みなさんは、「食虫植物」ってしってますか?ぼくは、初めてハエトリソウを見た時、本当にびっくりしました。そんなに大きい葉でもないのに、小さなバッタやカマキリまでパクッと食べてしまうのです。食虫植物は光合成で成長し、不足した栄養を虫を取ることで補っているのです。
たまたま、花屋さんにいろいろな食虫植物が売られていたので、何種類か買って観察してみることにしました。植物なのになぜ虫を食べるのか、どうやって食べるのか、虫の何が必要なのか、どんな虫を食べるのか、どんな種類の食虫植物があるのか、とにかく知りたいことだらけでした。1つ1つを大切に育てて、どのように成長していくのかを記録し、他の植物とどこがちがうのかも見つけていきたいと思いました。
ハエトリソウの栽培について
ハエトリソウを7月14日に2はち買ったが、1週間もしないうちに2はちともかれてしまった。本で調べてふだんやせた湿地に生育するハエトリソウには肥料の入った土はよくないことがわかった。土の変わりに保水性があり、通気性のよい水ごけを使うと育てやすいこともわかった。7月21日に3はち買って、また観察を始めた。植えかえの時、根が短く細くて、他の植物に比べて、根が張っていないことに気づいた。
ハエトリソウの観察記録
ハエトリソウが針状突起のわなを持つ1人前の葉になるまで約1ヶ月かかることがわかった。先たんのはさみわなの大きさはその葉によって違う。7~8mm程度にしかならないものもあれば、2cmほどのものもある。
ハエトリソウのしくみ
針状突起は葉の中央が長く、はしへいくほど短くなる。虫をはさんだ時、針状突起が交ごにぴったりと合わさって虫を強くしめつける。針状突起の数は左右同じか1本ちがいで、平均すると約19本ずつだった。
けんび鏡で見たハエトリソウ(新芽)
黄緑色の筋がたてに細かくはいり、ところどころに茶色のつぶが針状突起からの葉の全体に見られた。それを400倍にして見ると、何とその茶色のつぶに見えた物はうす茶色の花びらだった。とても美しい細ぼうなのでおどろいた。見た目のとげとげしさや名前からは想像もできないものだ。茶色の細ぼうは花びらが重なっていたり、よじれた形だったり様々だ。これは消化液を出す細ぼうなのだろうか。
けんび鏡で見たハエトリソウ 2
まだ虫をつかまえていない新しい成長した葉、虫をつかまえて消化液を出した後の葉、それぞれの細ぼうと新芽の細ぼうを比較して考えてみることにした。
うす茶色の細ぼうは消化液を出す細ぼうと思われる。
成長した葉には、うすいピンク色で丸い形でサッカーボールのようなもようの細ぼうが新芽の5~6倍見られた。虫をとらえた葉の細ぼうは色がうす茶色になっていた。
12種類の食べ物を用意し、反応する葉(25枚中12枚も反応しない)で、実験を行った。葉は2回ふれなければとじないので、ピンセットで1度葉の中に入れたあと水平に動かして葉から出し、さらにもう1度葉の中に食べ物を入れた。8月15日3:00p.m.、5:00p.m.、8月16日から8月26日までの10:00a.m.に観察し、記録した。
けんび鏡で見たムシトリスミレ
気孔と同じ数の茶色の細ぼうがあったが、これがねばねばの液を出すところなのだろうか。
ムシトリスミレは葉の先にまた葉が生えてそれが地面について根が出る。
食虫植物の水ゴケのpHを調べる
食虫植物のはち10個、バラのはち1個の水ゴケ・土のpHをリトマス紙で調べた結果、食虫植物の水ゴケはpH5、バラはpHだった。
ハエトリソウとウツボカズラの消化液
虫を消化しているハエトリソウの葉とウツボカズラの袋の中にリトマス紙を入れて、pHを調べた結果、虫を消化中のハエトリソウの葉はpH2~pH3、ウツボカズラの袋の中はpH4~pH5だった。
