第1章 ぼくと変形菌の研究について
5歳のころから変形菌が大好きで、フィールドワークで野生の変形体を採集し、長期間飼育するのが得意だ。研究によく使われるモジホコリだけでなく、野生のイタモジホコリ、アカモジホコリ、シロジクキモジホコリ、チョウチンホコリを飼育し実験している。野生の変形体を比べる実験は、あまり例がない。飼育している変形体たちの動きが違う気がしたので、2008年から2010年にかけて研究した。
「変形菌」とは動物でも植物でもなく、「菌」と言っても菌類でもない、アメーバ類の仲間だ。ねばねばで動き回る単細胞の「変形体」が、たくさんの「子実体」に変身して、子実体から「胞子」を飛ばして増える。変形体にとって暮らしにくい環境になると、自分を守るために「菌核」という、固まって眠っている状態になる。変形菌は腐った木や枯れ葉にいることが多く、森や林だけでなく住宅地など、身の回りにもたくさん隠れている。
モジホコリとイタモジホコリ、アカモジホコリを使った、えさを探す時の動きの研究(実験1~7)から、変形体の動き方は種類ごとに決まっていて、体のつくりと動き方には関係があることが分かった。モジホコリは、1本の太い「脈」に力を集中させて、脈の先端部分(ぼくは「レーダー」と呼ぶ)を広げながら、方向を決めて進む。イタモジホコリは、一度にたくさんの脈をいろいろな方向に伸ばし、それを順番に強めて探りながら、よさそうな方向の脈を伸ばしていくことを繰り返す。アカモジホコリは、絵の具のように軟らかい体の姿をどんどん変えながら、自由に向きを変えて、慎重に探る。自由に動けるのは、他の2種類とは違い、脈が網目のようにつながり、どこへでも脈を伸ばせるからだ。
変形体の「体の特徴と動き方」は、変形体の「考えや行動」と関係があるのではないかと考え、もっと知りたくなった。そのため「変形体どうしが出合った時に何が起きるのか」の研究を始め、今も続けている。
第2章 別の種類の変形体どうしの場合
【実験8】3種類の変形体を1つの入れ物の中で出合わせる。
《方法》
大きなシャーレ(直径13㎝)に寒天培地を作り、えさのオートミールに乗ったモジホコリ、イタモジホコリ、アカモジホコリそれぞれを、1辺が3㎝の正三角形になるように置いた。乾燥しないように入れ物にふたをし、毛布をかけて暖かくしたうえ、強い光が当たらないようにした。観察しながら30分おきに写真を撮った。変化が激しい時は15分おきに撮った。
《結果》
実験は2010年10月24日の午前10時半に開始し、変形体に元気がなくなってきたので、82時間たった27日午後8時半に終えた。変形体は培地の上を動き回って、互いに合計9回出合った。
《分かったこと》
3種類の変形体の3つの組み合わせで、全て相手を避けた。別の種類の変形体どうしは、出合ってもお互いにケンカをしたりしない。よけ方は①一方の変形体が、相手の上に乗ってから離れる。②お互いに触れ合って、すぐに離れる。③ぎりぎりまで近づき(0.5㎜以下)、触れずに離れる――の3通りに分けられる。
気づいたことも4つある。(1)相手に近づくと、脈の先(レーダー)をプクッとふくらませることがある。特にイタモジホコリにその傾向が強い。(2)他の変形体に触れる前に気づいてよける。モジホコリとイタモジホコリの組み合わせで2回あった。(3)アカモジホコリは脈が細くて動きがゆっくりなので、他の変形体に登って来られやすいが、あわてて逃げないこともある。(4)イタモジホコリは脈が太くて元気に動くが、他の変形体が来るとすぐに逃げるように見えた。
【実験9】別の種類の変形体を1対1で出合わせる。
《方法》
寒天培地を敷いた1つのシャーレに、2種類の変形体を入れて出合わせた。互いの距離は3㎝。3通りの組み合わせ、各組3つのシャーレで行った。
《結果》
