第52回入賞作品 小学校の部
3等賞

勇馬生物記 PART3
~ダンゴムシの大研究~

3等賞

岐阜県瑞浪市立土岐小学校 3年
浅井 勇馬
  • 岐阜県瑞浪市立土岐小学校 3年
    浅井 勇馬
  • 第52回入賞作品
    小学校の部
    3等賞

    3等賞

研究のきっかけ

 コガネムシの幼虫を探していた時、ダンゴムシがアリにおそわれていた。丸まっているダンゴムシを見て、生き抜くための知恵はすごいと思うとともに、重そうなよろいがあるけど、動き方や生活の様子にどんな特徴あるのか、たくさんの疑問が浮かんできた。

マツモムシ

《大問題1》ダンゴムシはどんな体をして、どんな所にすんでいるのか。

 4月10日に飼育ケースを作り、ダンゴムシをつかまえに行った。探したのは家の庭、土岐小学校、おたる公園、瑞浪中学校の4カ所。庭で5匹、ワラジムシも1匹つかまえた。土岐小学校では1匹つかまえた。その後、瑞浪小学校の裏で、ダンゴムシが大発生していることを聞いた。大発生の現場を最初に見たとき、いるわけがないと思った。理由は石や畑のような土がない草がいっぱい生えているしめっているように見えないからだ。でもよく見ると、大きな(1cmほどの)ダンゴムシがいた。そして15分間で68匹、ワラジムシも1匹つかまえた。たくさんいた理由は見た目と違ってしけっている石のかわりに、ヤブガラシという植物の大きな葉っぱで、日かげができていた草にも水滴があった枯葉があちこちにあった日当たりがよさそうでも、実は日かげだったからだ。

《思ったこと》

草にかくれて生活しているダンゴムシがいるなんてビックリだ。ダンゴムシはしめっていて、かくれ場があればどこにでもいる。ふだん気がつかないだけだ。アリも多かったので、ほかの生き物にも快適なすみかだと思う。

《ワラジムシ》

ダンゴムシとの共通点:足の数は14本。足1本は4個のブロックからなる。体の節のところに足がはえている。体全体が丸い。しょっ角もブロックのようだ。
違うところ:ワラジムシは節が16本ある。お尻に角のような突起がある。節にある突起が小さい。目のようなものが上にある。お尻がギザギザ。口の出っ張りに黒い三角形がない。お尻の節が直線。体の色はピンクが少し入った茶色だ。

《ワラジムシの赤ちゃん》

頭のあたりがピンク色のワラジムシをひっくり返したら、卵があった。また少したって見たら、赤ちゃんがお腹にいた。

《ダンゴムシの赤ちゃん》

霧吹きで水をやろうとしたら、メスがひっくり返っていて、黄色いプツプツがあるのでよく見たら赤ちゃんだった。ワラジムシの赤ちゃんと同じく、黄色とレモン色の混ざった色だ。大きさは1~2mmぐらい。ちゃんと足があったが、何本か分からない。しょっ角は2本あった。

《思ったこと》

小さくてもダンゴムシの形をしていた。1匹から20匹、5匹のメスでは100匹になるから、生命力が強いなあ。

《大きくなった赤ちゃん》

何週間か前に生まれたダンゴムシの赤ちゃんが黒くて、3mmほどになっていた。成長は遅いのかな。目がくりくりして可愛い。
ワラジムシの赤ちゃんは体長が4mm。お尻が茶色で、ほかはオレンジ色。しょっ角に白い部分がある。大人と同じく、後ろに2つの突起がある。とても行動が早く、しょっ角の動きも俊敏だ。

《大問題2》ダンゴムシの歩き方に特徴や決まりはあるのか。

(1)ダンゴムシは、どれくらいの速さで歩くのか。

《実験の仕方》

白い紙の上にダンゴムシをおき、定規に沿って10cm歩く時間を、大きなオス(1.4cm)・メス(1.8cm)で3回ずつ調べる。

《結果》

3回の合計タイムはメス11.4秒、オス13.6秒で、メスが2.2秒速かった。よろいの重さや大きさに関係するのか、次に小さなメス2匹(1cm、7mm)でやってみた。

《結果》

3回合計はメス(1cm)が8.4秒、メス(7mm)が24.5秒。メス(1cm)の方が16.1秒速かった。

《分かったこと》

小さすぎてもだめ。歩く速さの競争は大きさ1cmくらいでやるのがいい。

(2)出会った時に、ダンゴムシはどうするか。

オス・メスの実験

《実験の仕方》

竹ひごの上でオス・メス2匹を歩かせ、出会った時の様子を10回くり返し観察する。

《結果》

自分が止まり、相手が通るように道をゆずったのが、オスで8回、メスで2回あった。ふだんは竹ひごの下側を歩くが、道をゆずる時は上側に行く。別のオス・メスでも再実験をした。結果はオスがゆずったのが9回、メスがゆずったのが1回。

