アゲハは多化性である。1年に数回、卵→幼虫→蛹→成虫の過程を繰り返す。図鑑によるとアゲハの発生回数は2〜6回/年と幅があり、生息している地方によって異なるようだ。同じ種類のアゲハなのに発生回数が決まっていないことが不思議に思えた。アゲハの発生回数は何によって決定するのだろうか。この疑問を解決するために、私はこれまでに温度、日照時間、湿度、餌の鮮度や硬さ、磁力、紫外線量等、色々な条件を変え、研究してきた。私はこれまでの研究(私がアゲハの研究を始めて8年になる。)で、アゲハは冬の到来を日照時間で知ることを突き止めた。アゲハは蛹の状態で冬越しをする。私たち人間は、大抵温度によって冬の到来を知るが、アゲハは温度が高い夏でも日照時間を短くすると冬が近づいていると思い、休眠状態の蛹になり羽化しないことを突き止めたのだ。つまり、その年の発生は、それ以上しないことになる。アゲハが休眠蛹になる時期の日照時間や温度を明らかにすることにより、京都市における発生回数を明らかにしたいと思い、今回の研究を始めた。
京都市における発生回数は、私の経験に基づく予測では4回であったが、今回の研究結果から5回であるという結論になった。
発生回数の決定要因は、温度と日照時間であり、気温が高いと成長速度が速く、短期間で成虫になり産卵する。そして、それを繰り返し、日照時間が幼虫(4齢幼虫)時に11時間/日になると冬に備え、羽化せずに休眠蛹となる。つまり、日照時間が11時間/日になるまでに、どれだけ短期間にサイクルを繰り返すことができるのかがポイントとなることがわかった。
また、今回の研究で休眠蛹になる決定時期は4齢幼虫時であることもわかった。4齢幼虫といえば、昨年私が発表した研究「過齢幼虫の誘起要因に関する研究(アゲハ編)」において、過齢幼虫になる決定時期は4齢幼虫時だと結論づけた。休眠蛹にしても、過齢幼虫にしても、どちらも4齢幼虫時に決定するようだ。このことからアゲハにとって、4齢幼虫時期は特別な非常に大切な時期であることがわかった。