研究の動機
昆虫は、体のまわりの温度によって体温が変化する外温動物であるため、温度変化に弱い可能性がある。地球温暖化によって大好きな昆虫であるカブトムシの将来がどうなるかを明らかにしたいと思い、飼育温度を変えて幼虫の成長を調べる自由研究を2014年から続けてきた。その結果、幼虫を高温で飼育すると、①メス・オスともに室温より羽化が早まること、②オスよりメスの羽化が早い羽化ずれが起こることが分かった。これらの結果は、温暖化すると羽化ずれによってカブトムシの数が減少する可能性があることを意味している。しかし、高温によって羽化ずれが起こる理由はよく分かっていないので、今年はこの羽化ずれが起こる理由を明らかにしたいと考えた。
結論と感想
高温によって羽化ずれが起こる理由として、①体温仮説(オスとメスで体温が異なる)、②孵化時期仮説(オスとメスで孵化した時期が異なる)、③有効積算温度仮説(オスとメスで羽化に必要な有効積算温度が異なる)を考え、幼虫の体温変化を測定する実験と2017年から今年までの飼育実験の結果を使って検証した。3仮説はすべて支持されると予想したが、検証の結果は有効積算温度仮説だけが支持され、オスよりメスの方が羽化に必要な有効積算温度が小さいために、高温による羽化ずれが起こると考えられた。
作物の害虫については有効積算温度の研究が盛んに行われているが、身近な昆虫の代表であるカブトムシについて研究されていなかったのはとても意外だった。