きょ年の自由研究で、フジの木がどのように生長して花をさかせ、さやを作り、豆ができるのかが分かった。ほかの同じマメ科の植物がどんな生長するのか、フジと同じなのか知りたくて、豆の中で一番食べるのが好きな枝豆(えだまめ)を育てて、観察(かんさつ)することにした。
〈方法〉
家の庭のプランターに枝豆のたねを植え、毎日かんさつした。気づいたこと、ぎ問に思ったことを書いた。場所を決めて2日に1回スケッチした。
《ぎ問1》枝豆のたねは、どんな向きに植えても、土の上においただけでも芽や根が出るのかな。
〈方法〉
土の上に、たねのへそを「上向き」「下向き」「横向き」にしておいた。土の中の深め(深さ3cmぐらい)、浅め(深さ1cmぐらい)にも植えた。
〈結果〉
「上向き」以外はすべて根が出た。浅めに植えたものが一番よくのびた。何も出なかった「上向き」を浅めに植えたら、ちゃんと根が出た。
〈分かったこと〉
根が出るところが、かわかなければ、土の上でも芽や根は出る。
《ぎ問2》根はどんなふうに土の中でのびていくのかな。光が当たると、どんなふうになるのかな。
〈方法〉
上を切った2本のペットボトルに土を入れてたねを植え、一方には光が当たらないようにつつをまいた。
〈結果〉
つつのある方は、根がまっすぐ下にのびた。つつのない方は、土の中の暗い方へ曲がりながらのびた。
〈分かったこと〉
根は光の当たらない方向へのびる。
《ぎ問3》まびいた苗(なえ)をそのまま水につけておいたら、どうなるのかな。
〈方法〉
くきを根本で切ってまびいたなえ1本をコップの水に入れ、2本を北がわと南がわの土に植えた。
〈結果〉
水で育てたものは、くきが細長くのび、色がうすくて小さな葉をつけた。花も咲いてさやもできたが数は少なく、あまりふくらまなかった。北がわの土に植えたものは、さやができたあと、かれた。南がわのものはさやが7つできて、よくふくらんだ。
〈分かったこと〉
くきの切ったところからでも根がのびる。よいえだ豆を作るには日光と栄養が必要だ。
《ぎ問4》くきを子葉の上で切って、水につけておいたらどうなるのかな。
〈分かったこと〉
子葉がなくても、たけがのび、花が咲いてさやもできる。しかし子葉がついたまま水の中で育ったものとくらべて、豆は大きくならなかった。子葉には育つための栄養がある。
《ぎ問5》ぎ問4で残った、子葉から下の部分はちゃんと育つのかな。
〈分かったこと〉
上には何ものびて来なかったが、子葉のついているところから新しいくきが出て葉をつけ、どんどん大きくなった。
《ぎ問6》1本の枝豆にどのくらい花が咲き、さやができるのかな。
〈分かったこと〉
つぼみは観察して10日目が1番多く20こ、花は1日目が1番多く15こ咲いた。しかしとても小さくて数えるのがむずかしく、正かくな数は分からなかった。つぼみや花は咲かずに、そのままかれてしまうのが多い。さやは多いときで22こあった。
《ぎ問7》さやはどのくらいの速さで大きくなるのかな。
〈分かったこと〉
最初は少しずつ大きくなって、3~8日目にぐーんとのびて、その後はあまりのびない。フジのさやが大きくなる様子とよくにている。
《ぎ問8》枝豆はどのくらいできたかな。お店のと違いはあるのかな。
〈方法〉
収穫(しゅうかく)した枝豆(18本)と、買ってきた枝豆(4本)をくらべる。
〈結果〉
しゅうかく | お店 | |
さやの数の合計 | 117こ | 085こ |
---|---|---|
1本当たり | 6.5こ | 21.25こ |
さやの長さの合計 | 469.2cm | 462.9cm |
さや1こ当たり | 4.01cm | 005.45cm |
さやの重さの合計 | 148.0グラム | 281.0グラム |
さや1こ当たり | 1.26グラム | 3.31グラム |
豆の数の合計 | 203こ | 213こ |
さや1こ当たり | 001.74こ | 002.51こ |
枝豆1本当たり | 011.28こ | 053.25こ |
〈分かったこと〉
お店の枝豆はさやが長く、重く、さや1こにできた豆も多かった。1本当たりのさやの数も、私の育てたものにくらべ3倍以上あった。お店のは、どうしてこんなにたくさんできるのだろう。畑の土の方が栄養ほうふなので、大きな差ができたのかな。
《ぎ問9》お店の枝豆の根に、私のものにはない、丸い玉のようなものが付いていた。これは何かな。
〈分かったこと〉
