第51回入賞作品 中学校の部
3等賞

恐竜化石を発見しよう!Ⅴ~Starting Over~
ツンの歩いた道・第1部

3等賞

長野県長野市立柳町中学校1年
西沢 光燿
  • 長野県長野市立柳町中学校1年
    西沢 光燿
  • 第51回入賞作品
    中学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の動機

 小学1年生の頃から恐竜が大好きで、6年生の時にそれまでの研究をまとめた。中学生になっても続けようと決心し、今回研究をベースに物語を書きながら、新たな疑問を解いていこうと思う。

(1)生息

《「ツン」はここで生きていた。足を引きずりながら、弟たちとともに、洪水の後に残った水たまりを歩いた。その時の足跡が1億年以上もこの場所に残るとは、「ツン」は思ってもみなかった。》
 「ツン」というのは、1億9000万年前の中生代ジュラ紀に生息していた小型肉食恐竜で、長野県小谷(おたり)村土沢(つんざわ)で足跡の化石が見つかった。僕も2008年春に現地調査し、地名にちなんで僕が名付けたものだ。僕は昨年、足跡の大きさから恐竜全体の体格を知ろうと、骨格標本や図鑑、フィギュアなどから計111体の肉食恐竜を測定し、「肉食恐竜の腰までの高さは足の大きさの4.82倍、全長は14.92倍であること」をつかんだ。「ツン」の足跡の大きさは26.5cmなので、「ツン」の腰までの高さは127.73cm、全長が395.38cm。このサイズから「ツン」の種類は「スーチュアノサウルス」と考えられる。


(2)日常

《く「ツン」は目を覚ました。いつもと同じ森の風景だ。見上げるほど高いポドザミテスの木や、横になっている自分のすぐ近くにあるシダのような背の低い葉、その中間の高さの植物はソテツに似たベネチ朝早テス類だ。沼からはエキセスチスというトクサの仲間が伸びている。ここはいつも気温が高くてむし暑く、ジメジメしている。》
 「ツン」の足跡が残っている地層は「来馬(くるま)層」と呼ばれ、長野県と新潟県、富山県に広がっている。僕はこの来馬層から多くの種類の植物や貝などの化石を採集した。これらの化石から1億9000万年前の土沢周辺の環境を想像することができる。

 土沢に残された足跡はa~hの8個見つかっている。1994年10月19日に長野市立博物館の学芸員、畠山幸司さんが発見した。a~fは連続した1匹の足跡で、gとhはそれよりもひと回り小さく、それぞれ進行方向が違う。この場所には身体の大きさの違う2、3匹の恐竜がいたのではないか。最近の学説では、肉食恐竜は群れをつくって暮らしていたという。これらの足跡が小型恐竜(スーチュアノサウルス)ではなく、大型恐竜(エパンテリアスなど)の子供たちの足跡だとしたら、彼らは家族で生活していたとも考えられる。近くに親の大きな足跡が残っているかもしれない。この物語では「ツン」などの3匹はすべてオスとしているが、本当は足跡だけから性別、年齢などは分からない。

(3)けが

《土砂崩れに襲われた「ツン」は、もうろうとした意識の中で目を覚ました。左足が動かない。ポドザミテスの大木がその上に倒れているのだ。「ツン」は足を抜こうとした。と同時に激しい痛みが頭の先まで突き抜けた。幹の途中から生えたとがった枝が「ツン」の太ももを深くえぐっていた。》
a~fの足跡のうちa、c、eが右足、b、d、fが左足だ。よく観察すると、右足がきれいな形をしているのに、左足はゆがんだ形をしている。さらに右→左(c→dとe→f)の歩幅に比べて、左→右(b→cとd→e)の歩幅が狭いのだ。この足跡の主「ツン」は左足にけがをして、引きずって歩いていたのではないか。僕も雪の上で、左足に力を入れずに歩いてみた。確かに似た歩幅になった。

(4)洪水

足跡がついている地層の表面に、植物のクズのような物がたくさんある。植物の葉や枝などが泥と混ざって、うすく堆積したようだ。なぜこうなったのか? 洪水によって植物と泥が混ざりながら、ここに運ばれて来たのではないか。
水中の泥底に、本当に足跡がつくのか? シュレッダーで細かく切った新聞紙を植物のクズに見立てて、泥と混ぜた。これに手形をつけて観察すると、手形は2週間たっても残った。雨代わりにシャワーで水をかけると、手形は消えた。「ツン」たちの足跡も、次に雨が降れば消えるはずだった。

(5)火山

《大洪水から3日が過ぎた。数日前から感じていた地面の揺れも、何だか大きくなった気がする。弟たちは何の遠慮もなく、水たまりを歩いた。「ツン」の足跡のそばに、弟たちの逆方向の足跡が残った。…夕方、太陽が沈みかけた時に火山が噴火した。火山灰が襲って来た。一刻も早く逃げよう。「ツン」も弟たちと先を急いだ。》
「ツン」の足跡の発掘記録には、「それぞれの足跡のくぼみには多少なりとも凝灰岩が残存しているため…」と書いてある。凝灰岩は、火山灰が堆積してできた岩石だ。足跡が雨で消える前に、火山が噴火したことが分かる。試しに先の実験の手形に石こうの粉をかけてみたら、きれいな石こうの手形ができた。

