第48回入賞作品 小学校の部
1等賞

サツマイモの生命力のひみつを探る

1等賞

茨城県つくば市立桜南小学校 6年
丸山 諒太
  • 茨城県つくば市立桜南小学校 6年
    丸山 諒太
  • 第48回入賞作品
    小学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

野菜入れの中のジャガイモが、芽を出しているのをよく見かける。イモはイモでも、サツマイモが芽を出しているのを見たことがない。不思議に思い、サツマイモも芽を出せるのか調べることにした。

研究1:サツマイモの芽の出方を探る

【実験1】

ただ置くだけで芽が出るか。

《方法》

サツマイモを横向きに置く。比較対照としてジャガイモも同じように置く。様子や変化を観察する。

《分かったこと》

サツマイモも置くだけで芽が出てくる。
芽の色はサツマイモの皮と同じ赤紫色をしている。
サツマイモはジャガイモより、芽が出てからは生長が早く、葉もたくさん出て大きくなる。
サツマイモの芽は上向きだ。

《考察》

サツマイモの芽が出てくる場所に片寄りがあることに気づいた。基部側から芽が多く出ている。芽が出るには、何か決まりがあるのだろうか。

【実験2】

縦に置くとどうなるか。

《方法》

茎の基部を上にして縦に置く。
根の先端を上にして縦に置く。

《気づいたこと》

サツマイモの先端部分に、黒いタール状でベタベタしたものがあった。顕微鏡で調べると、大小さまざまな丸い塊が見えた。

《分かったこと》

基部を上に置いても、先端を上に置いても、それぞれ基部から芽は出てくる。
基部が上の方が生長は早い。
芽は置き方に関係なく上向きだ。

《考察》

芽は基部から出てくる決まりがある。
基部に太陽があたる方が、生長は早くなる。
芽は太陽のあたる方に伸びる性質がある。下を向きながらも、光がうまくあたるように芽を上向きに起き上げて行く。

《疑問》

根はどこから出てくるのだろう。
根を出すにはどうすればいいのだろう。根の水中栽培という言葉を聞いたことがあるし、根は水を吸うのだから、水に浸してやれば根は出てくるのではないだろうか。

【実験3】

水に浸すと芽や根は出るか。

《方法》

実験1、2のように横置き、基部を上にした縦置き、根の先端を上にした縦置きにしてそれぞれ水に浸し観察する。

《分かったこと》

横向きに置いた時、芽は基部から上向きに出た。根は、出た芽のつけ根の水に浸っているところから1本出た。
縦向きに置いて基部を上にした時は、基部から芽が上向きに出た。根は水に浸っている根の先端から出た。また、真ん中あたりから芽が出て、その芽のつけ根から根がさらに伸びた。
縦向きに置いて先端を上にした時、水に浸っているにもかかわらず、基部から芽が上向きに出た。その芽のつけ根から根が出てきた。先端近くからも芽を出した。
どの置き方も水に浸した方が、ただ置いた時と比べて芽が早く出る。
水に浸っている芽のつけ根からは根が出てくる。

《考察》

根の先端が水に浸っていると、何の問題もなく先端からたくさんの根を出す。根の出る場所も決まっている。根を出す物質は、基部を上にした時に上から下に移動し、横にした時、根が出なかったのは、この物質が移動しにくかったからではないか。
芽のつけ根から出てきた根は、基部が上の時に先端から出てきた根と違う。本で調べると、サツマイモの根には「吸収根」と「不定根」の2種類ある。水や肥料を吸い上げるのが「吸収根」。葉と茎を結ぶ葉柄のつけ根から出るのが「不定根」で、この根が将来イモになる。
根の先端近くからも芽が出た。芽は基部から出るのが基本だが、何か問題が起これば、出せるところから芽を出し頑張る。
根が出た方が芽の生長は早い。
根の先端が水に浸るとすぐに根が出る。
研究2:サツマイモのできる最小単位を調べる

【実験4】

半分に切っても芽や根が出るか。

《方法》

半分に切り、基部を上にした切り口、先端を上にした切り口それぞれを水に浸して観察する。

《分かったこと》

「基部が上」では基部側から早く芽が出た。
切り口のイモと皮の間から、突起のような根が出た。これらは一カ所に集中している。
「先端が上」も芽が先端近くから出た。切り口から根は出なかった。
どちらも芽が生長し、葉も出て茎も太くなった。

《考察》

基部側からの方が芽の数は多い。
皮のすき間から出た根は「吸収根」ではなく「不定根」だ。
先端を上にすると、基部だと錯覚して芽を出すのでは。
イモの真ん中辺りからは芽が出にくい。

【実験5】

先端や基部がなくても芽や根は出るか。

《方法》

サツマイモを3等分して、真ん中部分を使う。「先端側の切り口が上」「基部側の切り口が上」の2種類の置き方で観察する。

《分かったこと》

「基部側が上」の切り口から根が出た。
根は皮と中身に挟まれたように出る。
「先端側が上」の切り口からは根が出なかったが、芽のつけ根から根が出た。
芽はどちらも、皮から上向きで出た。
芽の数は半分に切った時よりは少ない。

