第66回入賞作品 小学校の部
秋山仁特別賞

スーっと動く味そ汁のひみつ Part2 ~断続的な動きの理由&面にまく液体の条件~

秋山仁特別賞

石川県金沢市立大徳小学校 4年
田嶋 花帆
  • 石川県金沢市立大徳小学校 4年
    田嶋 花帆
  • 第66回入賞作品
    小学校の部
    秋山仁特別賞

    秋山仁特別賞

研究の動機

 昨年から、IHクッキングヒーターの上に置いた味噌汁のおわんが動く現象について研究をしてきた。昨年の研究で、「おわんが動く仕組み」と、「動きやすいおわんの形」を発見した。詳細は、下の図のとおりだ。

 ただ昨年の研究では、2つのことを不思議に思った。「おわんが動いては止まり動いては止まり、とぎれとぎれに動くこと」と、「トッププレート(面)の状態によって、おわんの動き方が違うこと」だ。今回は、おわんの動く様子をより詳しく観察し、2つの不思議について突き止めることにした。今回の研究では、前回の研究で動く距離が最も長かったおわんを使用した。

実験1〜2

実験1〜2でおわんの動き方を確認

 実験1では、おわんの動く方向を確認した。これまでIHの上で実験を行うと、おわんは必ず手前から奥へと動いた。トッププレートに傾きがあるのかどうか、水平器で確かめる。すると、手前のほうが少し高かった。おわんをどこに置いても奥へ動くのは、ほんの少しの傾きでも、高いところから低いところへすべるからだった。
 実験2では、水の役割を確認した。水はおわんをすべらせるだけの役割だと思っていたが、それ以外の働きがあるのだろうか。トッププレートを霧吹きでぬらし、おわんを置く。90℃の湯を注いだ場合と70℃の湯を注いだ場合で動き方を比較した。すると、90℃のおわんの底からぶくぶくと空気がもれ、ぶくぶくしている間はおわんは動かなかった。70℃のおわんのほうは底にぶくぶくが見られず、よく動いている。70℃の湯を注ぐとおわんの底の空気が温められふくらんで、おわん自体が少し浮き、わずかなかたむきでもスーっと動くと考えられる。その時、トッププレートの水は底から空気がもれないように閉じ込める役割がある。90℃と湯の温度が高すぎると、空気が急にふくらみすぎて水の壁を壊し、結果的に空気がもれてしまう。70℃のおわんが動いては止まるのも、空気がふくらみすぎると空気がもれて止まってしまう。止まっている間にまた空気がふくらみ、また動き始める。これが、とぎれとぎれに動く原因だと考えた。

実験3〜4

実験3〜4でおわんの動き方を観察

 実験3ではおわんに80℃の湯を注いだ時、どう動くのかを観察した。トッププレートを霧吹きの水で20回ぬらし、おわんを置いて80℃の湯を80g注ぐ。おわんは動いては止まり動いては止まりをくり返すが、止まる度に最初の位置からの距離とその時の湯の温度を計る。別に、動かさないおわんも用意した。動くおわんと同時に80℃の湯を80gを注ぎ、動いたおわんが最後に動かなくなった時、動かないおわんの温度も計って比較した。この実験を5回行い、距離も温度も平均値を求めた。
 実験4では60℃の湯を80g注いだおわん、70℃の湯を80g注いだおわんで、実験3と全く同じ観察を行った。実験3と実験4の結果が下の表だ。

 温度が高い湯を注ぐと、最後におわんが止まる温度も高い。温度が低い湯を注ぐと止まる温度も低い。注ぐ湯の温度と最後に止まる湯の温度に、決まった温度差があるわけではなかった。しかし最後に止まった時の温度は、動いていなかったおわんの同時刻の温度より低い場合が多い。湯の熱がおわんを動かすために使われていると考えた。また、湯の温度が高いほうが動く距離は長かった。

