第66回入賞作品 中学校の部
継続研究奨励賞

遠州、東三河地域における二ホンアカガエルとヤマアカガエルの繁殖条件とすみ分け

継続研究奨励賞

静岡県浜松市立可美中学校 3年
伊藤 壮太
  • 静岡県浜松市立可美中学校 3年
    伊藤 壮太
  • 第66回入賞作品
    中学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究の動機

 小学5年生の時、ヌマガエルの飼育をきっかけに、カエル類に興味を持った。静岡県西部の遠州地域、愛知県東部の東三河地域をおもなフィールドに、モリアオガエルの人工繁殖、ナゴヤダルマガエルの生息条件などを調べるようになった。小学5年生の冬、佐鳴湖西岸の湿地でニホンアカガエルの卵塊を見つけ、アカガエル類に興味が湧いた。調べてみると、アカガエルの仲間にヤマアカガエルという種類もいることを知った。それからヤマアカガエルを探してさまざまな場所で調査を行い、多くの生息地を発見した。しかし、ニホンアカガエルとヤマアカガエルの両方が生息する場所はほとんどなかった。
 今回の研究では、ニホンアカガエルとヤマアカガエルの繁殖条件を調べた。それから、なぜニホンアカガエルとヤマアカガエルの生息地は重ならないのか、その原因を探ってみた。

ニホンアカガエルとヤマアカガエル

ニホンアカガエル

 ニホンアカガエルはアカガエル科アカガエル属、褐色の背面をした中型のカエルだ。成体は40〜60mmで、メスのほうが大きい。眼の後ろから線(背側線)が一直線に体の端まで延びている。鼻先から鼓膜後部にかけ、黒色の斑紋がある。下あごには模様がない。卵塊(数百、数千の卵の集まり)は壊れにくく、卵塊ごとの境界がはっきりしている。オスの成体でも鳴のう(カエルが鳴く時にふくらませる頰やあごの袋)がなく、「キュククク」とくぐもるように鳴く。
 水田やため池、湿地の浅い水域で繁殖する。繁殖期は年によってばらつくが、1月末〜3月にかけて。雨の後の暖かい日など、多くの個体が集中して産卵する。繁殖を終えた個体は水辺を離れ、周辺の林や草地で生活する。

ヤマアカガエル

 ヤマアカガエルはアカガエル科アカガエル属、体は褐色、赤褐色または暗褐色。成体は50〜80mm、メスのほうが大きい。ニホンアカガエルと似ているが、背側線が鼓膜の後ろで大きく外側に曲がっている。暗褐色や黒褐色の斑紋が散在し、下あごにも斑点がある。卵塊は崩れやすく、卵塊ごとの境界がはっきりしない。オスに鳴のうがあり、「ニャッニャッニャッ」と鳴く。
 山地に多く生息し、標高1900m以上も生息地だ。繁殖期は2〜4月だが地域によって異なり、早い場合は1月、遅い場合は6月下旬となる。繁殖場所は湿原、湿地、水たまり、池、水田などの日当たりがよく浅い止水が選ばれる。弱い水流のあるところもある。非繁殖期は森林周辺で生活している。

研究I 生息地の調査

 2021年12月〜2025年5月まで、遠州地域と東三河地域内で、ニホンアカガエルとヤマアカガエルが生息していそうな60地点を調査した。調査場所は、国土地理院の地図で山間部の水辺を探したり、Googleマップの航空写真を見て湿地や池を探したり、登山中にアカガエルがいそうな場所を探索したりして選定した。調査して成体、卵塊、オタマジャクシのどれかを確認できた場所を生息場所とした。所有者がいる敷地内で調査をする場合は、必ず許可を得てから行った。
 調査の結果、ニホンアカガエルは右ページ上の地図のa〜mの13地点で確認した。遠州地域や田原市、豊橋市の遠州灘沿いの林など平野部の多くの地点に生息していた。ヤマアカガエルは同下の地図のA〜Jの10地点で確認できた。遠州地域でも東三河地域でも、かなり奥の山間部まで行かないと見つからないことがほとんどだった。浜松市の都田川水系や浜名湖周辺の森林、弓張山地などでの生息は確認できなかった。ただ、地点Aは標高100mもないのにヤマアカガエルが確認でき、ニホンアカガエルは確認できなかった。とても不思議である。

