第47回入賞作品 中学校の部
文部科学大臣奨励賞

風と羽根のコラボレーション2
-回って、回って、回って、変わる!-

文部科学大臣奨励賞

沖縄県沖縄尚学高等学校附属中学校3年
塚本 真依
羽根回る
  • 沖縄県沖縄尚学高等学校附属中学校3年
    塚本 真依
  • 第47回入賞作品
    中学校の部
    文部科学大臣奨励賞

    文部科学大臣奨励賞

研究のきっかけ

 昨年(2005年)12月に、山形県のJR羽越線で、死傷者を出す痛ましい脱線・転覆事故が起こった。最上川の橋梁(きょうりょう)を渡り終えた直後の、突風が原因だったそうだ。国交省は、地元でしか知られていない突風の起きやすい「風の道」を全国で調べ、今後、鉄道の風対策に取り組むことを検討するという。
 「風の道」という言葉に、昨年、風力発電の実験中に感じたことを思い出した。それは、送風機でブレード(羽根)を回した際、障害物によって風の流れが変化することを体験したことだった。また、樹木の間を通り抜ける風の流れによって「蝶道」という蝶の舞う空間があることも、蝶採集の時に経験している。
このことから、昨年から取り組んでいる風力発電について実験し、「風の道」を見つけられないか調べてみたいと思い、実験装置を工夫・製作し、研究を始めた。

研究の目的

 風力発電装置を用い、障害物がない状態と障害物が出現した状態において、風向・電圧・電流を測定する。風向・電圧・電流がどのように変化するかによって、風の流れと風の強さを調べ、「風の道」に対する理解を深める。また、風力発電装置の設置場所などへの考察を行う。

研究の仮説
障害物の出現により、風向の変化が見られる。これは方位制御の変化として測定される。
障害物の有無により、風の強さに変化が見られる。これは風力発電装置の出力の変化として測定される。
障害物と風力発電装置の位置により、出力に変化(ブレードの回転力が増す、あるいは停止するなど)が見られる。

実験装置

《工夫と製作》

どのような装置や仕組みにしたら、実験や作業がうまく運ぶのかを、伯父や父と話し合うのに多くの時間を費やした。

外部の影響を遮断して行う必要があるため、風洞装置がなくてはならない。前回(2005年)の実験とは目的が異なるため、新たに製作する。
風洞装置の中にジオラマを製作し“山”を配置する。障害物としてのその“山”を可動できるようにする。
風洞装置内の“山”の出現などを外部で行うことができ、風向・電圧・電流の測定が連続して行えるものでなければならない。
風洞装置内に3基の風力発電装置を配置したい。
風洞装置内の風の向きを変えられるものでなければならない(たとえば、送風機の位置が変えられるようなもの)。
風洞装置が大きくなるが、送風設備はどうすればいいのか。
送風機を用いる方がいいのか、それとも扇風機を用いる方がいいのか。
風向測定をどのように行うのか、角度の変化を読み取るような装置はどうするのか。
風向測定時、ブレードが固定されていた方が角度を読み取りやすいのではないか。
ジオラマに対する送風の角度(風の方向)は、どのようにして測るか。
ブレードを何種類か製作し、風向の変化を見たい。これらのことを考えて試作品を製作し、さらに話し合いや改良を重ねながら装置を製作した。

《風力発電装置》

3基製作した。いずれもブレードの付け替えは可能。今回の実験では風向・電圧・電流の測定を行うため、前回のようなブレードのピッチ角制御やヨー制御の操作は省いた。

《スリップリング》

回転体から電力を取り出す際に電線がねじれないように、回転するリング部分にブラシを回転接触(スリップ)させるための装置。前回の反省をふまえ、円形状スリップリングと円筒状スリップリングを製作。高効率ブレード(Y-0409)には円筒状スリップリング、他のブレードと風力発電装置には円形状スリップリングを用いた。

《方位(ヨー)制御固定装置》

風力発電装置下部に取り付けられている。ブレードが自在に回り、尾翼によって方位(ヨー)制御がなされた後、ロータを固定するための装置。風向測定の際、固定されていた方が角度測定が容易なために設置した。電磁石を用い、ロータを支えるタワーをはさみ、固定する仕組み。固定・解除もすばやくできるようにしてある。

《方位(ヨー)制御固定操作BOX》

風力発電装置に設置した方位(ヨー)制御固定操作を迅速に行うことができる。風の向きを変化させても、ロータの動きを妨げることなく、自在に動かすことも固定も手元で簡単に行え、風向の角度測定がすぐにできる。

《方位(ヨー)制御角度確認板》

タワーの中ほどに設置してある。円形アクリル板に10°ごとに印を刻み、ロータが風の方向に向いた時の角度を確認できるようにしたもの。障害物のない状態、ある状態での風向の角度変化を知るために考えた。