観察は変形体の元気がなくなるまで続け、29時間後に終了した。9つのシャーレで合計24回出合い、どれも避けた。よけ方は実験8と同じ3通りあった。上に乗るのが11回、触れるだけが9回、触れずによけるは4回あった。
《分かったこと》
5つのことが分かった。(1)他の変形体を避ける。別の種類の変形体どうしは、どの組み合わせもくっつかず、争わず、避け合う。一緒にいるのは好きではないが、相手を攻撃したり、どかそうとはしない。相手に登ったりするが、また分かれる。この様子は、変形体が他の生き物(微生物や菌類など)と出合った時と似ている。例えばカビなどに出合うと、変形体はその上を登って、通り過ぎたりする。変形体にとって別の種類の変形体は、他の生き物と同じ扱いなのだ。(2)自分は変化しない。3種類とも、別の種類の変形体に登って来られても、傷ついたり、変化したり、死んでしまったりしない。飼っている時は、変形体はすぐに調子を崩すので、意外だった。(3)えさを奪わない。ふだん変形体が動くのは、えさを探すためだ。しかし実験では、えさを見つけても、そこに他の変形体がいると方向を変えるか、相手の上や横を通り過ぎて、えさの上で止まったりしない。(4)触れないのに、よけられる。モジホコリとイタモジホコリは、別の種類の変形体に近づいても、相手に触れずによけられる。24回のうち4回あった。互いに3㎜まで近づいても、変形体にとっては「かなり遠い距離」なのだ。なぜ、よけられるのか。(5)ふくらんで避ける。3種類とも他の変形体と出合う時に、脈をふくらませることがある。相手に知らせる"クラクション"の役割をしているのではないか。大きくふくらませた方が強いわけではなさそうなので、「どけ!」というより、お互いに声を掛け合うような感じなのかも。
種類ごとに特徴があった。モジホコリは相手に触れずに避けることも、登ってから避けることもある。相手に気づくのが上手な感じだ。イタモジホコリは、相手に触れることをとても嫌がるようだ。相手に気づくと、すぐに脈を弱めて、別の方向に進み出す。他の変形体に敏感だ。アカモジホコリは動きがおそいせいもあって、他の変形体に触れていることはあまり嫌がらない。他の変形体が来ても逃げず、ついて行ったりすることもあった。
第3章 同じ種類だけど、産地が違う変形体どうしの場合
【実験10】4つの産地のイタモジホコリが出合ったら、どうなるか。
《方法》
トトロの森(埼玉県)、入生田(神奈川県)、神武寺(同)、駒場野(東京都)の4カ所で採集したイタモジホコリを、寒天培地を敷いた大きなシャーレに入れて観察する。それぞれの変形体が乗ったオートミールを、一辺3㎝の正方形になるように置いた。変形体の並べ方を変えて、2つのシャーレで試した。
《結果》
11月7日の午前10時半に開始し、4つの変形体が入り乱れて動きようがない状態になったので、29時間後の8日午後3時半に終了した。2つのシャーレで合計13回出合った。13回とも、お互いによけた。相手をどかそうとも、登ったり重なったりもしなかった。これは、どの変形体の組み合わせでも当てはまった。
《分かったこと》
同じ種類の変形体でも、産地が違うとくっつかない。産地が違うと食べているものも違うからと考えたが、4つのイタモジホコリは3カ月から2年の間、同じ環境で同じえさで飼育したものだ。
避け方は、別の種類どうしの場合(実験8、9)と大きな違いがあった。イタモジホコリは、相手が同じ種類の場合は、あわてて逃げない。4つの変形体は、えさを探すためにシャーレの中で大きく広がっているが、お互いにじゃまをしないように譲り合って、4つがきれいにすみ分けている。実験9では83.3%が相手に触れたり乗ったりしてから離れたが、相手に触れずによける例が61.5%もあった。相手の上に乗ってしまう例はなかった。ぎりぎりの距離(0.5㎜以下)まで来て、触れずに避けていく例は5回あった。遠い距離(2~4㎜)で相手に気づき、触れずによける例も3回あった。別の種類どうしでは出合った時にプクッと脈がふくれることがあったが、同じ種類どうしだと、あまりふくらませない。変形体は相手の種類だけでなく、産地の違いも区別できるのだ。
