研究のきっかけ
2024年に暑い夏を乗り切るため、体を早くクールダウンさせる研究をした。保冷グッズを使ったり、冷たい水を飲んだりして、体のどの部分をどう冷やすと体温が早く下がるのかを研究した。
2025年も夏休み前から暑く、24年より猛暑日が多い。24年の研究結果を実行に移し、保冷グッズを使ったり、家ではエアコンをつけたりしていた。のどがかわいたら私は麦茶や大好きなトマトジュースをゴクゴク飲んでいるが、母はよく緑茶を飲んでいる。飲み物の種類が違うと体温の下がり方も違うのかなと、ふと思った。違うのなら普段から飲み物の種類を意識し、体をクールダウンさせたい。そう考えて、今回の研究を始めた。
実験を始める前に
今回の研究では、身近にある飲み物のいくつかを私が実際に飲んで、体温がどう変化するのか、比べる実験をする。身近な飲み物として思いつくのは、水、麦茶、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、ルイボスティー、スポーツ飲料水、牛乳、炭酸水、野菜・果物ジュースだ。このうちまず、麦茶、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、ルイボスティーの茶類にどんな違いがあるのか、農林水産省のホームページで調べてみた。

スポーツ飲料水には何が含まれているのか、ラベルを確かめた。製造会社によって含まれるものは違うが、あるスポーツ飲料水の材料は、砂糖(国内製造)、果糖ぶどう糖液糖、果汁、食塩、酸味料、香料、塩化K、乳酸Ca、調味料(アミノ酸)、塩化Mg、酸化防止剤(ビタミンC)となっていた。
実験に使う飲み物は最も身近な水のほか、主成分の違いや発酵の有無、カフェインの有無、ゴクゴク飲めるかどうかを基準に選びたい。最終的に1「水」、2「麦茶」、3「緑茶」、4「ウーロン茶」、5「ルイボスティー」、6「スポーツ飲料水」、7「牛乳」(生乳100%)、8「トマトジュース」(食塩無添加)を選んだ。
体温の比較実験
実験の方法
実験では8種類の飲み物を、それぞれ100mlずつ2度飲んで体温を測る。飲むタイミングと体温を測るタイミングは次のとおりだ。まず実験直前に体温を測る。それから100mlの飲み物を飲み、10分後のタイミングAで体温を測る。測定が終わったら再度同じ飲み物を100ml飲み、その10分後のタイミングB、Bから20分後のタイミングC、Cから20分後のタイミングDで体温を測った。1種類の飲み物について日にちを変えて2回、この測定を行い、各タイミングでの体温の平均を求めた。
実験は気温26℃前後、湿度50〜60%の室内で行った。飲み物はすべて冷蔵庫で1日以上冷やしたもの。飲む私の服装は素材が同じ物を選び、実験開始前の2時間は食事をせず、1時間前からは静かに過ごして何も飲まないようにした。実験中も静かに過ごし、8種の飲み物は普段どおりの飲み方で飲んで、体温は口の中で測った。
実験の結果
8種類の飲み物を飲んだことによる、体温の変化を表したのが下のグラフだ。飲む直前の体温を0とし、各タイミングでの体温は平均値で示している。
どの飲み物も飲んですぐに体温が下がり、特に2度目の100mlを飲んでから10分後のBで最も下がっている。が、時間が経過したDでは、実験前より逆に体温が上がった飲み物と、下げ幅は減るものの下がったままの飲み物に分かれた。Dの体温から元の体温を引いた値が低いほど、体をクールダウンさせる飲み物と定義した。
その結果、体をクールダウンさせる飲み物の1位はスポーツ飲料水、2位は牛乳、3位は麦茶、4位は水となった。飲む前より逆に体温を上げたのが5位の緑茶、6位のルイボスティー、7位のウーロン茶、最下位のトマトジュース(食塩無添加)だった。

