第46回入賞作品 中学校の部
3等賞

酵素の研究
~写真フィルムを利用した酵素分布の測定について~

3等賞

長崎県長崎市立緑が丘中学校2年
山崎 芽薫美
  • 長崎県長崎市立緑が丘中学校2年
    山崎 芽薫美
  • 第46回入賞作品
    中学校の部
    3等賞

    3等賞

なぜこの研究をはじめたか

 去年の夏休みの自由研究(モグラの骨格標本)で、骨にこびりついた細かい肉(タンパク質)を溶かすために酵素入りの入れ歯洗浄剤を使ったところ、その効果に大変驚きました。また学校の理科の授業でも「消化酵素」について習いはじめています。人間の体の中にも酵素があるということは、お父さんに聞いていましたが、授業でその働きや特徴を習うことで興味を持ち、酵素について「もっと知りたい」と研究することにしました。

酵素とは

 学校で習ったもので、消化酵素があります。消化酵素とは消化器官から分泌されるもので、食べ物の養分を吸収しやすくするため、食べ物の「消化」を助ける働きがあります。消化酵素には、だ液中のアミラーゼ、胃液中のペプシン、すい液中の消化酵素、腸液の消化酵素などがあり、だ液腺や胃、胆のう、すい臓、小腸などから分泌されます。これらの消化酵素は、食べ物の中にある炭水化物やタンパク質、脂肪などを分解します。

キウイとゼラチンについて
キウイ(フルーツ)はマタタビ科マタタビ属のつる性植物で、原産地は中国南部です。ニュージーランドで改良されました。キウイは中国では「猿梨」といいますが、形がキウイというニュージーランドの鳥に似ているため、この名前が付けられました。
ゼラチンとは、動物の皮や骨、軟骨などを水とともに長時間煮て、溶け出したコラーゲンなどを精製したもので、タンパク質です。もともと1700年ごろからヨーロッパで工業生産が始まり、接着剤などとして使われていました。1800年代に入って食用のものが生産されるようになり、最近では医薬品(カプセルなど)にも用いられています。お父さんに教えられ、写真のフィルムや印画紙にも含まれていることを知りました。
キウイとゼラチンを実験に用いた理由

「ゼリーを作るときは、生のキウイを使うな」というのは有名な話です。その理由は、キウイにはタンパク質分解酵素アクチニジンが含まれており、この作用を受けてゼラチン(タンパク質)がうまく固まらないからだそうです。キウイもゼラチンも簡単に手に入り、実験材料としては、うってつけだと思いました。  ところで、ゼラチンと似ているものに寒天があります。寒天は海草のテングサから作られ、そのほとんどがアガロースという食物繊維です。それだけに、いくら食べても消化器に負担をかけずに体の中を素通りしてしまうため、ダイエットなどに利用されているようです。もし寒天で実験しても、タンパク質ではない寒天はキウイのタンパク質分解酵素によって変化することはありません。

実験1:酵素と温度の関係について

さまざまな温度条件で実験を行い、酵素が最もよく働く温度を調べる。

《方法》

ゼラチン(ゼリー)液(90℃以上)を作る。
キウイを同じ大きさ(同じ重さ)に切り分ける(7個用意)。
キウイをお湯で90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃に熱処理し、それぞれカップに入れる。
各カップにゼラチン液(各キウイの温度以下)を注ぐ。
すべてのカップを約60分、氷水で冷やし、ゼラチン液の固まり具合を比較する。

《結果》

60℃以下のキウイのカップでは、ゼリーはゆるく、うまく固まらなかった。最もゼリーがゆるかったのは40℃のキウイで、その前後の30℃、50℃のキウイでは、ゼリーが一部だけ固まった。

《考察》

酵素にはよく働く温度があり、その温度は40℃ぐらいと考えられる。40℃より高温では、酵素自体が壊れるので働かない。40℃より低温では、酵素が壊れたか、働きが鈍くなっているのではないかと考えられる。

実験1の追加実験

30℃、90℃のキウイで実験1と同じ実験を行い、そのキウイを今度は40℃に熱処理して再び同じ実験をし、ゼリーが固まるかを調べる。

《結果と考察》

一度90℃で処理したキウイは、40℃に処理しなおしても、ゼリーが固まった(酵素の働きが回復しなかった)ので、「酵素が高温で壊れてしまった」と考えられる。 一度30℃で処理したキウイは、40℃で処理しなおすと、ゼリーが固まらなかった(酵素の働きが回復した)ので、「酵素は低温条件では壊れず、働きが鈍くなっていただけ」と考えて間違いない。今回の30℃→40℃の実験で、実験1のように完全なゼリーが液状にならなかったのは、1回目(30℃)の実験の際にキウイの酵素がゼリーへと染み出し、2回目(40℃)の実験では十分な量の酵素がなかったためと考えられる。

