第62回入賞作品 中学校の部
継続研究奨励賞

ろうそくの炎 パートⅤ ~炎の形を変える~

継続研究奨励賞

茨城県つくば市立吾妻中学校 2年
高橋 夏雪
  • 茨城県つくば市立吾妻中学校 2年
    高橋 夏雪
  • 第62回入賞作品
    中学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

これまでの研究結果

 今回で5年目になるこの研究のきっかけは、キャンプ場で蚊とり線香に火をつけようとマッチの火を下に向けたのに、なぜか炎が上を向くことに疑問を持ったからだ。
 1年目、観察や実験から、ろうそくの炎が重力に逆らって上にいくのは、炎で暖められた周りの空気が軽くなるからだとわかった。
 2年目、白いろうそくの炎がなぜ赤いのかを調べると、ろうそくの炎はポリエステルを燃やした時の色に似ていた。どちらもパラフィンが含まれており、パラフィンの炭素が熱せられて赤くなっていることがわかった。
 3年目はろうそくの炎の形を調べた。形が変わるのは風(空気の流れ)が原因と考えたが、風がなくても炎の形は変わる。原因を他に探し、装置を使って炎に磁場をかけると不均一磁場の中で炎の形が大きく変化した。
 4年目の前回は、何が磁場に反応しているのか、明らかにしようと試みた。炎の形が変わるのは、ろうそくの炎の何かが磁場に反応しているからだ。シャボン玉の中に酸素や窒素、二酸化炭素などを入れ、磁石を近づけて反応をみた。結果的には、酸素と窒素は磁場に反応していることがわかった。  今回は、音波をろうそくの炎に当てることにした。音波で炎の形は変わるのか、音波を調節して人為的に炎の形が変えられるか、明らかにしたいと思った。

実験Ⅰ~Ⅵ

実験Ⅰ:炎の形が変化する音波を見つける

 まず音の大きさ、炎とスピーカーとの距離、周波数をさまざまに変え、炎の形が変化する組み合わせを探した。①音の大きさを66dB、炎とスピーカーとの距離を5cmに固定し、1200~20000Hzまで周波数を1000Hz刻みで上げながら組み合わせを探した。②炎とスピーカーの距離を15cmに変えて固定し、残りは①と同じ条件同じ方法で炎の形の変化を見た。③は距離を25cmに変えて固定し、同じように観察した。④は音の大きさを113.5dBに変え、距離を5cmに戻して固定し、同じように観察した。

実験Ⅰの結果

 ①~④の各条件で音波を炎に当てている間、炎が左右に揺れることはあったものの、炎がつぶれたり、変な形になったりすることはなかった。①の実験では音波を停止した後に炎が大きくなった(下写真)。


実験Ⅰの①で周波数を20000Hzまで上げた時と、停止した時のろうそくの炎

実験Ⅱ:炎が大きくなった原因を探る

 実験Ⅰ-①で音波を止めた後に炎が大きくなった時、ろうそくの最下部がロウに触れているように見えたため、ロウの全体量が多いことが原因ではないかと考えた。

実験Ⅱの結果

 ロウの量を変えたろうそくで炎の長さを確かめたが、あまり差はなかった。ロウは関係ないかもしれない。

実験Ⅲ:周波数の低い音で炎の形を確かめる

 実験Ⅰで試した周波数より低い音で実験を行った。
 ❶音の大きさを66dB、炎とスピーカーとの距離を5cmに固定し、周波数を1~200Hzまで上げながら炎の変化を見る。❷音の大きさを99dBに変えて固定し、残りは❶と同じ条件で炎の変化を見る。❸は99dB、5cmのまま、周波数を1~200Hzまでゆっくりと上げていく。1~10Hzまで1Hz刻みで上げ、10Hz以降は10Hz刻みで上げながら炎の形の変化を見る。20Hzで火が消えたので、20Hzからやり直したが、60Hzでも火が消えた。さらに60Hzからやり直したが、再び60Hzで火が消えてしまった。最終的に70Hzから再開し、100Hzまでは10Hz刻みで周波数を上げ、最後に200Hzで炎の形の変化を観察した。

実験Ⅲの結果

 ❶は大きな左右の揺れも形の変化も見られなかったが、❷の10Hzから炎が揺れ始め、50Hzで最も大きく揺れて、その後は揺れが小さくなっていった。❷の50Hzの揺れ方が、今までの揺れ方と大きく異なっていた。今まで見えていた内炎の明るい部分もほとんど見えなかった。おそらく横に低く揺れていると考えられる。❸は6Hzから炎が左右に揺れ、10Hzまでどんどん揺れが大きくなった。40Hzからは炎の下部が横に揺れる「揺れ方②」になった。音の大きさが99dBの時、炎の形の変化や揺れが大きかったのは、40~100Hzだった。

