第57回入賞作品 中学校の部
継続研究奨励賞

セミのぬけがら大調査 パート6

継続研究奨励賞

茨城県つくば市立高崎中学校1年
八畑 実生
  • 茨城県つくば市立高崎中学校1年
    八畑 実生
  • 第57回入賞作品
    中学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究の動機

 2015年までの夏休みに、小学校の「野鳥の森」とグラウンドでセミのぬけがらを調査してきた。これまでに分かったことは①セミの種類によって羽化する時期が違う②アブラゼミはメスよりもオスの方が早い時期に羽化する③気温が高くなると羽化する回数が増える④木の高い所で羽化するセミが多い⑤野鳥の森とグラウンドの東側で羽化するセミが多い⑥野鳥の森とグラウンドでは、たくさん羽化する日が違う⑦枝の葉の裏や草の裏側で羽化するものが多い⑧セミのぬけがらの鉛直線に対する角度は80度から90度の間が特に多い⑨羽化する方角には特別な傾向はない。今回はこれまでの継続調査とともに、アブラゼミが羽化する時の角度について詳しく解明するために重点的に調査する。

継続調査(7月25日~8月31日)

〈項目〉

毎日の気温・湿度・天候
毎日の樹木ごと(野鳥の森24本・グラウンド33本)のぬけがら数
ぬけがらの高さ
ぬけがらの場所(枝の葉・枝・ひこばえ・幹)
ぬけがらのセミの種類とオス・メス

〈結果と考察〉

 セミのぬけがらの全体数は計548個。ここ数年(2013年686個、2014年468個、2015年499個)と比べて多くも少なくもない。天候の影響はなかった。
 2015年までは、アブラゼミの羽化はオスの方が早い時期、メスは数日以上遅れてピークを迎えていたが、今回は羽化のピークにほとんど差がなく、ともに同じ日に数多く羽化していた。梅雨明けが遅かったので、オスの羽化も少し遅れたためか。しかしオスの羽化はピーク後すぐに少なくなり、メスはより遅い時期まで多数の羽化が続いた。やはり「アブラゼミはメスよりもオスの方が早い時期に羽化する」という仮説を支持する結果だと考えられる。セミの種類で例年と違うのは、ツクツクボウシやニイニイゼミなど、アブラゼミ以外のセミがとても少なかった。これまでも年による違いが大きく、原因についてはっきりしたことは言えない。
 今回はたくさん羽化する木が、野鳥の森で変わった。2015年は15番のビワの木が63匹と多かったが、今回は2匹だけ。今回は18番のカキの木が48匹と最も多かった。グラウンドは2015年とだいたい同じ木だ。野鳥の森では春先に大規模な枝の剪定があったので、アブラゼミは地上に出てきた時の周囲の環境によって羽化する場所を選んでいるのかもしれない。
 セミのぬけがらの発見場所や高さは、2015年までと同様だった。羽化が多いのは、枝葉の多い高さ240㎝以上の所、低い草やひこばえだった。木の中間ほどの高さや、よく目立つ幹のまわりでは少なかった。これはセミが、鳥などから見つかりにくく、隠れやすい葉の裏などの場所を選んでいるためかもしれない。

重点調査:アブラゼミの羽化の角度について

(1)野外調査

 ぬけがらの鉛直線に対する角度を測定するために特製分度器「かくどん」を用いる。高さ約180㎝までに見つかったぬけがらを対象に、頭が真上を向いている時を0度として、右回り(時計回り)に10度区分ずつの匹数をグラフに表す。

〈結果〉

 ぬけがら計146匹の角度は、350度~0度~160度の範囲にあった。中でも20度から100度の間、特に50~70度が多かった。

(2)おもりによる再現実験

 ぬけがらは羽化して軽くなったものだ。羽化前の角度を再現して調べる。アブラゼミの幼虫(5匹)の1匹の平均の重さは3.044g、ぬけがら(20個)の1個の平均の重さは0.134gだった。羽化直前の1匹の体重は2.91gとして、その分のおもり(約3g)をクリップと安全ピンを組み合わせて作った。しなりの大きい細い枝や葉や草などに残ったぬけがらの背中に引っかけ、「かくどん」で角度を測る。

