第53回入賞作品 中学校の部
1等賞

過齢幼虫の誘起要因に関する研究(アゲハ編)

1等賞

京都府京都市立花山中学校2年
恩庄 美紗貴
  • 京都府京都市立花山中学校2年
    恩庄 美紗貴
  • 第53回入賞作品
    中学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

 小学2年生からアゲハの研究を行い、今年で7年目になる。アゲハのさまざまな謎の中で、特に私を魅了したのが「過齢幼虫」だ。
 アゲハは卵→蛹(さなぎ)→成虫と変態する、「完全変態」の昆虫だ。その幼虫は通常4回脱皮し蛹になる。つまり「5齢幼虫」までになって蛹になる。しかし私が飼育したアゲハの中に偶然「6齢幼虫」になったものがいた。アゲハの6齢以上の幼虫を「過齢幼虫」という。しかし、どのような場合に過齢幼虫になるのか、それについて書かれた書籍を見つけることはできなかった。そこで私は、過齢幼虫になる誘起要因を突き止めるために、さまざまな条件下でアゲハの幼虫を飼育し、自分なりの結論を導き出した。「アゲハの幼虫は、餌(えさ)はたくさんあるが、食べるのに時間がかかる場合に過齢幼虫になる」というものだ。しかしこれまで過齢幼虫になったのは3例と少なく、結論が本当に正しいのか疑問だった。人為的にアゲハの過齢幼虫を発生させ、私の結論の確証を得たい。

研究の目的

 私の結論の「餌はたくさんあるが、食べるのに時間がかかる場合」について説明する。「餌はたくさんあるが」の箇所であるが、これまでの私の研究により、幼虫の餌の量を減らすと個体そのものの大きさを小さくし、過齢幼虫にはならずに小さなアゲハになることが分かっている。私の研究では、モンシロチョウのサイズのアゲハになった。今年の研究では「食べるのに時間がかかる場合」に着目し、過齢幼虫を発生させる。

実験方法

(1)アゲハの卵は、自宅(京都市山科区)にあるグレープフルーツの木から採集した。餌はそのグレープフルーツの葉。
(2)餌の形状を変えた3つの実験区と対照区を設定した。
実験区軟らかい葉を3~5㎜幅に短冊状に切って与えた。(幼虫番号:長切A、B)
実験区軟らかい葉を3~5㎜角に切って与えた。(幼虫番号:角切A、B)
実験区成長しきった硬い葉を切らずに、そのまま与えた。ただし1齢幼虫の時は、以前の研究で硬い葉を与えたら食べられずに死んでしまったので、軟らかい葉を与えた。(幼虫番号:硬A、B、C)
実験区(対照区):軟らかい葉を切らずに、そのまま与えた。(幼虫番号:普A、B)
(3)餌の量は制限せず、食べるだけ与えた。
(4)透明なプラスチック容器を飼育容器とし、自然光の当たる窓際に置いた。
(5)体長、日照時間、温度、孵化(ふか)・蛹化(ようか)・羽化日時を記録した。体長については5齢幼虫以上の頭部幅、および蛹の体長を測定した。幼虫は伸びたり縮んだりするので体長ではなく、抜け殻の頭部幅を測定した。

仮説

 餌の葉を短冊状に細長く切ったり、小さな角切りにしたりすると、幼虫が食べる時に葉を固定できず(脚で押さえられず)に、葉が動いてしまい食べにくい。また、成長しきって硬くなった葉も、特に若齢幼虫には食べにくい。そうなると、食べるのに時間がかかる。私の結論が正しければ、実験区の幼虫は全て過齢幼虫になるはずだ。

実験結果

 実験区および実験区の全ての幼虫が過齢幼虫になった。しかし予想に反し、実験区の幼虫は過齢幼虫にはならなかった。
 過齢幼虫になった幼虫は、5齢幼虫時の頭部幅が2.6~3.2㎜と小さかった。6齢幼虫時の頭部幅が3.5㎜以下の幼虫は7齢幼虫になった。
 幼虫の色は何齢であっても、終齢幼虫以外は黒色であり、終齢幼虫のみ緑色となった。

考察

(1)過齢幼虫にならなかった実験区の幼虫は、餌が動かないように脚でしっかりと押さえながら食べていた。5齢幼虫時の頭部幅および蛹の体長から考えても、十分な量の餌を食べていたと推測できる。このため過齢幼虫にならなかったのだ。
(2)硬い葉を与えた実験区の幼虫は3匹とも過齢幼虫になった。しかし軟らかい葉を与えた実験区(対照)の幼虫は2匹とも過齢幼虫にならなかった。5齢幼虫時の頭部幅をみても、実験区の幼虫は若齢幼虫時に十分な量の餌を食べられなかった。硬い葉は、アゲハの幼虫にとっては食べにくかったのだ。

