ぼくは、小さい時に父の研究所に行って初めてソリトンを見た。普通の波みたいに見えるのに、どうして「ソリトン」という別の名前で呼ばれているのか不思議に思った。小学2年生の終わり頃に、ソリトンは身近にあるのに殆ど知られていないと父から聞かされた。ソリトンが普通の波とは違うことがはっきり分かるような実験をしたいと思って研究を続けている。
方法
今までの研究で使っていた風のソリトンの実験装置の欠点を克服するために新しい装置を自作した。塩化ビニール製の波板(山と山の間隔32mm、深さ9mm、厚み1mm)をベニヤ板の画板(72.2cm×60.6cm)の大きさに切って貼り付け、片方を高くした(勾配をつけた)。
実験
直径10mmのビーズ40玉の連珠を勾配30度にして
(1) 指で左端を弾いてソリトンを発生、
(2) 指でまん中をそっと押してソリトンと反ソリトンを対生成させた。1秒間に300コマの映像で記録し解析した。波板の凸の上に乗っている玉の順番をソリトンの位置として横軸にし、時間とともにどの玉が乗っているか数え、その結果をグラフにした。
(3)ビーズのソリトンと風のソリトンのカオスを比較した。
(4)50玉を使って、ソリトンを1個入れた場合と2個入れた場合について、勾配20度、25度、27.5度、32.5度、35度でカオスの制御実験を行った。
(5)風のソリトン模型でソリトンの数とカオス発生の関係を調べた。
結果・考察
風のソリトンの動きとビーズのソリトンの動きは似ていて、ソリトンの場所では螺旋を描いていた。また、カオスになったら止められないことが多かった。しかし、ビーズのソリトンでは、波板の勾配を変えるだけでカオスを精密制御できた。勾配が緩いとソリトンは反射や衝突の時に消え(消滅系)、勾配がきついと雪崩のように落下し(雪崩・カオス系)、その間の傾きで往復運動や衝突を繰り返す多様な運動をした(多様性系)。勾配が同じだとソリトンの数が多い方がカオスになりやすかった。