小1の頃から水辺の生きもの、特に水生半翅目の研究を続けてきた。昨年はアメンボ7種について、波が立つ状態での姿勢制御、エサの探し方、とり方などを調べた。これらはそれぞれの生息環境によって異なることが分かった。また波に乗れないアメンボは陸生の昆虫の脚に似たつくりであり、波に乗れたものは、体長が短く丸い体つきで、中、後脚は体の後方側面から生えていた。生息環境によって体のつくりも違っていた。研究を進めていく中で特に面白いことが2つあった。1つは水面をジャンプすること、もう1つは水面を浮くアメンボがすぐ水そうの壁にくっつけたことだ。浮けるけど壁にもパッとくっつける。泳ぐ時に脚で水を押したり持ち上げたりするがジャンプもできる。水面上で同時にはできそうもないことをやってしまうアメンボの脚に強い興味と疑問が残っていたので、今年は特に「くっつく」に注目して調べることにした。
まず7種のジャンプの様子を高速連写で調べると、まず中脚をふり上げてから水面にたたきつけて瞬時に体を起こし、4本の中、後脚をかさをたたむように一瞬ですぼめて上向きの強い力をつくりジャンプしているようだった。壁にくっつく時は中脚が最後に壁にくっついていた。顕微鏡での観察では脚だけでなく全身が毛でおおわれ、ジャンプできるハネナシアメンボの前脚の毛の密度は他種より密だった。くっつきの実験で、ハネナシアメンボは私の手で板に乗せたのではあまりくっつけず、自力でくっつくとくっつけることが多かった。6本の脚に加え腹も壁面にくっつくことが50%ほどあった。アメンボは脚などをこすって手入れすることをよく見かけるが、毛なみや毛の油、つめ、そして今回のジャンプの勢いなどもくっつきに関係していると考えられる。本当はどこでくっついているかもう少し詳しく調べたかったが、体長約1cmのハネナシアメンボを肉眼で細かい部位まで見るのは難しかった。結局、脚のどの部位がくっつくかまでを十分には調べられず、残念だった。