研究のきっかけ
2019年5月に、図書館からカタツムリの卵をもらい、ふ化させて育てた。毎週、体重と大きさを測っている。
2020年4月、からの入口が外にそり返った。図鑑で調べると、そり返るのは大人になった印と書いてあった。図鑑には他に、カタツムリがつなわたりをしている写真があった。「足の幅より細い糸を、足全体で包んでしっかりつかまります。重いからを下向きにしてバランスをとりながら前に進みます」と書いてあったので、私の7匹のカタツムリにつなわたりをやらせてみた。
研究の方法と内容
カタツムリにつなわたりをさせるために、粘土とわりばし、たこ糸で実験装置を作った。7匹のカタツムリには、1ちゃん、2ちゃん、3ちゃん、4ちゃん、5ちゃん、6ちゃん、7ちゃん、と名前が付けてある。
実験1〜6
実験1の内容と結果
わりばしの間のたこ糸は1本だけにして、カタツムリがつなわたりをできるかどうか、実験1を始めた。わりばしAにおしりをつけて、Bに向けて6ちゃんを出発させた。6ちゃんはしがみついていたけれど、おしりから離れていって、からも離れて、頭だけでたこ糸にぶら下がった。がんばってぶらぶらしていたけど、落ちた。
5ちゃんも、わりばしAにおしりをつけて、Bに向けて出発させた。しがみついていたけれど、向きを変えてAにもどった。
粘土とわりばし、たこ糸の実験装置
実験2と実験3の内容と結果
実験2ではたこ糸を2本に増やした。1ちゃん、2ちゃん、3ちゃんともに糸から落ちた。実験3は、たこ糸を3本に増やした。1ちゃんは落ちた。5ちゃんは10㎝地点まで進み、頭とおしりを入れ替えてAに戻った。
ここまでの実験でカタツムリは、図鑑のように上手につなわたりができない。粘土とわりばしが支柱だと、糸がゆるむので、しっかりした台を作り直した。右が父と作ったつなわたり台、落ちてもからが割れないようにハンモックを置いた。
実験4と実験5の内容と結果
たこ糸を5本にし、つなわたりしやすいように7匹みんなのスタートを、棒から15cm離れた糸の真ん中にする。実験4は頭をAのほうへ向けて出発、実験5は頭をBに向けて出発させた。
ここまでの実験で、カタツムリのおもしろい行動を見つけた。頭をB向きにして出発したカタツムリがそのまま少し進んで止まり、人が後ろをふりかえる時のように頭だけAのほうに向けた。それから頭とおしりを入れ替え始め、逆向きになるとAのほうへ動き始めた。
カタツムリは、ただ直進してつなわたりをするのではなく、頭とおしりを入れ替えることがある。これを「ふり返り行動」と名付けた。「ふり返り行動」や、進んでいる途中に、おしりやからが糸から離れ、頭だけでがんばって糸にしがみつくことがあるが、これを「てつぼうブラブラ」と名付けた。
実験4で「ふり返り行動」をしてBへゴールしたのは、2ちゃんと5ちゃんだった。「ふり返り行動」の途中で落ちたのは1ちゃんと4ちゃん。そのままAへゴールしたのは3ちゃん、6ちゃん、7ちゃんだった。
実験5では、「ふり返り行動」をしてAへゴールしたのは、1ちゃん、5ちゃん、6ちゃんだった。「ふり返り行動」途中で落ちたのが、4ちゃんと7ちゃん。そのままBへゴールしたのは2ちゃんと3ちゃんだ。
少し進んで止まり、頭だけAのほうに向けた
実験6の内容と結果
カタツムリが「ふり返り行動」をするのは、不安だからかな? もっと細い糸でつなわたりをさせたら、「ふり返り行動」をするカタツムリは増えるかもしれない。
実験6ではたこ糸を3本にした。スタート地点は真ん中の15cm地点、頭はA向きに出発させた。
7匹の結果をまとめると、「ふり返り行動」をしてBへゴールしたのが、2ちゃんと6ちゃん。「ふり返り行動」途中に落ちたのは、1ちゃん、3ちゃん、5ちゃん、7ちゃん。そのまま落ちてしまったのが4ちゃん、直進してAにゴールしたカタツムリはいなかった。
実験4〜6で、すべてのカタツムリが「ふり返り行動」をした。それから、3回の実験すべてでカタツムリのからは下向きになっていた。カタツムリの普段の生活では、からが体の上にある。上に乗れる幅のひもだと落ちなかったり、「ふり返り行動」をするカタツムリが減るのかな?