《風洞装置》

今回は送風機ではなく、換気扇によって空気を引くことにより風を起こす仕組みにした。ジオラマに3基の風力発電装置を設置するために風洞装置が大型化し、前回のような送風機ではブレードの回転がうまく得られないことから、この方法にした。業務用の有圧換気扇3基を使用することで、風洞内に一定の風を起こすことが可能になった。また、風洞内のジオラマに当てる風の方向も変化させて測定したいので、この風洞装置全体を回転させられるように工夫した。吸気口は、開閉により空気量を変えられるようにした。

《ジオラマ》

ターンテーブルのような直径170cmの円盤に“山”を2つ配置し(「伊元山」と「石井山」)、風力発電装置を3基立てた。2つの“山”は、戸車とモーターを組み合わせて上下に可動させることができ、その出現によって風向・電圧・電流がどのように変化するのかを連続して測定できる。さらに、ビルに見立てた直方体(障壁)を3カ所に配置した。「ビル風」についての実験用で、これも高さを変えられる。また円盤の外周には10°ごとに目盛をつけた。これは、風洞装置を回転させた角度がわかるようにしたもので、風が“山”や“ビル”の障害物の影響でどのような流れになるのか、風向測定ができる。

《ブレード》

アルミ板を用い10種類作製した。尾翼にはバルサ材を使った。うち3種類には、ロータの周りに円錐状の囲いをつけた。これにより風を集め、効率よく回転するのではと考えた。もう1種類(Y-0409)には、4つのブレードをタワーに取り付け、各々の回転による出力を測定できるようにした。

実験1 障害物(山)の出現で風向や風の強さに変化はあるか?

《仮説》

障害物の出現によって風の流れが変わり、ブレードに当たる風の量にも変化が現れて、風向・電圧・電流に違いが出てくるのではないか。

《方法》

風洞装置内のジオラマを30°ずつ回転させ、風の方向を0°~330°まで12回変化させる。A、B、Cの3地点にブレードを置き、1つの“山”が出現した場合、他の“山”が出現した場合、2つの“山”が出現した場合について風向・電圧・電流を測定する。これを1ステージとして計3ステージ、3種類ずつ計9種類のブレードを使って実験し、残り1種のブレード(Y-0409)については単独の第4ステージとして行う。

《結果》


《考察》

障害物があれば当然、風の流れはさえぎられ、風に沿って障害物があれば風の流れは強くなる。第1ステージ60°、A地点での結果を見ると、山なしの状態での風向は0°、ブレードは風の吹いてくる方向に向いている。ところが「伊元山」の出現によって風がさえぎられ、ブレードの回転は止まった。「伊元山」を下げ「石井山」を出現させたところ、山なしの時よりわずかに電圧が上がった。これは「石井山」に沿って流れた風の影響ではないか。山を2つ出現させるとブレードは回転しなかった。明らかにこのA地点は「伊元山」の影響を受けていることになる。同ステージ90°、B地点も60°A地点とほぼ同じような変化である。同ステージC地点については60°、90°とも山の影響は受けていないようだ。

「山の影響は受けないのでは」と思われる地点でも出力が下がったり、ブレードが止まることもあった。その時は、前方の地点に別のブレードがあり、その回転で風の流れが乱れ、後方のブレードを回す強さがなかったためだと考えられる。ブレードとブレードの距離も考慮しなければならない。第4ステージで用いたブレード(Y-0409)では、4つのブレードすべてが回ることがあったが、前から3番目のブレードが止まったり、1、2番目が止まるなどの現象があった。

実験2 障害物(障壁)が風の流れにどう影響するか?

《仮説》

風の流れがさえぎられるような位置に障壁がくるとブレードは回転しない、あるいは出力が落ちる。また、風の流れを集約するような位置になれば出力は上がる。

《結果》

《考察》

障壁の風のさえぎりによる出力の減少、障壁の風の集約による出力の増加が見られた。また、風の流れに対し、前方のブレードが後方のブレードの障壁となっている現象を確認できた。このことにより、市街地での「ビル風」を利用した風力発電機の設置、場所選定が行えるのではないかと考えた。また、障壁の間を抜ける風の流れを知り、それを利用することによりヒートアイランド現象による地表面の温度上昇を抑えることができないだろうか。例えば、家のエアコンの室外機の設置場所においても、風の流れを考慮することにより周辺温度の上昇を抑えることができるのではないか。さらに、この高温の風の通り道に植物を植栽して成長を促し、なおかつその植物が蒸散能力の高い植物であれば、一石二鳥でヒートアイランド現象を抑えられるかも。未来のエネルギーについて考える一つのきっかけにもなった。

実験3 効率のいいブレードは?

