙が赤色になり酸性、ジャーガルは赤色リトマス紙が青色になりアルカリ性、国頭マージもアルカリ性だった。

感想

 これまでの実験結果から、自然素材を混入させることで沖縄の土の力をコントロールできることが分かった。これらを活用して、沖縄特有の赤土流失防止や環境と共生する建設材料などに役立てるとともに、さらに、化学素材を使わない「健康な土」を生かした食べものづくりやモノづくり、家づくりを目指したい。

指導について

指導について後藤 道雄

 一昨年「なぜ、植物は石にも育つのか?」、昨年「身近な木を使った熱源確保(木炭)」、今年「健康な土の力」といずれも地域の自然素材に目を向け、景観形成、危機管理、自然との共生など社会に役立つための手段としての自由研究を行い、県内で一定の評価を得てきました。今回もいつものように自ら試験台を作り、土の掘削・調合、つき固め、計測、分析等を行い、また、混合する松ヤニを松林で採ったりもしました。自分でパソコンを使ってグラフづくりができるようになったのは、本人にとっては別な収穫となりました。15秒おきに677回にも及ぶ破壊試験の計測針から一瞬も目を離さず、食い入るように見つめる真剣なまなざしが受賞に結び付いたのかもしれません。このような全国規模のコンクールで賞をいただくことを光栄に思います。今後も、日本の自然や文化に沿った社会性の高い自由研究を極めてもらいたいと考えています。ありがとうございました。

審査評

審査評[審査員] 林田 篤志

 修復工事の見学会で見た、スサの入った葺き土に興味をもち、土に自然素材のものを混ぜ合わせたら土の性質がどのように変化するのだろうかという疑問から研究が始まりました。地元沖縄の代表的な土(島尻マージ、ジャーガル、国頭マージ)を実験対象に、土そのものの性質の他に、わらスサなどの植物繊維や砂、松ヤニなど身近なものを混入して、圧縮応力、ひずみ度、漏水等の各実験を丁寧に行いながら、その結果を数値で明確に表したところが評価できます。実験から、スサなどの自然素材を入れることにより、強度が増し、ひずみ度も大きくなること、また、粘り強さや水の通しにくさも増すことなどを導き出しました。さらに、実験結果をもとに、それぞれの土の特色を生かした用途にまで言及しているところが素晴らしい点です。化学物質に頼らない、土同士の混合や自然素材の混入によって、土の性質を制御し活用できることを突き止めた今回の研究を今後さらに発展させてほしいと思います。

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