〈結果〉

 ぬけがら24個で測った。おもりを付ける前は0度から140度までの広い範囲にあった。おもりを付けた後は、枝や葉がしなることで、13個が50度から60度の間に集中した。また、24個のうち15個は頭を枝や葉の根元側に向けており、おもりを付けると枝や葉がしなって、ぬけがらの角度は浅く(より鉛直線近くに)なった。他の9個のぬけがらは、逆に頭を枝や葉の先端側に向けており、おもりを付けると6個はさらに角度が深くなり、3個は変化がなかった。

(3)羽化装置による羽化の観察

 発泡断熱材の板(約90×90×10cm)に直径約70㎝の円形の穴を開け、側面に透明な塩化ビニール板を取り付けた羽化装置「うかりんぐ」を作った。中に置いたアブラゼミの幼虫が円周壁に沿って登り、羽化するまでの様子や、ぬけがらの角度を調べる。

〈結果〉

 アブラゼミの幼虫30匹を観察した。幼虫は「うかりんぐ」の円周の壁を下から徐々に登り、羽化に適した角度に達するとそこで羽化を始めると予想していたが、実際にそのように動いたのは8匹だけ。他の22匹は「うかりんぐ」の頂上を越えて、さらに進んで頭が下を向くと、進行方向を180度反転させる行動をした。反転行動を1回だけ行ったのは12匹、2回が3匹、3回が2匹、5、6、9、10、13回が各1匹いた。羽化の角度はほとんど(28匹)が50度から100度の間だった。これらの行動や角度に、オス・メスの違いは見られなかった。

〈考察〉

 野外調査で見られた多くの逆向きのぬけがらや「うかりんぐ」での反転行動から、おそらくアブラゼミは、体よりも頭が下になるような角度ではうまく羽化ができず、それを嫌うために反転行動を行い、より羽化に好ましい角度を探すのだと思う。

◇     ◇

 野外でのアブラゼミの羽化には、単純に羽化角度の問題だけでなく、枝葉の茂り具合など、他の要因が複合的に影響している可能性がある。今後さらに「うかりんぐ」を使った観察例を増やすことで、アブラゼミが羽化に選ぶ好きな角度などについて、より詳しく知ることができるのではないか、と期待している。

指導について

指導について茨城県つくば市立高崎中学校 中島 良浩

 6年間研究を継続するなかで蓄積されたデータをもとに、新たな疑問点に対して毎年テーマを設定し、実験観察を行ってきました。今回の研究ではセミの羽化の角度に重点を置き、研究に取り組みました。野外にあるセミの抜け殻におもりをつるすことで自然界での羽化時の状態を再現する方法を考えたり、セミが自由な角度で羽化のできる装置を作製し、装置の中で羽化の角度や挙動を観察するという方法も6年間セミを見続けてきたからこそ生まれた発想でした。「セミ」という魅力的な研究対象に出会い、「なぜ?」という疑問を科学的な思考や検証方法で解決する力を身に着けることができました。そして6年間の夏休み期間のほぼ毎日を研究に費やし、こつこつと積み重ねてきた努力を「継続研究奨励賞」という形で認めていただいたことは、今後の研究の励みになりました。ありがとうございました。

審査評

審査評[審査員] 髙橋 直

 樹木等に残っているセミのぬけがらをさまざまな観点から調査してまとめてきた研究である。今回はセミの羽化の角度について重点的に調査している。同様の研究はこれまでもあったが、本研究の特徴は、細い枝や葉などについているぬけがらでは、実際の羽化時の角度と残ったぬけがらの角度とは同じでないという点を補正した測定を加えていることである。重みでしなるような枝や葉などではぬけがらの角度分布が幅広になっているのが、幼虫の重さに相当するおもりをぶら下げて測ると、見事に狭い範囲に収まるようになる。さらに、おもりを下げる前は背が下を向かず側方に向いていたぬけがらが、おもりを下げた結果、葉がねじれたりして羽化に都合の良いように背が下向きになるということも発見している。長年、観察を続けていることがこのような実験・観察につながっているのだろう。これからも新しい工夫をしながら続けていってほしいと思わせる、よくできた論文である。

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