ジオラマを320°に設定し、“山”を出現させない状態で、B地点における5種類のブレードの出力の違いを比較する。

《仮説》

最も出力が大きいのはY-0409で、次はU-1004、T-1105、S-1101、K-0223となるのではないか。

《結果》

《考察》

予想通りの結果だった。Y-0409は、4つのブレードを1つのタワーに取り付けたもので、各々の出力の総和となるため他の種類のブレードより高出力が得られる。風量により4つのブレードすべてが回転するとはいえない場合もあったが、やはり高効率のブレードだった。

実験4 高効率改良型ブレード、その出力は?

高効率改良型ブレード「テトラード」(Y-0409)は、4つのブレードすべてが回る時、後方のブレードが回る時などがあった。各々が回る時に得られる出力を測定する。

《仮説》

ブレードは大きい方が出力も大きくなる。4つのブレードは前から後ろに少しずつ大きくしてあるので、出力も前のブレードから順に大きくなっていくだろう。

《方法》

実験3と同じ。3つのブレードを輪ゴム、または棒で止め、回転しているブレードの出力(電流は安定しないため、電圧のみ)を測定する。

《結果》

《考察》

出力は予想に反して2番目、3番目のブレードは低かった。ブレード間の距離によるものではないか。1番目と2番目の間が短く、前のブレードを回した風の流れは、次のブレードに回転力を与えるほどではなく、ブレードの外に抜けていったものと考えられる。また2番目のブレードに回転力がないため、3番目もあまり回らなかったのではないか。しかし4番目のブレードはその大きさにより、わずかな風量でも回転力を得て回転したと思われる。ブレードの大きさとブレード間の距離を考慮に入れ、1つの軸に複数のブレードを取り付ければ、高効率のブレードは可能ではないか。

まとめ

以下のことに気付くことができた。

山の間を通過した風は強くなっている。
山に当たった風は弱くなり、その後ろの風に乱れを生じさせる。
広いところから狭いところへの風の流れは強くなる。
山の側面を流れる風は強くなる。
山の上方から下方へ流れる風は強くなる。
山の下方から上方へ流れる風は強くなるか、乱れを生じる。
山のような曲面と、ビルなどのような直線的な面に当たった風の流れは異なる。
障壁(直方体)の間を通過した風は強くなる。

 風は、太陽からの熱で温められた地表の温度変化や、地球の重力・自転、海水温度の変化などにより生じる大気の流れであり、この風の流れを理解することはとても重要なことであると改めて感じることができた。
   平地や山、谷、入り江などの地形によって異なる「風の道」や市街地などの「ビル風」の特性を理解し、そのエネルギーを利用する術を学ぶことは、地球温暖化を防ぐことにもつながっていくのではないか。本実験の動機となったJR羽越線の事故を教訓として、自然の力を侮らず、共存していく知恵をもつことが重要なことだと考えさせられた。

指導について

指導について沖縄尚学高等学校附属中学校 伊元九弥

 JR脱線事故の報道で使われていた「風の道」という言葉を聞いて、地形や建築物などによって風向・風力などは変化するのか確かめたいという動機から、本研究は始まりました。各種測定装置や可動式の山など障害物の製作に多大な時間と労力を費やしたことで、緻密な実験も可能となりました。その結果、山に衝突した風は風力を弱めながら後方の気流を乱すことや、直線的な障壁間を通過するときに風力が強まる、いわゆるビル風の現象も確認でき、その他にも様々な実験結果が得られました。
   実験中の風については、扇風機などで吹きつける空気よりも吸い込まれる空気の方がより安定した流れになることに注目し、風を「当てる」のではなく「引き込む」という発想から、換気扇で引き込んだ空気の流れを「風」として実験に供しました。本成果は、地形変化に伴う気流変動の解析や、効率的な風力発電など環境エネルギーの技術開発に大きく貢献できるものと期待しています。

審査評

審査評[審査員] 中村日出夫

 塚本真依さんは昨年も風力発電の研究で優秀な作品にまとめています。今年の研究では、JR羽越線の列車事故のニュースから「風の道」に注目し、山やビルなどの地形のどの部分で風の向きや風力に違いがあるのか、風力発電装置や地形の模型を製作して測定する実験を行い、「風の道」があることを風力発電の研究を発展させて確かめています。更に、風力発電装置の改良にも取り組み、能率の良い装置を製作することができました。本研究の優れた点はアイデアを実際の大がかりな装置や実験に作り上げ、それらを定量的に計測することで実証しようとする努力にあるといえます。また、研究を楽しむ工夫や旺盛なチャレンジ精神は他に類を見ません。地形による風の変化を風力発電装置によって捉え、それを利用することによって風力発電やヒートアイランド対策への応用などの可能性を考察していますが、それらを実際に検証していく研究とすると更に発展が期待できます。

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