実験Ⅳ:続・周波数の低い音で炎の形を確かめる

 実験Ⅲで炎が特に反応し、かつ消えにくかった周波数を中心に、炎の形の変化を再度確かめた。1は音の大きさを66dB、炎とスピーカーとの距離を5cmに固定し、30~40Hzまで周波数を1Hzずつ上げながら、炎を上から撮影した。2は音の大きさを99dBに変えて固定し、距離5cmのまま、30~40Hzまで周波数を1Hz刻みで上げながら炎を上と横から撮影した。3は99dB、5cmのまま、10~100Hzまで周波数を10Hz刻みで上げながら、炎を上と横から撮影した。

実験Ⅳの結果

 1は炎がスピーカー側に傾いていることが何回かあった。2は炎がスピーカー側に傾いていることが多かった。また、横から撮影した時に炎の周りの輪郭のところで何かが反時計回りに回っていた。おそらく音波の波ではないかと思う。3の炎はすべてスピーカー側に寄っていた。音波の方向とは逆に炎が傾くのはなぜなのか。

実験Ⅴ:磁場と音波の影響を同時に与える

 炎に磁場と音波の影響を同時に与えられたら、面白い反応が見られるのではないか。過去の実験で炎に変化が出たのは1.5T(テスラ)以上の磁場だったので、今回は装置を使って磁場を2Tに設定した。音の大きさは75dB、音と炎の距離は5cmに固定し、1~100Hzまで周波数を10Hz刻みで上げながら、炎の形を確認した。

実験Ⅴの結果

 20Hzから炎の揺れが激しくなり、四方八方に突き出すように出た。1~50Hzまで炎の大きさが少しずつ小さくなり、60Hzになった瞬間に大きくなった。また、80Hzから一気に黒い煙が出てきた。

実験Ⅵ:炎の揺れの速さと周波数の関係を調べる

 これまでの実験の動画をコマ送りで再生し、周波数が40、50、70Hzの時にそれぞれ、炎が左から右(または右から左)へ移動する時間を調べた(数回調べた時間の平均値)。40Hzの時は0.01秒、50Hzの時は0.017秒、70Hzの時は0.02秒という結果になった。

研究の考察

 66dBよりも99dBの時に、炎の形の変化が大きかったのは、音の幅が大きいほうが空気に圧力を与えやすいため。炎がスピーカー側に傾くのは、音波の圧力に対して逆方向へ戻ろうとする炎の力が続くため。実験Ⅴで黒い煙が発生したのは、酸素不足になったロウが高温で熱分解し、パラフィンが入った炭素が出てきたため。実験Ⅵで周波数が低いほうが移動時間が短かったのは、周波数が高いと起きる波形の数が増え、スムーズに移動しにくいため。60Hzの例など実験の途中でろうそくの火が消えるのは、大きく炎が揺れたことで普通は炎の中にあるろうそくの芯がむき出しになり、音波が直接当たったためだと考察した。

指導について

つくば市立吾妻中学校 田野 卓美

 小学校4年生の夏休みに参加したキャンプで、ろうそくを下に向けても炎は上を向くことを不思議に思ったのをきっかけに始めた研究です。毎年の自由研究で、ろうそくに関するいろいろな疑問を、実験を通して理解を深めてきました。小学6年生からは、ろうそくの炎の形が様々なエネルギーで変化することについて研究を進めてきました。磁場や音波がろうそくの炎の形に与える影響は大きいものでした。その解釈のために炎の変化の様子をビデオ撮影してそれを1コマずつ確認し編集するという地道な作業を繰り返し、得られた知見から考えたことをまとめています。中学生になってからは自分で研究を進めていますが、足掛け5年間の研究で得られた知見をフル活用して得られた考察は興味深いものになっています。新しい技術分野になる可能性もある結果なので、引き続き研究を続けていくことを期待しています。

審査評

[審査員] 小澤 紀美子

 キャンプ場で蚊取り線香に火をつけるためにマッチの火を下に向けた時に炎が上を向くことの「疑問」から始まった研究も5年目を迎えています。とても素直な疑問から実験の方法を考え、「ろうそくの炎の形の変化」を追究する努力を継続していることに敬服します。5年目の研究では、周波数の高い値と低い値で炎の形が変化する値を見つける、炎の大きさを変える要因を探る、周波数と音の大きさとスピーカーとの距離の調節による炎の大きさ、磁場と音波を同時にあてての変化、さらに炎の揺れと周波数の関連の観察などの実験によって、炎の形を横から上から観察し、その規則性を明らかにして「人為的に炎の形」を変化させることが可能か、きめ細かな実験をしています。今後も継続して行うことで、「ウサギのような」炎の形づくりが成功していくことを期待しています。

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