第47回入賞作品 小学校の部
継続研究奨励賞

ザリガニ生態大研究 2002-2006

継続研究奨励賞

埼玉県杉戸町立杉戸小学校 6年
武井 美賢
  • 埼玉県杉戸町立杉戸小学校 6年
    武井 美賢
  • 第47回入賞作品
    小学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究の動機

 2年生の時からザリガニの研究をしてきた。2年生では体の仕組みを調べ、3年生では脱皮や一生、4年生からは体色を調べることにした。今回は今まで調べたことをまとめることにした。

ザリガニはきれい好き

ザリガニを飼うきっかけは、2年生の生活科の授業で行ったザリガニつりだ。たくさんつることができた。家でも飼ってみようと思った。「とってきたから」と、最初は軽い気持ちだった。

友達の家のザリガニはすぐに死んでしまったが、僕のザリガニは生き続けた。エサを与えるようになると、僕を見るたびにハサミを上げて、アピールするようになった。水が汚れてくると、苦しそうに水面に上がってきた。水をかえてあげると、うれしそうに腹脚(ふっきゃく)を動かして、水の中を動いた。

図鑑を読むと「少しぐらい汚れた水の中でも平気」とか「死がいの残ぱん整理をする」とか書いてあるけど、そんなことはない。きれい好きで、顔の部分にコケが付いたりして汚れてくると、顔をハサミや足でそうじするし、食べ残したエサは食べない。

共食い後の「白い石」の正体は?

1つの入れ物に何匹も入れておくと、ザリガニたちは共食いをした。共食いのあとで水を取りかえようとすると、必ず白い石が2個あった。この石は「胃石」といって、ザリガニは脱皮する時に体内のカルシウムを胃に集めて「胃石」という2個の白い石に固め、脱皮後、その「胃石」を溶かして体にカルシウムを戻す。だから脱皮する前や脱皮後は、体がやわらかいので共食いの対象になってしまうため食べられやすい。そして、食べられた後に白い石が残る。また、脱皮のたびにすごいと思ったことがある。大人のザリガニになる前は、ケンカをしてハサミや足を取られてしまっても、また再生し、脱皮後にハサミや足がはえるのだ。

ザリガニも人間と同じ

共食いをさけるため、オスだけ、メスだけ、オスとメス1匹ずつ、などと色々分けてみた。オスだけだと、いつもケンカしてとてもうるさい。メスだけだと、入れ物のはじっこに1列になってじっとしている。オスとメスだと、ザリガニも人間と同じで、気の合う同士や気の合わない同士がいる。気の合わない2匹はいつもケンカしていて、相手を探すのが大変だった。気の合う同士は交尾し、受精し、産卵する。子ザリガニがふ化すると、オスがメスや子ザリガニを大切にしていた。そんな中、オスが脱皮に失敗して死んでしまった。メスや子ザリガニたちがオスを探している様子に、僕は涙が出てしまった。

「青いザリガニ」を追って

 育てていくうちに、赤くなるザリガニや、黒くなるザリガニがいることに気が付いた。そんな時、テレビで「サバを食べさせると青くなる」という実験をしていたので、僕も挑戦してみた。

  しかし、赤く大きく成長したザリガニはなかなか青くならない。人間も日焼けすると赤くなるから、日光のせいかもと思った。それなら、小さいうちから日光をあてず、サバをあげてみてはどうだろうと考えた。さらに、サバだけではなく、同じ青魚のサンマ、アジ、イワシも与えることにした。そして、ザリガニは脱皮の抜けがらを食べるとふんが赤くなるので、カラの中に赤くなる成分が入っているかもしれないと思い、脱皮を見つけたらすぐにカラを取り出すことにした。

 以上のことに気をつけながら実験を続けたが、すぐには青くならない。早くても一年くらいかかる。変化が現れるのに半年くらいかかる。目の後ろにあるホルモンの出る穴のあたりが青くなるもの、体のりんかくがうすいオレンジ色になり、中央あたりがうすく青くなるもの、体が黒っぽくなっていき、よく見るとこん色みたいになっているものなど、それぞれだが、やはり日光にあたっていないザリガニの方が変化は早い。そして、アジを食べたザリガニが、サバ、サンマ、イワシを食べたザリガニよりも青くなるのが早い。また、カラからカルシウムを取ることができないので、カルシウム不足となって死んでしまうザリガニも多い。

