東京都私立東洋英和女学院小学部

2005年
取材

型にはめず、子どもの自主性をたいせつに ?夏休み後、さらに作品に磨きをかけて?

 

80年代から継続してコンクールへ応募

 都心とは思えないほど緑が濃い。六本木の鳥居坂通りに面した東洋英和女学院小学部は、鳥居坂教会、フィリピン大使館、シンガポール大使館などに近い閑静なエリアにある。警備員がガードする校門を入ると、正面の木立ちの向こうに小学部の校舎が見えた。
  柿原直子先生は1982年から東洋英和女学院小学部に勤務。主に理科専科で、途中で担任を6年間、現在は4~6年生の計6クラスで理科を教えている。
  「本当にたいしたことはしていないんです」と笑顔で謙遜するが、自然科学観察コンクールとの関わりは深く、80年代から継続して応募を続け、一昨年の第44回には“長年にわたり指導されている先生”を対象とした「指導特別賞」を受賞した。
 

東洋英和女学院小学部の正門
(学校案内より)

子どもがのびのびできるゆとり空間

 校庭を囲むように建つ2階建ての校舎は2000年9月に完成したばかり。階段ホールはステンドグラスで彩られ、読書コーナーやフリースペースもあちこちに設けられている。子どもたちがのびのびと過ごせる、ゆったりと明るい空間。旧校舎に比べると教室は1.5倍、校舎全体の延床面積も2倍(8800㎡)になった。身だしなみをチェックできるように、その学年の身長に応じた高さで姿見が教室に設けられているのもほほえましい。
  楕円形のテーブルが並ぶ理科室は1階。白いキャビネットには顕微鏡などの備品が納められている。正面の黒板脇には、教育目標でもある『敬神奉仕』の標語が掲げられていた。
 

新校舎を彩るステンドグラス

 

校庭に面した明るい理科室

「自由研究」は選択肢のひとつ

 私学の夏休みは公立よりも早く始まる。今年は7月15日が夏休みのスタートだ。柿原先生が出す夏休みの理科の宿題は「自由研究」と「見学記」のどちらか好きな方を選ぶ“選択方式”。
  「夏休みには自由研究を頑張ってもいいし、どこかを見学するのでもいい。何かひとつは出してね」
  分量も内容もどんな用紙にまとめるかも自由。写真やイラストを入れてもかまわない。この時、自然科学観察コンクールをはじめ、いくつかのコンクールについても紹介、「夏休みの自由研究を応募してもいいし、最初から10月の締め切り日を狙ってもかまわない」と話す。あわせて、研究のまとめ方のヒントとして、自然科学観察コンクールの「自然研究・攻略マニュアル」のコピーを全員に配る。
  全員に自由研究を課したこともあるが、「“自由”がいちばん大変。何をしたらいいかわからない」という声も出て、今の形に落ち着いた。全体としては「見学記」の方が多めで、自由研究との割合は3対2ほどだが、両方に挑戦する子どももいる。
  「見学記」とは見学レポートのことで、都内の「科学技術館」「たばこと塩の博物館」などはもちろん、近所の川の観察でも、祖父母の畑の見学でも、海外旅行で立ち寄ったミュージアムでもOK。いつもとは違うものに触れるチャンスとして気軽に取り組んでもらうようにしている。

夏休みの“もうひと手間”がポイント

夏休みが終わってからが第二段階。9月以降に“もうひと手間”をかけるのが柿原先生のこだわりだ。
  「自由研究を提出した子には、コンクールに応募するかどうかを聞きます。出したいという希望であれば、その作品には赤ではなく鉛筆でチェックを入れ、付箋をつけて、その子に返します」
  夏休みの宿題としてはOKでも、コンクールへ応募するとなると作品として形を整える必要がある。
  「中身に踏み込むというよりは、主に研究のまとめ方ですね。仮説とまではいかなくても、なぜその実験をしたのか、どんな目的があったのか、何をしたのか、結果はどうなったのか、それを自分はどう考えたのかは必要です。『もう少し、ここをこうまとめれば』『ここに自分の考えを入れるといいんだけれど』などとアドバイス。『もういい』という子どもには、『せっかくここまで頑張ったのに』と駆け引きをすることもあります(笑)」
  「秋の追分の生活(5年)」、修学旅行や学芸会の準備など、秋は学校行事も多い。そんな中で再度、研究をまとめ直すのは子どもにとっても粘り強さが身に付くことになる。