《思ったこと》

オスがゆずることが多い。繁殖の時だからメスにアピールしているのかな。

オス・メスの実験

10回ともゆずりあった。互いに上側に行こうとして、長い時間がかかった。けんかせずに、一方がちょっと横に移動してから通る。

オス・メスの実験

10回とも互いにゆずらなかった。2匹は出会ってしばらく動かない。その後互いにぶつかり合い、ともに強引に先に進もうとする。押された一方が、竹ひごの上側によける。

《思ったこと》

けんかみたいだ。メスはゆずらず、少し意地悪だ。

《実験をふりかえって》

竹ひごの下側を歩くのは、上ではバランスがとれないからかな。メスだけだったら大変だ。オスとメスがいるのはすごい。

(3)竹ひごと糸では、どっちが好きなのか。

虫かごの竹ひごに、たくさんのダンゴムシがつかまっていた。まるで遊園地で遊んでいるみたい。

《実験の仕方》

竹ひごとタコ糸の上を歩かせ、5cm動く時間をはかる。2匹が3回やっての合計時間を比べる。

《結果》

竹ひごは合計85秒、タコ糸は158秒。竹ひごの方がわたりやすい。

《思ったこと》

ルーペで見ると、竹ひごにはたてに溝があり、足を引っかけて歩きやすい。タコ糸はななめに溝があり、毛がぼうぼうでよろいや足が引っかかって動きずらいのかも。

(4)T字路にぶつかったら、ダンゴムシはどうする。

《実験の仕方》

積み木でT字路の迷路を作り、ダンゴムシを置いて、左右どっちに行くのか調べる。

《結果》

3匹で10回ずつやった。左に曲がったのはそれぞれ10回、9回、7回。その後に再びT字路にぶつかったら、どっちに曲がるのか。

(5)連続したT字路では、どう動くか。

《実験の仕方》

左右とも4回連続するT字路を積み木で作った。3匹で10回ずつ やった。

《結果から気づいたこと》

最初のT字路では、左右どちらに曲がるかは言えない。その次からは必ず反対方向に、左右交互に進む。

《考えたこと》

同じ方向に曲がると、一周してしまう。交互に曲がれば、前に進めるからだと思う。

《大問題3》ダンゴムシの食べ物、食べ方はどんなふうなのか。

(1)ダンゴムシは枯葉を1日にどれくらい食べるのか。

《実験の仕方》

1匹ずつをケースに入れて枯葉を与え、1日後にうんちの数を調べ る。

《結果》

6匹のうち、うんちをしていたのは2匹(5個、3個)だけ。

《考えたこと》

まわりが明るく、ケースもしき紙も白いなど、ストレスがあったのかも。実験では、ダンゴムシのことも考えたい。

(2)ダンゴムシの落ち葉の食べ方。

《気づいたこと》

落ち葉は枝についていた方から食べる。葉脈はきれいに残す。や わらかい部分からむさぼる。

(3)新聞紙を食べるのか。

《実験の仕方》

本に「食べる」とあった。新聞紙を葉の形に切り、ぬらしたもの、 ぬらさないものでためした。

《結果》

1日後、ぬれていた方をよく食べていた。6日後、ぬれていた方に、ひょうたんのような大きな穴があいていた。しめった土の上にあるためか、かわいた方も食べている。

《思ったこと》

新聞紙は何でできているのか。調べると、「植物のせんい」だという。ほかの紙も食べるかもしれない。

(4)画用紙を食べるのか。

《実験の仕方》

葉の形にして、ぬらした画用紙、新聞紙を入れた。

《結果》

3日後、新聞紙を食べ、画用紙は食べていない。

《思ったこと》

画用紙は葉脈のようにかたいから、食べないのだろう。暗い所が好きなダンゴムシは、新聞紙に黒い字があるから食べるのかも。

(5)コピー用紙と新聞紙では、どちらを食べるか。

《実験の仕方》

やわらかいコピー用紙をぬらして与える。

《結果》

4日後、新聞紙の方を、圧倒的に多く食べていた

(6)画用紙を黒くすると食べるのか。

《結果》

4日後、黒い画用紙はまったく食べられていない。

(7)コピー用紙を黒くすると食べるのか。

《結果》

4日後、黒いコピー用紙の方を、新聞紙よりもたくさん食べていた。

研究を終えて

 ダンゴムシには生物として、生き抜くための知恵があるのに驚きました。これからも身近な生物をじっくり観察し、たくさんのなぞを解明したいと思います。

指導について

指導について浅井 誠

 じっくりと観察することが大切だよ」「継続した観察、繰り返し実験することが大切だよ」「見つけたこと、考えたことをすぐに記録することが大切だよ」と3つの助言をしました。
  時間を忘れて研究に没頭し、ダンゴムシの体の様子についての発見を自分のものとして喜び、ダンゴムシに対してより深く愛着をもつことができました。オスとメスの性格があるんじゃないかと自分なりの仮説をもちながら、繰り返し実験したり、食性を調べるために、毎日継続して新聞紙の変化を記録したりしました。感心しているのは、それらを自分の言葉で豊かに表現できている点です。
 これまでも小学校に入学してから、いろいろな生物の観察や実験を行っていました。将来「生物学者で冒険家になりたい」と夢をもつ本人です。今回の研究で、一層生物のことが好きになり、将来への希望を膨らませることができたとともに、自然を大切にする心をさらに育めたのではないかと思っています。

審査評

審査評[審査員] 邑田 仁

 昨年はアリを研究していたのに、対象とする生物を変えてから1年でここまで観察できたことにまず驚かされる。竹ひごを通り道にして雄と雌を出会わせる実験は特におもしろかった。指導者もいるのだから、どこまでが本人の発想であるかはよくわからないけれど、そのことはそれほど重要ではないだろう。大切なのは、本人が実物を見て、さわって、それが生きているということがどんなことかを実感することであろう。見たこと、感じたことが他人に伝わればさらによいと言える。この研究では、本人がダンゴムシととても親しく接していることが生き生きと表現されており、おもしろい行動を見つけた喜びと感激を十分に読み取ることができた。
 同じ生き物を同じように観察しても、人が違えば違うことを発見する。その発見が観察する目を育て、さらに新しい発見へとつながっていくのである。PART4に期待したい。

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