第52回入賞作品 小学校の部
2等賞

マツモムシとメミズムシの観察

2等賞

山口県周南市立久米小学校6年
浴井 遥
  • 山口県周南市立久米小学校6年
    浴井 遥
  • 第52回入賞作品
    小学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の動機とねらい

 小学2年生の時からマツモムシの観察を続けている。体の表面にある毛がいろいろな働きをしていることが分かった。今年は電子顕微鏡でも写真を撮影できた。脚に面白い毛があったので、働きを調べる。また同じカメムシ目の昆虫メミズムシのことを知り、飼育しながら調べることにした。

マツモムシ

マツモムシ

《1》マツモムシの観察~背泳ぎの達人~

編集部注:マツモムシ(松藻虫)は、カメムシ目(半翅目)マツモムシ科の水生昆虫で、池や沼などの水中に見られる。普段は背面を下にして(背泳ぎで)泳ぐ。体長は11.5~14mm。触角は短く、鋭い口吻を持つ。前足、中足はやや短く、後脚は水中で泳ぐために発達している。水中では体表面に空気の層を保持するため、銀色に見える。捕食性で小魚やオタマジャクシ、ほかの虫を捕まえ、口吻を刺して体液を吸う。素手で捕まえると、口吻で刺されることがあり、痛いという。

これまでの研究で分かったこと

〈2年生〉

マツモムシを飼育し、様子を観察した。

〈3年生〉

脱皮して体が大きくなるにつれ、食べる虫の量も多くなる。脱皮は5回あった。脱皮の時は最後に後脚が抜ける。水中と外では、お腹の毛の様子が変わる。水中では、毛が横に広がる。

〈4年生〉

羽の表面に細い毛がたくさん生え、ここに「空気のまく」ができる。背中が丸く盛り上がっているので、この「まく」がカーブミラーのようになって、周囲の色を反射している。実験では、背中は周囲の色と銀色の混ざった色か金色に光って見える。成虫は、この鏡のような「空気のまく」に周りの色を映し、自分の体をまぎれこませるというカモフラージュの仕方で身を守っている。

〈5年生〉

幼虫でカモフラージュの実験をした。背中の色に近い緑色や黄色は映しやすかったが、他の色は映さない。顕微鏡で見ると、幼虫の背には長さの違う毛がまばらに生えているので「空気のまく」が作りにくく、成虫のようには色を映せない。成虫は背中に周りの色を映すことで、本当にカモフラージュしているのか、実験した。成虫の毛をそり、敵(コオイムシ)と同じケースに入れた。普通の成虫と比べて、3倍以上の数が死んだ。やはり、カモフラージュしているのだ。

今年の研究

(1)マツモムシの卵から成虫までの育つ様子を観察する。

 草に産み付けられた卵や、産まれた幼虫のマツモムシを1匹ずつ飼育ケースに入れて、成虫になるまで観察した。

《結果》

卵28個のうち1匹しか成虫になれなかった。

《分かったこと》

脱皮の時に死んでしまうことがある。飼育は難しい。

(2)電子顕微鏡での観察

 姉がゲンゴロウを電子顕微鏡で撮影できることになったので、一緒に撮ってもらった。昨年までの研究では、お腹の毛の働き(気門に水が入らないようにしているのか)、お尻の毛の働き(バランスを取るためにあるのか)などの疑問があった。

《方法》

マツモムシの頭部、脚(前・中・後)、お尻(腹側)、上羽を試 料として、観察できるように金を蒸着した。電子顕微鏡では、試料を機械の中に 入れ、真空にして観察する。最大で30万倍まで見ることができるが、1~2週間 の調整が必要だという。パソコンで電子顕微鏡を操作し、写真を撮ったりする。

《結果》

マツモムシの足の電子顕微鏡の写真

マツモムシの足の電子顕微鏡の写真


電子顕微鏡の写真を見ての疑問:複眼の個眼がへこんでいるのは。眼の下の毛は。指の内側にある溝の働きは。前脚と中脚にある毛の列は何の働きか。毛が2列になっている意味は。中脚のこぶが向かい合わせになっているのは、どうしてか。

《実験》

脚の毛に何か意味があるのか、調べる。

《方法》

電子顕微鏡写真の脚をもとに模型を作る。水の代わりに線香の煙を使い、模型の周囲での空気の流れを観察する。

《結果》

脚の段差に毛があるので、空気が乱れないで、まっすぐ流れる。毛が2列になっていることで、空気がうまく左右に分けられて流れている。

《考察》

前脚と中脚の毛は、後脚を動かして泳ぐときに、水をスムーズに流すためだ。

《2》メミズムシの観察~不思議な生態~

(1)生活の仕方、体の仕組みを調べる

編集部注:メミズムシはカメムシ目メミズムシ科の昆虫。体長4.5~5.5mm。池 や溝などの水際、湿地に生息するが成虫は水中に潜ることはなく、水面を泳いで 移動し、陸上では後脚で跳ぶことができる。幼虫は泥や石を身にまとってカモフ ラージュしている。

