第56回入賞作品 中学校の部
文部科学大臣賞

スギナの研究
つくしの生える条件

文部科学大臣賞

岐阜県岐阜大学教育学部附属中学校2年
杉江実咲
  • 岐阜県岐阜大学教育学部附属中学校2年
    杉江実咲
  • 第56回入賞作品
    中学校の部
    文部科学大臣賞

    文部科学大臣賞

きっかけ

 私の家の庭はさまざまな植物の競争の場だ。中でも最強なのがスギナだ。スギナとつくしは同じ植物だが、スギナが大きく育っているのにほとんどつくしが出ない場所、年によって出たり出なかったりする場所がある。スギナがあれば、必ずつくしが出るわけではないのか。つくしが生える(生えない)なぞに迫る。

はじめに

 この研究では、植物自体を「スギナ」と呼ぶ。「つくし」は、つくしの形をした「スギナの胞子茎」を指す。スギナの、特に地上に出ている「栄養茎」を指す場合は「スギナ(栄養茎)」と表記する。

これまでの研究で分かったこと:

 スギナはシダ類だ。従って種はできない。つくしから出る“粉”は胞子だ。スギナを引っ張ると、抜けるのはほとんどが茎からで、地下茎や根は抜けない。地下茎や根がなくならない限り、スギナは何度でも出てくる。冬に地上部が枯れても、春にまた出てくる。スギナは冬の季節以外、年中見られるが、つくしは春先にしか出ない。

スギナの一般観察

〈1〉観察場所

 次の3条件を満たす5カ所(A~E)を選んだ。

私の家の土地(庭や畑など)や知り合いの人の土地で、自由に入って観察できること。
毎日観察でき、勝手につくしが取られたり、草が刈られたりしないこと。
昔から今日まで、日当たりや温度などの条件が変わっていないこと。

場所 土俵 日照条件 季節日照 共生植物
A 離れの前 砂利 午前良好 通年良好 雑草
B 門の北側 湿土 朝夕日陰 冬季日陰 背の高い雑草
C 蔵跡 やぶ土 半日陰 冬季良好 樹木・雑草
D 隣の畑 畑土 終日良好 通年良好 農作物
E 果樹園 石混じり 終日良好 通年良好 ミント

《観察場所》

◇もう一つの場所=母屋の広縁の前庭

 今は溶岩プレートを敷き詰めていて観察できないが、かつてはつくしが年によって出たり出なかったりして、私が疑問を持つきっかけとなった場所だ。

〈2〉つくしの計数調査

 A~Eの各場所で、50㎝四方の広さにおけるつくしの本数を数えた。計測はつくしが生え出した3月の適当な3日を選んで行い、2013、14、15年の3年分の平均を求めた。なおDではつくしが50本以上あり、数えきれないので「50本」とした。

〈結果〉

A B C D E
2013 年3 月 7.3 19.3 1.7 50 21.7
2014 年3 月 9.7 16.7 2.3 50 29.3
2015 年3 月 8.3 21 1.7 50 24
総平均 8.4 18.9 1.9 50 25

《つくしの平均本数》

〈考察〉

 D、Eがダントツで多かったので「つくしがよく生えるのは日なたの場所」か?しかしBの場所も多い。Bは日陰で、夏ぐらいしか日は当たらない。そのため土も湿っている。また、以前つくしが大発生した母屋の広縁の前庭も完全な日当たりではない。さらに近所には毎年スギナ(栄養茎)が大きく茂っている土地もある。その場所は日当たりもよいが、つくしは1本も生えていない。
 これらの事実から、日なたであることが、つくしがたくさん生える条件とは言い難い。ただD、Eでつくしが多いことから、日なたであるほうがよいような気がする。

〈3〉スギナの採取観察

 「つくしのなぞは地中にある」と信じて3年間あちこち掘りまくり、観察した。

《スギナの構造》

● 多くの人が「根」だと思っているのが地下茎で、根はその地下茎から生えている。
● 地下茎の節から地上に出ている茎に「つくし」と「スギナ」がある。スギナを「栄養茎」、つくしを「胞子茎」と呼ぶ。
● つくしとスギナは地下でつながっており、同じ植物だ。

