授業でプランクトンの勉強をした。池の水を顕微鏡で見ると、たくさんの微生物がいることに驚いた。もっと調べたいと思った。
《方法》
水道水(150ml)のみを入れた紙コップと、同量の水道水に水草(水道水で洗った)を入れた紙コップの2種類各1個ずつを、次の環境、A:ベランダ(室外、気温が高い)、B:室内、C:箱の中(室内、光が当たらない)、D:ライトを当てる(室内、1日中ライトを当てる)、E:ラップをかぶせる(室内、空気が出入りしないようにラップをかぶせ、輪ゴムでとめる)に置く。13日間(8月6日~18日)の気温と水温を定時(午後1時)に測定し、水中に発生した微生物を顕微鏡で観察する。
《結果》
〈何日目に微生物が確認できたか〉
経過日数(日目) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
外の気温(℃) | 39.0 | 40.3 | 41.2 | 38.2 | 40.0 | 39.6 | 42.0 | 42.6 | 31.7 | 38.0 | 29.0 | 37.0 | 31.0 |
室内の気温 (℃) | 30.5 | 31.7 | 31.2 | 31.3 | 31.3 | 32.3 | 31.5 | 32.2 | 30.2 | 32.0 | 27.0 | 28.5 | 27.0 |
A・ベランダ | |||||||||||||
水のみ | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | 〈水が 蒸発〉 |
水草 | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
B・室内 | |||||||||||||
水のみ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × |
水草 | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
C・室内箱 | |||||||||||||
水のみ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × |
水草 | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × |
D・室内ライト | |||||||||||||
水のみ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
水草 | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
E・室内ラップ | |||||||||||||
水のみ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
水草 | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
《分かったこと》
微生物を発見した場所:条件は、早い順に、①ベランダ:水草(4日目から発見)②ライト:水草(5日目から)③ラップ:水草(6日目から)④室内:水草(7日目から)⑤ライト:水のみ(8日目から)⑥ベランダ:水のみ(9日目から)⑦ラップ:水のみ(10日目から)。微生物をまったく発見できなかった場所は、室内:水のみ、箱の中:水のみ・水草だった。
〈発見できたプランクトンの種類〉
※○の数字は発見日(例、⑧=8日目に発見)
共生動物 | 動物プランクトン | 植物プランクトン | |||||||
発見できたプランクトンの種類 | ミドリゾウリムシ | コルピディウム属 | ラクリマリア属 | ツリガネムシ属 | キロモナス属 | リトノータス属 | ヒザオリ属 | エラカトスリックスゲラチノーサ | クロステリウムモニリフェルム |
A・ベランダ | |||||||||
水のみ | ⑨ | ||||||||
水草 | ④ | ⑦ | ⑧ | ||||||
B・室内 | |||||||||
水のみ | |||||||||
水草 | |||||||||
C・室内箱 | |||||||||
水のみ | |||||||||
水草 | ⑦ | ||||||||
D・室内ライト | |||||||||
水のみ | ⑧ | ||||||||
水草 | ⑤ | ⑧ | ⑧ | ⑤ | |||||
E・室内ラップ | |||||||||
水のみ | |||||||||
水草 | ⑥ | ⑥ | ⑧ | ⑧ | ⑨ |
・水草を入れたコップが早く微生物を発見できた。しかし箱の中:水草では、発見できなかった。
・一番気温の高いベランダは、他の場所よりも早くプランクトンを発見できた。しかし発見したのは、動物プランクトンばかりだった。
・植物プランクトン(主にエラカトスリックス、クロステリウム)がたくさん増えた所は、ライト:水草だった。1日中、光に当たっているため、光合成をするのによい環境だ。
・まったく発見できなかった箱の中は、光合成ができず、温度も他よりも低かった。
・いろいろな種類のプランクトン(ラクリマリア、ツリガネムシ、ヒザオリ等)をたくさん発見できたのは、ラップ:水草だった。
・ベランダ、ライトは、早くから微生物を発見できたが、少しずつ水が蒸発してしまった。ラップをかけると蒸発することもなく、温度も少し高かったので、プランクトンにとってはすみやすい環境だったと思う。
微生物に栄養を与えたら、増え方はどのように変化するかを調べる。
《方法》
