第57回入賞作品 小学校の部
3等賞

羽のふしぎ

3等賞

三重県四日市市立富洲原小学校6年
天野 寿珠
  • 三重県四日市市立富洲原小学校6年
    天野 寿珠
  • 第57回入賞作品
    小学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の動機

 家で飼っているジュズカケバト「イチ」のケージに、たくさんの羽が落ちていることがある。でもイチは、いつもと変わらず元気に飛び回っている。どんなふうに羽が抜けているのだろう。また昨年の研究で「粉綿羽(ふんめんう)」のことを知った。短い羽毛の先がボロボロと崩れて粉になり、それをくちばしで体にまぶすことで体を守る役割があるという。粉綿羽はサギやフクロウの仲間、イチと同じハトの仲間にもあるというが、イチには見当たらない。これらの謎を解いてみたい。

◇ジュズカケバト「イチ」の情報

・ハト目ハト科キジバト属
・2014年8月13日、愛知県生まれ、オス
・全長:27.5㎝、翼開長:47㎝
・飼うことになったのは、兄が里親募集の記事を見て応募したから。性格はあまり神経質ではない。「クックルクー」と、テンポよくおじぎをしながら鳴く。1日のほとんどを室内のケージ内で過ごす。ケージを開けると、喜んで出てきて部屋中を自由に飛ぶ。

◇羽の基本情報

(1)形態別の種類
・正羽(せいう)
・綿羽(めんう)
・糸状羽(しじょうう)
・半綿羽(はんめんう)
・粉綿羽(ふんめんう)

(2)役割別の種類
〈飛ぶため〉
・初列風切羽(しょれつかざきりばね)
・次列風切羽(じれつかざきりばね)
・三列風切羽(さんれつかざきりばね)

〈バランスをとる〉
・小翼羽(しょうよくう)
・尾羽(おばね)
・上尾筒(じょうびとう)
・下尾筒(かびとう)

〈体を守る〉
・雨覆羽(あまおおいばね)

研究1:イチの羽の抜け方に規則性があるのか

〈方法〉

 イチから抜けた羽を1年間採集し、羽の種類や枚数などを記録し、天候や季節などとの関係を調べる。採集した羽は日付ごとに「正羽」と「綿羽」に分け、表裏から観察できるように透明ビニール袋に入れる。

〈予想〉

・羽は、気候が暑くなる前(6月ごろ)、寒くなる前(11月ごろ)にたくさん抜ける。
・保温性のある綿羽が、季節の変わり目に一度に抜ける。
・飛ぶための羽は1種類ずつ抜けて、新たに生えたら、次の羽が抜ける。

    10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
正羽 初列・
次列・
三列風切羽・
尾羽・
小翼羽
9 10 3 0 0 0 0 5 11 14 19 9 10
綿羽 その他 187 90 20 68 6 58 68 44 153 465 414 747 115

抜けた羽の枚数(2015年10月~2016年10月)

〈結果〉

 12月から翌年4月までは正羽、綿羽も抜ける数は少ないが、5月ごろから増える。よって、イチの換羽の時期は6~10月ごろと考えられる。イチの羽は季節を感じて生え変わっているようだ。野生の鳥とは違うペットのイチは、どうやって季節を感じ、換羽の時期を知るのか。四日市の気温との関係を調べると、最も気温の低い1、2月は羽が抜けず、特に綿羽は最も気温の高い7~9月にたくさん抜けている。イチは気候に合わせて換羽している。

◇正羽の抜け方の特徴

 左右翼の同じ場所にある同じ種類の正羽(初列風切羽、次列風切羽、三列風切羽、小翼羽、尾羽)がほぼ同じ日に抜けていることに気がついた。抜けた正羽のうち約88%が明確に左右対称のペアだった。

研究2:粉綿羽を探してその効果を試す

 イチの体で粉綿羽を探したが、見つけられなかった。2016年8月までに抜けた羽についても調べたが、ボロボロと崩れるものはなかった。しかし、イチの羽の生えている皮ふには、白いものがこびり付いていた。