◇茎(地上茎・地下茎)について

 庭に敷き詰めた溶岩プレートの裏では凄いことに、スギナの地下茎が地上への出口を目指してぐるぐる巻きになっていた。地下茎の長さは、中学1年生当時の私の身長ほどもあった。地下茎の深さはまちまちだが、地面の表面が乾いているところの地下茎は深い。溶岩プレートの裏は湿っているので、地下茎はプレートの裏に張り付いたようになっていた。
 湿っていれば地表に近いほうが無駄がなくてよい。深いところに地下茎があると、そこから出る栄養茎や胞子茎は上に向かってどこまでも伸びるからだ。スギナや雑草の生えている地面に50㎝ほど盛土をすると、数日後にスギナ(栄養茎)が出てきた。はじめに白っぽい茎が上に向かって伸び、地上に出た部分は葉緑素ができて緑色になる。土に埋まった部分は硬く茶色くなり、地下茎へと変化する。
 地上の茎にも地下茎にも数㎝おきに節がある。地上の節からはやがて葉が出る。まれに根が出ることもある。地下の節からは根が出る。
 地下茎と栄養茎、胞子茎は元々同じもので、断面も同じような形状だ。
 胞子茎は数日で枯れてしまう。栄養茎は夏は暑さで干からび、新しい芽も出ない。冬も最終的には枯れる。春秋は成長が旺盛で、朝に芽を出すと夕方にはかなり伸びている。抜いても次々に芽が出てくる。
 地中では地下茎の成長も旺盛で、時間の経過とともに硬く、色濃くなってくる。木のように古いほど太くなるわけではなく、干からびて硬くなり、細くなってしまう場合もある。栄養が詰まっているのか、太くて立派な地下茎もある。

◇根について

 掘り出したスギナを育てようと何度も試みて、失敗を繰り返した。地下茎も根も切ってしまっていたのだ。スギナの根は地中深く、あるいはもっと離れた水が多い場所にあり、とても長い地下茎で結ばれている。スギナを地下茎ごと掘り起こし、地下茎を飼育ケースの底に張り付けて、その上に水はけのよい赤玉土をかぶせた。予想に反して根はあっという間に成長した。注意深くケースをひっくり返すと、赤玉土がきれいに根からはがれ、毛根の状態まで観察できた。

◇葉について

 スギナの栄養茎には節があり、その節から「針状の葉」が放射状に出ている。葉に表裏はなく、茎と同様に全体に葉緑素があり、どの方向からの光でも光合成ができる。各節から出る葉の数は、上方ほど少なくなり、葉の長さも短くなる。そのため全体の形はスギの樹形と同様に先細となり、密生しても互いに影になりにくい。このことは効率よく光合成を行うことに役立っている。葉の本数は決まっていない。下の方は10本前後で、上方へ2、3節ごとに1、2本の割合で減っていく。針状の葉にも節があり、後の観察で、その節にでんぷんが検出された。時々、葉に朝露が付いているのが観察されるが、周囲の草にはみられない。

◇胞子茎について

 同じ地下茎から伸びている栄養茎とは形が異なる。胞子茎の断面は地下茎、栄養茎と同じく、中央に大きな穴、周りに7つの穴がある。茎にでんぷん反応はない。胞子茎が出てくるのは3〜4月だが、11月の段階(のちに8月の段階と判明)で「つくしの芽」として地中で待機していた。しかしこの時期に胞子茎ができ始める個体もあり、初期の段階では栄養茎に成長するのか、胞子茎に成長するのか見分けがつかない。