本で調べたら丸い玉は「こんりゅうきん(根粒菌)」だった。大豆(だいず)は「こんりゅうきん」というバクテリアを根にすまわせて、「こんりゅうきん」が空気から取り入れるちっそ(窒素)を養分にしているという。「こんりゅうきん」は私の枝豆(18本)には0こ、お店の4本のうち3本に計29こ付いていた。中をわったら、どろっとした黄色い液体が出てきた。けんび鏡(400倍)では小さな点てんが見えたが、よく分からなかった。よい枝豆を作るには「こんりゅうきん」があったらいい。
《ぎ問10》さやをしばらくおいておくと、中の豆はどうなるのかな。
〈方法〉
①お店の枝豆からはずしたさや②お店の枝豆にさやをつけたままのもの③しゅうかくした枝豆からはずしたさや、を用意して、15日後(②は20日後)に豆をかんさつした。
〈結果〉
①はこい緑色で形はまん丸、カラカラにかわいていた。②うすい緑色で少し横長、カラカラにかわいていた。20日後にあけてみると、まん丸になっていた。③こい緑色で形はうすい丸、しわしわでカチカチだった。
〈分かったこと〉
色はこい順に③→①→②、大きさは順に②→①→③だった。お店のは、かわくとだんだん丸くなる。同じ枝豆でも、しゅるい(種類)がちがうのかな。
《ぎ問11》ぎ問10の豆を植えると、どうなるのかな。
〈結果〉
お店のもの①、②のそれぞれ5つぶからすべて芽が出て、くきも太く、葉も大きかった。私の③は5つぶのうち3つぶから芽が出た。お店のにくらべ、くきは細く、葉も小さかった。
〈分かったこと〉
豆の大きさがちがうと、植えたときにくきや葉の大きさもちがうみたいだ。
《ぎ問12》かわいていない、買ったばかりの枝豆のさやをすぐにあけて豆を植えたら、芽や根が出るのかな。
〈分かったこと〉
5つぶ植えたら、2つぶから芽が出た。でも、かくりつ(確率)は少ないのかな。
研究を終えて
びっくりしたのは〈ぎ問3、4〉でくきを切っても、また生長すること。枝豆って「不死鳥」みたいだ。こ れから調べたいこともたくさん出てきた。〈ぎ問5〉で子葉の横から新しい葉が出て、くきが育ったが、ほかの植物ではどうなるのか。同じマメ科のフジはいいにおいを出して虫たちをよび、じゅふん(受粉)を助けてもらっていたが、枝豆は花がひらかないのに、どうしてさやができたのかなどだ。また、たくさんの大きな枝豆をしゅうかくするため、「こんりゅうきん」の研究もしてみたい。
審査評[審査員] 星野昌治
枝豆の生命力の強さの秘密は沢山あります。小倉永里さんは、昨年、自分の家の藤の木がどのように生長して花を咲かせ、さやを作って豆ができるのか、小2とは思えない大きな研究をしました。今年は、昨年の研究成果を踏まえ、同じマメ科の枝豆を育てて観察研究しました。枝豆の生長の様子を観察していくと、自分なりの疑問が出てきました。その疑問を問題にし、自分なりの調べる方法を考え、予想し、その結果を丹念に正確なスケッチや写真、文で記録していきました。そして、結果をまとめ、わかったことを記録していくと、また新たな疑問が次々に生まれ、それを解決していきました。疑問からの問題を見つけて解決していった数は、何と12個にもなりました。その研究方法は、正に科学的な方法であり、研究の成果は、昨年を超えるおよそ220ページにもおよぶ研究物にまとめられました。その迫力には、大変驚かされ感心いたしました。さらに小倉さんの実験、観察の方法は、大変周到なもので、長期にわたって継続的に観察研究をして、膨大な結果をよく処理し、図や写真などを使って表現しており極めて科学的に取り組んだ研究でした。また、植物の不思議さや生命の尊さが伝わってくる素晴らしい研究でした。
指導について小倉 康
永里は、昨年度フジの花を研究して、マメ科の植物の生長に強い関心をもつようになった。食べるのが大好きな枝豆を自分で育ててみたいと、家庭菜園用の種を買ってきて栽培を始めた。研究しながら、ダイズに関する本も読んで知識を深めたが、それは、読んだ知識を使うためというよりも、本に載っていない新しいことに取り組むために近かった。本人は幸い、枝豆の生長の観察を続けるうちに、素朴で新鮮な疑問を数多く見いだしていった。それらの疑問を追究する過程は、本人も両親も「へぇー」といった驚きの連続であった。日々、枝豆の生長と疑問を追究する実験の経過を同時にスケッチしたり測定したりすることは苦しみも伴うが、観察することによって疑問の解決につながる変化に気づいたり、新たな疑問がわき出たりと、喜びや知的興奮を味わうことも少なくなかった。親も一緒に喜んだり興奮したりできることが、家庭で行う理科自由研究では不可欠な要素だと感じている。