第4章 1つの個体から分かれた変形体どうしの場合
【実験11】1つの変形体から分かれた変形体どうしは、くっつくことができるのか
出合うと何が起きるのか、分かれていた日数によって変化があるのか調べる。
《方法》
1つの変形体をはさみで2つ(A、B)に切り離し、それぞれを育てて、決まった日数後に出合わせる。出合わせは毎回3回(3シャーレ)ずつ、A、B飼育箱からそのつど取り出して行う。
《結果》
モジホコリとアカモジホコリの2種類で行ったが、変形体が弱ってしまってうまくいかず、途中で打ち切った。
【実験12】変形体の取り出し方や、温度の調節を慎重にして、実験11を改めて行う。
《方法》
モジホコリとイタモジホコリを使う。イタモジホコリのB、60日後の出合わせ後に全滅したので、その後は、A(A1)から分けて育てていたA2を使い行った。またモジホコリの102日後以降、イタモジホコリの98日後以降は対照実験(モジホコリA-Bの対照としてA-AとB-B、イタモジホコリA1-A2の対照としてA1-A1とA2-A2)を行った。
《結果》
切り離しから約半年後まで、モジホコリはのべ47回、イタモジホコリはのべ45回出合った。2種類とも、1度も出合わなかったイタモジホコリの1個のシャーレ(109日後)以外は、最終的に全てくっついた。対照実験も同じだった。
《分かったこと》
日数が経っても、相手を区別し、くっつく力はなくならない。8つのことが分かった。(1)変形体の形(どろっと広がった状態、脈がはっきり伸びた状態)に関係なく、くっつくことができる。(2)ぎりぎりまで近づき、止まってしまうことがある。相手と0.5㎜以下まで近づいたのに変形体が動きを止めたのは、2種類合計の出合い92回中42回(45.7%)あった。うち16回は60分以上止まっていた。(3)モジホコリは止まらずにくっつく傾向(47回中26回)、イタモジホコリは止まってからくっつく傾向(47回中25回)が強い。変形体の性格が表れている。(4)出合っても、いつもくっつくとは限らない。(5)くっついて、すぐに切れることもある。(6)止まってから、くっつくのに気に入った場所をさがす。(7)相手を避けて、逃げることもある。しかし片方にその気があれば、くっつく。(8)分かれていた時間(日数)には関係がない。
第5章 菌核にして変形体に戻した個体の場合
【実験13】菌核になった変形体は、元の変形体とくっつくことができるのか。
《方法》
変形体を2つ(C、D)に分け、それぞれの一部から菌核(Ck、Dk)を作る。菌核を湿らせて起こし、変形体に戻して元のC、Dと出合わせる。対照実験として、元の変形体どうし(C-C、C-D、D-D)も出合わせる。これをモジホコリとイタモジホコリで行う。菌核から戻した変形体は元気よく育った方(モジホコリはDk、イタモジホコリはCk)を使った。
《菌核の作り方》
変形体は暮らしにくい環境(低温や乾燥)になった時に菌核になる。変形体がよい状態(元気で、おなかがいっぱい)でないと、菌核から目覚めにくいという。えさのオートミールをたっぷりあげ、変形体が乗ったろ紙をシャーレに入れて、冷蔵庫の中で低温、乾燥させる。4日後に変形体は全て菌核になった。約1カ月後に、シャーレの中を約20℃のぬるい水で浸し、気温20℃ぐらいの部屋に置いてから1日後に、全ての菌核が変形体に戻った。
《結果》
菌核から起こした変形体どうしの出合い、元の変形体との出合いともくっついた。しかし予想外に、対照実験のC-Dの組み合わせではモジホコリ、イタモジホコリともに、1つもくっつかなかった。
《分かったこと》
変形体は菌核になっても相手を見分け、区別する力がなくならない。菌核から戻ったモジホコリとイタモジホコリはともに、止まってからくっつくことが多く、止まっている時間も長くなる可能性がある。