頑張った努力が報われる参加賞

「書き直した後、『まだ、ここが足りないね』ともう一度返すこともあるので、子どもたちは大変です。でも、締め切りが10月というのが安心感があるようです。たとえ、夏休み中に研究が終わらなくても、『あと1カ月ちょっと待つからね』と言ってあげることもできます」
  そんな努力が報われるのは、参加賞の賞品と努力賞の賞状が届く翌年2月。賞状には柿原先生がひとりずつの名前を筆ペンで入れ、担任から帰りの会で渡してもらう。昨年の第45回は18名が応募、全員が参加賞を受け取った。
  「子どもたちにとっては、やはり賞品が魅力ですね。お友達から『いいなぁ』と言われて『頑張った甲斐があったなぁ』と思ったり、『来年は自分も出そう』と決意したりするようです」
  また、『入賞作品ガイド集』を見ることで、「この研究すごいね」「こんなまとめ方もあるんだね」と刺激を受ける材料にもなっている。

独自のカリキュラムで英語と情報教育を

小学部の1日は、朝のお祈りから始まる。水曜日の講堂での全校礼拝、クリスマス礼拝などは大切な行事だ。お昼は1年~6年までの全員と教職員が食堂に集まって一緒に食事をとる。1、2年生のテーブルを6年生が手伝うことで思いやりの精神を育む。軽井沢追分での宿泊行事も、2年生と6年生が一緒に生活することで学年を越えた交流がはかられる。
  独自の教育プログラムとしては、1年生からスタートする英語の授業、3年生からの情報教育に特色がある。英語教室は2つあり、ひとつはブルー、もうひとつはピンクで統一。どちらもカーペット敷きで、座ったり寝転んだりしても大丈夫な環境で英語に親しむことができる。新校舎と同時に誕生したコンピュータ室にはノート型のパソコン40台を設置、基本操作やカードなどの作品作り、メールやインターネットの使い方、そのルールなどを学ぶ。
 

全校礼拝も行われる講堂

 

コンピュータ教室。
パソコンはすべて

 

ピンク色で統一された英語教室

「理科クラブ」は遊び心を大切に

 金曜日の放課後にはクラブ活動の時間がある。柿原先生が顧問を務めるのは「理科クラブ」。現在、5~6年生9名の部員がいる。「年間で20回ほどですが、ブーメランを作ったり、スライムを作って遊んだり、授業でとりあげないことをしています。今、テレビで人気の米村でんじろうさんの科学実験は子どもたちも興味があるようで、今度はしゃぼん玉液には何を混ぜたら伸びるかをしてみたいと言っていました」

マグノリア(泰山木)の木のように

小学部の校庭には1本の泰山木がある。春に真っ白な香り高い花が咲くこの木は、旧校舎の頃から子どもたちと先生を見守ってきた。校内音楽会の名称もマグノリア・コンサート。「あの木だけは3年生以上は自由に木登りをしてもいいことになっているんですよ」。卒業生にとっても懐かしいシンボルツリーだ。
  「コンクールへの参加が、理科を好きになるきっかけになればいいなと思っています。面白い世界があるんだな、と」と話す柿原先生。
  型にはめず、自主性を重んじる。そんな理科の宿題に取り組んだ記憶もいつか懐かしい思い出になるはずだ。今度の夏休み、皆はどんな新しい世界に出会えるだろう。9月になるのが待ち遠しい。
 

土のグラウンド。奥に見えるのが泰山木

学校プロフィール

学校プロフィール

東京都私立東洋英和女学院小学部
ホームページ
〒106-0032 東京都港区六本木5-6-14
電話 03-5411-1322
児童数=480人 各学年2クラス
柿原直子

柿原直子先生
理科専任(4~6年)

東京都心の港区六本木に位置し、今年で121年目を迎える私立の小学校。1884(明治17)年、カナダ・メソジスト教会から派遣された婦人宣教師マーサ・カートメルにより創立された。キリスト教による人間形成を重んじ、校訓は「敬神奉仕」(神様のために人のために)。毎朝、礼拝があり、神への畏敬の念、人へのいたわりや奉仕の精神を学ぶ。敷地内の幼稚園、近くにある中学部・高等部、大学院などとともに同学院の六本木キャンパスを形成している。

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