実験7〜8
実験7と実験8の内容と結果
カタツムリの足の幅を測ると、8mmくらいだった。そこで、たこ糸ではなく幅8mmのひもを張り、 スタート地点を15cmの真ん中にして実験をすることにした。
実験7は頭をA向きにして、からがひもの上になるように出発させ、実験8も頭をA向きにするけれども、からがひもの下になるようにして出発させた。
その結果、実験7で「ふり返り行動」をし、Bへゴールしたのは1ちゃん、4ちゃんだった。「ふり返り行動」途中に落ちたカタツムリはいなかった。そのままAへゴールしたのが、2ちゃん、3ちゃん、5ちゃん、6ちゃん、7ちゃんだ。実験8では、「ふり返り行動」してBへゴールしたのが、2ちゃんと3ちゃんだ。「ふり返り行動」途中に落ちたカタツムリはやはりいなかった。そのままAへゴールしたのが1ちゃん、4ちゃん、5ちゃん、6ちゃん、7ちゃんだった。
研究の結果
すべての実験からわかったこと
実験を観察して気づいたこと
糸をわたる時、小さな触角で糸をさぐりながら歩いて、目でも糸を確認していた。細い糸をわたる時は、足全体で糸を包んで進んでいた。図鑑のとおりだった。
「ふり返り行動」をするのは、進む方向を変えたいからだと思う。カタツムリの足の筋肉はおしりから頭に向かってしか動かないから、後ろ歩きはできない。
カタツムリは、足の幅と同じくらいのひもだと不安にならずにつなわたりできるようだ。実験6でわたるのに25分かかるカタツムリもいて、私は眠くなった。
最後はすべてつなわたりができてよかった。つなわたりをさせてみて、1匹1匹、性格が少しずつ違うと思った。
[審査員] 秋山 仁
自分で飼っているカタツムリ7匹に綱渡りをさせる実験です。30センチぐらい離れた2点A、Bの間をタコ糸で結び、結ばれた糸の真ん中ぐらいにカタツムリを置き、ゴールAやBにたどり着けるか否かを、条件をいろいろと変えて観察しました。たとえば、タコ糸の本数をいろいろ変えてゴールインできたり、落下したりする回数を観察していました。
観察中、カタツムリが「ふり返り行動」することがあり、それはカタツムリが後退(あとずさり)できないことに起因していることや、カタツムリの足幅と同じ太さのひもだと成功率が高いことを突き止めていました。ユーモアがあり、キュートな研究でした。
平野 光祐
小学2年生の時に市の図書館でカタツムリの卵を貰ってきて飼い始めました。小さな赤ちゃんカタツムリがどんどん大きくなるので、殻の大きさと体重を毎週観測して観察ノートに記録しています。小学3年生になった春に図鑑を見ていると、糸の上を上手に渡るカタツムリの写真があり、自分のカタツムリ達も出来るかな?と思い、やってみたことが今回の実験の始まりです。やってみるとカタツムリ達がすんなりと糸を渡りません。娘は図鑑に載っていることが全部正しいわけじゃないと思い、条件を変えて実験を繰り返し「頑張って!」と応援したり、時にはカタツムリに文句を言いつつ根気よく観察を続け、カタツムリがある行動をすることに気づきました。
親がした事は、考えている事をうまく言葉に出来ない時に一緒に悩んで言語化する事を手伝ったくらいです。結子と一緒に手を動かして実験した楽しい日々の最後に、このような賞をいただき感謝しております。