◆対照実験C-Dで起きた問題
1つの個体から分かれたものどうしでも、くっついて1つになるとは限らない。くっつかない度合いがとても強いモジホコリに注目した。これまでモジホコリで試した組み合わせは、D-DkとCk-Dk、C-Dの3つ。このうち、くっつかない組み合わせ(C-D)にだけモジホコリCが入っていることに気がついた。モジホコリCは、くっつけなくなるカギを握っているのかもしれない。
【追加実験1】
これまでやっていない組み合わせとして、モジホコリC-Ckについて実験13と同じように実験した(2シャーレで)。CkはDkとくっつくことができたので、くっつかないなら理由はCにある。
《結果》
2シャーレとも、くっついたり切れたりを繰り返し、最後は1つの変形体になった。
【追加実験2】
モジホコリC-Dの組み合わせ(2回目)。
《結果》
2シャーレとも最終的に1つにならなかった。
【追加実験3】
モジホコリC-Dの組み合わせ(3回目)。実験13から8カ月後。
《結果》
3シャーレ全てでくっついた。
《分かったこと》
実験12、13の結果も合わせると、モジホコリのC-Ck、C-Dではよけたり、くっついたり、離れたりを繰り返す。全シャーレでくっつかない場合と、くっつく場合がある。常にモジホコリCにくっつかない原因があるとは言えない。くっついて終わる場合でも、その途中では同じ相手を避けている。
第6章 野生の変形体の 第2・第3世代形成
変形体はどこまでが「自分」なのか、疑問に思えた。親の変形体とその子どもが出合ったらどうなるのか。前例がないという、第2世代(親から生まれた子ども)の変形体を作る。
【第1段階:変形体の長期飼育】
親となる変形体を十分に大きく育てる。
【第2段階:子実体形成】
変形体は子実体に変身して胞子を飛ばし、次の世代を増やす。胞子は子実体の「子のう」(直径0.3~1.0㎜)の中にたくさん詰め込まれている。モジホコリ、野生のイタモジホコリ、シロジクキモジホコリ、チョウチンホコリの4種類の子実体形成に成功した。
【第3段階:胞子から第2世代の変形体を発生させる
ピンセットで子のうを寒天培地の上に置き、フッと息を吹きかけて胞子(直径5~10μm)をまき散らす。培地にまいてから1~2日後には胞子が割れて、中から粘菌アメーバが出てくる。粘菌アメーバは自然にどんどん発芽するが、粘菌アメーバのオスとメスがくっついて変形体になるのは、なかなか起きないことだという。今回、4種類全てで変形体を見ることができたが、その数や大きさ、元気さにはかなり差がある。
【第4段階:発生した第2世代の変形体を大きくする】
数㎜程度の変形体を安定した状態(1㎝以上)まで育てるのが難しかった。イタモジホコリの第2世代変形体は育てられなかった。シロジクキモジホコリの第2世代変形体がくっついて1つになった。
◆チョウチンホコリの第3世代変形体の形成
チョウチンホコリの第2世代変形体を育てていた5箱のうち、1箱の変形体が自然に子実体に変身した。室温が30℃前後の夏の高温、乾燥ぎみの培地がよかったのかも。1週間ほど暗闇に置かれていたのに子実体ができたのに驚いた。やはり子実体形成と光の関係は、変形体の種類によってかなり違うのではないか。さっそく子実体から胞子を取って培地にまいた。9日後に第3世代変形体が発生し、長期飼育できるまでに成長した。チョウチンホコリの第2、第3世代の形成、飼育は前例がないという。
第7章 第2・第3世代とその親の変形体どうしの場合
【実験14】自分と他人の境目をもっとよく知るため、変形体の親(P)と子(第2世代、F1)、孫(第3世代、F2)を出合わせる。
《方法》
シロジクキモジホコリとチョウチンホコリで、第2世代実験(P-F1、対照としてF1-F1とP-P)、第3世代実験(チョウチンホコリP-F2、対照としてF1-F2とF2-F2)を行う。