研究II 繁殖条件

 ニホンアカガエルとヤマアカガエルは、どんな環境条件で繁殖のため水辺に集まってくるのか。条件がわかればカエルを見つけやすくなり、今後の調査に役立つ。ニホンアカガエル、ヤマアカガエルそれぞれ、卵塊を確認した日(同じ年に何度も確認した場合は最初に確認した日)、繁殖場所、湧水の有無、標高を記録するようにした。


ニホンアカガエルの生息地分布図、国土地理院の白地図を加工して作成


ヤマアカガエルの生息地分布図、国土地理院の白地図を加工して作成

 2022〜2025年まで記録した結果が、下の表だ。

 卵塊を確認した繁殖日がヤマアカガエルのほうがやや遅いのは、標高が高い高地で産卵するからだと考えられる。また、繁殖日はどれも雨の翌日だった。繁殖日前後の天気や最低気温、平均気温と卵塊数も調べ(ニホンアカガエルを中心に調査)考察した結果、アカガエルの産卵条件は、①時期は1月上旬〜 3月上旬、②雨の日の後、③平均気温が高い日、④林に隣接した場所、⑤湧水がある場所の5つだと考えた。①は天敵のヘビや他の種のカエルが冬眠している時期であり、競争を勝ち抜くため、②は卵塊の乾燥を防ぐため、③は卵が凍結死するのを防ぐとともに、他の種類のカエルより早く成体になってエサを独占するため、④はアカガエルは林床で生活するため、⑤は卵塊の乾燥と凍結を防ぐためだと思う。

研究III すみ分け

 ニホンアカガエルとヤマアカガエルは、種や繁殖方法、生息場所が似ているが、生息地が重ならない。生息地を決める何かの条件が違い、すみ分けをしていると考えた。そこで生息地の標高、水質(pHや水温)、地質の違いを調べてみた。その結果、絶対的要因と言い切れるものは見つからなかった。ただ、ニホンアカガエルの生息地の8割は標高100m以下、ヤマアカガエルはほとんどが標高250m以上の場所にある。ヤマアカガエルの生息地は88%が中生代、ニホンアカガエルの生息地は88%が新生代の地質にある。このことから、ヤマアカガエルがニホンアカガエルの祖先であり、一部が平野部に進出してニホンアカガエルになった可能性もあると僕は思う。

指導について

遠州自然研究会 藤森 文臣

 伊藤壮太君との関わりは市内の公園の湿地でひたすらカエルを追っている中学生の彼との出会いからです。彼は小学生時代から自然や野生動物に強い関心を示し、観察・飼育を重ねてきました。中でも魚類や両生類・は虫類などの水生の生物に愛着を持っており、かなりの知識を備えています。今回、研究テーマとした「カエル類」について研究・観察力などの洞察力は中学生の域を超えた素晴らしいものがあります。近年、生息数が激減し、絶滅危惧種にも指定されるニホンアカガエルと近縁種のヤマアカガエル2種の生態、繁殖方法、分布などを広範なレベルで調査・観察しています。特に分布域調査の中で両者の分布要因が単に標高差だけでなく、中央構造線にも制約されているのではと仮定して調査を続けています。年間を通じて、事あるごとに大学などの専門家に相談し、常に持論を持って尋ねる姿は素晴らしく、今後の活躍が大いに期待されます。指導に当たっては、文献や専門家のアドバイスをうのみにせず、自らの足で稼ぎ、得られた結果が真実であることを強く助言しています。

審査評

[審査員] 木部 剛

 小学5年生から継続しているカエル類の研究です。佐鳴湖西岸でニホンアカガエルの卵塊を見つけたことからアカガエル類に興味を持つようになりました。調べていく上で同じアカガエル類であるヤマアカガエルにも興味を抱き、この研究では2種について遠州・東三河地域のさまざまな場所で生息の有無を調査しました。その結果、多くの生息場所を確認することができ、両種の生息分布は重なっていないことがわかりました。分布域を分けている要因として標高、水のpH、水温、地質についても調べたところ、およそ標高200mを境にすみわけが見られました。他の地域では両種の分布の重なりがしばしば見られるようですので、はっきりしたすみわけがこの地域特有の現象なのか興味深いところです。また概ね中央構造線が両種の分布の境界となっているかについてもさらに調べてみると面白いと思います。各所の個体の遺伝的特徴が調べられると良いですね。今後の展開を期待します。

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