(6)最期

《亡き父や母、弟たちの声も聞こえる。「ツン」が最後の力で起き上ったのと、熱した火山灰が降りかかり、その命が尽きたのは、ほぼ同時だった。》
2010年8月、「ツン」の足跡は今にも崩れそうな崖の途中で、粘り強く存在している。

(7)色彩

「ツン」の体の色や模様を解明したい。恐竜は鳥に進化したという説がある。それならば恐竜は鳥の特徴を持っているはず。現在の鳥のほとんどは、周辺の景色がカラーで見えている。その根拠として、カラフルな色でメスにアピールするオスの姿があげられる。鳥の先祖の恐竜も、おそらくカラーで見えていただろうし、仲間の識別など生活の様々な場面で、体の色を利用していたと考えられる。

(8)羽毛

ジュラ紀の土沢の気候は高温多湿だったので、体温を保つための羽毛は必要なかった。ただ、子供の頃は体温調節がうまくできないので羽毛におおわれていた。大人になって抜けてしまうが、オスには求愛のディスプレー用にたてがみが残っていたと思う。

(9)初恋

《「ツン」は、同じ年ほどのメスと目が合ってしまった。胸がとても熱くなる。すると頭の上のトサカと、のどの下のひだが真っ赤になった。》
求愛のディスプレーは、敵にも目立ってしまうのではないか。動物園の飼育員さんは「逃げる自信があるので、派手な姿でもよい」という。僕は、求愛の時期限定で「ツン」が発色するということにした。

(10)疾走

「ツン」は素早く動くことができた。ただし、体色が黒っぽく濃い色をしていると熱を吸収しやすく、暑くなりすぎたかもしれない。「ツン」の体色は少し薄かっただろう。

(11)強敵

小型恐竜の「ツン」たちは、大型恐竜に捕食される立場にあった。隠れるのに役立ったのは、森の中の景色に紛れ込んでしまう保護色だった。動物園の人によると、鳥のオスはメスや幼い子供を助けるために、わざと派手な色と行動で相手に目立って見せることもあるという。「ツン」は保護色の中にも、多少は派手な部分もあったかもしれない。

(12)狩猟

《「ツン」は森の中の色にまぎれて身を隠し、群れからはぐれた一頭を追い詰める作戦をとった。ところが大失敗。木が生えていない広い場所に出てしまったのだ。》
土沢の森に紛れ込める体の色とは、どんな色だったのか。近所の森で実験をした。画用紙に絵模様を描き、60~70m離れた森の中に置いてもらった。それを僕が見つけた時間を計った。絵模様は木の幹の茶色、葉の緑をベースに、ヒョウやシマウマ、トラなど参考にした。絵柄や色彩を変えるなどして実験を3回重ね、計15種類の中から、「ツン」が最も見つかりにくかった体色と模様は「茶色ベースの緑たて縞」または「緑ベースの茶色たて縞」だった。森の笹には枯れて黄土色になっている葉もあり、地面には枯れ葉もあったので、「ツン」の足元だけは枯れ葉の黄土色に近かったかもしれない。

(13)後記

中学生になって部活は科学部ではなく、美術部に入った。3年生までに「ツン」の全身想像図を完成させて、よみがえさせるために、絵の描き方を勉強するつもりだ。

指導について

指導について西沢正智

 家の近くから恐竜化石は発見できるのかという素朴な疑問から始まったこの研究も、5年目になりました。その中で、日々恐竜や化石に携わる何人もの方たちと巡り会えたことは、とても幸運でした。そして、その方々からたくさんの応援と助言をいただき、とても感謝しています。研究には人とのつながりも大切なのだと感じました。
  更に昨年、継続研究奨励賞の受賞の際に講評をしていただいた小澤紀美子先生から「物語」というキーワードを教えてもらい、それをヒントに今回の研究は完成しました。深く御礼申し上げます。
  中学生になると勉強や部活動等で忙しく、研究に費やすことができる時間が少なくなってしまいましたが、題名に「第1部」とあるのは、第2部、第3部へと続けていこうという、息子の決意表明です。
  私も精一杯、とことん応援していこうと思います。

審査評

審査評[審査員] 小澤紀美子

 恐竜好きで多くの化石を発見している少年が中学生になり、昨年継続研究奨励賞を受けた研究を発展させ、とうとう3等賞の受賞です。おめでとうございます。
  小学校6年生になる少し前に長野県小谷村土沢で見つけた恐竜の足跡は残念ながら第1発見者ではなかったのですが、静かな情熱が研究を継続させています。1億9000万年前に生息していた小型肉食恐竜に「ツン」という発見場所の名前を付けて、ナラティブ方式(「物語」展開方式)で「化石を調べ、恐竜が生きていた当時の場所の状況」を読み解いていきます。足跡の向きから恐竜は左足に怪我をした1匹だけではなく弟2匹がいたのではないかと想像し、実際に自分の足で実験をして読者を恐竜の生きていた時代に引き込む魅力的な展開です。発見した地層の形状から洪水があったのではないか、さらに足跡に付着していた凝灰岩から火山爆発説を展開している。圧巻は、恐竜の生きていた時代の気候から植生の状況や森の中での捕食関係を推察し、実験・調査を重ねて「ツン」の色を探究するプロセスです。

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