 休耕田の溝やあぜで成虫11匹、幼虫12匹を採集した 。

《観察で気づいたこと》

食べ物:口吻がとても長い。何を食べるのか。どうやってえさを吸うのか。
行動:夜行性だ。息を吹きかけたら動く。ひっくり返ると、元に戻るのに時間がかかる。乾燥した時もひっくり返る。背中の石が重くて、起き上がれないのかも。
幼虫の石背負い:どうやって石を背負うのか。背中に霧吹きで水をかけると、背中の石が取れた。水で取れる接着ノリみたいなものか。毎日背負っている石が違う。人が髪型を整えるように、石をのせていたこともある。
脱皮:脱皮したての体は白い。脱皮後1時間で黒くなった。さなぎにならないのに、蛹(よう)室のような「かまくら」を作っていた。
交尾など:乗っかる方が前脚を、下のメミズムシの首の根っこに引っかけ、中脚で体の横を持っていた。お尻の先が飛び出したメミズムシが死んだ後に、小さな幼虫が生まれていた。これはメスだったのかな。お尻が出ているのは、地面に卵を生むためか。
湿り気:水が大嫌いだ。うまく泳げず、あわてて陸に上がる。水がそれほどない所にいるが、乾燥にはとても弱い。

(2) メミズムシの幼虫は、どうやって背中に石をのせるのか。

《観察》

幼虫は地面に穴を掘って、その中で脱皮し、成虫になるための羽化をする。その穴の入り口には土で半球型の「かまくら」を作る。飼育ケース内にできたいくつかの「かまくら」や幼虫の様子を7月14日から1カ月以上にわたって観察した。

石をのせて歩くメミズムシ

石をのせて歩くメミズムシ

《結果》

水で背中の石を落とすと、「かまくら」から再び出てきた時には、別の石や土を背負っていた。昨日と違う石をのせていることもあった。「かまくら」の土を除くと、土や石を背負わないで出てくる。穴の中には脱皮したからがあった。ビデオ記録では、幼虫が口吻で土を掘り、それを前脚で取って「かまくら」の内側の壁につけている様子も確認できた。

《気づいたこと》

ジャンプ力:「かまくら」で羽化した成虫に息を吹きかけると、9㎝ほどジャンプした。小さな体なのに、驚いた。
石背負い:背中にたくさんの石を背負っている幼虫が、あお向けにこけた。起き上がったら、石がはがれて落ちてしまった。
幼虫と成虫の違い:幼虫には羽がない。背中に石や土をのせて生活する。成虫には羽がある。羽に泥が付くことはあるが、石をのせることはない。飛び跳ねることができる。
幼虫と脱皮:幼虫は脱皮して大きくなるが、何齢まであるのかまだ分からない。
メミズムシとマツモムシの口吻の比較:メミズムシの口吻の長さは体の半分以上、身長の3/5もある。マツモムシは身長の1/5だ。

《考察》

メミズムシの前脚はつめが長いので、石や土が持てそうだ。電子顕微鏡で見たら、背中の上の方に穴がたくさんあった。そこからノリみたいな液体がたれ落ちて広がり、背中に石や土をくっつけるのかもしれない。水にぬれると取れるので、水溶性のノリとも考えられる。完全変態ではないのに「よう室」のような「かまくら」を作るのは不思議だ。

感想

 2種類の昆虫を比較すると、それぞれの生活に適した体のつくりになっていることが分かった。細かい部分を見ることができて、昆虫たちのすごさにびっくりしたし、体の形にも意味があるんだなと思うと面白かった。

指導について

指導について豊田ホタルの里ミュージアム 学芸員 川野 敬介

 私はいくつかの材料や機会、そして視点を提供したに過ぎません。研究は浴井さんの自由な発想と飽くなき好奇心によるものです。
 彼女とは2007年に知り合って、それからいろいろな質問を受けてきました。その過程では、彼女が感じている疑問や探究心というものを知りました。今回の自由研究では、電子顕微鏡という小学生にはあまり縁がないような機材を利用しましたが、その撮影に従事している約5時間もの間、1秒たりとも休まず、黙々と自らの知的好奇心を満足させるように集中していました。
 そこでは、彼女の知ることへの純粋でひたむきな姿を見ることができました。そして、このような素晴らしい賞まで受賞したにもかかわらず完成した自由研究に満足していない姿に、自分の研究の不十分な点を分析し、次の研究の課題を認識し、より探究の道を深めようとしていることを知りました。
 今後も楽しみながら、自らの探求の道を進めてほしいと思います。

審査評

審査評[審査員] 大林 延夫

 素晴らしい研究です。浴井さんは、これまでも観察を続けて来た水生半翅目のマツモムシについて、電顕写真を撮影する機会を得て脚の毛の役割に興味を持ち、模型を作成して煙の流れ方を調べる方法で空気の動きを観察しました。その結果から、これらの毛が、泳ぐ時に水の流れを制御する役割がある事を解明しています。また、同じ水生半翅目のメミズムシは、自ら飼育方法を工夫し、幼生期の巣穴(かまくら)の作り方や生態、さらに背中に泥を乗せる場面の観察も行って記録してくれました。これらの結果はいずれも、これまでに知られていなかった新しい知見ばかりで、その着眼点や研究手法は称賛に値するものです。
 生きものは、自分で飼育し、観察する事で様々な好奇心を呼び起こしてくれます。彼女もまだいくつもの疑問を持っていて、これからも大人とは違う視点で素晴らしい研究を続けていってくれるものと期待しています。

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