私は2002年からナミアゲハの観察をしています。2005年に、ナミアゲハの蛹が同じ日に違う色になったことが不思議で、蛹の色についての研究を始めてから5年になりました。今までの研究からわかったことを生かして、ナミアゲハが何を条件に蛹の色を決めているのか今年も研究したいと思いました。
53匹の蛹について以下のことを記録した。蛹の色、下痢便をした日、前蛹になった日、蛹になった日、前蛹の日の気温(最高・最低・平均)、日照時間、蛹になった場所、場所の表面(ザラザラしているか、ツルツルしているか)、羽化した日。
結果・考察
1.表面がツルツルでは、3匹が緑・茶色になり、14匹が緑色になった。ザラザラでは、8匹が緑色、9匹が緑・茶色、19匹が茶色になった。
2.今までの実験で明るいと緑色になるので、今年は100ルクス以下の場所に置いて実験した。ケースの中で1番明るい場所のフタで緑色の蛹が多く、側面でも緑色になったのは、真ん中と上部だった。側面の暗い場所で茶色の蛹になるものが多かった。
5年間のまとめ
1.表面がツルツルでは84%が緑色になり、ザラザラでは55%が茶色になった。オレンジ色の蛹は表面の違いに影響されなかった。表面の違いは蛹の色の1番の条件とは言えないと考えられる。
2.明るさについては、明るい順に緑色→緑・茶色→茶色になり、1番暗いルクスゼロの場所で緑色になった。秋にオレンジ色になる蛹をルクスゼロの場所に置くと、緑色の蛹になった。
3.ナミアゲハの神経節の中に蛹の色を決める物質がある(「昆虫発見」今井博)ことを知った。
4.ナミアゲハの蛹の色を決める1番の条件は明るさだと考えられる。神経節の中にある色を決める物質は、光を浴びることによってホルモンが出て、蛹の色を決めているのではないかと考えられる。