第44回入賞作品 小学校の部
1等賞

植物が地球を救うパート2 -CO2は悪者か?

1等賞

沖縄県那覇市立上間小学校 6年
塚本真依
  • 沖縄県那覇市立上間小学校 6年
    塚本真依
  • 第44回入賞作品
    小学校の部
    1等賞

    1等賞

動機

昨年(2002年)夏の「植物の蒸散」の研究で使った装置を改良して、植物の蒸散作用による温度の変化や温暖化ガスといわれる二酸化炭素のことを調べ、「植物の持つ力」をもっと知りたいと思った。

実験装置

実験1

ハイビスカス、ホルトノキの蒸散量の測定を行った。
朝・昼・夜にそれぞれ10分ごとに行い、単位時間の蒸発量と植物資料の葉の面積を求めてから、単位面積あたりの蒸発速度を計算する。
※葉の面積は、葉のコピーをとり、これを切り抜いた後の紙の重量と元の紙との重量比から面積を計算した。

結果

考察

蒸散は気温が高くなるにつれて盛んになる。夕方にかけて気温が下がり、湿度も高くなるにつれて蒸散作用は衰えてきた。
風の影響もあり、風が服と蒸散量は増える。雲で日差しがさえぎられることにより、蒸散量は減った。
植物は空気中の二酸化炭素と根から吸収した水、光エネルギーによってでんぷんを蓄え、気孔から酸素と余分な水を放出する。余分な水を放出することで、自分の周りの気温を下げることができる。ということは、二酸化炭素も消費して減らしていることになる。
植物がたくさんあるところはひんやりとして涼しい。植物の蒸発作用というのは、私たちが汗をかいて体温を調節する働きなのでは。周りの温度を測定することで確かめられるかも。

実験2

アクリルカバーで密封状態にし、蒸散量の変化と内部の温度変化を測定する。検地管で酸素や二酸化炭素の割合、変化を調べる。その後アクリルカバーの外側、さらに内・外側にも二酸化炭素を注入して蒸発量、内部の温度、二酸化炭素の割合の変化を測定する。

結果

考察

アクリルカバー<外:空気、内:空気><外:二酸化炭素、内:空気><外:二酸化炭素、内:二酸化炭素>という条件のいずれでも酸素の割合は増えて、二酸化炭素の割合は減った。容器内の温度も下がっていった。予想通り植物は二酸化炭素を消費し、酸素を放出して、蒸散によって温度も下げている。
外側が二酸化炭素のときは空気のときよりも、容器内の温度は高く、温度変化も遅い。二酸化炭素は空気よりも温まりにくく、冷めにくいためではないか。これにより温暖化ガスといわれるのかも。
外、内とも二酸化炭素を注入し120分間測定した結果、割合は減った。二酸化炭素の量が多ければ、炭酸同化作用も盛んになるのかもしれない。

実験3

装置を日かげ(北側ベランダ)と日なた(ビーチパラソルで直射日光を避けた)に置き、アクリルカバーの<外、内とも空気><外:空気、内:二酸化炭素>の条件で、蒸散量の変化、酸素と二酸化炭素の割合、内部の温度変化などを測定した。

結果

考察

予想した通り、日かげより日なたの方が蒸散量は多かった。容器内の温度も実験開始前と後では、後の方が低くなり、その差は日なたの方が大きかった。二酸化炭素の減り方も日なたの方が大きく、二酸化炭素の量が多いほど、減り方も大きかった。
おまけの実験1
密封したアクリルカバー内の蒸散による水蒸気を取り除こうと、乾燥剤のシリカゲルを入れたら、すぐに蒸散量が増えた。
おまけの実験2:
夜の蒸散は酸素の放出ではなく、呼吸による二酸化炭素の放出に伴うものと考え、測定した結果、昼間ほどの差は出なかったが、夜に二酸化炭素の割合が増えたように思われた。
おまけの実験3:
コマツナにビニル袋をかぶせ、1時間後の二酸化炭素と酸素の割合の変化をみた。袋の内側に水滴がたくさんついていたので、蒸散がストップし、割合に変化はないと予想したが、結果は酸素の割合が増え、二酸化炭素の割合が減った。
おまけの実験4:
前記3はビニル袋が膨らみ内部の圧力が下がったため蒸散が続いたと考え、実験装置の気体注入バルブにゴム風船を取り付け観察した。バルブを開くと風船が膨らみ、植物が水を吸い上げているミスピペットの水位が下がった。蒸散には圧力(気圧)も関係しているようだ。