表3 各幼虫の齢別所要日数

(3)過齢幼虫になるかどうかは、脱皮して5齢幼虫になる時、つまり4齢幼虫の時に決まっていると考えられる。このことは幼虫の色から説明できる。アゲハは、過齢幼虫になるかならないかに関係なく、蛹になる前の終齢幼虫は緑色となることが分かっている。今年の研究では終齢幼虫以外は全て黒色となったが、2010年の研究で出現した過齢幼虫の色は、5齢時黒色、6齢時緑色、7齢時緑色となった。5齢時に黒色であれば、必ず過齢幼虫となる。6齢時幼虫が黒色であれば、必ず7齢幼虫になる。しかし、6齢時幼虫が緑色だからといって、7齢幼虫にならないとは限らない。
(4)私が導き出した結論、特に「食べるのに時間がかかる場合に過齢幼虫になる」について。各幼虫の齢別日数をみると、「食べるのに日数がかかると過齢幼虫になる」とは言えない。過齢幼虫になるかどうかを決定する4齢から5齢幼虫に脱皮する時に着目すると、実験区の長切A、B、実験区の角切A、実験区の硬Bはいずれも19日目に5齢幼虫になっているが、実験区では過齢幼虫にならず、実験区では過齢幼虫になった。また、硬い葉を与えた実験区の硬A、硬Cはいずれも15日目に早々と5齢幼虫になり、その後過齢幼虫になったが、実験区の長切A、Bは19日目にやっと5齢幼虫になったのに過齢幼虫とはならなかったことから、「食べるのに時間がかかる場合に過齢幼虫になる」としたのは間違いだった。
(5)私の結論は、正しくは「餌はたくさんあるが、食べにくい状態にある場合に過齢幼虫になる」とするべきである。食べにくい状態ではストレスがかかり、ある種のホルモンが分泌されて、通常とは異なる成長(過齢幼虫)をするのではないか。
(6)自然界では、餌となる葉が短冊状に切られたり、角切りにされたりすることはない。食べにくいのは硬い葉の場合だ。そういえば、アゲハがグレープフルーツの木に産卵しにくる時期は、新芽が生え始める時期と一致している。生まれてくる幼虫が、軟らかい葉を食べられるようにしているのだ。
(7)アゲハの蛹の期間は餌を食べない。幼虫の期間中に、蛹に変態するエネルギーと成虫に変態するエネルギーを蓄えておかなければならない。食べるべき餌があるのに食べられない時、多くの餌を食べるために過齢幼虫になるのだ。

感想

 自ら出した結論を検証することの大切さを実感した。今回は過齢幼虫の誘起要因について確証は得られなかった。検証を重ね、確証を得たい。

指導について

指導について恩庄 基貴

 娘がアゲハの研究を始めて7年になる。今までアゲハについて様々な疑問を持ち、毎年アゲハを飼育していた。その疑問の中でも特に彼女を魅了したのが過齢幼虫だった。アゲハは5齢幼虫にまでしかならないと思っていた(図鑑にもそのように書いてあった)のに、6齢や7齢幼虫になったアゲハと出合ってからは、彼女の頭の中は過齢幼虫のことでいっぱいになっていった。なぜ過齢幼虫にこだわるのかと彼女に問いかけると、「答えが決まっていないから。」という答えが返ってきた。しかし、指導者?としては、答えが決まっていないのは、実に不安なものである。彼女が自ら導き出した結論が正しいのか正しくないのかを聞かれ、指導者?である私が出した答えは、「アゲハのことはアゲハにしかわからん。」だった。その私の言葉に彼女は、「私の出した結論が正しいことを証明する。」と、今年もアゲハを飼育していた。これからも、彼女が納得するまで見守っていこうと思う。

審査評

審査評[審査員] 宮下 彰

 本研究は、小学校2年生からの継続研究であり、今年で7年目のものです。これまでの研究で「アゲハの幼虫は、餌は沢山あるけれど、食べるのに時間がかかる場合に過齢幼虫になる」との結論を得ています。しかし、今年度は「食べるのに時間がかかる場合」について、本当に正しいのかとの疑問を持ち研究をしたものです。アゲハの卵を採集し、餌の与え方の違いによる観察を約3カ月かけて毎日行い、体長、日照時間、温度、孵化、蛹化、羽化日時を成長記録としてまとめています。その結果、過齢幼虫になるには、「食べるのにかかった時間」ではなく「食べにくい状態」であることがポイントだと突き止めました。このように検証をすること、そして、毎日きめ細かく観察を続けアゲハの過齢幼虫の誘起要因を明らかにしてきたことは、中学生の研究として大変優れたものです。特に、研究の目的を明確にもち、自ら仮説を立て、研究方法を自ら考え着実に実行していくなど研究の方法や方向性がしっかりしています。今後の研究がさらに楽しみです。1等賞受賞、誠におめでとうございます。

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