家のせん面所に、古い体重計がある。かなり昔の物らしく、さびが目立つ。そろそろ今はやりのデジタル式の体重計に買いかえたいところだ。台所の台計りにはデジタル式と目もり式の両方がある。デジタル式はすぐに数字が出る。でも目もり式は、目もりが動いて面白い。どのようにして目もりが動くのだろうか。親も「体重計を分解してもいいよ」と言うので調べてみたいと思った。親類の家からも古い目もり式体重計をもらい、中の仕組みが同じか比べることにした。
〈材料〉
目もり式体重計(2台)、目もり式台計り(1台、比べるため)
〈方法〉
体重計を次の順番に分解した。①フタを固定しているバネをはずす。②中の様子を観察する。③目もり板をはずす。④テコをはずす。次に台計りの外わくをはずして、仕組みを観察した。
結果
(1)体重計のつくり
①ふみ台(フタ)
②フタをはずした時の中の様子
③目もり板をはずした時の中の様子
《体重計(イ)》
《体重計(ア)》
④体重計(イ)のテコの分解
(2)体重計が計れる仕組み
体重計に乗った時の体重は、次の①から⑤までのように伝わることが分かった。
① | ふみ台に乗る。 |
② | テコAが下がる(テコAは強力なバネで引き上げられている)。 |
③ | テコAが下がると、テコBが、テコCにつながっているバネで引きもどされる。 |
④ | テコCが動くと、テコCのギザギザにつながっている歯車が回転する。 |
⑤ | 歯車のじくには目もり板が付いているので、目もり板が回転し体重を示す。 |
(3)台計りの仕組み
外わくをはずして、中の様子を観察した。形はちがうが、仕組みは体重計と同じことが分かった。
分かったこと
(1)体重計と台計りは、形はちがうが、重さを計る仕組みはだいたい同じだ。
① | 両方とも、バネがのびる長さをテコの動きに変える。 |
② | テコの動きを歯車の回転に変える。 |
③ | 歯車につながった目もり板の目もりと数字の位置で重さを知る。 |
(2)バネ計りがあったので比べてみた。
バネ計りは、バネに取り付けられている目印が、バネがのびた時にさす目もりで重さを計るようになっている。体重計と台計りも、バネがのびたりちぢんだりするせいしつ(性質)を利用している。
感想
審査評[審査員] 秋山 仁
この作品は、家庭にある体重計や台計りが重さを正確にはかるしくみについて研究したものである。そのしくみは以下の3つの工程から成り立っていることを解き明かしている。
①重さに比例して伸びるバネの長さを、テコの動きの大きさに変える
②テコの動きを歯車の回転に変える
③歯車と目盛板を連動させ、数値で表す
上記の結果を得るため、体重計をひとつひとつ丁寧に分解し、内部の部分の機能をつぶさに調べ、極めて精緻なスケッチを行っている。本作品を読むと“なるほど、なかなか上手くできてるな”と、 体重計のしくみが納得できる。 研ぎ澄まされた科学の眼と科学の心をもって挑戦した、少年らしい作品である。
次は是非、本研究で調べた結果を応用して、何か新しいものを作ってもらいたい。目指せ、エジソンを!
指導について大畑純二
身近にあって、いつも使っているにもかかわらずどんな仕組みか考えたことがなかった体重計。長く使ってきた体重計が狂ってしまったのがきっかけで、分解して一緒に調べることにした。
形が異なる2社のものを分解してわかったことは、多少の構造の違いはあっても、体重が目盛りとなって示される道程は同じであること、構造的には、非常にシンプルながら、実にうまくできている ことに感心させられた。体重計にかかる力がバネの伸びる長さとなり、回転運動によって運動の方向を変え、最終的に指示針の付いた歯車に回転として伝えられ、目盛り(体重)を示すという一連の動きが目で見える良い材料だったと思う。
しかし、子供がこれをまとめ、解説文に表すのはかなり難しかったようだ。