昨年多数のカイコを初めて飼育し、興味を持って丹念に観察し、科学研究にまとめた経験があった。その際、カイコは人が家畜化した動物であり自然界では生きていけないことを知った。その後同じようにマユを人が利用してはいるが家畜化されていない他の昆虫としてヤママユガの存在を知り、卵をたくさん分けてもらうことができた。そこで今年はカイコと並行して育て、家畜としてのカイコと野生性のあるヤママユガを比較して観察してみることにした。
カイコとヤママユガの幼虫は、行動や体の状態、生活の様子などまったく違うガであると言っていいほど異なっていた。たとえば、前者は平面を、後者は枝を歩くのに適した構造の脚であったし、後者は仲間の幼虫が近くにいるとエサを食べなくなったりした。マユの糸の長さも後者は前者の半分程度しかなく、また前者はどこにでも卵を産むが、後者は食草の枝にしか産まなかった。これらのことから、カイコは長い年月をかけて家畜化されてきたことがわかった。