実験2:酵素とフルーツの種類について

いろいろな種類のフルーツを用いて実験を行い、どのフルーツにキウイと同様の酵素が含まれているのかを調べる。

《方法》

熱処理をしていないフルーツ(メロン、モモ、スイカ、ナシ、ミカン、バナナ、リンゴ)を用意。同じ大きさ(重さ)に切って、40℃のゼラチン液を流し込み、約60分冷やした後、固まり具合を比 較する。

《結果と考察》

メロン以外のフルーツでは、ゼリーは固まった。メロンのゼリーは、「実験1の50℃」と同じほどの、ゆるい固まり方だった。メロンにも、キウイと同じようなタンパク質分解酵素(調べたところ「ククミシン」という酵素)が含まれていることが分かった。

実験3:キウイ内部の酵素の分布について

タンパク質分解酵素が、キウイのどこに多く分布するのかを調べた。

《方法》

カメラ用のフィルムや印画紙にゼラチンが使われていることを利用。輪切りにしたキウイをフィルムや印画紙に一定時間置き、ゼラチンの溶け具合(溶けた跡)を観察する。


フィルムにキウイをのせる

実験3-1ではカラーフィルムに置いて、その跡を観察。実験3-2では白黒フィルムに置いて、自分で現像したものを観察。実験3-3では印画紙に置いて、現像したものを観察した。実験3-4ではブローニー版白黒フィルム(60mm幅)を利用した。

酵素反応を利用したキウイに含まれる酵素分布写真

《結果と考察》

置いてから15分の時点で、キウイの皮のすぐ内側でゼラチンの分解部分が現れ、25、30分ではキウイを置いたほぼ全体で分解された。しかし中心部分と、種子のある周辺部分はゼラチンが溶けずに残っていた。これらのことからキウイのタンパク質分解酵素は、皮のすぐ内側に多く分布し、種子の周辺部分にはあまり多くないと考えられる。ブローニー版白黒フィルムを使い、現像処理する方法によって、キウイの酵素の分布をより詳しく知ることが出来た。

実験のまとめ

 キウイのタンパク質分解酵素が最も活性化するのは40℃ぐらいであり、70~90℃の高温では壊れてしまっている。30℃ほどの低い温度では、働きが鈍ってしまうことが分かりました。同様な酵素はメロンにもあることが分かりました。
 写真用白黒フィルムを使うことで、キウイの皮の近くに多くの酵素が含まれることが分かりました。また、時間をかければ、フィルムのゼラチンが溶ける部分はキウイの内側へと広がっていくことから、量の差こそあるものの、キウイの全領域に酵素が存在すると考えられます。
 写真用フィルムや印画紙を使っての実験方法は、お父さんが見せてくれた高校の理科の教科書に掲載されていました。それは酵素が働いているかどうかを見るだけのものでした。この方法を応用、改良し、新しい方法で酵素に関する詳しい結果を出すことができて、よかったと思います。

指導について

指導について山崎浩一

 本研究は「豚足を使った骨格標本づくり」(山崎菜穂美:2003)、「モグラの骨格標本」(山崎芽薫美:2004)の両研究において、骨についたタンパク質を除去するために、入れ歯洗浄剤に含まれる酵素を用いたことに端を発しています。
 「生のキウイではゼリーは作れない」という事象の検証から始まり、酵素とゼラチンについての研究を重ねるうちに、写真フィルムにゼラチンが使われていることに気付きました。この写真フィルムの特性が酵素の研究に応用できないかと考え、様々な試行錯誤の末、ブローニー版フィルムを使用することとフィルム現像技術とを組み合わせることで、果実内の酵素分布を測定することができました。身近なものを利用した点と簡単にできる点が、この測定方法の利点と言えます。本研究では、酵素分布をフィルム上の濃淡で定性的にしか表せていませんが、今後定量的に表すことができるように改良できればと考えています。

審査評

審査評[審査員] 小澤紀美子

 モグラの骨格標本づくりで、骨についていたタンパク質を溶かすために酵素入りいれ歯洗浄剤を用いたことから「消化酵素」の研究に発展させた興味深い研究です。一般的に言われている「ゼリーを作るときは生のキウイを使うな」にヒントを得て、キウイの果肉の酵素の分布をフィルムに使用されているゼラチンで明らかにしています。科学するとは、身近な材料でできること、一つの課題が他の要素との関係性を導き出し、興味や探究心がふくらんでいくプロセスだと教えてくれますね。「継続は力」なりです。今後の発展を期待しています。

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