◇はく製の観察

 名古屋市野鳥観察館で、アマサギの幼鳥のはく製を観察した。許可を得て触らせていただき、羽の深くまで指を入れてみた。表面の羽とは少し質感の違う、濡れたようにしっとりした羽のまとまりがあった。高級ティッシュのような感じだ。「これだ」と思い指で揉んでみたら、いつの間にか指は真っ白で、下の台座にはたくさんの粉が落ちていた。イチと同じハト科「アオバト」のはく製もあった。粘着テープで背中や翼をなでると粉が付いてきた。はく製になる前に、羽づくろいした粉がきちんと残っていたのだ。アマサギやゴイサギでもテープで採集した粉綿羽の粉を持ち帰り、顕微鏡で観察した。モワモワと曇った中に白い粒が見えた。

実験:イチの粉綿羽の粉と身近にある粉を比較する

〈方法①〉

 イチの体から採集した粉綿羽の粉、化粧品のファンデーションとボディーパウダー、小麦粉をそれぞれ透明なポリプロピレン・シートに付着させ、黒い台の上に置く。15㎝離れた所から霧吹きで水をかけ、乾いたら双眼実体顕微鏡で観察する。

〈結果〉

 小麦粉とボディーパウダーは粒が大きく、霧吹きの水で周辺に流れた。粉綿羽の粉とファンデーションには白くモヤモヤしたものがあり、どちらも水に流されなかった。

〈方法②〉

 粉の付いた透明シートに、5㎝の距離からドライヤーの冷風を当て、観察する。

〈結果〉

 粉綿羽の粉とファンデーションは、何の変化もなかった。小麦粉は少し粉がなくなった。ボディーパウダーは、大きい白い粒は飛ばされ、細かい粒だけが残った。

《考察》

 イチの粉綿羽の粉は、小麦粉やボディーパウダーよりも細かく、水や風に強い。ファンデーションも、雨がふったり風が吹いたりしただけで化粧が取れたら大変なので、落ちにくく作ってあるのだろう。イチが水浴びをしても、羽には水滴が少し残るだけで、その水滴はブルブルと振ればすぐに落ちる。それはイチが羽づくろいで、この粉を羽全体にまぶしているからだ。粉綿羽は、イチの体を守るために重要な役割をしている。

感想と課題

 水にも風にも負けない粉綿羽の力。自然が生み出す力の強さを改めて実感した。最近はドバトのフン害など、ハトが害鳥とされる話題も多いが、この自然の力を、人間のより良い生活へ活用できたらいいなと思う。

指導について

指導について名古屋市野鳥観察館指定管理者
東海稲永ネットワーク構成員 名古屋鳥類調査会代表 森井 豊久

 近年カワウは、ともすれば人に害を与える鳥のイメージが強い。にもかかわらず、天野寿珠さんは、身近な生きものをいとおしむナイーブなかかわりを示して「気になるウ」を鳥学会(名古屋)で発表しました。未知、不思議なものに対する探究心は鋭いものがあります。鳥の不思議、飛翔、翼、羽毛と、調べたい対象が広がっていったところでお知り合いからジュズカケバトを贈られました。そこで彼女の探究心に火がつきました。次々と抜け落ちる羽毛、換羽に目を奪われました。かかさず詳細に記録をとりました。一枚一枚の羽が翼として飛翔にどうかかわっていくのか疑問が解けるうれしさ。いとおしい生きものを科学する。ナゾを追究する。彼女のひたむきさは、きっと私たちの想像を超えて未知のページを開いてくれるものと確信しています。

審査評

審査評[審査員] 関根 正弘

 「こんなにたくさんの羽、1日で抜けたの?」と始まる本作品、家で大切に飼っているジュズカケバトの「イチ」が、これでも飛べるのだろうかと心配になるほど羽が抜けたことが、今回の研究の動機になっています。それに伴って昨年から始めた羽の研究から、イチの羽の抜ける原因を探ろうと細かい観察がなされています。毎日ビニール袋に羽を採取して日付、羽の種類、左右の区別、気付いたことを書き込み始めました。作品を応募する今年の夏までに根気強く1600本以上の羽を観察資料としてまとめてあります。その結果から、気温の変化を感じて換羽していることを結論付けました。また、丁寧な資料づくりを行ったことにより、同じ日または数日後に抜けた正羽は、左右対称に同じ種類の羽が続けて抜けることをつきとめました。粉綿羽についても剥製やイチで調べて探しだし、水や風に強いことを立証しました。イチへの愛情が普段見過ごされがちな羽の生え換わりや役目についての細かな視点をもった研究となっています。

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