本で旋光という現象を知り不思議に思っていた。身近な物質である糖もその性質を有すると知って、旋光がなぜ生じるのか、構造と旋光に関係はあるのか、旋光を利用して反応速度定数を求めることができないか研究してみようと思った。
方法
旋光計を自作した。偏光板は、ポリビニルアルコールのフィルムをヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液に浸し、ホウ酸処理後、3~5倍に圧延し乾燥したものを使用した。
実験
(1)旋光計に10㎝セルを組み合わせ、中に5.0g/50.0ml・液温30℃のグルコース溶液を注ぎ、全円分度器とレンズを組み合わせた。黄色LED豆電球をセットしてスイッチを入れ、何度で光が見えなくなるかレンズを回して角度(旋光度)を調べた。フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトースの各10%溶液で同様に旋光度を測定した。グルコース溶液の濃度・セルの長さ・液温・光の波長を変えて旋光度を測定した。さらに、糖の混合による旋光度を測定した。
(2)5種類の糖溶液の旋光度を1分おきに30分測定した。さらに、フェーリング反応実験、α‐グルコースとβ‐グルコースの分晶から、糖の構造と変旋光の関係を考察した。
(3)スクロースをクエン酸で加水分解した時の旋光度の変化を測定し、糖や酸の濃度、温度によって反応速度がどのように変化するのか、何が影響するのかを考察した。
結果・考察
糖の旋光度は濃度・セルの長さに比例しており、波長・温度によって変化する。変旋光はスクロース以外の全ての糖で見られた。糖は分子環の開環・閉環による水中での構造変化により旋光度が変化していく。スクロースの加水分解反応では、温度、クエン酸濃度を上げると反応速度は速くなる。これは分子の衝突が関係するためである。反応時間0、t、∞の旋光度をα0、αt、α∞とし、測定時間tを横軸に、log(αt-α∞)を縦軸にプロットしてグラフを描くと、傾きは-k/2.303となり、これを利用して反応速度定数kを求めた。