県庁の池底の水(150ml)を8個の紙コップに入れ、そのうちの7個にそれぞれ「アクエリアス」の粉(耳かき1杯)、「カロリーメイト」(スポイト1滴)、ガムシロップ(1滴)、コーヒーミルク(1滴)、ヨーグルト(1杯)、ドライイースト(1杯)、しょう油(1滴)を入れ、室内の窓際に置く。8個のコップの水の中の微生物の増え方や種類を、12日目まで3日ごとに顕微鏡で観察する。なお観察では、水1滴に3匹以上いた時を「増えた」とする。
《結果》
※○の数字は発見日アクエリアスの粉 | カロリーメイト | ガムシロップ | コーヒーミルク | ヨーグルト | ドライイースト | しょう油 | 何も入れない | ||
動物プランクトン | ウロセントラムターボ | ③6,7匹 | |||||||
アルケラ | ③3,4匹 | ⑥10匹以上 | |||||||
コルピディウム | ③5,6匹 | ||||||||
ウサギワムシ | ④3,4匹 | ||||||||
キロモナス | ④5,6匹 | ⑦5,6匹 | ④10匹以上 | ③10匹 | |||||
ゾウリムシ | ⑦5,6匹 | ⑥10匹以上 | ③3-5匹 | ||||||
リトノータス | ⑦6-8匹 | ⑥3,4匹 | ⑥3,4匹 | ||||||
ラッパムシ | ⑥3,4匹 | ||||||||
シカクミジンコ | ⑦3,4匹 | ⑤10匹以上 | |||||||
ケンミジンコ | ⑦3,4匹 | ||||||||
ツリガネムシ | ⑦4,5匹 | ||||||||
植物プランクトン | ジュウジケイソウ | ④7-9匹 | ⑦ | ④5,6匹 | |||||
スポンジロシウムモニリフォルメ | |||||||||
コエラストルムミクロポルム | ⑦ | ⑦6,7匹 | 3-5匹 |
《分かったこと》
微生物が増えたのは、①「カロリーメイト」②「アクエリアス」の粉③コーヒーミルク④ヨーグルトとドライイースト⑤しょう油で、微生物がほとんど増えず、あまり発見できなかったのは、ガムシロップ、何も入れないコップの水だった。
・「カロリーメイト」には、人が体を動かすために必要な五大栄養素(たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル)+食物繊維が入っている。さらにビタミンも1日に必要量の半分が含まれる。プランクトン(主にツリガネムシ)にも、このような栄養が必要なのだ。
・「アクエリアス」の粉の成分のアミノ酸は、私たちの体の組織(筋肉や内臓など)を作るたんぱく質の主成分だ。これもプランクトンが好む。主にキロモナスが増えた。
・コーヒーミルクとドライイースト、しょう油にはそれぞれ乳酸菌、イースト菌、こうぼ菌が入っている。これらも微生物の栄養だ。ヨーグルトではキロモナス、ドライイーストとしょう油ではリトノータスが増えた。
・ガムシロップには砂糖と香料が入っている。糖分だけでは増えないようだ。
《方法》
県庁の裏の池、「健康の森」のホタルの池、甲突川、霧島市の田んぼ・川・休耕田の水を取り、顕微鏡で微生物を観察する。水を取った場所の水温、流れや日当たり、魚や水草、石、アメンボなどの様子も調べる。
《結果》
県庁の裏の池で、動物プランクトン3種類(ケンミジンコ、カイミジンコ、スピロストムム)、植物プランクトン4種類(エナガウチワヒゲムシ、ボルボックス、ミドリムシ、フォルミディウムテヌエ)を発見。田んぼでもカイミジンコ、休耕田でもカイミジンコとフォルミディウムテヌエを見つけた。
《分かったこと》
①池や川、田には植物プランクトンが多い。②流れがある所よりも、水が動かない(水がたまっている)所の方が、多くの微生物が生息している。
たくさんの微生物を発見できた。県庁の裏の池の水では、とくに多かった。微生物を増やす実験では、目が回りそうなほどたくさんいた。毎日、観察するのが楽しかった。微生物のすむ環境を大切にしたい。
審査評[審査員] 船尾 聖
オリンパス特別賞、おめでとうございます。5年生の時に理科の授業でプランクトンを見たことをきっかけにして、顕微鏡を使って更にプランクトンについての研究を深めていった作品です。この作品は、顕微鏡を使い、丁寧に観察を行い、記録をしっかりとりながらプランクトンについての自分の考えをまとめたものです。
微生物はどのように増えるかでは、気温や水温、光、場所などの条件に目を向けたりして観察・実験を繰り返し行い、わかりやすいグラフにまとめています。
また、いろいろなプランクトンの名前もよく調べ、顕微鏡写真もデジタルカメラを上手に活用しています。
学校の学習を発展させ、課題をもちながら、顕微鏡の世界を観察し、小さな生き物の特徴を粘り強く取り組んだよい研究です。
指導について鹿児島大学教育学部附属小学校 有村和章
川畑さんは、授業で校内の観察池等の微生物を観察したことがきっかけとなり、この研究を始めました。肉眼では見えないくらい小さな生物の世界にも驚くほどの多様性があること、小魚の食べ物となってしまう彼らにも体には巧みなつくりがあり、確かに命が躍動していることに気づくことができたのは、彼女に確かな観察力と豊かな感性があったからこそだと思います。また、光や温度など環境が異なる中で増殖状況を調べたり、微生物の栄養源を知るために数種類の食品を与えて変化を調べたりするなど、条件を制御しながら要因を抽出しようとしたところも、科学的な方法や手続きのよさをよく理解しているからでしょう。花火大会に行くと「花火がボルボックスに見えた。」と笑う川畑さんのようなこだわり続ける姿勢を一朝一夕に培うことは難しいですが、自由研究を授業の延長としてとらえ、自然観察の楽しさを味わえる授業を進めていくことの大切さを改めて感じました。