ミズスマシはミズスマシ科の6~6.5mmの甲虫で、日本全土に見られます。水面に暮らしていて、落ちてきた虫を餌にしています。人が近づくと、急にクルクルとすばやく泳ぎ回り、人の目をくらませます。よく仲間と衝突せずに泳げるものだと思います。
この虫を飼育して、いくつかの習性をノートに記しました。今回はその中から面白い習性を紹介しましょう。
ガラスの水槽(縦横40x50cmの市販のもの)に20cm程度に水を入れ、カナダモやヒツジグサなどを植えておきました。陸も必要なので高さ15cmの植木鉢に土とコケや草を植え、レンガを台にして水面に出るようにしておきました。
餌は、ショウジョウバエを水面に落として与えました。幼虫には付近の池からすくってきたプランクトンの浮かんでいる泥水をそのまま与えました。小さい幼虫に小さいプランクトンを選んで与えるのはめんどうだからです。
5~6匹を飼育していると、カナダモのいくつかの葉の縁に、1列に並べて卵が産んであるのを認めました。 卵をそのまま放置していると、10日ほどで孵化(ふか)したらしく、幼虫の姿がいくつか見られるようになりました。幼虫の餌には困りましたが、池にいたプランクトンを泥水ごと与えて解決しました。文献によると、幼虫はワムシ、ミジンコ、ボウフラなどを食べる、と書いてあります。
1ヵ月たつと、体長12mmほどに育った幼虫(ミズスマシは成虫より、幼虫時の方が大きい)が、植木鉢に上がってきているのを認め、観察していると、おもしろいことを始めました。どろまゆを作り始めていたのです。
次にそのときの様子を、スケッチと共に紹介しましょう。
幼虫はゲンゴロウの幼虫に似ていますが、体の両側に呼吸のためのエラが腹部の各節から1対、合計10対出ているところが違います。幼虫はゲンゴロウのようにおしりを水面に出すことなく、エラで呼吸するのです。
上陸した幼虫は植木鉢の泥を両方の大あごですくっては、そのままそりかえって、背中に泥を乗せるのです。ひとかたまりの泥が背中にたまると、近くの草に上り、葉の裏で、泥の中にうずくまるように隠れました。泥は崩れることも、落ちることもありません。おそらく唾液(だえき)を混ぜているらしく、接着剤の役目をするのでしょう。
翌日見ると、長さ7mm、幅4mmの楕円形のどろまゆが出来ていました。どろまゆは、その後も水槽の壁、植木鉢の側面などにもたくさん見られました。
どろまゆは約1週間で丸い穴が開けられ、成虫が出ているのが見られました。