成長した葉(先たんがのびている葉)24本、若葉(先たんが一部まいている葉)7本についている虫を数えた。観察の結果、成長した葉は若い葉に比べて虫を採る数が多かった。若い葉は先がまいているため、葉の先が短く、腺毛の数が少ないからだと考えられる。成長した葉も葉の先が分かれる方向によって、虫をとらえる数がちがってくる。2またよりも3また、4またの方がとらえる可能性が高い。内側の背たけの短い葉より背たけの高い外側の葉の方が虫をたくさんとらえることができるのだ。
虫を大量に袋の中に入れるとどうなるのか、調べてみたが、袋のみつにさそわれて、アリが行列を作って入っていたり、クモが入っていたりした。
結果
① |
袋の長さの半分以上大きい虫は飛び出て行く。 |
② | トカゲやミミズは袋からはい出ることができる。 |
③ | 虫を入れた時は袋の中はアルカリ性になり、消化してくると酸性になるようだ。 |
④ | ダンゴムシ、ワラジムシ、ミミズを入れた袋はかれてしまった。8月22日に生物を入れ、9月1日に切り取って中を開いてみると、ダンゴムシは消化されておらずぶよぶよになった状態だった。袋の底にドロのようなものがたくさんつまっていた。ダンゴムシ、ワラジムシ、ミミズのふんは土のようなふんなので、これが袋の中の水をよごして何らかのえいきょうを与えたのかもしれない。 |
指導について丸井由美
以前、熱帯植物園で長ぐつのように大きなサラセニアやウツボカズラを見て、食虫植物に興味を持っていたようですが、たまたま立ち寄った園芸に置いてあったため、育ててみたいというので購入したことが、この研究のきっかけでした。最初は興味津々でハエトリソウにかまきりを入れてみたり、ウツボカズラの袋に大きな虫を無理矢理おしこんだりしているうちに、次々と植物がひん死の状態になってしまいました。それで、あわてて栽培方法を調べましたが、くわしい本は少ないために園芸用の本を参考にメモを取りながら成長を記録していきました。芽が出たところから本来の姿に成長するまで毎日観察しているうちに、意外な葉の形の変化、植物の生きていくための知恵を見い出すことができたようです。目で見えない部分も調べたくて顕微鏡を使って葉の表や裏、袋の内側や外側を観察し、それをスケッチして記録していきました。また、ハエトリソウの葉が閉じる原因、また、どうして閉じなくなるのか等、それらの原因を追究するために顕微鏡を使って調べていきました。肉眼で見た葉と顕微鏡の中に、映し出される葉の違いや細部まで観察できることに非常に感動したようです。
審査評[審査員] 畑中喜秋
丸井君は、食虫植物のハエトリソウがバッタをぱくっと食べるのを見て驚き研究を始めました。研究対象はハエトリソウ、ビブリスフィリフォリア、ムシトリスミレ、ウツボカズラ、モウセンゴケ等にしました。この研究の優れている所は、例えばハエトリソウでは、実物を栽培しまず栽培の方法を習得し、次に成長の各段階や虫を捕らえる葉の形成まで細かく観察しています。特に、虫を捕らえる葉については、針状突起の数が上下17~23本であることを観察し、虫を捕らえる感覚毛が3点に並び虫が2回触れると葉が閉じて捕虫することを明らかにしています。さらに、葉の細胞を顕微鏡で観察し、虫を消化する液を出す細胞を見つけています。最後に、ハエトリソウの食べ物についても実験・観察を繰り返してから明らかにしました。他の種類についても実物を詳細に観察し、時には実験を行い、自分の考え方でその事実や意味を解釈し、その解釈が正しいかどうかを検証する努力をしている点及び顕微鏡を駆使して真実に迫ろうとしている点が素晴らしいと思います。
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