◇胞子について

 つくしの先の「胞子のう」に収まっている緑色の粉が胞子だ。白い紙の上に採集後、数日すると綿のようにモワッとして、体積も何倍にも増えていた。顕微鏡で見ると、胞子の中心の丸い部分からひものようなものが2本出て、絡まり合っていた。乾燥すると伸びて、湿ると縮む「手」のようなものらしい。天気の良い日に観察すると、普通の状態では手が伸びていた。飛ばないように息を吹きかけると、生きているかのように、ひもがクルッと丸まり縮んだ。

◇塊茎について

 スギナを何度も掘り返しているうちに発見した。土の塊かと思ったが、イモのようなものだ。長さ十数㎝の地下茎に1〜2個付いているものから10個以上あるものまでさまざまだ。どの季節にも見られる。ヨウ素液で調べるとでんぷん反応があり、でんぷんの貯蔵場所のようだ。塊茎が、胞子茎が出る栄養源に違いない。塊茎があることが、つくしの出る条件ではないか。

つくしの生える条件

仮説1:地下茎の栄養状態が良いことが条件

 つくしの出ていない地下茎に、昨年出ていた形跡があった。つくしは栄養を使うので、次の年はその地下茎から出ないのではないか。

〈検証〉

 つくしの出た地下茎、出なかった地下茎を採取し、その様子を観察した。

〈結果〉

 地下茎の太さや枝分かれの状態によって、つくしが出る・出ないが決まるような規則性はなかった。太い地下茎から出ているのはスギナ(栄養茎)だけだったり、ひょろひょろの地下茎からつくしが出ていたりしていた。

〈考察〉

 つくしは新しい地下茎から出ることはない。古い地下茎から出るが、その古さや太さには関係ない。掘り出して観察した別々の地下茎は、もっと地中深くでつながっていたのではないか。そう考えると、細い地下茎からつくしが出ていたことも納得できる。つくしやスギナが出ている地下茎だけを観察しても判断がつかない。

仮説2:土壌が酸性だと、つくしが多く出る

 「つくしは酸性土壌を好む」と聞いたことがあるが、本当か。

〈検証

 場所A~Eと「もう一つ(例)の場所」で50㎝四方当たりのつくしを数え、購入したpH計でpHを測定した。

〈結果〉

 期待するほどpHは変わらなかった。

A B C D E 例の場所
本数 6 20 3 40 23 0
pH 6.8 6.7 7.1 7.0 7.3 7.1

〈検証

 ABDの各場所の50㎝平方範囲に消石灰(アルカリ性)をまき、翌2015年春につくしを数え、消石灰をまいていない場所と比較した。

〈結果〉

 Aは家の工事で掘り返されたので中断。Bでは、消石灰をまいたところはpH7.5、つくし1本。まかなかったところはpH7.0、つくし6本。Dでは、まいたところpH7.0、つくし0本、まかなかったところpH6.3、つくし4本だった。やはり、つくしは酸性土壌が好きなのか。しかし、ほほ同じpHでもつくしの本数に差があること(検証)の理由にはならない。

〈考察〉

 つくしは酸性土壌の方がよく出るが、「つくしの多く出る場所ほど酸性土壌である」との結果が出なければ意味がない。

仮説3:塊茎の栄養でつくしが出る

〈検証〉

 地下茎を掘り出して、塊茎の有無とつくしの本数の関係をA〜Eで調べた。

〈結果〉

 Dだけで塊茎が発見できた。AとBでもつくしは何本も出ている。Dでは、塊茎があるのにスギナ(栄養茎)しか出ていない株も多くあった。塊茎があることが、つくしの出る条件ではない。

〈考察〉

 植物が養分を作る仕組みは【二酸化炭素+水+光のエネルギー=でんぷん】だ。スギナ(栄養茎)は全身で光合成ができる。光合成に必要な水は地中深くの根から確保する。でんぷんはどこに蓄えられるのか。地下茎に蓄えられ、さらに量が増えたら塊茎ができるのか。