《第2世代実験の結果》
2種類ともP-F1がくっついて1つの変形体になった。チョウチンホコリは全て1回の出合いでくっついた。シロジクキモジホコリは出合っても避け合う場合があり、くっついたり離れたりを繰り返す。P-F1の親子の変形体はくっついても、そのまま生き続けている。
《第3世代実験の結果》
3組み合わせ・各3個の全シャーレで、変形体はくっついた。2世代離れたP-F2でもくっつくことができるのに驚いた。くっついた後も生き続けられる。「くっつく」ことは、生まれ変わるようにリフレッシュすることかもしれない。
第8章 まとめと考えたこと
◆変形体が相手を区別する力
変形体は、相手をくっつけるかどうか判断できるが、いつもその相手とくっつく訳ではない。何か条件が合った時にだけくっつくことができ、変形体はそのカギを探していると考えられる。
◆変形体にとって、どこまでが「自分」で、どこからが「他人」なのか
変形体は切り分かれて「たくさんの自分」になれるし、それらがくっついて「1つの自分」になれるだけでなく、「他人」の第2・第3世代とくっついて「自分と他人が混ざった自分」にもなれる。変形体の「自分と他人」は、どんどん変化していくものなのだ。
変形体は全身を子実体に変身させて死んでしまうので、自然界で親子が出合うことはない。自然界では必要がないので、変形体には親子関係や世代のつながりを判別する力がないのかもしれない。この考えが正しいとしても、3世代間でくっついた個体が元気に生き続けるのはなぜか。それに第2世代はくっつくのに、産地が違うとなぜくっつかないのか。世代が遠くなると完全に他人になって、くっつかなくなるのかもしれない。
審査評[審査員] 小澤 紀美子
文部科学大臣賞の受賞おめでとうございます。5歳の頃から大好きであった変形菌の変形体の動きが種類によって異なることに気づいて始められた研究で、探究のプロセスの粘り強さに脱帽です。まず、変形菌の中で一般的に研究に用いられているモジホコリ以外に、野生の変形菌を採取、飼育して変形体の動きを比べるために7つの実験を行い、変形菌がエサを探す動きの特徴は変形菌の体の作り(種類)によって異なることを明らかにしています。それらの実験から次の実験のために「変形体の動きと考えの関係が知りたい」という課題を設定し、他の変形体と出会った時の行動を調べる次の7つの実験を計画して進めていきます。変形体どうしが出会うと「変形体は出会う相手を判別して行動を決める」ことを明らかにするために、種類間、産地間、個体間、世代間で実験対照群を分けての時間を要する実験を丁寧に行っています。また第2・3世代の変形体を発生させる変形菌の飼育環境整備など細やかな努力が実った研究と言えます。第4・5世代へと実験を継続し、変形体の「自分と他人」との関係性を探究してください。
指導について筑波大学菅平高原実験センター 出川 洋介
変形菌の培養は容易ではありません。特に、野山で菌を探し、持ち帰り、屋内で育て続けるのは難しく、野生種の培養の確立は未だ研究者にも困難な課題です。
真那君は朝起きると一番に変形菌の様子を伺い、学校から戻るとすぐ、寝る前にも、また旅行にも連れて行き、と毎日、何年にもわたり変形菌と向き合ってこれを達成してきました。生き物を知るには、まず愛情を持ち対話をすることが大切なのでしょう。そして丹念に観察する過程で湧いた素朴な疑問がアメーバの自己・非自己の認識という大きなテーマにつながりました。
私は指導といえるようなことはしていません。ただ真那君が幼い頃から、一緒に研究会の観察会や合宿に参加し、会員とともにフィールドを歩き、折に触れ成果を聞かせてもらい、寧ろその姿勢には研究者も見習うべきものがあると感じてきました。瑞々しい感受性と率直な好奇心を大切にして、生き物の本質に迫る科学者を目指して欲しいと思います。