中野区立桃花小学校

2008年
取材

地域に開かれた理科教育を目指して

 

「桃花自然応援隊」

 「桃花小学校」はこの春、誕生したばかりの新しい学校だ。JR 中野駅の南口から歩いて7 ~ 8 分、昨年度まで桃園第三小学校だった校舎には、三校から集まった子供たちが通っている。校旗も校章も新しい。帽子も紺色から明るいえんじ色に変わった。
 「このナツミカンの木には、いま実がいくつなっているかな?」
 校庭では20 人ほどの子供が1 本の木を見上げている。問いかけているのは寺田礼子先生。「ゼロ?」「1個!」。思い思いの答えが飛び出す。月に一度の委員会活動の真っ最中だ。
 「この委員会の名前は“ 桃花自然応援隊”。最初は自然環境委員会という堅い名前でしたが、みんなでネーミングを変えました。この学校は実のなる木がいっぱいあって素晴らしいでしょ。そんな桃花小の自然を知ってもらうためのオリエンテーリングの準備をしていたところです」
 改めて周りを見渡せば、アンズの木、ハナモモなど校庭には樹木がいっぱい。正門横には学校のシンボル「大けやき」もある。それにしても「桃花自然応援隊」という名前に変えただけで、ぐんとやる気が出そうなイメージになるのが不思議だ。
 


井上靖の小説「欅の木」に登場する大けやき

2年間かけて「変形菌」を研究

 昨年度、寺田先生は桃園第三小で6年生のクラスを受け持っていた。そのクラスの中に、第48回自然科学観察コンクール( 平成19 年度) で佳作を射止めた伊知地直樹君がいる。『変形菌はどのように餌を見つけるのか?』という作品だ。
 「伊知地君は5年生の時から変形菌に興味を持って、土日ごとに博物館へ通っては学芸員の方に教えを請うたり、自分でも変形菌( モジホコリ) を飼って観察しながら、ずっとこのテーマを追いかけていました。彼はほかの子供たちからも尊敬される存在だったので、入賞して校長先生から朝礼で表彰された時には『やっぱりすごいなぁ』という反応でした」
 伊知地君は5年生の時にも『ふしぎな生き物 変形菌』という作品を応募している。継続することで研究の深さを増していった。
 「コンクールに応募するかどうかは、子供たちにまかせています。特に何も言わなくても、みんな自然科学観察コンクールのことを知っていて、早くから応募を目標にがんばる子もいます」
 昨年度は計46人が夏休みの自由研究を応募した。自由研究は全員必須で、9月に提出された作品は、クラスごとに教室内に展示する。

「発見ノート」で発見や感動を共有

 昨年度は指導奨励賞、第45回( 平成16年度) には指導特別賞を受賞している寺田先生だが、「私は本当に特別なことは何もしていないんですよ」とあくまで控えめ。
  「でも、自由研究をまとめるための文章力や構成力は、毎日の『発見ノート』が役に立ったかもしれません」
 「発見ノート」とは、学習帳に自分なりの日々の発見を綴って提出するもの。長さやテーマは自由。これを毎日読んでは朱入れしてコメントをつけて返却する。面白いトピックスは皆の前で読み上げたり、「これは」という文章は増し刷りして全員に配るなど、一人の発見や感動をクラスで共有できるように心がけた。「夏休みには何を研究するか考え中です」と早い時期に書いてくる子供がいれば、それを皆に紹介することで、「自分もそろそろ考えなくちゃ」という種をまく。
 「即、効果は出ないかもしれないけれど、10人中1人にはヒットするかもしれない。伊知地君は休日に訪ねた研究所のことなどをよく書いていました」
 

樹木には名前のプレートが付いている

「プロジェクト学習」でまとめる力を

 「総合の時間」には、2 ~ 3 カ月のスパンでひとつのテーマに取り組む「プロジェクト学習」を行った。「技あり、にっぽん」というテーマで日本の工業をとりあげた時は、まず、曲がるストローを開発した地元のアイデア社長をゲストティーチャーとして招いた。さらに日本にはどんな技術があるか、江戸切子などの伝統産業から最先端のロボット「アシモ」までを調べ、最終的には劇にまとめて学習発表会を行った。
 「プロジェクト学習では問題解決能力や自分で調べたこと、わかったことをどう表現するかという力をつけました。それが夏休みの自由研究にも発揮されるといい作品になります」
  6月下旬の移動教室( 隔年で軽井沢と福島) も格好の素材。例えば「まるごと軽井沢」というテーマのもと、自然・産業・歴史などに分かれてグループで調べ学習を行った。
 「自分の興味をポイントをしぼって事前に調べ、現地でそれを修正したり、付け加えたり、新しく発見したりという体験は、子供たちにとっても『やった!』という充実感が得られますね」
 

親子2代で通うケースも少なくない

自由研究は集大成

 「どんな科目にも共通しているのは、最初が肝心ということ。“ やりたい” という気持ちが学力の始まりだと思うので、意欲を高めるためにはどうしたらいいかを考えます。いかに子供が飛びつくような授業を最初に提供できるかですよね」
 理科の授業でも、「てこの原理」の項目では、実際に板にくぎを好きなだけ打たせた後で、くぎ抜きを使ってそれを抜いてみるように指導する。「こうすると支点と力点について、からだの感覚でわかる。そんな体感が大切です」
 「政治をうんと身近に感じてほしい」と、6 年生の社会で地元の再開発にスポットをあてたこともある。中野区が再開発する警察大学の跡地をとりあげ、これから何ができるのか、決めるのは誰かなどを、区役所の担当者や区議会議員を呼んで子供たちからの質問に答えてもらった。
 「これから社会を担う世代に、本当に役立つことを勉強してもらいたい」というのが寺田先生の願い。
 「うちの学校では算数でも理科でも社会でもどの授業でも“ 考える力” がつくように指導していると思います。夏休みの自由研究は日ごろ身につけたことの集大成。自然科学観察コンクールに応募して全国の作品が集まる中で評価されることは、学校とはまた違うレベルなので、ゴールとしてとてもいい機会だと思います」
 

校庭の一隅にある菜園

学校プロフィール

学校プロフィール

中野区立桃花小学校
ホームページ
〒164-0011 東京都中野区中央5-43-1
電話 03-3381-7251 
児童数=527人 各学年=3 クラス
寺田礼子

寺田礼子先生(56 歳)
「少人数算数」担当

中野区立桃花小学校は、平成20 年4 月1 日に区内の三つの小学校( 桃園第三小学校、仲町小学校、桃丘小学校) が統合して誕生した。新しい学校は、旧桃園第三小の校舎で開校。JR「中野」駅と東京メトロ丸の内線「新中野」駅の間にあり、周囲には古くからの住宅街と新しいマンションが混在する。桃園第三小は85 年、仲町小は70 年、桃丘小は50 年という、それぞれの歴史を新校に引き継いだ。校章は桃丘小学校の桃の花( 邪気をはらう)、仲町小学校のけやきの葉( 力強さ)、桃園第三小の桃の実( 生命力) を表現したデザイン。周囲に「桃」にちなむ地名が多いのは、江戸時代の八代将軍吉宗が現在の中野駅周辺に桃の木を植えて行楽地としたことに由来する。

学校取材レポート
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