第62回入賞作品 中学校の部
佳作

ツマグロヒョウモン・パートⅥ ~食草の状態、育つ環境が異なるとどうなるか~

佳作

島根県島根大学教育学部附属義務教育学校 7年
植野 晶景
  • 島根県島根大学教育学部附属義務教育学校 7年
    植野 晶景
  • 第62回入賞作品
    中学校の部
    佳作

    佳作

研究の動機

 小学2年生の時からツマグロヒョウモンの観察・研究を始め今年で6年目になる。これまでは、毎年ほぼ5月の初旬には何匹か成虫を見かけ、メスが卵を産み、卵から育て始めた。しかし今年はなぜか遅かった。6月にやっと見つけ育てることができた。冬越しした第1世代の次の、第2世代と思われる。今回は例年より遅く出現した第2世代を用いて、いくつかの実験を行った。
 これまでの研究では次のようなことがいえた。①パンジーやビオラを食草とした幼虫の方がスミレを食草とした幼虫より大きく育ちサナギや成虫も大きくなる(2017年研究)。②5齢頃から食草を食べる勢いが増し、徐々にサナギになる場所を探すために、食草の場所から移動(ワンダリング)を繰り返し、サナギとなる。③サナギになる高さについては、屋外では見つけたサナギでは、高さ8~62㎝と差があった(2019年研究)。テントの中で試したときは、限られた空間のためか、高さが高くなり、146㎝の高さでサナギになるものもあった。④サナギの位置については飼育ケース内の狭い環境下では、蛹化時に一定の間隔を保ってサナギをつくる(2017年研究)、プラスチックの開閉部は避けて蛹化することが多い(2017年研究)、斜めの板をケース内に置くと、角度に沿ってサナギとなる(2018年研究)等を調べ、環境に適応して学習していることが分かり驚いた。
 今回は食草はほとんど同じだが、食草の状態に差をつけた。生き物の食痕のない普通のビオラと比較し、研究時期に多かったナメクジの食害があるビオラ、その他、乾燥したビオラにて幼虫への影響や成虫までの過程を調べた。また、比較の1つである屋外での幼虫の経過について研究した。

結論と感想

 ナメクジの影響のあるビオラ(通った後が白く光っており、ギザギザとした食痕あり)では蛹化までは数匹進んだが、羽化率は0%であった。食草が普通のビオラ(約13%)と比べ違いがあったのはナメクジの関係(チャコウラナメクジであり、「広東住血線虫」という寄生虫を中間媒介する性質の影響か)があると考えた。
 また、乾燥したビオラを食草としたものでは、そのままの状態では摂取困難なのでミキサーで細かくした。加えて生のビオラをミキサーにかけたものでも試した。1齢以外に3~4齢、6齢でも試したがいずれも成長しなかった。観察から、幼虫は普段食草を食べる時、胸脚で葉を押さえて固定して食べていることが分かった。しかし、ミキサーで細かくしたものでは脚を固定するころができなかったため、食べられないのではないかと考えた。
 その他屋外で卵からビオラ・スミレで自然に育てた例では成長が最も早く、羽化率(サナギが羽化した割合:62%)も高かった。サナギは様々な場所で蛹化していたが、いずれも半径1.6m内であった。その理由として屋外で育てた幼虫はケースで育てたものに比べ、自由に移動でき、食べたい量の食草を食べられるためだと考えた。またケースでは固定された中での動きになるため、動きにくいことや湿気や熱気がたまることも考えられた。屋外では天敵(主にアシナガバチ)が一番のリスクだった。
 例年よりもツマグロヒョウモンを見る時期が遅くなったのは何か環境の影響があるのではないかと思われる。そのため今回は5月にツマグロヒョウモンを見つけられなかったことにより、研究が遅くなってしまった。しかし、時期的に家にあった「ナメクジの食害のあるビオラ」を食草の1つとして研究を進めることができた。またカイコの人工飼料からヒントを得て、乾燥した食草も試した。今後は、ビオラが多く咲く4月に乾燥させ保管し、ビオラのない時期に食草として利用できるか調べたいと思った。また、乾燥した食草を食べる方法については改良が必要で、今後の課題にしたい。

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