実験5〜8

 おわんが動いたり止まったりするには、水の働きも重要だ。実験5〜8では、トッププレートにぬる液体の種類を変えて、おわんの動きを観察することにした。

実験5〜8

 実験5ではトッププレートに水(25℃)、氷水(1.5℃)、食器洗い用洗剤と水を混ぜたもの、オレンジジュース、油、さとう水(水100gにさとう30gを溶かす)をそれぞれ、霧吹き20回分まいた(油はキッチンペーパーにしみこませてトッププレートに塗った)。その上に70℃の湯を90g注いだおわんを置いて3分間観察し、動いた距離を比較する。その結果、最も動いたのが氷水で37cm、さとう水20cm、水18cm、食器洗い洗剤と水を混ぜたもの16cm、油10cm、オレンジジュース6cmの順だった。氷水とさとう水は、おわんの底の空気を閉じ込める力が強いから、動く距離が長くなると考えた。
 実験6はトッププレートに氷水(1.5℃)、水(15℃と25℃)、湯(40℃)をまいて、実験5と同じ方法で動く距離を観察した。5回の平均で比べたが、結果はやはり氷水がトップで32cm、最下位は湯で12.4cmだった。
 実験7では、さとう水の濃度を変えて動き方を確かめた。100gの水にそれぞれ10g、20g、30g、40g、50g、100gのさとうを溶かしたもので調べたが、最も動いたのは10gの27.8cm(実験5回の平均値)、濃度が上がるに従って動く距離は短くなった。実験8では水100gにそれぞれ10g、20g、30gの塩を溶かして調べたが、塩水はどの濃度でも水よりも距離を出せなかった。

実験9〜11

実験9〜11

 前回の研究で、トッププレートにまく水の量が多すぎると、おわんが動かないことがわかっている。実験9では20度に傾けた机を霧吹きの水でぬらし、机の上方に空のおわんを置いて手を離すと、おわんがどれだけ下へ動くかを確かめた。机をぬらす水の量を霧吹き30回、60回、100回分と変えて調べたところ、30回では20cm、60回は13cm動いたが、100回は6cmしか動かなかった(机を水でぬらさない場合は31cm動いた)。
 実験10は実験9の水の抵抗を、写真のような自作の実験道具を使って数字で表した。机に置いた重さ40gの保存容器と右下の容器をたこ糸でつなげる。テープ台の滑車を経てぶら下げた容器に1円玉をゆっくり1枚ずつ入れていき、何枚入れると保存容器が動くのかを観察した。保存容器を置いた机に霧ふきで30回、60回、100回と水を吹きかけ、それぞれおもりが何gなら保存容器が動くのかを確かめる。すると、30回は20g、60回は24g、100回は27gで動くことがわかった(台を水でぬらさない場合は15gで動いた)。
 実験11では、実験6〜8で動く距離を比べた氷水と湯、濃度の違うさとう水、濃度の違う塩水を使って、実験10と同じように保存容器が動く重さを比べた。すると、軽いおもりで動き始めるのは水の分野では氷水、さとう水の分野では100gに10gを溶かしたもの、塩の分野でも100gに10gを溶かしたものだった。氷水を霧吹き30回吹きかけた場合17gのおもりで保存容器は動き、60回は20g、100回は22gで動いた。さとう水10gは、30回は14g、60回は19g、100回は20gで動く。塩10gは30回は22g、60回は24g、100回は25gで動き始めた。

指導について

金沢大学大学院自然科学研究科機械科学専攻 修士1年 藥師 功哉

 田嶋さんは温かい味噌汁を入れたおわんが勝手に滑り出すという身近な出来事に興味を抱いて研究をされていました。生活の中で見られるありふれた出来事を見過ごさずに、研究の対象にする視点は素晴らしいものだと思います。このような現象を目にしたとき、大人は温められた空気の膨張の側面に目が行きがちです。私もそうでした。しかし、田嶋さんは空気の膨張だけでなく、おわんの底が接触する面の状態、特に濡れ方に着目していました。常識にとらわれない発想に感心するとともに、指導するときは、彼女の自由な発想を妨げないようにすることが大事だと感じました。そして、田嶋さんは摩擦力を測定する装置を自作し、研究を行いました。彼女がその装置を用いた実験をとても楽しんでいたのが印象的です。指導する立場として、研究を楽しんでくれたことはなにより嬉しいです。これからも彼女が自由な発想に基づいて、楽しみながら研究を進めていくことを願っています。

審査評

[審査員] 秋山 仁

 IHコンロ(磁力で発熱させる電気調理器)の上におわんを置いた時、おわんが勝手に動いたり止まったりする現象に不思議を感じたことによって、本研究は始まりました。数多くの実験や観測を行うことによって、その原因が、水がおわんの底の空気を閉じ込め、空気が膨らみ、おわんが少しだけ浮くことによって面を押す力が減少し、少しの傾きでも動くことを突き止めました。さらに、面にどんな液体をまくと滑りやすいかを調べ、氷水や砂糖水が動きやすいことも明らかにしています。
 本研究は身近な生活の中にある不思議に注目し、筋道を立て結論を導いた4年生の見事な研究成果であり秋山仁賞にふさわしい作品です。
 余談ですが、この作品を読んでウィンタースポーツの花形のスピードスケートがなぜ500mを40秒弱で滑れるかの理由も関連事項として調べてみると良いと思います。

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