今年の夏は、ぼくの記憶の中で一番暑い夏で、炭酸飲料を毎日飲んだ。ある日コーラのペットボトルを気まぐれにたたいて振動をあたえると、コーラの水面がキラキラ輝いて見えた。面白いので、定規でペットボトルをパンパンたたいてよく見てみると、コーラの水面上に茶色の水玉がたくさんあり、ビリヤードのボールのように走り回ったり、ゆれながら合体して大きくなったり、消滅したりしていた。コーラの水玉が下にあるコーラの液と一体化しないで水玉としてしばらく生き続けるのは、なぜだろう。その理由を明らかにしたいのと、初めてまじまじと見つめた水玉についていろいろなことを知りたくなって、小学生最後の夏休みの自由研究として、この水面で輝く不思議な水玉について、くわしく研究することにした。
この研究の結果、次のことが明らかになった。
(1)水玉のでき方としては、①水滴ができて、②水面上へもぐらない程度「そっと」のせられ、③水面と一体化しないことが必要である。
(2)水滴の形成としては、水面で波がペットボトル壁にあたる「水しぶき」でできる場合と、大きな水玉が水面と一体化するときに外側から溶液が流れ込み、その中央で噴水状にはね上がってできる場合がある。音と波を一緒にコントロールすることで、効率的に水滴を発生させることができる。
(3)水滴から水玉を形成するには、溶液量にもよるが、5mm程度以下の高さから「そっと」のせられることが必要である。合成洗剤0.1%の200m㎥以下の小さい水滴では2cm以上の高さでも水玉が形成される。合成洗剤0.05~1%ではより高い高さで水滴を落下させると、水中シャボン玉をつくることができる。
(4)水玉と水中シャボン玉の観察から、水玉と水面の間には、空気の薄い層が存在することがわかる。泡ができやすい溶液は空気と仲が良い(なじみやすい)ので水玉がよくできる。
(5)泡の移動速度が遅い溶液で水玉の寿命が長い。このことは、膜の成分である空気の逃げにくさが水玉の安定性に重要な役割を果たしていることを示す。
(6)水玉の寿命は溶液の種類で大きく異なる。水玉が長寿命であった溶液は、合成洗剤だけでなく、コーラ、酢、ブレンド茶といった泡立ちが良く、溶液中を泡が移動しにくい性質の食品であった。
この研究を通じて、推理していくことの楽しさや、一つ一つていねいに実験して確認することの大切さを知った。今後は、ペットボトルの水玉発生装置でできる水玉がなぜ、主に正方形に集合するのか、波と音の勉強をして考えてみたい。