今年のテーマ
今年も我が家では、毎年恒例の「夏休み大掃除大会」が行われました。やっと掃除が終わったのがお昼過ぎで、温度計を見たら、なんと室温36℃もあってびっくり!外の温度を測りに出たら、35℃でした。家の中の方が暑い!そういえば朝のうち掃除のジャマばかりしていたネコ達がいつの間にか1階に降りていました。どうしてだろう。
母さんが「ごほうびや」と言ってエアコンをつけてくれました。「ガンガンに冷やしてぇー」とお姉ちゃんが言うと、エアコンのリモコンを冷房・室温16℃・風力強に設定しました。フィルターもキレイだし、風も勢いよく出ているのにそんなに涼しくならないのです。どうしてだろう。
1階に降りると、東側の縁側から南のリビング大窓に向かって去年と同様にネコ達がゴロゴロとねそべって気持ちよさそうにしていました。2階より涼しい!!どうしてだろう。
今年のテーマは、2000年発表「すずしい所はネコにきこう1 気温」2001年発表「すずしい所はネコにきこう2 風」から続いて「すずしい所はネコにきこう3 気持ちのよいところ」として、ネコ達と一緒に気持ちのよい生活を考えて見ようと思います。
外気温35℃の日になぜ子ども部屋は36℃?
朝、掃除を始めた時はそんなに暑いとは思わなかったのに、お昼頃にはじっとしているだけでも汗が出てきました。家の中の方が屋根があってひかげなのに、どうして外より家の中の方が暑いのかな?
母さんがヒントをくれました。
ヒント1
スパゲティを湯がいた後のお鍋のお湯を捨てて、空になったお鍋に手を入れてみたらどんな感じ?
答え
お湯を捨てた後のお鍋の中は空になっているのに、お鍋の中の空気は熱いままに感じた。
↓
太陽で少しずつ暖められた家のかべや屋根は、太陽の熱を吸収して熱い空のお鍋のようになって、家の中の空気の温度を少しずつ上げるので、囲いの無い外より家の中の方が温度が高くなる事がわかりました。
ネコの裏ワザ
家のかべには断熱材が外かべと中かべの間に入っているのだそうです。断熱材は外の温度に左右されないで室内の温度を保つために役立つものだそうです。大きなまほうびんみたいだなぁと思いました。
私の家の断熱材はふつうの家の倍の厚さにしてあるんだそうです。そういえばお天気の良い冬の昼間はあまり暖房を使いません。南向きに大きな窓があるのも、冬の太陽の光をリビングいっぱいに家の中に入れるためだそうです。断熱材を使うということは、外気温を家の中に入れない事で、家の中を冬は暖かく、夏はすずしい状態にできるという事になります。
冷房の効いた部屋にネコ達がいなくなるなぞ
父さんは暑がりでエアコンを冷房・18℃・強風に設定し、母さんはいつも寒い寒いと除湿・26℃・弱風にします。父さんが暑いなぁと言って温度を下げたら、母さんが上げる繰り返しです。そしてネコ達も母さんと一緒で冷房が効くと、他の部屋ににげていきます。
でも、大掃除をした日、外の気温より高くなった子ども部屋の温度を下げるためにつけたエアコンの設定温度は、冷房・16℃・強風なのに、あの寒がりの母さんも暑いねぇと言うくらいに時間がたってもぜんぜん涼しくなりませんでした。なぜだろう。
エアコンから出て来る風がぜんぜん冷たくなかった!
実験1
外気温30℃の朝、全て設定温度は26℃にして、冷房強風・冷房弱風・除湿強風・除湿弱風にして15分後の室温とエアコンの吹き出し口から出ている風の温度とネコの様子を観察した。
結果1
設定26℃ | 15分後室温 | 吹き出し口温度 | ネコの居場所 |
冷房・強風 | 26℃ | 20.6℃ | ベッドの上 |
冷房・弱風 | 25℃ | 19.5℃ | ベッドの上 |
除湿・強風 | 23℃ | 16.7℃ | 部屋から退場 |
除湿・弱風 | 24℃ | 17.3℃ | ごそごそしている |
不思議な結果が出た!!
父さんが好きな冷房より、母さんが好きな除湿の方が室温が下がるし、なんと吹き出し口付近の温度は設定温度よりずっと低い!!
除湿ってなんだろう
お姉ちゃんがヒントをくれました。
ヒント2
冷蔵庫の野菜室に入れたまま忘れていたニンジンがミイラになっていた事をおぼえてる?ふつうに置いていたらくさっちゃうけど、冷蔵庫の中では乾燥するみたいね。
ネコのひらめき
除湿をするためには、温度をかなり下げないとできないという事なんだ!!
