三浦半島の相模湾側にある葉山町の一色海岸の打ち上げ貝類調査の時、貝殻に混じって美しいビーチグラスがたくさん拾えた。つぎに、東京湾側の横浜市金沢区の野島に潮干狩りに行った時には、ビーチグラスも調査の目的とした。ところがガラス片はたくさん拾えたが、瓶が割れた破片の状態で、相模湾で見たビーチグラスとは異なるものであった。そこで、きれいなビーチグラスのできる条件を調べることにした。
方法
(1)三浦半島の東京内湾をエリアA、東京外湾をエリアB、相模湾をエリアCとした。
(2)エリアA、B、Cより、ガラス瓶などが残される可能性の高い人の出入りの多い場所をそれぞれ選び出した。
(3)三浦半島地質図(横須賀市自然博物館)を参考に、(2)を踏まえて各エリアの代表調査ポイントを選定し、以下を行った。
① | 打ち上げられたビーチグラスを採集した。 |
② | 波の種類と内湾・外湾・外洋地形を調べた。 |
③ | 各海岸の地層が生み出す砂礫の状態を調べた。 |
④ | 内湾・干潟、外洋・砂浜・磯浜などの環境を比較した。 |
⑤ | 打ち上げ生物や海藻から、海底地形の様子を探った。 |
(4)各エリアの調査場所で採集したビーチグラスの大きさ・形・磨き度、砂礫の硬さ・種類・重さ、貝類の名前を一覧表にした。
(5)調査結果をもとに三浦半島におけるビーチグラス生成の条件を追究した。
結果・考察・分かったこと
(1)ビーチグラス生成の条件は、以下を満たしていることであると考察された。
① | 海流の影響のある外洋の海であること |
② | ガラスの硬度より高い硬度の砂礫がたまる砂浜海岸であること |
③ | 外洋の海で海流と潮流と沿岸流があり、まき波ができること |
④ | 遠浅の海岸であること |
⑤ | ガラスを研磨する砂礫の硬度がガラスの硬度よりも高い地層の海岸であること |
(2)一色海岸では、葉山層が汀線から遠浅の海岸に露出していて、硬度の高い砂礫が波打ち際に留まり、それらが黒潮分流や潮流の影響とまき波でガラス片を研磨しビーチグラスを生成することが分かった。