《考察》

「基部側が上」で出た根は長く伸びるが、枝分かれしないので「不定根」だ。
芽の数が少ないのは、3等分してイモ自体が小さいためだ。
基部や先端がなくても、芽や根を出せるところを見つけながら出てくる。

【実験6】

皮だけで芽や根は出るか。

《方法》

基部から先端まで途中で切れないように薄く皮をむき、水に浸して観察する。

《分かったこと》

皮の基部側から芽が、先端側から根が出た。芽は大きくなり、つけ根からは「不定根」も出て伸びた。

《考察》

皮だけでも芽や根を出せる。皮の下の微量な栄養も無駄にしない。

【実験7】

皮がなくても芽や根は出るか。皮を薄くむき、中身のイモだけにして観察したが、芽も根も出なかった。

【実験8】

出てきた芽は大きくなれるか。芽を鉢と畑に植えて観察した。同様にジャガイモでも実験し比較した。その結果、ジャガイモは枯れたが、サツマイモは生長し大きくなった。

《考察》

サツマイモは芽があれば大きく生長できる。芽は先端から新しい芽を増やしていく。ジャガイモは、イモの中から芽が出ているので、皮から出ている芽だけでは生長できない。サツマイモのできる最小単位は皮である。

研究3:サツマイモの芽のパワーを確かめる

【実験9】

新しく出た芽を顕微鏡で観察した。先端にある細胞の中の粒子が、上下左右に動いていた。

【実験10】

芽の先端だけで生長できるか培養した。時間はかかるが芽や茎、葉へと生長した。芽には生命力にあふれたパワーがある。

研究4:サツマイモの再生能力を利用して、同じヒルガオ科のアサガオの花やサツマイモの花を咲かせる

【実験11】

サツマイモを台木にアサガオをつける。つる同士でやったら、アサガオは枯れた。茎と茎とでやったらつながった。茎はそれぞれの特徴のままだ。あまり背丈は伸びない。つるは出ず、葉の数も多くない。33~40日目にアサガオの花が咲いた。背丈のわりに花は大きい。

【実験12】

アサガオを台木にサツマイモの茎をつける。ともに太く生長し、65日目にサツマイモのかわいい花が咲いた。

感想と課題

サツマイモは芽を出すことができるし、芽の出方にも決まりがあることが分かった。出るところをふさがれても、何とか芽を出して生きていこうとする生命力がみなぎっていた。顕微鏡で芽の先端を観察すると動いている細胞が見えて、それを実感した。さらに他の植物とつなげることで再生し、お互いに共生しながら普通では見られない花を咲かせることもできた。時間も手間もかかる研究だったが、生命のすばらしさを改めて感じた。これからもいろいろな植物のすばらしさを見つけ、新たな発見をしていきたい。

指導について

指導について丸山 ひとみ

 普段何気なく生活している中にいろんな疑問を持つ諒太。何故どうしてがいつも頭にはいっぱい。今回、野菜箱のジャガイモから芽が出ているのを見て、同じイモでもサツマイモから芽が出ているのを見たことがない。サツマイモも芽を出すことが出来るのだろうか?という疑問から始まった研究。芽が出せることが分かったと同時に、芽の出方に決まりがあることを突き止めた。顕微鏡で芽の先端を観察すると動く細胞があり、生きているということを実感。芽の先端の細胞を使い、芽が出るかという難しい研究に挑戦し、改めて生命力の素晴らしさに感動した。また、接ぎ木という操作をすることで、見ることの出来ない花に出会えた。スケッチをしたり、根気よく観察するのは決して楽ではないだろう。しかし、サツマイモの芽の出方を観察するうちに、次々に新たな疑問がわき出て、追究していく姿はまるで小さな科学者であった。これからもたくさんの疑問を追究し新たな発見をしていって欲しい。

審査評

審査評[審査員] 林 四郎

 丸山諒太さんは、昨年度「レタスの茎の変色のひみつをさぐる」研究で見事、文部科学大臣奨励賞を受賞しました。そして、今年度も「サツマイモの生命力のひみつを探る」研究で、昨年度と同じように大変立派な作品にまとめ、小学校の部の1等賞に選ばれました。
諒太さんの研究に対する情熱や粘り強い探究心は素晴らしいもので、大いに感心しています。この研究では、「ジャガイモと同じようにサツマイモも芽を出せるのか」という疑問を出発点に、その時に考えられるすべての条件で実験をしました。毎日観察し記録を残しましたが、70日にも及ぶ継続観察でした。諒太さんは、一つの実験・観察からスタートしても、その実験・観察の結果から生まれた新しい疑問をそのままにしないで、次の課題へつなぎ、それを証明するために新しい方法を考え実験・観察を続けました。写真と一緒に手書きのスケッチを行って細かく観察したことが研究のまとめに生かされているところも素晴らしいと思います。読んでいる私たちにも、植物の生命力が伝わってくるようです。

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