小学校2年生の時、本荘公園のタンポポには、花の小さなタンポポと大きなタンポポがあることに気付いた。調べてみると、それはセイヨウタンポポとエゾタンポポだった。詳しく調べてみると、本荘公園にはセイヨウタンポポが多く、エゾタンポポは少ないことが分かった。どうしてセイヨウタンポポは多く、エゾタンポポは少ないのだろうか。タンポポの体のつくりや生活のしかたを比べて、その理由を追究してみようと思った。5年間にわたる研究をまとめた。
① | 本荘公園のセイヨウタンポポとエゾタンンポポの分布を5年間調べ、その移り変わりの様子から勢力のちがいを明らかにする。 |
② | セイヨウタンポポとエゾタンポポのからだのつくりを調べ、仲間を増やす力のちがいを明らかにする。 |
③ | セイヨウタンポポとエゾタンポポの種子の特徴を調べ、仲間を増やす力のちがいを明らかにする。 |
④ | セイヨウタンポポとエゾタンポポの花粉の特徴を調べ、仲間を増やす力のちがいを明らかにする。 |
⑤ | 本荘公園のセイヨウタンポポとエゾタンポポの1年間の生活の様子を調べ、生き延びる力のちがいを明らかにする。 |
セイヨウタンポポとエゾタンポポの区別は総包片をみて行った。
1.タンポポの分布
方法
結果・分かったこと
① | セイヨウタンポポの方が多い。セイヨウタンポポは、公園に広く広がっている。 |
② | エゾタンポポは、公園の西側に固まっている。 |
③ | 本丸にはタンポポが少ない。 |
④ | セイヨウタンポポとエゾタンポポが混じって生えていることがある。 |
⑤ | 所々にタンポポの群落がある。 |
方法
方法
本荘公園のセイヨウタンポポとエゾタンポポが混じって生えている群落ではどのような移り変わりがあるのかを調べた。
2.タンポポのからだのつくり
方法
結果
① | 花(頭花)の直径(各10個の平均)セイヨウタンポポ:42.3mm、エゾタンポポ:53.4mm |
② | 花(頭花)の高さ セイヨウタンポポ:116mm、エゾタンポポ:159mm |
③ | 花(舌状花)の数 セイヨウタンポポ:203個、エゾタンポポ:159個 |
④ | 綿毛の直径 セイヨウタンポポ:46mm、エゾタンポポ:55mm |
⑤ | 綿毛の高さ セイヨウタンポポ:488mm、エゾタンポポ:519mm |
⑥ | 果実(種子)の数 セイヨウタンポポ:221個、エゾタンポポ:122個(③⑥は各5個の平均、他は各10個の平均) |
3.種子の特徴
1.種子の飛ぶ力:4mの高さから種子を落として、何秒で床に着くかを調べた。
2.種子からの芽の出かた:水でぬらした脱脂綿上に各50個ずつ種子をまいて、芽の出かたを調べた。
4.花粉の特徴
① | 花粉の色や形と大きさ 方法 顕微鏡観察し、比較した。 結果・考察 ・花粉の色は両方とも黄色だった。・両方とも六角形。エゾタンポポの花粉の方が大きかった。・セイヨウタンポポの花粉の方が粒の大きさがそろっていた。・両方の花粉の表面にぎざぎざがあり、こん虫やめしべの先にくっつきやすくするためであると考えられる。 |
② | 花粉をつくる花とつくらない花 方法 白いティッシュペーパーに花をこすり、黄色い花粉がつくかどうかを調べた。 結果 エゾタンポポは全ての花が花粉をつくっているが、セイヨウタンポポは花粉をつくらない花が、公園北側では25%、公園北東側では65%、公園西側では81%あった。 |
③ | 花粉なしで種子をつくる花 方法 タンポポのつぼみを半分切り取りめしべに花粉がつかないようにして、その変化を調べた。 結果 エゾタンポポは種子ができないが、セイヨウタンポポは、普通のセイヨウタンポポに比べて半分以下ではあるが、種子ができた。 方法 できた種子を水でぬらした脱脂綿に植えた。 結果・考察 花粉の働きなしでできた種子も、きちんと芽を出した。花粉に頼らずに種子をつくれるので、セイヨウタンポポはどんどん勢力を強めているのだと考えられた。 |
④ | 花粉を運ぶこん虫 方法 本荘公園の中のセイヨウタンポポ群落とエゾタンポポ群落で、2時間、昆虫採集を行った。比較のために、赤沼下のセイヨウタンポポ群落と小友のエゾタンポポ群落でも昆虫採集を行った。 結果 ・セイヨウタンポポよりもエゾタンポポの方にたくさんの虫が来た。・タンポポの花粉を運んでいるのは、アブ・ハチ・ハエ・チョウの仲間であった。 |
5.1年間の生活の様子
① | 花の咲く時期 方法 1年を通して花の数を調べた。 結果・わかったこと エゾタンポポは5月・6月しか花が咲かないが、セイヨウタンポポは春から秋にかけてずっと咲くことが分かった。 |
② | 1年間の移り変わり 方法 セイヨウタンポポとエゾタンポポの群落の中に1m×1mの四角形をつくり、その中のタンポポの株がどのように移り変わるかを調べた。 結果 セイヨウタンポポは夏になると数が減るが、なくなることはない。エゾタンポポは夏になると完全になくなった。セイヨウタンポポは冬に雪の下で、ほとんど消えてしまう。エゾタンポポは雪の下でもほとんど残っている。 |
指導について佐藤和広
娘が、タンポポの研究を始めたのは、小学校2年生の時でした。学校のすぐ隣にある本荘公園を歩いていて、タンポポには大きいタンポポと小さいタンポポがあるのを不思議に思ったのがきっかけでした。
今年で5年目になる研究ですが、これまで、2つのタンポポの違い、種子の特徴、生育場所の移り変わりの様子、花粉の性質、10年後の生育場所の予想などを調べてきました。今回の研究は、5年間で得られたデータをもとに、どうしてセイヨウタンポポが多いのかという最大の疑問を解き明かすことを目標に進めていきました。
その中で、予想どおりセイヨウタンポポは仲間を増やす力がとても強いことが分かりましたが、エゾタンポポにも雪の多い秋田県で生き抜くためのいろいろな知恵があることも発見できました。娘はエゾタンポポが大好きなのですが、そのエゾタンポポが強く生き抜いている姿を見て感動している様子でした。
来年度は中学生ですが、まだまだ解き明かしたい謎は多いので、6年目・7年目と研究を深めていけるように、見守っていきたいと思います。
審査評[審査員] 津幡道夫
佐藤華純さんは、自分の身近にあるエゾとセイヨウのふたつのタンポポの違いに目を向けて、この研究を5年間も続けました。佐藤さんはエゾは減ってきており、セイヨウが増えてきていると考えました。そこで、公園全体を6000個ものマス目に区分けし、それぞれのマス目の中にどんなタンポポがあるかを毎年調べ続けました。また、エゾとセイヨウのどちらもある場所で一定の範囲を決めて、本当に減ったり、増えたりしているのかも調べました。大変な努力もしていますし、様々な工夫もされていますね。それだけではありません。エゾが減りセイヨウが増える理由について、他にも幾つもの点を挙げて、追究していきました。野外の植物の生き方は、とても多くの条件に左右されてしまいます。ですから、この研究の様に「どちらが多い?どうして多い?」というような簡単そうなことでも、この研究の様にたくさんの角度から、調べていくことがとても大切になります。おめでとう。
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