実験の考察
スポーツ飲料水のタイミングCとDとでの体温の変化を見ると、時間がたったDのほうが低くなっている。これが偶然なのか、同じ方法でもう1回、スポーツ飲料水の3回目の体温測定をした。すると同じように、CよりDのほうが体温は低くなった。
夏になると「水分補給」のほかに「塩分補給」という言葉をよく耳にする。スポーツ飲料水にも塩分が含まれているが、塩と体温を下げる仕組みに関係はあるのだろうか。成績上位だったスポーツ飲料水、牛乳、麦茶、水に含まれる塩と糖の量を調べてみた。すると、どちらもスポーツ飲料水に最も多く含まれていた。麦茶と水は糖を含まなかったが、塩は4種類の飲み物すべてに含まれ、量が多いほどDの体温が低くなっていた。
塩と体温の関係をさらに確かめるため、低塩のトマトジュースと、経口補水液で同じ実験をしてみた。飲んでみると経口補水液は塩が入っていることがはっきりわかるしょっぱさで、スポーツ飲料水より塩分が高い。どちらにも高いクールダウン能力があると予想した。
ところが結果は予想に反し、低塩のトマトジュースは塩分無添加と同じようにDの体温を逆に上げ、経口補水液はスポーツ飲料水ほどにはDの体温を下げなかった。
医師への確認
ここまで実験を通して考察したこと、疑問に思ったことについて、医師に話を聞いてみた。
すると、飲み物に塩分があったほうが、腸から血管へ送られた水分が外へ逃げにくくなり、血液に十分な水がめぐると体のクールダウンにつながる、と教えられた。ただ塩分濃度が重要で、高すぎると血管に水分がたくさん入りパンパンになって負担がかかる。経口補水液の塩分は高いが、健康体とは違う脱水症状を改善させるための飲み物だ。逆に塩分のない水を飲みすぎると、水分が血管の外へ逃げ、血流が悪くなってしまう。
糖分も同様だ。糖はエネルギーになったり、腸から水分を吸収させやすくしたりするが、摂りすぎは体によくない。スポーツ飲料水は糖分が高いものが多く、日常で飲むには注意が必要だという。
経口補水液は塩分、スポーツ飲料水は糖分が高いなら両方の長所をとり、いつでも飲める「体のクールダウンドリンク」を作ってみようと思った。塩分はスポーツ飲料水、糖分は経口補水液の濃度に合わせ、ミネラルウォーター1000mlに、食塩1.2g、ブドウ糖18gを混ぜた。このオリジナルドリンクで同じ体温測定をしたところ、飲む前よりDの体温が低く、CよりもDの体温が低かった。スポーツ飲料水と同じ変化となった。作戦大成功!!

[審査員] 飯田 秀男
昨年度、暑い夏を乗り切るために保冷グッズなどを使って体温を下げる研究をしたことを発展させて、飲み物と体温の関係について調べることができました。初めは、身近な飲み物を飲んだときの変化を調べました。実験をするにあたり、条件を一定にすることを意識しながら体温の変化について丁寧に記録しており、120回を超える検温を行ったことも評価すべき点です。実験を通して塩分が関係しているのではないかと考え、新たな課題を見いだすことにつなげることができました。次の実験では、塩分量と体温低下の関係について調べるとともに、実験を通して感じた疑問をお医者さんに聞いて確かめている点も評価できます。最終的にオリジナルのクールダウンドリンクを作り、日常生活の中で活かすことができているところもよい研究になりました。今回の研究からも新たな課題が見いだされていますので、暑い夏を乗り切るための今後の研究が楽しみです。


富山大学教育学部附属小学校 教諭 山崎 裕文 保井 海太朗
昨年度の研究をきっかけに、暑い夏に体を効率よくクールダウンさせたいという思いを大切にしながら、本研究に取り組んできました。日常生活の中で、家族それぞれが選んでいる飲み物に目を向け、「飲み物の種類によって体温の下がり方に違いがあるのではないか」という身近な疑問を出発点としているところに、探究心の育ちが感じられます。研究では、体温測定の条件をできるだけそろえ、実験を繰り返しながら丁寧にデータを集めていました。結果を表やグラフで分かりやすく整理しようとする工夫や、飲み物の成分にも着目している点から、自分なりに視点を広げながら探究を深めていく姿が見られました。さらに、専門家の話をもとに体のクールダウンドリンクを考案するなど、研究を生活に結び付けようとする姿に成長が感じられます。今後も、日常の中の「なぜ」や「~を明らかにしたい」という思いを大切にしながら、学びを広げていくことを期待しています。