観察:スギナの各部位(葉、栄養茎、胞子茎、地下茎、塊茎)を観察し、でんぷんの有無をヨウ素液で調べた。

〈結果〉

 でんぷんは古い地下茎、栄養茎の葉・師管、塊茎で確認された。塊茎は3月に採取したもの、採取後花壇に植えて5月に再採取したもの、3月に採取後そのまま放置して干からびたもの、7月と8月にそれぞれ採取したものも調べた。塊茎のでんぷんは3月採取を最低に5月、7月、8月と順調に貯蔵が増えていた。

〈考察〉

 スギナで作られた栄養は師管を通って地下茎へ送られ、古い地下茎部分にでんぷんとして蓄積される。塊茎がある場合は、塊茎に蓄えられる。

最高の発見「地下茎の秘密」

 観察写真を整理していて、地下茎の断面は一通りではなく、季節や部位によって異なることに気がついた。さらに地下茎の断面は、内側とそれをドーナツ状に包む外側の二重構造になっている。内側は軟らかく水分もあり、引っ張ってもつるのように切れにくい。周りの部分はカサカサで、パキッと折れるほどだ。

 インクを吸わせて地下茎の断面を顕微鏡で観察すると、中央内部にインクに染まった6〜11個の穴があった。この穴が「維管束」だ。外側のドーナツ部分にも同じ数の穴があり、インクが検出されたが、単に毛細管現象だ。でんぷん検査では、外側部分の穴の周りにでんぷんが検出された。
 このことから、地下茎の中央部の維管束が根から水を運び、周囲部分はでんぷんの貯蔵、運搬をする場所だ。古い地下茎では中央部に維管束がなく、大きな穴(空洞)になっていた。外側部分の穴は残っており、でんぷんが多く検出された。古い地下茎は単に栄養の貯蔵・運搬として利用されていたのだ。

結論

 スギナ(栄養茎)はたっぷり水を吸い上げ、たくさんの日光を浴びて効率よく光合成をする。たまったでんぷんは地下茎や塊茎に蓄えられる。夏までに十分な栄養が地下茎にないと、次の春につくしは出てこない。

まとめ

 縄文杉が地上で歴史を語るなら、地中深くに、それと同じくらいの歴史をもつのがスギナだ。私の3年間の研究はスギナの長い進化のほんの一部、まだ何も知っていないような気がする。

指導について

指導について杉江 康夫

 私たち家族が暮らす家は自然が豊かで、実咲は幼い頃より、動植物に慣れ親しんできました。その過程で多くの発見や謎があり、さらに自然に引き込まれていきました。謎は自分で理由を究明したり、時には先人やインターネット・書籍の知恵を借りたりもしました。このスギナの研究は、単純な謎にもかかわらず、何の手がかり・情報もなく、暗中模索を3年間続けました。私の指導は専ら環境を整えてやることで、本人の作業はひたすら掘って観察することでした。この地道な反復によって、少しずつ着眼点が移り、謎の解明に近づいていきました。研究発表後もスギナの謎は尽きることなく、今、12月にもかかわらず、新たな発見に沸いております。実咲が「研究は身近な疑問から始まり、知りたいと思う気持ちが研究を加速させる」という科学のあるべき姿を貫いたことをこのように認めていただき、ありがとうございました。

審査評

審査評[審査員] 邑田 仁

 スギナの魅力にとりつかれて3年間継続した力作である。繁殖力旺盛なスギナはどんな所に生えるのか、つくしはどんな所に多く出るのかに疑問を持ち、それらが出てくる土の中の様子を掘り起こしてみるところからだんだん観察が深まってくる。地下茎のつながりはどうなっているのか、塊茎はどこにあるのか、茎の中にある穴はなんなのか、つくしはいつ形成されるのか、など、次々に新たな疑問をみつけ、自分なりに答えを出している。本人も気づいているように、その答えが100%正解というわけではない。しかし、わからないことが探究のもととなり新たな発見を生みだす。科学とはそのような繰り返しではないだろうか。労力をかけたことがすぐに期待された結果につながるわけではない。しかし、手を動かし、自分の眼で確かめたことは必ず何かの役に立ち、より大きな成果となる。この研究はそのようなことを予測させる研究である。

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