実験4

空気よりも二酸化炭素のほうが温度の変化が遅く、少しずつ蓄熱されるために、温暖化ガスといわれるのではないかと思い、植物飼料の代わりに陶器の球体を取り付けて実験した。<外:空気、内:空気><外:空気、内:二酸化炭素>の条件で、さらに1日の昼夜の条件を再現するために、投光機で8分間照射して暖め(昼)、5分間消して冷やすこと(夜)を繰り返した。

結果

考察

二酸化炭素は空気よりも温度変化が遅い。暖められて温度が上昇するのに空気よりも時間がかかり、照射をやめても温度の上昇があり温度の変化にずれが出てきた。
二酸化炭素は温まりにくく、冷めにくいと考えられる。わずかなズレが長い時間かけて、規模が大きくなっていった結果が地球の温暖化につながったのではないだろうか。

実験5

2つの実験装置A・Bを使い<外:空気、内:空気><外:空気、内:二酸化炭素><外:二酸化炭素、内:二酸化炭素>の組み合わせで、投光機を5分間照射・5分間消すを繰り返して、内部の気体の温度変化を測定し、二酸化炭素の特性を調べた。

結果

考察

実験の開始温度が違うため<外:空気、内:空気>を基準にしてそれぞれのグラフをトレーシングペーパーに写し取り、重ね合わせてみた。すると一目瞭然、温度変化の時間にズレのあることがわかった。
二酸化炭素は照射をやめた時点でも温度の上昇がみられ、照射を開始しても温度の下降がみられた。このわずかな時間の差と温度差が、地球規模になると異常気象を引き起こすほどの力になっているのではないだろうか。

まとめ・実験からわかったこと

二酸化炭素は、空気よりも温度変化に要する時間が長い。この差が熱を蓄えることになり、温暖化ガスといわれているのではないか。

蒸散作用により、確かに温度は低くなる。
炭酸同化作用により二酸化炭素は減り、酸素は増える。
酸化炭素の量が多ければ、炭酸同化作用は増えてくるのではないか。
夜は炭酸同化作用はしなくなるため、昼と違い、呼吸による二酸化炭素の放出だけがあるのではないか。
蒸散量は日差し、気温、湿度、風、気圧によって変化しているようだ。

指導について

指導について塚本徳子

去年取り組んだ植物の蒸散作用の実験を発展させ、測定装置を工夫し、密閉容器を取り付けることにより、炭酸同化作用による二酸化炭素の減少や酸素の増加を、ガス検知管を使い検証してみたいと取り組んでいました。
実験前に予測していた通り、二酸化炭素は減少し酸素は増加していることが良くわかり、また温度も下がっていくことを確認することができました。さらに、ドライアイスを用いて二酸化炭素濃度を濃くしたときの温度変化を調べることにより、温暖化ガスと言われている二酸化炭素のことを、もっと知ることができるのではないかと考えたようです。
二重にした密閉容器内の条件を、空気←→空気、空気←→二酸化炭素、二酸化炭素←→二酸化炭素とした時の温度変化をグラフにすることによって、ちがいを知ることができ、そのわずかな差が蓄熱されて温暖化ガスと言われている理由なのだろうと考察したようです。植物の炭酸同化作用には必要な二酸化炭素が、温暖化ガスとして悪者扱いされているのはなぜなのか、少し理解できたように思います。
身近な「なぜ」を自分なりに実験、考察していく中で、地球環境も考えられるようになりました。疑問を解決していく探究心を持ち続けて欲しいと思います。

審査評

審査評[審査員] 小沢紀美子

塚本真依さん、1等賞おめでとう。「植物の持つ力」の蒸散作用による温度変化と温暖化ガスといわれる二酸化炭素を調べている今回の研究は、教科書に書かれている簡単な実験装置に触発されて進められておりますが、実験装置を作り上げていく過程の試行錯誤はすばらしい取り組みです。昨年実験した装置を改良し、その実験装置の組み立てに大人の手を借りていますが、気体の特性に配慮した実験装置のアイデアを人に伝え、組み立てていくプロセスも貴重な実験になっている研究です。温度変化をとらえる器機にも工夫し、条件を変化させながら仮説を実証していることや得られた結果から、なぜ、「京都議定書」が必要かといった社会的な視野から考察している研究態度にも賛意を表したいと思います。今度も新たなアイディアを積み重ねて実験・研究を続けてください。

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