自宅付近を流れる国場川と宮平川を見ると、魚が下水溝近くへ集まり、死魚が多く見られる。この2つの川は生活排水や工場からの排水で水が汚染されているのではないかと考えた。そこで、2つの川に5つのポイントを設置し、北部の安波川と源河川、国場川上流である南風原ダムの水と比較しながら汚れの原因を調べることにした。さらに、自作の浄化装置をつくり、実際に汚れた水をきれいにしようと思い、この研究を進めることにした。6年間の研究データと今年のデータとの比較を行い、川の汚れの進み具合を調べていこうと思った。
① | 調べる川にポイントを決め観察した。 |
② | ポイント(1)~(5)、安波川、源河川、南風原ダムのそれぞれの水を摂取した。 |
③ | 採取した水を透視度計で測った(実験1)。 |
④ | 河の溶存酸素調べをした(実験2)。 |
⑤ | 生活排水が多く流れている川は酸素が少ないことが分かり、川の水をろ過してから乾燥させて、浮遊物質を調べた(実験3)。 |
⑥ | 強熱減量により、川の底質の汚れ具合を調べ、川の汚れ具合と比較した(実験4)。 |
⑦ | パックテストを行って、今までのデータと比較した(実験5) |
⑧ | 川の水を蒸発させて調べ、今までのデータと比較した(実験6) |
⑨ | 実験6までの結果をもとにして浄化装置を製作した。 |
制作方法
① | 縦30cm、横70cm、奥行き21cmの直方体をガラスで作った。 |
② | シリコンを側面や隙間にぬり、金具をつけた。 |
③ | ビスを入れた。 |
④ | 水車を作った。 |
⑤ | 紙やすりで水車の角に丸みをつけた。 |
⑥ | ねじで水車やスクリューをとめて、うまく流れるように固定させた。 |
実験方法
① | 金づちで網をまげた。 |
② | ガーゼを縦29.5cm、横19cmに切った。 |
③ | (1)でまげた網を(2)のガーゼで包んだ。 |
④ | 網を装置に入れて、ろ過できるように固定した。 |
⑤ | 木の棒で区切りを作った。 |
⑥ | 隙間を無くす為に、綿を下に詰め込んで、その上から区切りの木をのせた。 |
⑦ | 3回、もれないか実験したのち、もれることなく、浮遊物はろ過されないことから、実験を開始した。 |
⑧ | ポイント(2)とポイント(3)の川の水を20リットルずつ準備した。 |
⑨ | 手作りのお風呂用ポンプとスイッチのモーターで水をくみ上げた。 |
⑩ | くみ上げられた水は水車にとって浄化装置の中に落ちた。 |
時間ごとにスクリューでかき混ぜて、たまった浮遊物質は、自作のポンプによって水車へとくみ上げられて再び浄化し、循環させた。 | |
浄化した水を、時間ごとに分けてパックテストをした。 | |
パックテストは実験5と同じものをやり、源水と浄化した水を比較した。 | |
さらに、穴のあいているものを使えばmもっと浮遊物質を取り除くことができるのではないかと考え、浄化装置に約1kgのさんごを入れて、同様に実験をした(実験7)。 |
観察結果
・ 北部の川(安波川・源河川)には、ヒゲナガカワゲラ、カワゲラ、サワガニ、鮎、ヨシノボリがいた。また、イシマキガイなどさまざまな生き物がいることが分かった。川の水は透きとおっていた。
・ 南原町を流れる国場川・宮平川にはテレピアがいっぱいいた。ヨシゴイやバンなどといった鳥があまり見かけられなくなっていた。洗剤の泡が増えていた。今年もたくさんの死魚があった。川は、年々、とても濁ってきていることが分かった。
実験結果
コンポスト付近を流れるポイント(2)は、透明度や溶存酸素、浮遊物質、強熱減量実験では、安波川や源河川とほとんど変わらない値が出ていたのだが、実際の観察では、魚の死骸や腐ったにおいが満ち、私は、目に見えない状態の汚染だと考え、パックテストや蒸発に見えない状態の汚染だと考え、パックテストや蒸発実験を行った。その結果、COD、亜硝酸、アンモニウムの値が安波川や源河川の10倍~400倍と高い値を示し、蒸発実験では黒色の固形物が残って、非常に汚されていることがわかった。
川の汚れの著しいポイント(2)とポイント(3)の水を使って、自作の浄化装置で、ダムの水程度まで浄化・回復できた。
今回の研究から、自宅付近の河川の水を生物の住みやすい川にするためには、排水溝の近くに布のフィルターを取りつけ、川の水が攪拌しやすいように段差を作って、空気の取りこまれるような川底の作りにしていくとよいのではないかと考えた(図1)。海岸近くにあるサンゴのかけらを川底に加えると、さらに水の浄化に役立つと考えた。
指導について琉球大学教育学部付属中学校 島村一司
「理科が好き!」そんな子どもたちを育むためには、身近な疑問を科学的に解き明かしていく自由研究が適していると考えています。教職に就いて20年間、生徒自身にテーマを見つけさせ、課題の解決方法も生徒の発想を大事にしながら、共に解決していけるように努めてきました。
今回受賞した研究は、その自由研究を選択理科の時間を通して行ったものです。この生徒はこれまで、身近な川の汚染について色々な側面から6年間研究し続けて来ました。しかし、汚染状態を知る段階に止まり、汚染原因や何故パックテストが必要なのか等についてはほとんど知らない状態でした。
今年は生徒の五感を通した観察・実験から科学的手法に基づく実験・観察へとステップアップさせることにより、科学研究のダイナミックさを経験させたいと思いました。さらに、環境に関わる研究が、調査、分析に終始しがちであることを踏まえて、環境浄化へ取り組む「行動のレベル」まで指導することをこころがけました。実際には、川の環境指標や汚染原因を調査し、園調査結果に基づき浄化装置を自作し、汚染された川の水がどれくらい改善されるかという研究を支援しました。
審査評[審査員] 金子明石
幸喜未那子さん、一等賞おめでとう。7年もの長きにわたって一人で環境調査を続けてきたことに感服しました。今回の応募作品は02年8月の調査結果だけですが、考察として過去のデータを多少なりとも引っ張り出して、年次変化も取り上げてほしかったと思います。
この作品では自宅近くの2本の川に5ヵ所の調査地点を設け、8項目の比較をしています。調査地点マップでは、地点ごとに全体の風景写真もつけて、環境の理解を助けるのに役立てています。さらにデータをグラフにまとめて、5地点の違いを丁寧に示しているのにも好感が持てました。地点(2)では、見た目もきれいで4項目で「きれいな川」と同じ結果が出ましたが、魚の死骸や腐臭があり、亜硝酸などによる科学的汚染が「きれいな川」の10~400倍もあって、水が透きとおっていても安心できないことを明らかにしましたね。
浄化実験ではサンゴのかけらを用い、それを応用した川の浄化モデルも提案するなど実践的です。
今後も新たなアイデアで調査を続けてください。
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