強風より弱風,冷房より除湿の方がしっかり冷えた空気が出る
実験2 強風と弱風の風の流れ
去年「風」をテーマに実験をした時、蚊取り線香で空気の流れを見つける事ができました。同じ温度でも風が吹くと、気温が下がったわけではないのにすずしく感じることもわかりました。子ども部屋のエアコンから出て来る風の流れを蚊取り線香を使って観察してみました。子ども部屋は2階にあって、天井が屋根そのままになっているので三角形をしています。
結果2
蚊取り線香の煙は、強風にすると天井付近からエアコンとは反対側のかべの辺りにあり、弱風にすると部屋の真ん中で机の高さ辺り、除湿にするとエアコンの近くの床に近い辺りに動きました。ネコ達を無理矢理子ども部屋に連れて行ったのですが、寒いのか2匹は入り口の扉をガリガリしだし、1匹はベッドの上で丸くなって、もう1匹は迷惑な実験には「付き合いたくない」と捕まえさせてくれませんでした。
このことから、強風は風の勢いはあるけれど、天井付近から反対側のかべという人のあまりいない所まで風を飛ばしてしまい、弱風や除湿にするほど冷たい空気が人のいる下に落ちてくるようになる事がわかりました。もちろん床すれすれでジッとしてるネコ達にとって冷たい空気が下りてくる事は迷惑な事だったのだと思います。
と言う事は?
2階の子ども部屋より、1階のネコ達がゴロゴロしている所の方が同じ家の中で温度が低いことになる。1日の温度の変化を調べてみました。
朝はどこでも27℃~28℃で変わりないのに、時間がたつほど、温度変化の差が出てた。ネコ達がゴロゴロしていた1階和室の温度差が1番少ない。
2階より1階の方がすずしいのはなぜだろう
私の家は天井をはっていません。太陽熱は、私達の部屋に直接伝わるので、暑くなりやすいのだそうです。屋根→2階の床と2重に太陽熱が伝わるのをじゃまする物がある1階は、それだけで温度が下がるのがわかります。その他にも母さんが、ターフやすだれをはって、太陽熱が入らないようにしたり、庭の木を出来るだけかげを作るように配置したり、のれんや風鈴をかけて、目に見えない風を感じる工夫をしているのが、1階に多い事もあらためてわかりました。
まとめ
やっぱりネコ達は、気持ちの良い所を見つける天才だと感動しました。1日中冷房の効いた部屋にいると、すずしいけれど、お腹をこわしたり、かぜをひいたり、体がだるくなったりします。ネコ達は、すずしいだけでなく、きちんとそういう事もわかっていて冷房の効いた部屋じゃなくて、温度は少し高くても風の通る所や、自然にすずしい所を選んでいることもわかりました。気持ちの良い所は冷房にたよらず、ネコ達に教えてもらう生活をこれからも大切にしていこうと思いました。
審査員 秋山 仁
このテーマは、一昨年からのシリーズ研究です。一昨年は“気温”に、昨年は“通気”に、そして今回は“感じ方”に注目し、家の中の四匹(?)のネコの居所を観察することによって、ユニークな生活の知恵とでも言うべき結果を導き出しています。エアコンを冷房にセットしたとき、強風より弱風の方が、また、冷房より除湿にしたときの方が冷えた空気が出ているような感じがする理由を説明していることが興味深い点でした。家の構造、温度や湿度の変化、風の流れなどに依存して、人は涼しさを感じることを筋道を立てて分析しています。
3年間、地道な研究をしたことは、きっと科学することの楽しさを体感させ、また、研ぎ澄まされた科学の目を具えさせたのだろうと思います。目指せキュリー女史!
蛇足ですが、とんちをひとつプレゼントしましょう。断熱材が入った家屋は魔法瓶と同じと記してありましたが、魔法瓶に熱湯を入れたら、三分後に真水になってしまいました。どうしてでしょうか?答えは、魔法(magic)瓶だから(笑)
神戸市立桜が丘小学校 北井 道子
この作品は、お家で飼っているネコとの毎日のささやかな生活の営みの中から生まれてきた作品です。大人の概念にはない長い時間をかけて、ネコと関わる中で生まれた好奇心が土台となり、一見無駄に思える時間の中で、彼女自身が面白いと感じたこと、そこから、ネコの観察へとつながりました。
特に、暑い夏休み、ついついゴロゴロしがちな時に、飽きずにじーっとネコを観察するという活動を4・5・6年生の3年間継続してきた集大成が、この作品です。
『朝、雨戸を開けてみるとネコの姿に気づき、そばに行くと、涼しく感じた。この素朴な気づきを確かめようと、ネコがねているそばで自分もねてみる。「あっすずしい。」と思った。』
嶌田茜さんは、周囲の様々なでき事に、自分の感性で感じ、考え、行動していける子どもです。他の子が、立ち止まらず通り過ぎてしまうようなでき事にも、心を止め疑問や好奇心を持ってながめられる子です。
今回は、Part3ということで、調べ方も今まで以上に、自分で考えながら工夫して調べました。集大成ということで、少しプレッシャーを感じ研究が途中で進まなくなり、夏休みが終わる頃、やっと完成しました。
ネコに関わる優しい眼を持つ茜さんと、その茜さんを優しく見守るお家の方々の温かい雰囲気の中から生まれた研究であり、集大成をやり遂げたことが大きな自信につながってくれていると思います。