◎ザリガニの体色変化について

〈4学年時発表より〉

一番驚いたのが、アジを食べていたザリガニが青っぽくなるまで1カ月かかったのに、脱皮をして自分のカラを食べたら一晩で赤くなってしまったことだ。ザリガニはカロチンの入ったエサを食べるから赤くなるということのほかに、脱皮のたびに自分のカラを食べて赤くなっていたのだ。ふんも赤くなっていた。サンマを食べていた子ザリガニも、脱皮をして赤くなったので変だなと思っていたが、これで理由が分かった。

〈5学年時発表より〉

昨年(04年)サバを与えて青くなり、今年(05年)はサンマを与えたものが青くなってきた。サバを与えているザリガニは、ホルモンの出る穴が青く変化しているので、青くなるには体内のカロチンをなくしてホルモン変化させなければならないと思った。また、サバを与えているザリガニは死んでしまうものが多いので、インターネットで調べた。
「サバにはヒシチジンという物質が多く含まれていて、時間が経つとヒスタミンに変化し、これがアレルギーの原因になる」とあった。このヒスタミンが人間と同じように、体質にあわないとアレルギー反応を起こし死んでしまうのではないかと考えた。また、魚の成分表を見ると、アジの中に少しカロチンが入っている。だからアジを食べているザリガニは抜けがらも食べているせいか、なかなか青くならないのではないかと思った。この抜けがらにもカロチン、カルシウムといった栄養が豊富に入っているので、抜けがらを食べないと成長がおそく体色も白っぽいし、カラもやわらかい感じになっていくことが分かった。

意外にも水道水が最適

の種類によって、ザリガニの大きさに変化が現れるか実験した。同じくらいの大きさの子ザリガニを水道水、アルカリイオン水、天然活性水素水に1匹ずつ入れ、同じエサ(小さい時はメダカのエサ、少し大きくなったらザリガニのエサ、体長5cm以上になったら青魚)を与える。その結果、僕の予想とちがって水道水が生き残っている(体長1.7cm→6.5cm)。アルカリイオン水や天然活性水素水は人間の飲み水としてはいいと思うが、ザリガニにはあまり適していないようだ。これからは、青くなったオスとメスのザリガニから生まれてくる子ザリガニの様子を見てみたい。

指導について

指導について武井邦子

 2年生の生活科の授業でザリガニ釣りがあり、「2、3日飼ってみようか」という軽い気持ちがきっかけとなり、観察を始めてから今年で、はや5年目となります。
 子どもは、ザリガニ自体に触れたことが無かったため、まず体の仕組みから疑問を持たせ、脱皮、交尾、産卵、ふ化、子育て、そして子ザリガニの成長へと続きました。観察は主に居間で行っていたこともあり、日々、目の前で繰り広げられる成長の過程はドラマとなり、驚きと感動の連続で、この状況が子どもに興味を大きく抱かせることに繋がりました。また研究では、餌によって体の色を変化させることができるのか、水の種類によって発育に差がでるのか、などの新たな視点を広げていくこともできました。一連の飼育及び観察の過程において、子どもは、生命の尊さを知り、生き物を飼うことの責任について、良い経験になったと感じています。

審査評

審査評[審査員] 高家博成

 武井さんは小学2年のころから4年間にわたってザリガニの観察や実験を続けてきました。飼育の方法、好きなエサ、交尾して産卵したり、成長していく様子、呼吸の方法、体の色やその変化などについて地道に研究を続けてきたことが高く評価されました。
  本に書いてあることが、本当かどうか実験で実際に確かめていますが、これはとても大切なことです。
  ザリガニの色彩についていろいろと実験しています。なかなかおもしろいと思いましたが、専門家の間ではかなり詳しく調べられています。青、紫、赤色の3種類のカロチノプロティンとカロチノイドなどの共存によると言われています。
  化学的な実験をやみくもに行っても、答えを得るのがなかなか困難です。科学的知識と実験の方法は、今後の課題としておきましょう。
  なお、化学術語で、ヒシチジンとあるのはヒスチジンです。また、参考にした本は最後に書いておいてください。

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